で葉流華一行。
生けるごみ屑と成り果てたドクターウエスト、何故か既にぴんぴんしていたりする,不死身か貴様、それともやはり人間の枠を超えた生物だと言う説は実話か。
「乱暴な女である、我輩の娘のエルザとくら「何か言ったか○○○○」何も言ってないのである」
ウエストの言わんでもいい愚痴を口にするから、更に葉流華に凄まれ震え上がる、どうやら肉体的はともかく傷は残ったようだ、心的外傷という傷が。
「何で元気なんだろ」
「ウエストじゃからのう」
「博士だからロボ」
この男、それだけですべてが納得してしまえる、だってウエストだから。
「しかし、玖里子、この服は似おうておるか?」
アルが気にするように自分の姿を玖里子に問う。
先ほど葉流華に連れられていったところで新しい服を買ったのだ、白いフレアスカートに白いキャミソール、に白い七分丈のブラウス、普段のドレスと同じ白一色だが違った感じで似合っている、何故か尻尾が付いている。
因みに和美が見繕った服は玖里子が紙袋に詰めて持っていたりする、案外世話焼きな玖里子さんである、エルザも何気に黒で統一されたアルとのペアルックをしているし、勿論尻尾も、こっちは可愛い系というよりは体系的に少し扇情的ですらあったりするが。
これでダーリンを誘惑するロボ〜とか言ってアルに先程ドロップキックを喰らったが。
「似合っているわよ、和樹も思わず抱き締めちゃうくらいに」
ついでに玖里子は抱き締めた、かなりつぼに入る可愛らしさだったらしい(尻尾をつけたのはこいつ)、何気にロリータ趣味があるのかもしれない玖里子。
「にゃ、にゃにを言うか、妾は和樹のことなど気にしておらぬぞ。そんなことどうでもいい事ではないか、何を戯けごとをいっておる」
顔を真っ赤にして否定するがバレバレである、というか可愛すぎ!!
「綺麗に見られたくない?」
玖里子が悪戯っぽく笑う、アルの心理など手に取るように判っているだろう、にしてもアル精神年齢が外見年齢に比例するのな。
「ぬぅ・・・・見られたい」
可愛いからいいけど。
「じゃあいいじゃない、今のアルちゃん可愛らしいわよ」
顔を真っ赤にして俯いて恥ずかしがっているアルを見て玖里子は内心。
(こんな妹居たらいいなぁ、母さんもう無理だろうし、姪でもいいから姉さん産まないかしら、麻衣香姉は無理として葉流華姉かしら、江美那姉は子育て無理そうだし期待するだけね・・・・・)
この場合和樹の子だろうな、何気に自分の二人の姉にはかなり失礼な評価を下している。
(ああ、私が産んでもいいわよね、もう18だし、和樹の子か、それもいいわね。私がママかぁ)
と微妙に自分の姉妹を差し置いて和樹を手中に収めるフラグが立ちつつある玖里子だった、でも動機は可愛い女の子が欲しいというのが、本音か誤魔化しか微妙なところである。
まぁ、見た目よりはピュアなお嬢さんだからそれほど壊れたことを考えてはいないだろうし企みもしないだろう、安全性なら折り紙つきの女性、それが風椿玖里子。
とこちらは和気藹々としていた、和気藹々としていたのは飽くまでこちらだけだったが。
こちらでは果てしなく物騒で剣呑な雰囲気が雲霞の如く湧き出していた。
唐突にウエストに話し掛ける葉流華。
「さて、これはお前の知り合いか○○○○」
「ん、何であるか風椿葉流華、我輩はまだ何もしてないであるぞ。だから殴られるのは嫌であるぞ、もう三途の川で運賃がなくて立ち往生しつつ、何とかぎりぎりで現世に回帰する経験はノーサンキュー。我輩の死は人類にとっての損害であるからしてどこぞの保護団体我輩を助けてヘルプミー「黙れ」」
「もう一度聞くぞ、知り合いか○○○○」
「ぬぅ、我輩は○○○○ではないというに。だがおふざけはここまでにしておかんといい加減命がヤバ目なので答えるのであるが答えは知らぬのだ、我輩清廉潔白の身である、付け回される覚えはないのである」
「気付いていたのか、キチガ○」
「この大天才にわからぬことはないのである、というかあからさまである、囲んでいるようであるが、ほれあそことあそこがあからさまであるな」
とウエストが視線でさした先には作業員姿の男が何かしら作業をしているようだが、どこか不自然げであり、よく観察するとスタッフが付けている筈のネームプレートなどは付けられていない、最近ではスーパーの店員でさえ絶対に義務であったりするのに(経験者談)。
「私らに用だろ、あれは」
まぁ、何か用が無い以外で囲まれるなど果てしなくいや過ぎるが、用があってもいや過ぎるのに変わりは無いのだろうが。
「当然であるな、そうでなければわざわざ囲まないのである、しかし我輩腕に覚えはないのであるが。今はギターもないであるし(ギターケースがウエストの主武装だもんなぁ)。風椿葉流華任せるのである。エルザも必要なかろう」
「私としてはさっさと排除するに限るからいいが。可憐な乙女にいう事ではないぞ」
どの口でそれを言うかといいたいところだろうが、ウエストあっさり葉流華の戯言をスルーして会話を続けている(微妙に葉流華の不況を買っているが禄でもないことを喋るよりははるかにマシである)。
「うむ、しかし遅いようであるな、仕掛けてくるのである。さっさと排除するのは無理っぽい」
ウエストの言うように、周囲に囲んでいた人間が一斉にこちらに銃を向けようと懐に手を入れて仕掛ける準備段階に入っていたりする、ウエストは全然焦っていなかったりするので緊張感が今一無いが。
和樹達が銃声に気付きそちらへ向かおうとした時(何気に自分関連のトラブルかなっと不安が沸き起こる辺りかなり真っ当ではない人生を歩んでいる証左である)、やはり襲撃を受けていた。
和樹の力を警戒したのか接近せずに和樹達の進行方向上に待ち伏せし発砲してきていた、和樹とかおりは銃弾など物ともしないが、凛と未空、ライカはそうではない。
銃弾を対処するには経験値が圧倒的に足りないし、こういった襲撃に対処する経験自体が無い、戦闘スキルを保有している凛出さえ役に立たない。
これが真正面から襲ってきてくれればまだやりようがあるのだが襲撃者の役目は足止めなのか一定距離より踏み込んでこない、凛達を守らなければならない和樹とかおりにしてみればいい足枷となっている。
出来ることといえば目に付く敵を投げナイフで止めたり、かおりの拳銃で打ち返したり凛の攻撃魔法で吹き飛ばしたりと地味にチマチマ相手の戦力を削るくらいのものだった。
突っ込むと普通は絶体絶命の状況であるのに和樹達が若干押しているのが彼らの化物振りといったところか、普通はチマチマ反撃も早々上手くいくはずが無いのだから。
それでも、結果として和樹達はその場で足止めを喰らっていた。
沙弓達。
「おとなしく付いて来てくれると嬉しいんだけど」
菫淳子がそう言って銃身を沙弓に向けた瞬間、彼女の顔には紛れも無く勝者の笑みが張り付いていたが、其の表情が変化する暇を与えずに沙弓は彼女の懐に入り込み銃を跳ね上げて、拳で菫の腹を殴り飛ばしていた。
菫のほうも何とか対処したのか後ろに吹き飛ばされて、自分から後方に飛んで威力を逃がしてダメージを軽減させている、とっさの判断としては上出来だろうが水月に叩き込まれていたので即座には立ち上がれないだろう。
刺激された横隔膜はそうは自分の意思どおりには回復してくれないだろうから。
沙弓は殴り飛ばした菫と周囲に視線を走らせ背中側にに庇っている和美達に問う。
「囲まれているか。和美、涼はどう!?」
「大丈夫よ、それ麻酔銃みたい。気絶しているだけだわ」
「そう、ケイ、矢夜、貴方達は涼と一緒に結界を張りなさい、それに和美悪いけど、私と一緒にお願い和樹たちも気付いてくるでしょうから、それまで持ちこたえるわ」
「そうかしら。和樹に煩わせるまでも無いわよ。私達で潰すわよ、沙弓。誰に喧嘩を売ったかを教育してやりましょう」
