第一話 同棲の巻


 

「うつけうつけうつけうつけうつけうつけこの大うつけが、朝っぱらから何をするか和樹よ、この変態が!!

 

顔を真っ赤にして正面に正座している少年を罵倒している少女。

 

年の頃なら十代前半、翡翠色の不可思議な瞳で、腰まである鮮やかな銀髪を靡かせ、恐らく笑えば愛くるしい顔立ちをしている、ただし体に起伏はない、悲しいぐらいに無い、十代前半という年齢を差し引いても無い(ロリィもそれはそれで悪くは無いと思う作者は少し終わっているのかもしれないが)

 

今はその美貌を台無しにして、眦を吊り上げ、髪を逆立て修羅のように怒りを露にし、不埒を働いた少年を睨みつけている。

 

因みに名前はアル=アジフ、ある特殊な身の上のお嬢さんである。

 

何故アルが怒り狂っているかというと、目の前に正座させられて怒鳴りつけられている少年、式森和樹に完全無欠に原因がありまくる。

 

因みに和樹が朝から少女にあることをしたためこのように年下(?)の美少女の前で正座させられ、怒鳴りつけられているのだが、ぜんぜん恐縮していない。

 

というか怒られているのに全然応えた様子が無いのだ、それがアルの怒りを更に煽っているのかもしれないが、さて和樹が朝っぱらからアルに何をしたか?

 

アルを見ればよく判る、というかわかりやすすぎる。

 

怒りのため真っ赤になった顔とは別に体のあちこちに何故かある赤い腫れた痕、しかも女としては微妙な部分が集中的にその痕が残っている、肝心の女としての部位は未発達だけどその未発達の部位を集中的に何かされたようである。

 

パジャマ代わりにアルが着ている和樹のワイシャツはほとんどのボタンが外され、下着、つまりショーツはそこらに転がっている、結果少女の未成熟な白い肌の殆どが露になってアルから怒っているはずなのに背徳的な魅力が溢れている。

 

こんな姿で怒っても効果など欠片も無いだろう。

 

この様子を見ての結論、和樹はアルを朝っぱらから襲った、多分ワイシャツ姿で眠っている美少女に男としてのパトスを押さえつけることが出来なかったのだろう、アルはランドセル背負っているような外見ではあるが。

 

この時点で和樹、ロリコン+性犯罪者?

 

勿論、容疑者として扱われた場合、その扱いは有罪に限りなく近いほうだが。

 

冷たい格子のあるコンクリート製のお部屋にも限りなく近いだろう。

 

「大体、昨夜もあれほど致したであろうが!!!この戯けが。それを朝から妾を襲うとは、昨夜の所業を忘れてとは言わせんぞ、この色キチガ○!!!!!

 

?では無く決定、和樹君ロリコン決定、ドンドンパフパフ、少年院への優待チケットのゲット。

 

で、当の正座させられて怒鳴りつけられている少年はというと、前述したように恐らく、いや確実に、少女の正当な怒りなど聞いていなかった、いや聞いていても、恐らく反省などすまい、というか反省するぐらいなら今ここに正座していない、何も朝っぱらから襲ったのは今日が初めてじゃなかろう、しかも外見年齢小学○を。

 

半裸で怒鳴りつけている少女を眺めて目尻を下げているのだ、これで反省しているといえば誰もが聖人になれるに違いない。

 

アルはそんな事に構わず、和樹に今だ納まらない怒りをぶつけている、どちらかというと怒り爆発モードから、お説教モードに移行しているっぽいが。

 

この少女、外見の割には説教魔人な節がある。

 

「大体汝は、いつもいつも妾をもてあそびおって、ええい、聞いておるのか。毎夜のごとく求めてくる癖に、節操というものが・・・・・・・・・・・何をす・・・・・・」

 

突然和樹がアルを優しく抱き締める、有耶無耶にして逃げようという腹積もりかもしれない、そうだったら姑息と言うか何と言うか。

 

それに同居しているのだそんな手段には。

 

「こら、和樹よ、何をする、そんなことで妾は・・・・・・・・・・・」

 

しかし口調とは裏腹にだんだん言葉に勢いが無くなっていく、同居しているのにストレートな手段には弱いのか?

