魔・武・仙の物語【第四章】
ファウストの一件が終わり、リューク、ネギ、明日菜、ついでにカモはオープンカフェいやって来ていた。 「本当、今回はありがとうリュー君」 「全くだ・・・お前のフォローには慣れてるが、今回は流石に参った」 「そうそう。私も心配したんだから」 「ア、アスナさん・・・」 彼女の口からそんな言葉を聞けてネギは感動で目を潤ませた。 「と、いう訳でお詫びにコーヒーでも奢って貰おうかしら?」 「はう!」 「じゃ、僕は林檎ジュース」 「リュー君まで!?」 「何だ? 誰の為に限界まで魔力使ったと思ってるんだ?」 グリグリと頭を捏ねられ、ネギは「分かりました〜」と買いに行った。その間に、明日菜の肩に乗っかってるカモが質問して来た。 【そういえば旦那】 「何だ?」 【ファウストの件が終わったんなら旦那は帰るのか?】 「え? もう帰るの?」 リュークが日本に来たのはファウストを始末する為である。つまり、その仕事が終われば日本にいる必要も無くなるのだ。 「いや・・・僕も最初はそのつもりだったんだが・・・」 「【??】」
それは今朝の事。リュークとネギ、エヴァンジェリンは疲れ果てて一日中、特別室で眠っていたのだ。そしてHRにネギが前の扉から、リュークが後ろの扉から入ると、クラス中の人間が二つに分かれた。 「ネギ君! 出張って何処に行ってたの!? リュー君も良いけど、二日もネギ君がいないとつまらなかったよ〜!」 「リュー君! 昨日は私達に内緒で何処に行ってたの!? 折角、晩御飯作ったのに・・・」 とまぁ二人揃って、押し潰されそうなぐらい抱き締められたのだった。
「あんな苦しいの・・・ネギ一人だけに押し付けるのは後ろ髪引かれるのでな・・・」 そう言われて明日菜とカモは『あ〜』と何となく察した。そりゃ、一日二日休んだだけであんな目に遭うのは流石に辛いものがあるのだろう。 「けどリュークって結構、ネギのこと気にかけてるわよね〜?」 【ああ。確か昔っから兄貴のフォローしてたよな〜。良く双子の兄弟みたいだって言われてたし・・・】 「まぁ・・・あいつは頭良いが、時々、タガが外れて暴走する時があるからな」 そんな事を話してる間にネギがトレイを持ってやって来た。三人と一匹は適当な席に座ろうとすると、ばったりエヴァンジェリンと茶々丸に出会ってしまった。 「あ・・・こ、こんにちは、エヴァンジェリンさん」 「ふん。気安く挨拶を交わす仲になった覚えは無いぞ。っていうか、貴様のせいで私は無駄に疲れたんだ」 「こんにちは、ネギ先生、リューク先生、アスナさん」 後半愚痴垂れるエヴァンジェリンを他所に茶々丸はペコッと頭を下げて挨拶する。 「ふふ〜ん・・・」 悪態をつくエヴァンジェリンを明日菜はニヤニヤと見つめる。 「な、何だ?」 「聞いたわよ〜。エヴァンジェリン、あんたネギのお父さんのこと好きだったんだってね〜♪」 「ブ〜ッ!!」 その言葉にエヴァンジェリンは思いっ切り噴出した。 「き、き、貴様、やっぱり私の夢を〜!」 エヴァンジェリンは焦ってネギに掴み掛かった。 以前、ネギが彼女の家へ訪れた時、花粉症と風邪で寝込んでいたのだ。それで、父親の事が知りたくてちょっと夢の中を覗いて見たら、彼女がネギの父親が好きだった事を知った。 「そうなのですか、マスター?」 「ええい、五月蝿い!! ・・・・それに奴は死んだ。十年前にな」 目に涙をちょっぴり浮かべるエヴァンジェリンに明日菜は「え?」という顔になった。 「私の呪いもいつか解いてくれるという約束だったのだが・・・まぁ、くたばってしまったのなら仕方なかろう。お陰で、強大な魔力によってなされた私の呪いを解く事の出来る者はいなくなり、十数年の退屈な学園生活だ。小僧だって完璧に私の呪いを解ける訳じゃないしな」 「当たり前だ」 超強力な彼女の呪いを解くのはリュークでも無理だった。解いてる間は、ずっと魔力を放出し続けるので下手すりゃ死んでしまう。 「ふん・・・馬鹿な奴だ」 「あ、あのエヴァンジェリンさん・・・僕、父さんに・・・・サウザンドマスターに会った事があるんです!」 「何?」 ネギの口から出た言葉にエヴァンジェリンはピクッと反応した。 「何を言っている! 奴は十年前に死んだ! お前は奴の死に様を知りたかったのではないのか?」 「違うんです! 大人は皆、僕が生まれる前に死んだって言うんですけど・・・六年前の雪の夜・・・僕はあの人に会ったんです。 ネギの言葉にエヴァンジェリンはフルフルと震え、今度はハッキリと涙を浮かべていた。 「そんな・・・奴が・・・サウザンドマスターが生きているだと?」