和美が両腕に炎を纏わせて自身を鼓舞するような言葉を吐き出す、他者を威圧し圧倒する破壊的魔力、破壊の具現“炎”を顕現させ。
沙弓は己の手足に魔力を集め、また呼吸を一種独特のものに切り替え更に力を引き出し、それでいて脱力した構えを取る。
其のスタイルは瞬発力をギリギリにまで高めた獣のスタイル、魔力で鉄壁の防御を行い己が身体能力のみで敵を刈る女豹。
二人のヴァルキリーが戦闘スタイルにと移行した、殲滅するために。
そして彼女達の中心ではケイと矢夜は涼を抱えその場で印を切り呪を紡ぐ。
「停滞、拒絶、腐敗、断絶、漆黒。我が崇拝し邪神よ我に仇成す愚者の血肉を贄として差し出す。我に不条理の盾を、全ての生に対する鉄壁を、腐壁陣」
「害成す人よ、我に潜む魔性の想を持って存在を否定し抹消する、根源はネメシス。呪いの楽園」
ケイが地より暗黒の円柱を発生させ自分達を囲み、矢夜がそれを覆うように半球形の結界を張る二重結界、“闇”の属性と“呪”の属性を掛け合わせた二人の合成魔法、自分たちで“死虐の盾”とか名づけているが名前からしても性質は悪そうだ。
呪文からして不景気な単語が乱発している辺りでその辺はわかりそうなものだが、彼女たちこそB組が誇る暗黒魔術の二台巨頭、使う魔法の全てが性質が悪い。
しかもこの魔法は代償として支払うものが自分の血肉ではなく他者の血肉、守られるものには何もリスクを与えず害意を咥えようとする者に、正しく因果応報の如し襲い掛かる。
沙弓、和美のコンビの二人はたいしたものだった、というかこっちにやられたほうが幸福というかなんと言うか。
その辺はあの暗黒魔術の性質の悪さが原因だろうが、こちらにやられたほうもそれなりには手酷くやられている。
「ふぅ。折角の人の休日を台無しにしてくれたんだから手加減はしないわよ。燃やし尽くしなさい九龍鞭招来」
和美が作り出した九つの炎の竜が襲撃者に襲い掛かる、正しく炎の蹂躙。
襲撃者に対して自分を中心に炎の龍を展開し、近寄ってきた者を手に宿らした炎で焼き払う、中距離、近距離を制し襲撃者を寄せ付けない。
龍も自分の意思があるかのように動く為に銃で満足に狙いも付けられない、和美はそれほど派手に相手を倒してはいなかったがジワリジワリと自分の策へ、炎の龍を取り囲ませるように襲撃者を追い詰めていった、まるで炙る様に。
沙弓にやられているのは和美よりは不幸かもしれない少なくとも現場復帰は不可能なほどには痛めつけられている。
魔法は体の防御に回しあとは己の肉体のみで攻撃を加える、呼吸法により身体強化もかけ獣のような俊敏さで一撃で襲撃者を戦闘不能へと追い込む、只の一撃で人間をスクラップにする手腕、間接を破壊し、骨を砕く、時折魔法も混ぜて衝撃波を放ち、銃器に対する牽制も行っていた、女子高生とは思えぬ戦闘能力だろう、というか完全に正規の軍人を上回っている。
効率的な戦い方、和美の炎で弱らせた獲物を狙う辺りも獣の戦い方に準じている、弱っている獲物から狩る、戦いの獣の鉄則。
最も不幸なのは結界を張って守っているだけと思って油断して近づいた連中だった。
直接捕まえようと結界に魔法を纏わせた拳を叩きつけようとするも結界がその力を奪い触れている拳が腐敗し、全身の生気が吸い取られより一層暗黒の輝きを増す。
文字通り、腐敗結界であり、因果応報を他者に与える、死を纏わせる防壁。
ならばと遠距離から魔法を叩きつけるも魔法を介して根こそぎ魔法力を奪われ立ち上がることも出来なくなる、銃で撃っても貫通する前に弾丸が崩れ落ちて弾は錆、粉になる、まさに不可侵結界。
実際はこの結界、不可侵結界ではなく術者の魔法力さえ上回れば貫通可能であるが、魔術師エリート学校、その中でも優秀さならダントツトップ、でも自分たちでそれを台無しにするクラスB組である、その術者二名の合成結界やすやす貫通されるわけが無い。
しかも属性が攻撃属性の強い闇や呪、陰の方面の力は魔法力が弱くても光が対抗手段となるがこの手の魔法、攻撃性がやたらと低かったりするしそもそも攻撃として使える術者の数も圧倒的に少ない、弱点が希薄であり其の上に性質が悪い結界、正に無敵の盾もとい死虐の盾。
そんなこんなで彼女達かなり圧倒的でった、菫淳子が早々にリタイアしたせいで指揮系統が滅茶苦茶になったというのも敗因にはあるんだが。
只の女子高生としてさっさと奇襲して倒さなかったのが最大の敗因だろうか。
ついでにこっち葉流華組は何気にピンチだったりする。
先手でいきなりグレネ−ドランチャーを打ち込まれ防いだはいいが、完全にアルと玖里子が葉流華とウエスト、エルザから離されていた、というかそれで全滅していたら人質どうする気だったんだろう、人質にするために襲ったんだろうに。
それからの行動も菫が率いていた襲撃者とは異なり迅速に行動された、葉流華もいきなりランチャーなどをぶっ放されるなど想定していない、それでも反応の遅れは致命的だった。
しかも最悪なのは大柄なアラブ人、ヴィペールが玖里子の頭に拳銃を突きつけて勝者の笑みを浮かべていることだろうか。
「手前ら、芸が無くておもしろくもねえが、この女の頭がトマト見たく吹き飛ばされたくなかったら式森和樹に伝えな、おとなしく俺達に捕まれってな。楽しいクルージングに招待してやる。・・・・・・・・・・おっと、そこのガキ手前も来い、この女を殺されたくはねえだろ」
本当に芸が無い、オールドムービー(しかもB級)の悪役か。
ヴィペールがアルの周りにも何人かをやり取り囲む、アル一人でもどうとでもなるが玖里子がこの状態ではどうともならない、アルは歯噛みしながら大人しく周囲を包囲されていた、ウエストなら笑顔で見捨てただろうが。
それこそ熨斗をつけて、礼金すら払うかもしれない、産廃処分料として、と言っても人質になっているのは玖里子なので見捨てるわけにもいかない。
ウエストと葉流華、エルザも手出しがしにくい、銃を突きつけられたのがアルならば対処の仕様もあったが玖里子である、基本的にはそこらの女学生と変わらない修羅場などくぐったことも無い、玖里子自身に状況を何とかさせようと期待するのは酷だろう。
完全に後手に回っている葉流華達。
「ぬぅ、風椿葉流華、どうするであるか、このような事態想定ナッシング。我輩の脳細胞から算出し我輩たちのみで妹さんを助け出すのはインポッシブルである、それにさっきから周囲が騒がしいのであるというか、少年のほうも襲撃されているようであるな」
何気に状況判断してやがりますか、この○○○○。
「ふむ、面倒だが。というかそれでわざと玖里子を攫わせろと、可愛い妹だぞ」
「ノープロブレムである、というか、そこな魔道書が拉致されれば、少年がすぐに取り返してきてくれるである」
何気に他力本願だ、エルザがこの状況だったら一番都合がいいだろうが、一番心配するくせに。
「ま、そうだろうな、しかしこいつらが何者か判らん、まさか単に金目当てとか言うわけじゃないだろう」
あんた等、何気に無視して会話してやがりませんか。
「少年が目的であるなら、大体察しが付くのである。というかなんで我輩を奴らは無視するであるか、銀河一の天才科学者を拉致ッたほうが利益があるであるぞ、破壊ロボ28号デラックスver3.4「青い海なんか嫌いだー、少年の叫び 青春編」の設計図がお勧めであるが」
というかどんなだそれ、と問い詰めたい、ついでに、こいつらやっぱりヴィーペールを完全に無視して話し込んでいた、ちょっと憐れ。
無視されているほうはというと、やっぱ怒っていた、というかこのまま連れてきゃ楽に行きそうなのに、この状況で無視されるのもつらいものがあるだろうが
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ダンッ!!!