 

アルの顔は朱色に染まっていき、案外この単純な表情の表現が和樹を助長させているのかもしれない、その気が無くともそそる表情だろうから。

 

毎日、和樹に様々なこと(どんなことだ?)をされているのに、全く、全然、これっぽっちも慣れが来ない少女(ある意味調教されている)は、毎度毎度のパターンで黙らされるのだ。

 

なんだかんだ言って、アルもそのようなこと(だからどんなのだ?)を嫌ってはいない、基本的には好きな相手との交わりであるのだから、和樹の欲望にはついていけないが。

 

しかし今回は誤魔化されなかった。

 

表情を羞恥にそまったものから怒りを更に燃焼させたものに変わる。

 

「汝、その手は何だ?」

 

アルは子供が見たら絶対にトラウマになりそうな表情で、アルの剥き出しの可愛いお尻を撫で回していた和樹の左腕をつかみ上げ、勢い良くダッキングして和樹の顎めがけて。

 

「この大うつけがぁっ!!!!!!!!!

 

と、ボクサーも吃驚のガゼルパンチを放っていた、それは和樹の足が地を離れ浮かび上がったことでその威力が伺える見事なものであった、ついでにガゼルパンチはうまく決まると人間が上に浮かびます(少なくともサンドバックは上方に持ち上がる)

 

和樹は顎にもろに食らって、ピクピクと痙攣していた。

 

但し、きっかり1分後、何も無かったように起き上がったが。

 

どうやらこの程度のダメージは既に日常と化しているらしい。

 

どこかのGSの見習い少年並の回復力である(あと煩悩も)

 

アルはというと、起き上がった和樹を一瞥して。

 

「飯を作らんか、このうつけめっ」

 

とありがたい言葉をのたまっておりました、尻を撫で回した件は今の一発で済んだようだ。

 

 

 

 

 

で、その後アルが不機嫌なまま(これも日常だが、和樹が日常のように朝から不埒なことをするから。誤魔化された日も、誤魔化されたことに気付いて朝食前には不機嫌になる)床に座って朝食が出てくるのを待ち。

 

和樹が朝食を用意しているがその手際は悪いものではない、男子高校生にしては上出来な部類だろう、幾許もしない内にトースト、サラダ、ハム、コーヒーという簡単な朝食を用意し、それがテーブルに並ぶ頃には、アルの不機嫌そうな顔も吹き飛んでいた。

 

どうやら不埒なことをされた時のお怒りは余り持続しないのかもしれない、日常的にイヤラシイことをされているから気にしては身が持たないのかもしれないが。

 

ただ単に目先の食事に目がいっているだけかもしれないが。

 

実際、外見年齢に見合った旺盛な食欲を発揮しているようだし。

 

トーストにバターを塗りハムとサラダを挟んだ簡易サンドイッチを頬張る姿は、アルが小柄なのもあって、その小さな口で食べる姿は小動物の捕食活動のようで微笑ましいというか可愛らしい、ロリ属性が無くても思わず抱き締めそうだ。

 

しかし何故、このような可愛らしい少女(本人が激しくそう主張する)が和樹(ロリコン)の餌食になって同棲(?)しているのだろうか?

 

世間様にバレたら、和樹の両手が後ろに回りかねない、というか絶対に回る、回らなかったら世の不条理である。

 

 

 

 

 

で食後、まったりと、というかいいのか和樹学校は、君は高校生で今日は平日だろうが。

 

アルの方はと言うと、満足そうな顔でコーヒーを小さな口で覚ましながら飲んでいる、実にまったりとしていて幸せそうだ。

 

和樹はそんなアルを眺めて、いられるはずも無く、まったりしているのはアルのみ、高校生の和樹が朝をゆっくりする権利などない、というかゆっくりしたいなら朝から悪戯するなと突っ込みたい、説教され怒りに晒されている時間は優雅に過ごせるだろうが。

 

和樹が慌てて,学校の準備をしていると和樹の家のドア(アルがいるので寮ではなく学校近くのワンルームマンション)が突然開いて、そこに180を超える長身に腰まである黒髪、吊り目がちの目に整った容姿、モデル並みのスタイルと文句の付けようの無い美少女、杜崎沙弓嬢。

 

「和樹、学校行くわよ」

 

沙弓が現れた瞬間、アルの表情は一瞬で先ほどの不機嫌顔に戻ってしまった、わかりやすい娘である。

 

「ふん、毎朝よく来るの、和樹は妾のものじゃぞ。デカ女

 

「あら、私が和樹の許婚よ。古本娘

 

「それは妾もじゃ、調子に乗るでない」

 

瞬間、絶対に二人の中間点で火花が散った(和樹より)、それはもう微笑ましい笑顔を浮かべ心の中で夜叉の表情を晒して闘争を広げていそうだ。

 

どうやら二人とも和樹君にご執心のようだ、羨ましい限りだ、ただしこの少年式森和樹である、それだけである意味わかりそうなもんである(原作参照)