「フ・・・フフ・・・ハハハハハ! そーか! 奴は生きているか! ハ・・・殺しても死なんよーな奴だとは思っていたが」 帰り途中、エヴァンジェリンはネギの父親が生きていると知り、笑いが込み上げて来た。 「ハハハ! そーか、あの馬鹿、フフハハ! まぁまだ生きてると決まった訳じゃないがな」 それでも嬉しいのだろう。顔が思いっ切りニヤけている。だが、ネギは苦笑いを浮かべて杖を持ち上げた。 「で、でも手掛かりはこの杖の他に何一つ無いんですけどね・・・・」 「―――京都だな」 だが、エヴァンジェリンは笑みを浮かべて指摘した。 「京都に行ってみるが良い。何処かに奴が一時期住んでいた家がある筈だ。奴の死が嘘だと言うのなら、そこに何か手掛かりがあるのかもしれん」 「き、京都!? あの有名な・・・えぇ〜と、日本のどの辺でしたっけ? 困ったな。休みも旅費も無いし・・・リュー君!」 「金なら貸さんぞ」 先に断られ、ネギは落ち込んだ。が、明日菜が笑みを浮かべて肩を叩いた。 「丁度いいじゃん、ネギ。ウチのクラスの修学旅行、京都だし」 「えぇ!? 本当ですか、アスナさん!」 「本当よ。いいんちょの推薦でね」 「やった〜!」 子供のように――事実、子供だが――はしゃぐネギにリュークは苦笑して肩を竦めた。 「そう言えば貴様」 「ん?」 ふとエヴァンジェリンが話しかけて来た。 「お前が前、使ってた剣・・・アレはマテリアルソードじゃないのか?」 「ああ」 「何故、伝説の宝剣を貴様などが持っている?」 そう言われ、リュークはパッと見、普通の筒であるマテリアルソードを取り出した。 「さて・・・教えてやる義理は無いが?」 「ふん・・・まぁ完全に使いこなせていない様だし、私には関係ないがな・・・・・ん?」 「どうした?」 「いや・・・・何やら学園の結界を突破した奴がいるな」 「学園の?」 「丁度いい。貴様、見て来い」 ビシッと指差され、リュークは眉を顰めた。 「は? 何で僕が?」 「私はこれから暇な授業があるんだが?」 真面目に受けるつもりは無いくせにと思いつつ、リュークは溜め息を吐いた。まぁ次の時間は自分の授業は無いので、エヴァンジェリンから場所を聞き、カモを連れて行くのだった。
「確かこの辺か・・・・」 【別に怪しい気配はしねぇけどな〜】 リュークとカモは桜通りの林に来て調査していた。 「邪悪な奴だったら一発で分かるんだが・・・」 まだファウストとの戦いの疲れが抜け切ってないのかと思い、リュークは額を押さえた。 【おい、旦那。大丈夫かよ?】 「ああ、心配ないよ・・・僕も随分と弱くなったな。昔なら一晩寝れば、すぐに回復したんだが・・・」 普通でも充分強いのに、弱くなったなどと言われ、カモは冷や汗を垂らした。その時、ガサッと茂みが揺れた。 「!! カモ、僕から離れるな。僅かだが魔力を感じた」 【マ、マジッすか!?】 そう言われカモはギュッとリュークの肩に掴まった。 「・・・・・・・・」 リュークは手に魔力を集中させ、辺りを探る。 ガサッ!! そして後ろの茂みから影が飛び出して来てリュークはバッと振り向いた。 【リューク様ぁぁぁぁぁああああああ!!】 「うわ!?」 飛び出して来たのはピンク色の仔猫で、何故か人間の言葉を喋った。仔猫はリュークに飛びついて頬擦りをしてきた。 【リューク様ぁぁぁぁ!! お会いしとう御座いましたぁぁぁ!!】 「・・・・・・・・エル?」 【はい!! ミスティリア・エルディールですわ!! リューク様を追って日本までやって来たのです!!】 涙を浮かべて喜ぶ仔猫にリュークは小さく溜め息を吐くのだった。
それは六年前の日の事。 【うぅ・・・・】 川の中州で彼女は蹲っていた。全身、傷だらけで、痛みと空腹の為、体がピクリとも動かない。 【(私とした事が・・・・此処で死ぬのかしら・・・)】 彼女は必死に立ち上がろうとするが力が入らず倒れ伏す。 【(ふふ・・・作り物の生命である私には相応しい最期かもね・・・・)】 死を覚悟した彼女は笑みを浮かべて静かに目を閉じた。 「・・・・・・・・妖精か・・・」 だが、その時、幼い少年が目の前に現れた。少年は彼女同様、傷付いており片目は痛々しい包帯が不器用に巻かれている。少年はしゃがむと、そっと彼女に手を添えた。 「癒しの精霊よ、慈悲深き恩恵を与えたまえ」 すると少年の手が淡く光り、彼女を包み込んだ。すると全身ボロボロだった彼女の体が見る見る綺麗になった。 