「ギャッ、掠ったであるぞ。そこなデカイの、危ないであるぞ、そんなもの振り回したらメッである、暴力はいかんであるぞ暴力は。さもないとここな女のようにやさぐれた一人ぼっちの人生わき道街道まっしぐら、23になってまで恋人ナッシング、手近な当時中学生誘惑してロストバージン、ショタであるか?ショタであるな。ああああっ、憐れな少年はこの女のせいで純粋な少年期は過ぎ去り、今では鬼畜変態ハーレム願望を抱くようになりましたとさ、まる」
ついでにこの時、ある大人な女性のこみかみに怒りの青筋が浮かんだそうな、先程の半殺しのときと同じぐらいの怒気が感じられる。
「(ウエスト、香典は包んでやるであろうぞ、思えば愉快で楽しい奴であった、機械人形はライカのところにでも送っておいてやる。梱包して)」
何気にアルの中では既にウエストはご臨終していた、案外余裕なのかもしれない、ウエスト節が炸裂しているから余裕なのかもしれないが。
ついでに玖里子は姉の実態に対して(そう、姉さんも変人だったのね、何で私の姉妹ってアレな人ばかりなんだろ)と微妙に問題のあることを考えていたりする。
ダンッ!!!
「黙りやがれ、この○○○○が、ああっ、状況わかってんのか、一人殺して認識したいか」
かなり本気で切れているようである、当たり前か。
「お遊びはここまでにするであるか」
遊んでたんかい!!
「しかしこちらとしては何も出来ないのである、我輩肉体労働は苦手であるし」
「私は銃より早く動けないんでね」
「エルザなら何とかなるかもロボよ?」
「まぁ、ここまで引き伸ばして少年が来ないであるからして、足止めしているのであろう、本当に殺されても困るである、ひとまず連れて行くが良い。エルザも無理はいいのである古本娘であればどうとでもするであろうが。風椿葉流華の妹はそうはいかんのであるからな」
やはりかなりマトモな状況判断を行うウエスト、何気に現実主義か。
「忠告するけど、丁重に扱うように、五体満足じゃないと、そっちの目的は危なっかしい限りだろうから」
それからヴィペールが何かしら言っていたが、結局はアル、玖里子を連れて引き上げていった、どうやら報告で和樹達が足止めを突破したことを知ったようである。
直接対決は避けたいというところか。
余裕があればウエスト辺りは蜂の巣にしたかったのかもしれないが、多分心の底から。
さて、拉致されたアルと玖里子であるが、トラック(魔法封じ付き)の荷台に押し込められ、荷物の如く輸送されていた、勿論見張りとして乗り込んでいる、見るからに柄悪いですといった感じの男達に、沙弓達にのされたはずの菫淳子が同じくいたが。
玖里子は恐々と多少の緊張が見られ、というか普通の反応だろうか、アルはふてぶてしく、こっちはまぁまともじゃないけど。
なんか対照的なコンビだった、というか年齢(外見上)立場が逆転しているともいえるが。
人生経験の差だろう、方や年齢不詳の人外美少女、方は富豪の娘、というか人生経験のあたりで既に大分違うし、多分500倍以上(確かアルは千歳以上のばあさ・・・・・・・うぎゃああああああっ)、いや性格の差でしょうけどね、きっと。
「そこの女、妾達に何用ぞ。ここまで丁重な扱いじゃ、ずいぶんな用件なのじゃのう」
ついでにアルたち魔封じの結界付きのコンテナの中で更に札を付けられた檻の中に猛獣よろしく叩き込まれていたりする、淳子=フィアールカが沙弓達にいいように魔法でいたぶられたので、警戒しているらしい(主に警戒されているのは玖里子ではあるが、学校トップクラスの魔術師だから)、しかし猛獣扱いは幾らなんでも気分が悪いだろう。
アルは外見だけなら10代前半の小生意気な美少女であった、実情はガラス瓶に入れられたニトログリセリンより危なっかしいかもしれないが、と言ってもこうまで重厚に封魔結界を張られると、何も出来ないのが実情だったが。
救いは結界を解くのを相手が恐れている間は安全と言ったところか、何か危害を加えようとするならば結界を解かなければならないのだから。
「貴方達に用があるわけじゃないわ、ある方が、式森和樹を必要としている、でも彼は抵抗しそうだし、取り押さえるにも苦労しそうということで、貴方達はその押さえよ」
つまり人質であるが、人質をとったところで実際苦労じゃすまないというか、現時点で自分たちの命の蝋燭が凄い勢いで燃えているのにまだ気付いていないのが少し哀れ。
式森和樹の愛妾を盾にとってマトモに済む筈が無いのだから。
「ふむ、つまり妾の旦那が必要だが、梃子摺るので女房人質の取ってくるように脅迫するというわけか」
何気に和樹の所有権を主張していたりする、最近ちょっと素直になっていたりする、アル=アジフだった、単純に女相手には誰彼構わずそう主張して唾をつけていることを認識させているのだが。
その際の和樹の人格いかんの評判に関しては全く考慮していないが。
「女房、旦那・・・・・・?」
そら驚くだろう、アル見掛けは11、12くらいだし。
玖里子は実情を知っているので(アルちゃんも和樹のいないとこでは結構素直なのよねぇー、とか考えていた、現状に対する不安は薄れてきているようだ)。
「ぬ、調べておらんのか、和樹は妾の婚約者でありマスターであるぞ」
ついでにこの言葉、フィアールカの中でマスター=ご主人様=ロリコン、SM魔人という単語変換が成されていた、アルの外見から(庇護欲をそそるロリペタ美少女)何となくいじめがいがありそうな感じだから。
「あなた。えーと、式森和樹と一緒に住んでいるの?」
恐々というか、確認するように問うフィアールカ、何と無く其の態度は常識的な女子高生っぽい、こういうところで普通っぽいと悪役らしくないが。
「勿論じゃ、というかワンルームの狭いマンションじゃが」
狭いマンション=いつも二人っきり=常時特殊なプレイに耽る二人=式森和樹は変態さん。
何気に遠く外れていない想像を展開しているフィアールカであった、実際殆どが事実なのだから、ほんの少しの誤解はあるだろうが。
「えーと、いつからかしら?」
「二年ほど前からじゃが(葵学園に入った頃から)」
当時10歳前後(アルは年取らないけど、フィアールカの視点から)、式森和樹、ロリコン、性犯罪者、ペドフェリア、可決。
(何、うちのヴィペールほどじゃないと思うけど目標は変態、丁重につれて来いって言われているのに。何もし、暴れ出して要求されたら私が身売り、生贄、性犯罪者に差し出される供物、このロシアン・ビュティーをいいように嬲られるの、白い液体で全身ドロドロにされて、それでも許してもらえないの。無理矢理連れてきた憂さ晴らしに私の体で鬱憤を晴らすのね、この童顔が恨めしいわ。いいまとじゃない。足腰が立たなくなっても私の腰を掴んで強要されるのね、泣いても叫んでもそれがいいとか言って更に苛烈に嬲られるのね、そんなのいやぁぁぁぁぁっ ついでに襲撃犯に女性は彼女だけだったりする)
妙なことを考えているせいか、下向きでぶつぶつ言っているのはちょっと怖い。
(この荒くれの中でも貞操を守ってきたのに、こんなとこでロストバージンですか、そんな人生あんまりです、そりゃ悪いことをしてきました、それでも女の子としての普通の幸せを望むことも許されないんですか、嫌です初めては愛し愛されてが、変態の供物はあんまりです)
ついでにこの妄想に拍車を掛けているのは、B組男子が和樹のモテぐあいをやっかんで流した噂が元凶である、転校して2.3週間しかいない彼女は鵜呑みにしているだけなのだが(あながち嘘でもないというのは和樹の自業自得だが)。
ついでにアルたんは毎夜その変態に付き合っている、何気につわものです。
「何をしておるのだ、この小娘は」
「・・・・・・・・・(汗)」
突然悶えだした、苦悩したように頭を振りたくるフィアールカに怪訝そうに他の見張りにアルが尋ねるが、見張りとしても何を言えといわれても困るだろう。
玖里子も何故悶えているのかは判らない、女性でもわからないのにすこしてんぱった思考をしている仲間の思考を聞かれても困るだけだろう。
アル達は今のとこ危害は加えられそうに無かった、いまのところは。
アルが攫われたのを知っても表面上慌てていない、あくまで表面上だが、和樹は、足止め喰らっている時に姿を現したディステルとかおりから、葉流華と共に襲撃について説明を受けていた。
勿論なんでディステルが居るかの説明付きで、彼女も和樹の知識では海外でウロウロしているはずなのだから、因みに大体かおりとツーマンセル。