 

ある程度視殺戦が終わったのか,そのころには和樹も鞄片手に玄関に来ていたが、因みに和樹は美少女の争いにはノータッチ、触れれば火の粉が飛んでくるのが判り切っているから。

 

そんな和樹に向かってアルが、不機嫌な口調で。

 

「ぬぅ、和樹、迎えが着たぞ、早く学校に行くがいい、よいかそこのデカ女と変なことを致さぬように。・・・・・・・・・・・・・そして早く帰ってこい

 

最後のほうを寂しそうに呟く、和樹が学校に行くと彼女は暫く一人になる、気の強い娘だがそれで寂しくないというわけではあるまい、本来寂しがり屋なのだから。

 

和樹は鞄を携えてアルの方に行くと、耳元で

 

「アル、じゃ行ってくる……それと早く帰ってくるから」

 

と軽く頭を撫でてから沙弓とともに、微妙に沙弓の目が怖かったが、学校に行った。

 

アルは先ほどの寂しそうな目を幾分マシにして、部屋にとって返すと、ベットに潜り込んで二度寝を始めていたりする。

 

和樹の毎晩の行為(さてなんでしょう)でアルの体には睡眠が不足しているらしい、というか和樹のいない間殆ど寝ているんだから寂しいのだろうか、まぁそこは気分の問題だろう?

 

「和樹、お休み」

 

眠りの挨拶をする辺り和樹本人がいないと結構素直な少女である。

 

 

 

 

 

で、我らが主人公、和樹はというと表に出た途端、ギンッと擬音がつきそうな勢いで沙弓に睨まれていた。

 

「和樹、あの古本娘とは随分仲がいいようね」

 

目が怖い。

 

「せいぜい気をつけるのね、手が後ろに回らないように、未成年者淫行罪とかそんなので」

 

と、口で言ってはいるがあの二人はそれほど仲は悪くない、そこはそれというやつだろうが、沙弓の口調も責めている調子は感じられない。

 

聞かされて当事者が心地いい内容かどうかは別だろうが。

 

「グハッ」

 

和樹は胸を押さえてのけぞった、120Pのダメージ、さらに精神に傷を負った。

 

「それにあの古本娘の首筋にキスマーク、昨日もしていたのね」

 

「ヌハッ、ゲホッ,グギャ」

 

和樹は苦しげに胸を押さえた218Pのダメージ、更に精神に傷を負ったようだ。

 

「それにYシャツ一枚で部屋に居させるっていうのはどうかと思うけど」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

返事が無いどうやら屍のようだ、精神にはPTSDが見られるようだ、自業自得だが。

 

「それに私が誘っても、あまり靡かないし、もしかして真性のペドフェリア?小学生にしか性欲を持てないと将来手が後ろに回るわよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

返事が無いどうやら屍のようだ。

 

「まぁ、真性ってことは無いのかしら昔はあんなに求めてきたんだから、昔の女に飽きたってところかしら。それとも私が成長したから」

 

いや、君達同年代だろうが、因みに何歳の頃からやってるんだ、お前等。

 

この台詞を少し拗ねた調子で沙弓が言っている、大人っぽい彼女がやると傍目にはかなりというか破壊的に可愛らしい、意識してやっているならばかなりの悪女だろう。

 

「いや、そんなことは」

 

どうやら復活したらしい。

 

何とか言い訳を試みているようだ、それが沙弓の思惑通りだとしても、つまりは台詞のまわし方は沙弓のほうは意図的にやっていることである、女癖が悪そうな和樹君だがその辺の駆け引きはトンと鈍いのである。

 

「でも、最近ご無沙汰だし。もしかして幼女(アルが聞いたら烈火のごとく怒りそうな台詞だが)にしか欲情しなくなったのかと思って」

 

態とそういう言い回しで微妙に寂しげに、そして少し非難するように言葉を続ける沙弓。

 

しかし沙弓の意図に気づかないのが和樹という男、沙弓にとってはある意味体のいいおもちゃである、付き合いの長さならかなりののである彼女なら根が単純な和樹の操り方など心得たものなのかもしれない、和樹は和樹でアルをおもちゃにしている節はあるが。

 

「本当にそうなの。だから私に手を出さないのかしら?」

 

声を僅かに艶の乗せたものに変え沙弓がいたずらっぽい表情で、スカートを軽く持ち上げ太ももを和樹に見せ付けている。

 

和樹はというと顔を赤らめ、少し焦ったように。

 

「やめろよ、こんなとこで」

 