「食べると良い」 そう言って少年は幾つかの木の実を差し出した。彼女は貪るように木の実を食べた。少年はフッと笑みを浮かべると指をピンと立てた。 「灯れ」 すると少年の指先に火が灯り、低かった彼女の体温が次第に戻って行った。 「これで僕の魔力空っぽだな。おい、大丈夫か?」 【は、はい・・・】 フゥと息を吐いて腰を下ろす少年に彼女は尋ねた。 【ど、どうして自分の傷を治さずに私を?】 「僕はこれぐらいじゃ死なない。だが、お前は死にそうだった・・・それだけだ」 そんな質問をされたのが意外だったのか、少年は苦笑しながら答えた。その少年の優しさに彼女は涙を浮かべた。 【こ、こんなに優しくして貰ったの・・・・初めてですぅ〜】 「別に泣かなくても・・・」 【ふみぃ〜ん!】 と言っても彼女の涙は止まらない。少年は困ったように頬を掻いた。 【ぜ、是非、お名前をお教えください!】 「名前? リューク・フォールサウンドだが・・・」 【リューク様・・・・わ、私はミスティリア・エルディールと申します! どうかエルとお呼び下さい!】
放課後、リュークはエルを連れて明日菜達の部屋に来ていた。 【とまぁ、これが私とリューク様の運命の出会いだったのです】 エルから事情を聞いたネギは目許をハンカチで拭いていた。 「うう・・・いつ聞いても良い話だな〜」 「へ〜。リュークの使い魔なんだ〜」 【はい。日々、リューク様の為に粉骨砕身で頑張っております。どうぞ、よろしく明日菜様】 礼儀正しく挨拶するエルに明日菜は何処かのオコジョ妖精と偉い違いと言ってカモを見た。その視線にカモはハッと、マスコット(?)としての立場を危うく感じたのか、エルの背中にポンと手を置いた。 【おい、姉ちゃん。言っとくが、此処じゃあ俺っちが先輩だからな。その辺、弁えとけよ】 【・・・・・・・・・(はんっ!)】 するとエルはカモを思いっ切り鼻で笑った。 【下着ドロで指名手配されてるエロオコジョが偉そうにしないで下さいまし】 【んだとぉ!?】 【何です!?】 互いに睨み合う猫とオコジョ。 「ちょ、ちょっとカモ君・・・」 「おい、エル・・・」 ギャーギャー!! それぞれ御主人の言葉など聞かずに絡み合って喧嘩し出した。傍目から見たら、じゃれ合ってるようにしか見えない。 「あわわ、どうしよ〜」 「もう、放っとけ」 呆れて息を吐くリュークに明日菜もウンウンと同意した。 Prrr! その時、リュークの携帯が鳴り、カモとエルも喧嘩を止めた。 「もしもし・・・・何だ、爺様か。何か用か?」 どうやら相手は学園長のようで、エルはピョンとリュークの頭の上に飛び乗った。 「は? 今から? ・・・・・・・・分かった」 面倒そうにリュークは頷くと携帯を切り、「呼び出された」と言って目を閉じた。 「彼の地へと導け」 するとリュークの体が光に包まれ、ヒュンと消えた。 「はぁ・・・何か普通に人が消えるのを受け入れてる自分が怖いわ・・・」 明日菜は頭を押さえ、表情を引きつらせながら溜め息を吐いた。それにネギは苦笑するしかない。 「はは・・・」 そんなネギの肩の上でカモはエルとの決着は付けるべきだと密かに燃えているのだった。
「関西呪術協会?」 「うむ」 学園長室にやって来たリュークは近右衛門から封筒を受け取った。 「実は昼にネギ君にも話したんじゃが・・・」 修学旅行で3−A組は京都・奈良なのだが、その中に魔法使いであるネギやリュークが一緒に行くという事で嫌がる連中がいた。 それが関西呪術協会で、近右衛門が理事をしている関東魔法協会とは昔から仲が悪いのだ。近右衛門は西とは仲良くしたいので、ネギにその親書を関西呪術協会の長に渡すよう頼んだ。 「なるほどな・・・で、これは? 親書はネギに渡したんだろ?」 そう言ってリュークは渡された封筒を挙げる。 「うむ。それは親書ではないのじゃが、西にとって重要なブツでな。長に渡して欲しいんじゃ」 「だったら一緒にネギに頼めば・・・」 「いや〜・・・流石に二ついっぺんに守らせるのは大変じゃと思って」 そう言われ、リュークは溜め息を吐くと、面倒ではあるが承諾した。 「(やれやれ・・・どうやら楽しい修学旅行に済みそうに無いな)」
「きゃ〜! 可愛い猫〜!」 「リュー君のペットなん〜!」 エルを見たまき絵と亜子がアッサリと飼う事を承諾したのであった。 |
後書き 纏めて五話で
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