後、説明と言っても和樹が面倒に巻き込まれるというのを式森の本家が嗅ぎ付けて派遣されただけでどこが狙っているかぐらいで詳しく知らなかったんだが。
「つまり、ワイズメングループって呼ばれている魔術結社みたいなところが、和樹を狙っているらしいんだよ、お前の魔力かほかの事を狙っているのかは知らないんだけどな」
とかおり。
「その為に来たって言うのにだな。この吸血鬼は遊び呆けていたな、幾ら周囲に人が居るとはいえ攫われたのは少女と言うではないか、目を離すなど、和樹本人であればどうとでもなっただろう、私達の仕事は周辺の警護だったんだぞ(つまり身内を含む警護)」
鬱憤が溜まっているのか(見せ付けられて)ディステルがかおりを責める。
「・・・・・・・・・(汗)」
言葉も無いようだった、完全に油断しきっていたので和樹と楽しむことを優先していたかおりに反論する言葉は許されていないようだった、ついでにこのお話では変な指示は出ていない、というのはさておき、問い詰めてもきりが無いし。
というか表面上切れていない和樹が、アルが攫われたと言われて、本当に切れていないわけがなく、というか実は結構焦っていた、それに気付いていたのは普段のアルへの溺愛ぶりを非常に身近で知っている、沙弓、葉流華、エルザなどなど、まるっきり気付いていないのが来たばかりの、かおり、ディステルであったが。
「あれ、相当慌ててるわよね」
「落ち着こうと取り繕ってはいるがな、というか考えなしに飛び出さんだけマシだろ」
「ダーリン、結構怖い表情ロボよ、というかちょっとかっこよくてこういうダーリンもいいロボ。エルザが攫われれば良かったロボ」
とあんまりアル自身の心配はしていないようだった、というか葉流華さんせめて妹の心配ぐらいは、エルザは不謹慎だし。
「大丈夫よ、アルがいるし。暫くは大丈夫だろう。玖里子もそこまで不甲斐無くはないだろうし」
さいですか。
全然これっぽっちも心配していないようだった。
「葉流華、誘拐犯達は、僕に用があるって言っていたんですね」
「ええ、でも取引の場所などの指定は無し、家の情報網使って、調べさせているけど周辺に潜伏しているかどうかは疑わしいわね、陸路でどこかに言ったというのは判っているんだけど」
どうやら、襲撃はたいしたことが無かったが、逃走経路だけはしっかり確保していたらしい、というかこんなに全員強いなんて思わないわな普通。
警戒している数人はいたがほぼ全員が強いとは想定するのは無茶だろう、相手は殆どが只の高校生だったのだから、因みに一番情けないのは女子高生軍団にやられたフィアールカの部隊、次点はウエストにからかわれたヴィペール、戦果を挙げたのに(人質を得た)。
「潜伏場所の特定は?」
「捜査中、アルと玖里子の魔力は桁外れに高いから、探魔士(ここでは魔力を目印に対象物を探す特殊な魔法使い)に探させているが、時間がかかるな。今すぐには無理だろう」
と、結構探しているが時間がかかりそうだ、勿論和樹、あまり何も言わないがその実だんだん焦りがきつくなってきていて余裕がなくなってきていたりする。
元々余裕があったのかどうかもかなり妖しいのだが。
(アル、アルはどこだ、どこにいる、あの愛らしい僕(こちらも所有権を主張しております)のアルが、荒くれの男達の中に、何をされるか、何をされるか・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・くそっ、アルに指一本触れてみろ、生まれてきたことを後悔させ、生き地獄を味合わせてやる、まず蛭の風呂に漬け込んで、いやある特殊な趣味の方専用のところに売り飛ばして・・・・・・・・・・・・・・・)
だんだん危ない思考に入っていきつつあるようだ。
で、其処に介入してくるマッドな科学者いままで何をしていたのか、ウエストがいきなり。
「ヘーイ、そこな少年、それでは少年の愛しい姫君を救いに行こうではないか、助けを必要とは思ったり、思わなかったりするではあるが。そこはそれであって、ここは美姫を救いだすは、ナイトが役目であーる、それでは誘拐犯の所に行く出あるぞ」
と、さっきまで絶対に持っていなかったギターで不協和音という名の音を掻き鳴らしながらのたまうウエスト。
「場所がわかってないだろうが」
葉流華が至極最もな突っ込みを入れる、だから相談していたんだし。
「何言っているであるか、魔道書の居場所であれば我輩既に承知であるぞ?」
さも不思議と言った感じでのたまう、自称天才科学者、他称○○○○。
と、神速でウエストが掴み上げられたと思ったら、勿論和樹だが。
「どこだ、どこにいる、アルの居場所は、えっ、さっさと吐け、このあうあう言ってたらわからないだろうが、さっさと喋らないか!!(和樹が襟首を掴んで振りたくるから、首が絞まって喋れないウエスト)」
和樹君エキサイトしています、というかテンパッテいる。
「何だ、聞こえないぞ、何で顔を紫色にしている、パクパク口を動かしているだけじゃわからないじゃないか、何だ日本語を忘れたか(だから君のせいです)」
いい加減ウエストがいい感じに死に掛けるなか、なんとか(一応ウエストが死ぬのは防ごうと思ったりした葉流華、沙弓、かおり、ディステルが和樹を取り押さえた、ついでにエルザは見て笑っていたりした「博士、変な顔ロボよ」とか言って、何気に親不孝な娘である。只この程度で死ぬとは彼女は思っていないだけだったのかもしれないが)。
「うーーっ、本日二回目の三途の川を見てきたである、何気に臨死体験のギネスに乗れるのではないであるか我輩?」
安心しろ、多分ギネスに載る、三度目も今日中に体験できるだろうから。
風椿葉流華の手によって、今度は拳だけではないだろう彼女は先程の暴言を絶対に忘れていないだろうから。
「で、吐け、どこだ」
さっさと言えや、いてまうど、というようなことを目で語りながらウエストに迫る和樹、後に、あの時の少年の目は、葉流華の百倍怖かったのである、と語ったウエストであった。
「魔道書に、発信器が付いているのである、風椿玖里子が魔道書にとりつけた尻尾は、我輩が持っていた発信機「猫ネコ白猫尻尾発信機付き、迷子のお子さん発見ツール(ウエスト印)」であーる、ついでにこれは我輩が開発した便利ツールである、市販されているのでお買い求め願います(ペコリ)」
何気に自分の開発商品(日銭稼ぎだったらしい)の売込みをするウエスト、誰も聞いちゃいないが。
確かにアルは尻尾を付けていた、しかしウエストなんで持ち歩いている。
「何で今まで言わなかった」
底冷えのする声で問う、和樹。
「言ってなかったであるか?」
言ってない、こいつ後で折檻しちゃると、心に刻みながら、それでも時間が惜しいのか。
この時点で4度目の臨死体験が確約されたウエスト。
「で、場所は」
「付けたのは、Ver0.2であるので、エルザならどこにいるかわかるのである」
Ver0.2、電波式ではなく魔力式なのでエルザ(魔道ロボット)が感知できるらしい。
でも、何故ウエストはそんな機能をエルザに付けたんだろう、永遠の謎である。
ついでにウエストが語り終えるやいやな和樹は辺りを見渡し、いきなり駆け出してエルザを抱きかかえ、爆走していった、其の速度は刹那の如し。
「ダーリン、突然何するロボか、いきなりなんてエルザ恥ずかしいロボよ、やっぱりあんなペッタン古本娘より、この豊満なエルザがいいロボか?このままホテルにゴー?」
勘違いしたことをのたまって身をくねらしていたが、一秒後に。
「判ったロボ、ツルペタはあっちロボ」
和樹の殺す笑みという名の説得を受け、ちょっと真面目になったエルザ、後に、あんなふうに逝った笑みを浮かべるダーリンも、なかなかロボ、と語ったという。
ウエストと違って脅えない辺りどうやら製作者とは度胸のすわりが違うらしい。
ついでに和樹、エルザを抱えながら50km/hの速度で爆走していたという、人間じゃねえ。
追記、呆気に取られた残りのメンバーはなんとか車で、かおりはバイクで爆走する和樹を追ったそうな、葉流華が一応ヘリも呼んでいたが。
でも、かおりは飛べないのだろうか一応吸血鬼なんだし。
再びアル達、乗っていたトラックが止まったと思うと、コンテナごと移され、やはりまだ移動を続けていた、ついでにフィアールカは現世回帰を果たしてどこかに行っていた。
「暇じゃのう、玖里子」
「そうね」
完全にだれていた、というかお前たち人質の自覚ある?
