魔・武・仙の物語【第六章】


 

 

「リュー君、おっきろ〜!」

 ガバッ!!

「ん〜・・・」

 午前4:45・・・リュークは布団を思いっ切り取り上げられ目を擦った。彼はロフトに布団を敷いて寝ており、その横ではエルが包まっている。

「ほい、リュー君、朝ご飯」

「むぐ・・・」

 亜子に口にパンを無理やり入れられ、モグモグと食べながら既に制服に着替えてリュックを持っていた。

「ほら、パパッと着替えて! 早く行こ!」

 ロフトから勝手にスーツを持って来るまき絵に言われ、着替えるとリュークはようやく意識がハッキリしてきた。

「早く行こうって・・・始発で?」

 今日は修学旅行。教員は早目に大宮駅に集合なのだが、生徒は9:00に集合なので、まだまだ余裕がある。

「えへへ〜! 私も亜子も待ち切れなくて目が覚めちゃったんだ!」

「ふ〜ん・・・じゃ、行こうか」

「「お〜!」」

 まだ眠っているエルを鞄に入れ、リューク達は部屋から出た。

 

「おや、リューク先生じゃないですか」

「おはようございます、新田先生、瀬流彦先生、源先生」

 大宮駅に行く電車の中でリュークは新田と瀬流彦、しずなにバッタリと出会った。

「早いですな」

「ええ。まだ少し眠いです」

 リュークは苦笑いを浮かべながら目を擦ると三人の教師は笑った。

「あ〜! リュー君だ〜!」

「まき絵〜! 亜子〜!」

 すると前の方から、明石 裕奈、早乙女 ハルナが手を振ってきた。更には長瀬 楓、古 菲(クーフェイ)、宮崎 のどか、大河内アキラ、綾瀬 夕映の姿がある。

 彼女達もまき絵、亜子同様、待ち切れなかった組だろう。

「うふふ・・・3−Aは朝から元気ね」

 苦笑するしずなにリュークは頬を掻く。キャイキャイと朝からは騒がしい面子だが、リュークの方を向くと手を振ってきた。

「リュー君もこっちでお話しよ〜!」

「いや、僕は・・・」

「あらあら? リューク君、私達より彼女達とお話しする方が楽しいわよ〜」

「はぁ・・・」

 しずなに「ね?」と言われ、リュークは彼女達の所に行く。

「よっと」

「うわ!?」

 すると、いきなり楓に後ろから掴まれ彼女の膝の上にポスンと座らされた。

「な、長瀬さん?」

「ん〜、こっちの方が話し易いでござるよ、リュー坊」

「(リュー坊・・・)」

 結構、独特な喋り方をする楓に、これまた初めての呼び方に戸惑う。

「さて・・・」

 キラーンとハルナは目を輝かせ、メガネをクイッと押し上げた。

「第一回! リュー君大大大質問大会〜!」

「何だそりゃ?」

 『いぇ〜い!』と盛り上がる一同を他所にリュークは首を傾げる。

「え〜、まず最初のお便りは、ショタコンのA・Yさんからです。『リューク先生、ネギ先生の昔の写真などがあれば、焼き増しして譲って頂けませんか? 二人で写ってるものなら尚ベター』。微妙に誰だか分かり危ない質問・・・というか願望ですね」

 ビシッとハルナは手をマイクを持つような手にして尋ねて来る。リュークは眉を顰めながら答えた。

「一応、写真ぐらいならあるが・・・」

 そう言って定期を取り出すと全員が一斉に群がって来た。写真には、撮られるのが嫌そうな幼いリュークの肩を組んでピースする幼いネギが写っていた。

「うわ〜! 可愛い〜!」

「リュー君、これ頂戴!」

「やだ」

 裕奈のお願いを一刀両断するリュークは写真を戻した。え〜、と残念がる彼女を他所に、ハルナは次の質問をした。

「じゃあ次のお便りは〜、K・Kさんからの質問だよ〜。『リュー君は好きな人とかおるん〜?』だって」

「す、好きな人?」

 その質問にリュークは顔を真っ赤にした。

「駄目だよ、リュー君ってその手の話、全く無理なんだから」

「恋愛の『れ』の字もアカンからな〜」

 同じ部屋に住んでるまき絵と亜子が言うと、裕奈やハルナが『可愛い〜』とか言って抱き締めて来た。

「あ・・・うう・・・」
 すると、ただでさえ中学生離れしてる楓の胸が背中に当たっていたのに加え、抱きしめられたリュークは顔を真っ赤にしてシュ〜と煙を出すとガクッと首を垂らして気絶した。