といいつつ、目線は太ももを見ているのだ、御しやすい男である。

 

「あら、やっぱりロリコン、興味無いの」

 

既に沙弓の声はからかいが殆どを占めているが、晒されている太腿はかなり際どい。

 

本気で誘惑する気もかなりあるのかもしれない。

 

「違うっての」

 

和樹、否定しているが、アル・アジフの外見上君にその性質が無いことを否定するのはかなり難しいと思うが、だって小学生に手を出しているのと実質変わらないし。

 

「だったら、何で私に手を出さないの?あの古本娘もそうだけど、私も和樹の婚約者よ」

 

3日前にしたところだろうが」

 

シテはいるらしい、しかも三日前に。

 

3日もよ、あの子は毎日でしょ」

 

その沙弓の台詞に篭められたオネダリの意味を完全に把握した和樹は、大体のところは会話の開始時点で悟っていたのかもしれないが。

 

(いや満面の笑みでとんでもないことを、アルが、アルが、怖いんだよ、なんか匂いがするとか、何とか言って絶対見破るし、あいつの拷問(お仕置き)はいやだぁぁぁぁぁぁ)

 

と、心の中で和樹が叫んでいたりする、どんなお仕置きなんだろうねぇ(楽しみじゃないか)

 

「さぁ、学校行こうか」

 

清々しい笑みを浮かべて学校に行こうとする式森和樹、笑って誤魔化す気らしい、しかし沙弓はそんなに甘くは無かった。

 

「逃げるの、逃げてもいいのよ。只捨てられたどこかの可哀想な女の子が自棄になって学校で、和樹が真性のロリコン&ペドフェリアって流そうとするかもしれないわね、放送室でも乗っ取って全校放送で」

 

あからさまに脅迫してるね、沙弓さん。

 

(こうでもしないと和樹、古本娘怖がってなかなかしてくれないのよ、これで放課後)

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「どうしたの和樹?」

 

突然黙り込んだ、和樹に心配になったのか声を掛ける沙弓(からかい過ぎたかしら。一応からかっている自覚は有ったらしい)

 

と、声を掛けて沙弓が和樹を覗き込むように死線を向けたとき。

 

「へ・・・・・・・・・・・・ちょっと」

 

沙弓の腕を突然和樹が掴み、そのまま引きずるように近くの公園のトイレに引き込み。

 

暫くの間、何故か中から沙弓の艶がかった声が響き渡り、衣擦れの音、何かの水音、それに肉が肉とぶつかり合う音、荒い呼吸音と物音の絶え間が無かった。

 

何やら時折中から「もう駄目」とか、「これ以上されると」とか、嬉しそうな拒絶の声が響いていたりしていたが、それが何をさすのかは各自のご想像にお任せしよう。

 

それが途切れた後、息の荒れた、先ほどより女性としての魅力を何故か増している沙弓が和樹の胸にしな垂れかかるように出て来ていたりする。

 

中で何があったかは秘密。

 

学校に着いたときには既に二時間目だったそうだが、つまりは一時間以上男女が一つのトイレに篭ってなにやら男女間で粉得る運動をしていたと推察されるが秘密って言えば秘密なのである。

 

因みに沙弓が放課後どうこう言っていた内容はこの謎の行為のことなのだが、どうやら和樹を苛め過ぎたらしい、暴走して和君からかい返しで思わぬ(嬉しい)反撃が沙弓の誤算であった。

 

 

 

 

 

追記、和樹は一日、その後アルのお仕置きという恐怖に怯え、沙弓は肌のノリと機嫌が一日中良かったらしい。

 

追記2、このせいかどうか和樹はその日の予定を完全に忘れて、魔力検診をサボることが無かった、気づいたときに逃げようとしたが無駄だった、某保険医が教室まで来て、和樹を連行していったからだ、クラスメート(男子)はそれはもう嬉しそうに微笑んで、その保険医に協力したという。

 

 

 

 

 

で、結局のところ魔力診断を受け7回という魔法回数の現実を突きつけられて、ちょっとブルーになっている和樹。

 

そんなことは建前で、別の事情でブルーというか疲れ果ていたんだが、それはまた後で語る、まぁ保健室は式森和樹にとって鬼門であり、ある意味において人生の墓場が手招きしている場所とだけ言っておこう、原因は言うまでもないが。

 

赤いマッドの保険医のせいである、和樹のブルー具合の説明に、何故か和樹の診断が一番最後で、和樹一人が残って診断を受けたと表記しておこう。

 

受けたのが診断とは決まってはいないが、診断と名を借りた別の行為である可能性がかなり高いというか、絶対にそっちに決まっている。

 

 

 

 

 

まぁ、ブルー名気分を微妙に引きずりつつ、今朝の行為(?)で、ご機嫌な沙弓嬢とともに学校からマンションへの帰路についていた。

 

「沙弓さん、どうか今朝のことはアルには内密で」

 

思いっきり低姿勢な和樹、そんなに怖いのだろうか?