ないだろうなぁ、きっと。
「ここはどこじゃろ?」
「さぁ、トラックの後にどこかに移されたってのは判るんだけど」
と、周囲にいる見張りを無視して、というか見張りも特に何も言わないのでこのように二人でだべっていることしかやることが無かった。
緊張感はかなり下がり気味のようだった。
「暇じゃ」
「そうね」
暇すぎてルーチンワークのように呟くだけになっていた。
その頃和樹君。
いい加減エルザを離して、と言ってもエルザは和樹に並んで並走していたが、ついでに速度は68km/h何気にスピードアップしていた、和樹君とことん人外の速度で走っていた。
(ついでに計算して、人間が100m10秒で、つまりオリンピック選手並で走ったとして36km/h、マラソン選手が20km/hくらいである)
エルザは元々人間ではないからこの程度の速度で走るのはなんてことはない。
「ダーリン、ツルペタは、この沖の船の中ロボ、ちょっと走っていくのは無理ロボよ
後から来てる、葉流華を待って、船か何かで行くロボ」
と常識的な提案をしていた、エルザが常識的に見える和樹が異常なのか、常識を語るエルザを異常と言うべきかは微妙なところの会話だが。
それでも和樹君、一刻も早く、今現在何をされているか判らない、というか彼の脳内ではかなり危険信号が鳴り響いていた、実際は結構安全なのだが今のとこ。
「ぬぅ、仕方ない、行くぞエルザ」
と言って、海への転落防止の柵を跳躍して飛び越えそのまま海面を走っていた。
しゃれ抜きで人間ではない。
「ダーリン、人間じゃないロボか?」
と、微妙に、自称妻が呆れていた、その後エルザは葉流華と合流してヘリで追跡したのだが、結局追いつき途中で和樹を拾っていった、ついでにそのとき海面を爆走している和樹を見て流石に全員あきれ果てていた。
そして疑った、自分の恋人は本当に人間なのだろうか、今まで其の溢れる精力に微妙に人間かどうかは疑われていたらしいが。
で、和樹を拾ったヘリ内。
既にアル達がいると思われる船、中型の輸送船を補足、突入を図っていた。
図るも何も、上空に来た途端、和樹がやっぱりエルザを引っ掴んで強制的にダイビングを敢行していたが、因みにエルザは微妙に悲鳴を上げていたが彼女はこの程度の高さから落ちても問題ないためどうでもいい。
更に追記。
直ぐに、どちらかというと、誘拐犯の生命の危機を案じて、沙弓、かおり、葉流華、ディステル、凛がやっぱりダイビングを敢行していた、だから君たちも人間ですか?
ウエストは葉流華に強制的にダイビングを敢行され、三度目の臨死体験をお仕置きを受ける前に達成していた。
ウエスト戦闘シーンに出番無し、飛行するヘリからの落下は中々にリカバーに時間が掛かるようだ、一応は霊長類人間に分類される生物?なのだから。
輸送船内甲板上、ある意味地獄の光景があった。
其処は正に地獄、乗員たちにとっては煉獄の地。
既にヘリの接近は、気付いていた誘拐犯たちが勿論迎撃に来ていたんだが、彼等が相手をしなければならなかったのは地獄の悪鬼なのだから。
破壊に特化した、正真正銘の兵器と素手で戦える化物たち、真っ先に飛び降りた二人、かなりやばかった、和樹はアルが攫われて、情緒不安定になって力加減だとか、容赦とか言う言葉が完全にどこかに置いてきている、しかも銃弾をこともなげにかわしていたりするし、エルザ、こっちはさすがウエスト謹製である、ロボット三原則など端からブッチして、ここぞとばかりに大暴れしていた。
この二人容赦も欠片も無い精神しか現在保有していなかったのだから、これは葉流華達が船に乗り込む1分間に起きた惨劇(?)である。
エルザはいきなり術式魔砲「Dig me no grave(我、埋葬にあたわず)」を振り回し、破壊の雨を振りたくる、威力自体が対戦車砲を上回る携帯用重火器、的など必要ないとばかりに目に付くものを破壊していく。
「ロボ、ロボー」
とても楽しそうだったと追記しておく、さすが○○○○の娘。
でも術式魔砲で吹き飛ばされたほうは幸せである、和樹にやられたほうはというと、全員無手でやられていた、というか何も持っていなかっただけだが、生きているのが世界の不思議という状態にされていた、いっそのこと殺せと言いたいくらいに。
完全に切れている和樹は普段封印している体術を使いまくっていたのだから。
踏み込みつつ右腕凄まじい速度で低姿勢の踏み込みから放つ、九頭 右竜翔扇。
雑魚が天高く跳ね上げられそのまま床に叩きつけられる、勿論戦闘不能だった、死亡していないのが奇跡なのだから、もしかしたら殺す気なのかもしれないが。
他にも以前夕菜の水流を電気分解の域にまで散らした、九頭 左竜雷掌、体内で活性化させた気を電流に変換させた雷撃打をくらって死の一歩手前で感電しているもの、そして九頭 右竜徹陣で周囲のコンテナを吹き飛ばしそれを雑魚たちに叩きつける、正に化物の戦闘方法あまりの技術、威力に和樹自らが封印した蝦夷の古武道、使い手は地上最強の陸戦生物、否最強の陸戦兵器と成り果てる格闘術、九頭竜。
その猛威を嵐の如く、蝦夷の龍は咆哮を挙げ、其の牙を剥いた、九つの頭を持つ龍が。
ついでに、さっき海面を爆走していたのは、九頭 蓮華歩舟、本来水の上に立ち、歩くくらいだが、何気に限界超えて走っていたりした、後で試すと出来なかったらしい走るのは。
この状態が和樹の対人間最強状態、アルとのマギウスモードとなるとこれはもう最強の戦術兵器と化す、何せ一人で魔法旅団(通常の旅団は約3000人、二個連隊、もしくは六個大隊に相当)に匹敵するといわれる戦術級召喚獣、べヒーモスとタイマン張れる、三千世界をひっくるめた猛者と化すのがマギウスモードの和樹。
それが、微妙な理性が残っている程度で暴れているのだからたまったもんじゃない。
葉流華達が乗船する100秒に満たない時間の間にほぼ全滅、船は半壊していた、沈没まで時間の問題という状況だったりする、動ける人間もチラホラしか視界に入らない、それも殆ど何とか動けるといったレベルだし、それだってエルザの砲撃の余波を受けていた奴だけ。
「はぁ、暴れてるわね」
沙弓が呟いている、ついでに彼女も九頭竜使い、和樹ほどではないが、化物、陸戦生物としては上位に入る戦闘能力を保有している。
「そうだな」
こちらも平然とした表情で語る葉流華、彼女達は和樹の行為を当然の如く受け入れていたが、凛、かおり、ディステルの三人は完全に呆れきっている。
そりゃそうだろ、生きた兵器などなかなかお目にかかれない。
どうやら彼女たちは知らなかったらしい、ここまでとは、和樹が力を秘めているのは知っていただろうが陸戦兵器と呼べるようなレベルの力を保有しているとは夢にも思っていなかっただろう。
「杜崎先輩、その式森先輩のあれは、その以前駿司との時はアレほどでは」
まぁ、凛としては気になるところかもしれない、手を抜かれていたとしたら、やっぱり気分は良くない。