「む? リュー坊、大丈夫でござるか?」

 楓がリュークの肩を掴んで揺するが、クルクルと目を回している。

「リュー君ってとことん、女の子に免疫ないな〜」

「この前、リュー君が風呂入ってる時にまき絵が入ったら寝込んでも〜たからな〜」

「折角、背中流しっこしようと思ったのにな〜」

 頭にタオル乗っけて寝込むリュークの姿がリアルに想像でき、皆は表情を引き攣らせた。

 結局、リュークは大宮駅まで気絶し、楓に膝枕されていたが、気が付いたら付いたで彼女の胸に当たってしまい、再び顔を真っ赤にして気絶寸前になりかけてしまうのだった。

 

「リュー君、随分と疲れてるね・・・」

「五月蝿い・・・」

 京都行きの新幹線の中、リュークはグデ〜と席にもたれていた。ネギは苦笑し、他の席を見に行った。

【リューク様、電車の中で何があったんです?】

 リュークの膝の上で丸まっているエルが尋ねると、「言いたくない」とゲンナリして答えた。

「き、きゃー!!」

「【!!?】」

 その時、突然、悲鳴が沸き上がった。リュークは席を立つと、何故かカエルが大量に発生していた。

「んな!?」

【リューク様、これは・・・幻術ですわ!】

 どうやら早くも関西呪術協会の邪魔が入ったようでリュークは舌打ちした。見ると生徒達の弁当箱やら水筒やらお菓子の箱からカエルが飛び出している・・・ような幻を見せられているのだ。

【リューク様!】

「やれやれ・・・」

 何ちゅう程度の低い幻術だと思い、リュークは目を閉じた。

「解き放て」

 一言発すると新幹線内に強烈な風が巻き起こった。するとカエルが尽く消え去って行く。

「あ、あれ? カエルが・・・」

 生徒達は突然、いなくなったカエルに呆然となる。

「!!? 上か・・・」

 リュークは、ハッと目を見開くと駆け出した。

 


 時速三百キロで走る新幹線の上にリュークは器用に立つ。エルはピョンと彼の肩から飛び降りると尋ねた。

【リューク様?】

「・・・・・・そこかっ!」

 リュークは後ろを振り返って手を広げた。

「燃えろ!」

 すると小さな火の玉が放たれるが、その火の玉はズバッと切り裂かれた。

「うわちゃ〜・・・気付くなんてボン強いな〜」

 ブゥンと空気がダブり、一人の青年が現れた。黒髪を束ね、眼鏡の奥にキツネのように細い目をした青年は、フゥ〜と煙草を吹いた。

 青年は白衣を着ていて学者っぽく見えるが、それには到底不釣合いの長刀を持っていた。

「関西呪術協会か・・・」

「ま、そこに雇われたフリーターっちゅうトコやな」

 カカカと笑いながら青年は煙草を指に挟み、リュークを指した。

「ボン、悪いこと言わん。素直に渡されたブツ寄越しぃ」

「嫌だ・・・と言ったら」

 リュークが挑発するように言うと、青年はニヤッと笑い刀に手を添えた。

 ひゅんっ!!

 すると青年の姿が消えた。

「(速・・・)!?」

 リュークの目に青年のスピードが追いつかず、次の瞬間には青年は彼の目の前に来ていた。

「氷よ!」

 ガキィンッ!!

 すかさずリュークはマテリアルソードを取り出し、氷の刃を作って相手の振り下ろして来た長刀を受け止めた。

「ほ〜・・・西洋魔術師が剣使うんか?」

【リューク様!】

「下がってろエル!」

 エルに向かって言うと、リュークは片手を広げた。

「弾けろ!」

 パァンッ!!

 その手を青年の腹部に叩き込むと、空気が弾け飛び吹っ飛ばされる。

「ぬぅっ!」

「氷の精霊よ 汝を護りしは氷結の銀狼 汝が敵を喰らい尽くせ!!」

 青年が怯んだ隙にリュークは幾つもの氷の狼を放った。氷の狼は青年に向かって突っ込んで行く。だが、青年は笑みを浮かべると刀を振り上げた。

「斬岩剣!!!」

 ズバァッ!!

 すると氷の狼は全て切り裂かれ、粉々に砕け散った。青年は驚くリュークを見て勝ち誇った笑みを浮かべながら長刀を肩に置く。

「自己紹介が遅れたの〜。ワシの名は鬼道坂 京(きどうざか きょう)や。ボンも中々やるみたいやの〜。気に入ったわ」

「・・・・・・・」

「っと・・・そろそろ名古屋か。新幹線の上でドンパチやってたなんてバレたら面倒やな」

 青年――京はニヤッと笑い、バイバイと手を振った。

「ほなな。今度はお互い本気でやろうや〜」

 そう言うと京は新幹線から飛び降りていった。

【リューク様・・・】

「大丈夫だ。僕らも戻るぞ」

 マテリアルソードの氷の刃を割ってポケットに戻しながら言った。

「(あの技・・・・確か神鳴流だったか。ちょっと厄介だな・・・)」



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