「ああ、あのときね、何も手を抜いていたんじゃないのよ、和樹も今使っている武術、九頭竜を使わない時はあれぐらいがせいぜいよ。格闘技っていうよりあれは呼吸法なんかで身体強化を図っているから、使わない時は数分の一しか力を発揮できないというか、こっちが反則なのよ、さっき見たでしょうとんでもない速度で走っていたし。あんなの人間が走れる速度なんて平気で超えているわ。それに和樹は手加減が下手だから勢い余って貴女のお兄さんを殺したく無かったんでしょうね、幾ら人狼でも九頭竜ならば一撃で死にかねない、だから封印しているんだけど。今は切れているからそんなこと頭にないでしょうけど、それに死んでも問題ないし」
確かにテロリストで誘拐犯ならば其の扱いはデッドorアライブで問題ないだろうが。
「九頭竜とは何だ」
これはディステル。
「早く言えば気功ね、呼吸法や独自の鍛法により気と呼ばれる力により異常な身体能力を発揮する、生まれ出でた理由は当時の社会でしょうね。いつ出来たかは不明だけど、聞いた話じゃ、今は私たちも使えるけど、当時は魔法は宗教関係者や、貴族つまり特権階級だけのものだったしそれ以外でも魔法を使う人間の存在は強大だった、よくある話だけどそんな奴らの中から暴虐を働くものが多かったそうよ。まぁ、よく聞く話でしょうが生まれた土地、蝦夷地何だけど。対抗するために生まれたのが九頭竜。魔法を持たないものが、それこそ上級の魔術師、当時は仙人とか呼ばれていた存在を打ち倒すために生まれたのが九頭竜、つまり対魔法・気功戦闘術とか対仙術仙術とか呼ばれているのよ、当時の人間には九頭竜自体魔法と変わらない技術だったでしょうし。それが進化を続けていまや使い手は最強の陸戦生物なんて言われているのよね」
と会話しているうちにほぼ全滅が、全滅に変わっていた。
止めに来たんじゃないのか、お前等。
「無理よ」
で、ちょっと前のアル。
「ぬぅ、何じゃ」
コンテナの中なので聞き取りづらいがヘリの音がして周囲が慌しくなったので、暇でゴロゴロしていたアルがやっと覚醒した。
「ヘリの音みたいね」
同様に覚醒した玖里子、アルよりはかなり前に気付いていたので緊張度では彼女のほうが上だったのだろう、アルのほうがふてぶてしさと図太さに於いてはかなり上なのだが、戦いを生とする外道の精霊としては少し情けないが。
「ふん、和樹がきおったか、少し遅いぞ」
「そう、嬉しそうじゃない、アルちゃん、ナイト様が来てくれたわよ」
「当然ではないか、和樹は妾の伴侶ぞ」
でもその表情は満面の笑みを湛え、顔は真っ赤、嬉しそうに体をくねらせていた、アルくらいの女の子がやると可愛らしい、というか微笑ましい。
でも最後まで足掻くというか、見苦しいのはいるもんで、転がり込んで入り込んできたのはフィアールカ、其の表情は恐怖が張り付いていた、理解し難い化物に出会った恐怖に。
フィアールカはその和樹のバイオレンスの暴風を見て呆気に取られ腰を抜かしてほうほうの体で、アルのいるコンテナに逃げ込んでいた、命乞いをすれば、プライドも何もかもかなぐり捨てて許しを請うと所詮学生、レイプされることは(彼女の認識では和樹は変態)あるかもしれないが、逆を言えば、体を差し出せば命は助かるかもと思って一縷の望みを託して逃げ込んでいた。
因みに彼女は既に皆殺しにあっていると思っている、当たり前か?
あの暴力で現在においても死者ゼロは奇跡以外の何者でもないだろう、何せ人間が枯葉か何かのように吹っ飛んでいくのだ、あれほどの暴力を前に楯突く度胸などまともな神経をしていたら思わない。
そして人質が囚われているこの場所が許しを請う最後のチャンスだと判断したのだろう。
彼女の判断は正しく、正鵠を射た行動だったが、誰もが彼女のような行動をとるとは限らないといったことだろうか。
諦めの悪いのは人間が生きていくうえで長所といってもいいかもしれないだろうが、その際の判断で最悪を選ぶ連中の存在にフィアールカが顔を青褪めさせた。
そう、ヴィペールだった、数人を引き連れコンテナに入ってきたと思ったら、アル達を淹れていた檻の鍵を開け、其処から出した、勿論許しを請うような表情ではない。
彼女には何を企んでいるか一目で判っただろう、その逝った表情から目的は明白で、其の目的は凶行以外の何者でもなかった。
彼女からしてみれば目の前で自分の死刑執行の書類にサインされているのを見るようなものだ、人質を取ったくらいであの暴力の具現に逆らう気など彼女には残っていなかったのだから、どう考えれば蟻がライオンに勝てると幻想を抱けと言うのだろう。
だが、彼女が混乱に陥る中アルや玖里子は抵抗しているが封魔結界の中では本来の力が奮えない、取り押さえられ、拘束されていた。
人は単純な暴力に最も屈服する、それが原理であり本能であり、摂理だから。
金や権力に逆らえても、目の前にある単純な力の存在に、理解を超える暴力に逆らうのは生物として拒否するのだ、自然界の生物はそういう対象に出会ったらまず逃げる、戦うなどもう考えられない、一歩でも半歩でも、それから離れたい、近くに居たくない、見られたくないという生存本能が働く、それは狼であれ、ライオンであれ変わらない、フィアールカもそういう状態に陥っていた。
それは正しい、生物としてあまりに本能に忠実な反応。
愚かなのは目の前の男たち、ここに来る余裕があるのなら海に飛び込めばいいのだ、命乞いが出来ないならば生き残る確率は上がる、上の命令だとか無視して粛清されるかもしれないが生き残る確立は万倍も高いだろう、あの暴力の具現に比べれば、忠義で尽くしているわけではないのだから。
命を懸けてまで任務を遂行する義務も義理も無いだろう、命と天秤にかければどちらに傾くか明白すぎる、
だから彼女は自分の命を繋ぐことを最優先に考え、命をつなぐ行動に移した、それは暴挙に近い行動だったろうが、考えが整理された打算のある行動ではなかっただろうが、彼女は本能的懐にあった銃を抜きヴィペールに向けて撃った。
目の前に居る男たちより、先ほど見た暴力の具現のほうが何倍も恐ろしかったから。
何度も何度も引き金を引き自分の命を散らそうとする愚か者に牙剥いた。
撃たれたのはヴィペールではなく同じように逝った表情の男たち数人だったが、ヴィペールは怒り狂ったのは間違いないだろう、それこそ眼光で殺さんばかりの目つきでフィアールカを睨み付け、どこか壊れた口調でフィアールカに狂気を向けた。
「何のつもりだフィアールカ、裏切る気か」
既に弾はないにもかかわらず震えた銃口をいまだヴィペールに向けたフィアールカ、しかし既にあまりの恐怖に意味のあることを喋れそうに無かった。
怖かったのだ目の前に居る男も、式森和樹も、何もかにもが。
だが、返答が来ないことに苛立ちを増さしたヴィペールはあっさりとフィアールカに銃を向けた、なんとも軽い引き金だろう。
「チッ、このイワンが」
ダンッ、ダンッ
ヴィペールの放った二発の銃弾がフィアールカの脚を貫く、どうやら裏切った彼女をいたぶって殺すつもりらしい、殺すつもりならば頭や胸を狙うだろう。
足を撃ったという事は簡単に殺すつもりは無いと言う意思の現われ。
「やめんか!!!!その小娘はもう何も出来ん!!!いたぶる必要などあるまい」
アルが激昂する、自分達を守ろうとした行動が彼女の気を引いたのか、本来誰かをいたぶられるのを良しとしない性格ゆえか、だが、それがヴィペールの関心をひいてしまう。
ヴィペールはその既に精神に異常をきたしているであろう表情をアルと玖里子に向け。
「黙っていろ、手前らさえいりゃあのガキは手を出せねえんだ、小娘、手前等に手をださねえとでも思っているのか?」
そう言って更に二発、フィアールカの太腿を貫く、完全に壊れている。
続いて膝を打ち抜き、足の甲を打ち抜く、フィアールカは既に両足を完全に打ち抜かれ立ち上がることも出来そうにない、完全に恐怖に満たされた瞳はもう壊れかけていた。
暴力は心までを犯す、認識した暴力と自分に振るわれる暴力、アルはそんな彼女を見。
「ならば、妾をいたぶるがよい、そこな小娘にはもうやめろ!!!」
修羅に匹敵しそうなアルの眼光に多少気圧されたのか、ヴィペールがたじろぐが、更に怒りを買ったのだろう、自分が小さな小娘に対して怯んだなど認められない。
狂気を孕んだ目でアルを睨み付け、そして幾許かして厭らしく表情を歪ませる。
「おい、お前ら、その娘とフィアールカを犯せ」
ヴィペールは、自らがアルを拘束し、玖里子とフィアールカに残っていた男たちを差し向ける、笑みを浮かべ恐怖にヴィペールに従うを良しとした男達が襲い掛かる。
完全に外道、既に最初の命令、式森和樹の丁重な連行や、自分の生き残る道を完全に潰している、マトモな思考が残っていないのか。
玖里子が床に押し倒され、服に手が掛かり破かれ乳房が露になる、フィアールカは壊れた瞳で自分に襲い掛かってくる男達を見、服を裂かれる。
玖里子は狂わんばかりに悲鳴を上げるが屈強な男数人で取り押さえられ抵抗は意味を成さない、アルも狂わんばかりの怒号を吐き暴れるが取り押さえられ何も出来ない。
強引に呪を紡げば魔法を使えないことは無いが状況が悪すぎる、先ずアルに其の言葉を紡ぐ冷静さを失っている。
それをニタニタと笑いながら見つめるヴィペール。
だがよ、そんな外道な楽しみに耽る状況ではなかったろう、冷静に考えれば自分達が今のこの状況はどれだけ危険なところにいて、どれだけ無為な行動をしているかがわかっただろう。
暴力の化身が何時現れるかわからないところで加虐の趣味を満喫するくらいならばね。
もうゲームオーバーだ。
玖里子が全裸にされそうな時コンテナの前半分が吹き飛び光がさす、和樹の右竜徹陣により頑丈な金属で作られたコンテナが抉られたように。
全く呆れる限りの破壊力、全く呆れる限りの暴力。
コンテナを破壊し見た先に居たのが半裸の玖里子、取り押さえられたアル、生死を彷徨っているフィアールカに襲い掛かる男たち、和樹が平静で居られる状態か。
既に容赦などの言葉の意味を忘れかけている和樹に冷静さを取り戻させることが出来るか。
否、否だ。
ほんの僅かに残った温情や良心などなくなり先ほどを上回る怒り、怒れる竜がその牙を完全に剥いた。
そして更に玖里子の様子にもう一人の羅刹の琴線にも触れた、竜に匹敵する羅刹の怒りにも触れた。
風椿葉流華、ある意味和樹以上の存在の逆鱗にも触れたのだ。
後に語るかおりとディステルは語る、あの時の葉流華は和樹よりも怖かったと。
鬼気とでも呼ぶべき殺気を叩きつけられ、玖里子を襲っていた男達は完全に硬直している、当たり前、今の和樹と葉流華の前に立つ行為は目の前に核ミサイルを突きつけられているのに等しい、戦力差は考えたくもない程に離れている。
生物の本能から目など離せるものか、本当に怖いものから目を逸らすことなどできはしない、優秀な生物なら逃げを既に打っていただろう、怖い者の眼前に立たされる前に振り返る事無く逃げを打つ、生き残るのに相応しい生物ならばこの場にはいない、この場にいるのは生物としての劣等のみ。
そんな生物として最低に位置する愚者が、生物として最上位に位置する幻想生物、竜の具現たる陸戦兵器に購う術等持ちうるものかよ。
和樹がゆっくりと近づくがそれでも動けない。
唯一動けたのは和樹が既に数メートルまで近づいたヴィペール、アルの側頭部に拳銃を突きつけていた、だが其の震えた声では脅迫としては些か貧弱に過ぎる。
「小僧、退け、この小娘が大事なんだろうが、退け、さもないと殺すぞ、えっ、くるなっ、近づくんじゃねえ、寄るんじゃねえ」
半狂乱になって、アルを抱えたまま後退する。
和樹は歩みを止めるが、和樹の歩みを止めたからといって状況が変わるような状態か、震え、脅え、恐怖に支配され、捕食される草食動物のような目しか出来ないお前に。
抵抗など出来るのか、出来るのは後ろに下がるだけだろう、それもすぐにコンテナの壁につき、それでも脅えた目でアルを離そうとはしなかった。
ヴィペールにとっては目の前にいる化物から命をつないでいるのがアルだろうからそう易々と彼女を話はしないだろうが。
其の状況が長く続くと思うのは幻想にすぎるだろう。
「そうだ、近づくんじゃねえ、このガキが惜しいんだったらな、おい、お前ら。その娘連れて・・・・・・・・・・ギャァァァァァッ」
コンテナに張り付いたヴィペールの拳銃を持った右腕から白銀の刃、日本刀が生えていた、
其の刀は淡い光を放って金属製のコンテナを貫通し、刃が動き腕を切断する。
刀は凛の日本刀、淡く光っているのは剣鎧護法、コンテナの後ろから正確に刀を突き立てたのだろう、どちらも強大な魔術士である凛と沙弓が結界下でもなんとか近距離の念話で位置を教えコンテナの壁越しに攻撃を加えた。
ヴィペールは狂ったように叫び声を上げ、腕が切断されたため拘束の緩まったアルは和樹の元に駆ける。
完全に形勢は逆転していた、いや最初からヴィペールが上位には居なかったから形勢の逆転は言葉がおかしい、なるべきようにシナリオが進んだだけのこと。
其のときには沙弓と葉流華によって玖里子を押し倒していた連中を一撃で吹き飛ばし玖里子に葉流華の着ていたジャケットを掛ける。
ディステルとかおりによってフィアールカに襲い掛かっていた愚か者を銃で無力化し、ディステルのコートを掛けてやる、女性として敵とはいえ襲われているところを見過ごすことは出来なかったようだ。
それでも諦めの悪いというかなんというか、地面に転がった拳銃を左手で掴むと何を考えたのか近くにいたフィアールカに銃口を向け発砲しようとする、完全に錯乱している。
まぁ、腕を切断された時点で助からないと考えたのか自分を裏切った女の息の根でも最後に止めておきたかったのかもしれないが。
只この時和樹は反射的にフィアールカを庇う様に射線に身を割り込ませ、その銃弾を自分の身で受けた。
咄嗟に割り込ませたので背中で受け、致命傷でこそないだろうが重傷ではある。
和樹の実力、本来の九頭竜ならば弾丸を見切り手ではじくことも出来ただろうが本当に反射的行動だったのだろう、其の身で弾丸からフィアールカを守った。
フィアールカは驚愕したように和樹を見つめ、ヴィペールは勝ち誇ったようにその銃口を和樹に向ける、しかしそれはいつの間にか接近していた葉流華によって阻まれる。
一発を当てただけでも彼にしては行幸だっただろうが、彼にヴィペールに赦されていた抵抗はそれが最後だった。
彼女が連射した銃弾をその手で打ち落とし、全てをはじき終わった後朗々と呟くように、それでいて響き渡るように言葉を綴る。。
「小便は済ませた?
神様にお祈りは?
部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」
ゆっくりと、ゆっくりと詩でも語る口調で宣告する。
言葉が終わった瞬間、ヴィペールの視界から葉流華が消え、突然目の前に現れる、それでも殴りつけようと、残った左腕を振るうが。
其の腕を起点に葉流華の技が繰り出される、カウンターの性質を持った攻撃。
次の瞬間にはヴィペールは地面に転がっていた、背骨を破壊されたのか下半身と上半身が完全に違う方向をむけて。
九頭 左竜輪剄、完全な流し技、自分の発したパンチの運動エネルギーを全て相手に返し更に自分の運動エネルギーを上乗せして自滅させる、九頭竜の一手。
「私が和樹と沙弓に九頭竜を教えたのよ、玖里子をいたぶったことを永劫に悔いなさい」
アルは打たれた和樹に駆け寄って。
「汝、しっかりせんか、このうつけが、汝なら手で弾く事も出来たであろうに」
よっぽど動揺したのか、涙で顔をくしゃくしゃにしながら寄り添っている、普段のふてぶてしさなど欠片も無い撃たれた箇所を自分の白い服が血に染まるのも厭わずに止血に掛かり、回復の魔術を施そうとする。
「どうして・・・・・・・・・・・・・・・助けた・・・の、私は・・・・・・・敵なのに」
フィアールカが失血のためかかすれた声で和樹に問う。
「とっさに動いてたよ」
和樹には十分過ぎる言葉だろう、やはり女には心底甘いのだからこの男は。
「こういううつけじゃ、理由などなかろう」
アルが少し怒ったように言う、まぁもし助けられて見捨てていたら烈火のごとく怒るのだろうが、それに自分達を守ろうと抵抗した恩義もある相手だ。
アルもフィアールカに微笑を掛ける。
「そう」
そう言って、フィアールカは意識を失った、ただ其の時和樹への恐怖感は薄れていたようだったが、和樹がそれを見て動揺するが。
「安心せい、気を失っただけじゃ。汝も休めここまでやったのじゃ、汝もきつかろう」
慈しむ様にアルが和樹の頬を撫で和樹も意識を手放した、限界以上に九頭竜を使った為、和樹も疲労の極みだったようだ、九頭竜は使用者の肉体に極端な負担を掛ける。
まだ成長期の段階である和樹が本来行使できる技ではないのだ。
その後、和樹の体は旋回し上空に待機していたヘリに運ばれ、フィアールカも共に運ばれた。
ヘリの中で待っていた女子陣の中から回復魔法に長けたもの、沙弓、涼、未空の手によって二人とも一応の応急処置を受け。
また輸送船は、テロリストとして海上保安庁にディステルが連絡し、沈没するか、彼らが先に来るか半死半生の身で生死のギャンブルをすることになった。
結果は秘密。
フィアールカも金で雇われただけとうそを言っているそぶりも無く自白し、依頼した組織がワイズメングループということ以外は判らなかった。
で、後日。
「何であんたがいんの」
かおりがさも不機嫌ですという感じに目の前にいる金髪の女性ディステルに語りかける。
「私もここにいろって、今回のは得体が知れないし、お前一人では不安なんだろう。当然の判断だと思うが」
ディステルは当然といった感じに切り返す、只かおりが求めている返答とは些か離れているのだが。
「私が言ってんのは、何でお前が私のマンションに住むんだということ」
「ああ、私がこのマンションがいいと希望したからだ」
「他の部屋に行け」
「ない、この部屋以外空いている部屋が無かった」
「大体なんでこの部屋なんだ」
「ふん、お前だけ和樹の隣においておけるかこの色魔が。吸血鬼を廃業して吸精魔に転職しろ。其方の方がお前にはお似合いだ」
この後かおりは懐からCz75を抜き放ち、ディステルは銀の弾丸が装弾されたベレッタを構え。
「「ふふふふふふふふふふふふっ」」
互いに妖しげに笑い。
「この近親相姦願望女、姉と呼ばしてるくせに手を出すな(かおりと和樹は血のつながりは限りなく薄い)」
「何だ、知っているぞ和樹の写真を抱いて眠る少女趣味女が、今幾つだ言ってみろ」
「お前は何歳だ、この婆が」
「私は永遠の23だ、この27の年増が」
互いの恥部を罵り合い、無意味な闘争に発展していく馬鹿二人だった。
一方。
「痛いってば、アル」
流石に撃たれたので、病院に入院中の和樹、見舞いにはアルが常時ベッタリと付き纏っていたが妙に不機嫌だった。
不機嫌の根源があるにはあるが取り除くことが些か難しいのでなおさらアルの不機嫌を増進させている悪循環。
「もう一度聞くぞ、汝、昨日の夜、何もいたさなかったであろうな」
「こんな体で出来ないって」
ついでに和樹、銃創以外にも無理に体を酷使したので全身筋肉痛に見舞われていた。
「汝は他に類を見ん色情狂の浮気性の節操無しじゃから信用ならん、這ってでもことにいたそうとするやもしれん」
不機嫌の理由は。
「アル、大丈夫だったぞ昨日は筋肉痛に呻いて五月蝿いくらいだった」
久し振りに九頭竜を使った為か、同じく筋肉痛で入院と相成った、風椿葉流華。
「そうよ、それに私は泊り込んだけど何もしてこなかったわ」
妙に、先の一件より和樹にアピールしだしたような気がする玖里子。
「和樹は紳士よ、私達に負担をかけることはしないわ」
何故かいるフィアールカこと菫淳子。
どうも助けられてから和樹を白馬の王子様扱いしている、惚れたらしい、何気にピュアな元テロリスト。
この三人がアルのストレスの原因になっていた。
ついでに一緒の病室なのは、まぁ銃創なんか普通の病院で見てもらうと、警察に連絡が行くので、風椿系列の病院に入院、面倒だし、この面子で他の患者と同室というのも問題ということで、同じ病室に押し込まれていた。
因みに部屋は完全防音で他の患者さんに迷惑を掛けない特別なつくりになっている、というかこんな色に染まった討論など他の人間に聞かせられるか。
病院側が実情を知ったら向こう側からないて頼まれるだろう、隔離されてくれと。
というわけで、和樹が筋肉痛がマシになり歩けるようになると、アルは強引に和樹を連れて帰りましたとさ。
後書き
第五話はエロがきつ過ぎた気もしますがその辺は軽くスルーするとしまして。この六話は後半はシリアス前半は主にキチガ○が徹底的に不幸なコメディアンになっている気がしますが、このキチガ○は別のssで幸福を勝ち取っているので良しとしましょう。
和樹君飛びぬけて強いのが目立っていましたが、実際の実力は登場キャラの中でランキングすると(生身という条件はつきますが)。
七話で登場する御方>伊庭かおり(最強のノスフェらトゥ真祖の吸血鬼は伊達ではない)>風椿葉流華>和樹=沙弓(魔法が使えるので少し優勢かも)>神城駿司>エルザ凛>ディステル>神城>精霊>B組女子>風椿玖理子
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