 

(半泣きで、胸に縋り付かれて上目遣いで「浮気するでない、このうつけがぁ」と睨まれながら呟かれるのは、怖いというか、心が痛むというか)

 

さいですか、怖いのは肉体的暴力ではなく精神的苦痛でしたか。

 

因みに肉体的苦痛が無いわけではないと予め明記しておこう。

 

「どうしよっかな〜」

 

沙弓がさも意地悪そうな目で和樹を見つつ、その実何かを楽しむ目だが。

 

「今日はシテもらったけど、最近シテもらってなかったのよね〜。私は確か、和樹との立場って古本娘と同じだったと思うし、私のことなんかぞんざいに扱われている気がするし・・・・」

 

少し声を小さくして、俯いて、拗ねた様に聞こえる調子の声、勿論演技で和樹に呟く沙弓、ここの沙弓、和樹を操っている。

 

勿論簡単に引っかかる男式森和樹、御しやすい男であるが。

 

焦った調子で。

 

「そんなこと無いったら、沙弓。えっとお前のことは大切で、いやアルも大事なんだけど、

そこはそれというか、ええっと、だからなんていうか」

 

これでも和樹は沙弓のことも、まぁ“も”というのは問題だが大事に思っている、確かに和樹に節操は無いが。

 

というかこの少年は自分の身近な人間が悲しむのが嫌なのだ、特に自身が好意を抱いている女の子が悲しむのは、そんな性根だから沙弓の単純な引っかけにも引っかかっていいように扱われるんだろうが、それは悪いことではないだろう。

 

言いたいことが伝わったのか、それ以前に沙弓もそんなこと既に承知している、其処の所は判っていないと付き合えないだろう、自分の男が自分以外の女と寝ていることを是とするには。

 

「まぁいいわよ、判っているから、古本娘に愛想つかされるのは楽しみにしておくけど、もう少し、恋人をちゃんと扱ってよね、和美達も不満そうよ。あと、一応黙っといてあげるけど、どうせばれるんじゃない、あの子鋭いから(それにあの子そんなに怒らないと思うんだけど)

 

そんなやり取りをしつつ、どうやらこの二人の間で基本的な主導権は沙弓にあるようだ、まぁ元来主導権など男にないのかもしれないが。

 

沙弓の考えの中の“達”と言う表現が微妙に気に掛かるところだが。

 

少し怖い和樹のもう一人の恋人の待つマンションへと帰路に立つのである。

 

(拷問(お仕置き)は嫌だぁぁぁ!!! 和樹心の声)

 

 

 

 

 

でマンション前、和樹には断罪の門か。

 

「あ、和樹、後で私そっちにいくから。夕食、一緒に食べましょ、何がいい、アルは確か私のシチューが好きだったわよね」

 

沙弓はいく和樹の家に作りに来るのだ、基本的に口だけでアルと沙弓の仲は悪くない。

 

口喧嘩は耐えないし、表面上は争うが仲はいいほうだろう、喧嘩友達といえば間違ってはいないだろう沙弓の料理はアルのお気に入りでもある。

 

実際和樹は気付いていないが沙弓に手を出したときと、他の女の子に手を出した時のアルのお仕置きの苛烈さの差はかなりのものである。

 

アルのほうも沙弓なら構わないと思ってはいるのだろう。

 

「あ、楽しみにしてる」

 

「ありがと、じゃ、あとで」

 

で、和樹は自分のお姫様の居る自宅へとおっかなびっくり帰っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

傍目にもビクビクして、マンションの鍵を開け。

 

「アル、ただいま〜」

 

普段どおり、何とか誤魔化そうと足掻くこれもいつもあることなので普段通りの為、に愛するロリ美少女アルに帰宅を告げるが、帰ってきたのは出迎えではなく、とんでもない声量の怒号であった。

 

「汝!!!!そこになおっておれ、動くでないぞ!!!!!!

 

和樹の体がビクッと跳ね、もうバレたのかと少女の嗅覚に脅威を覚えていたりする。

 

そしてすぐさま、とんでもない勢いと足音をたてて今朝と同じYシャツのみの姿で目に涙を溜めて和樹の胸倉を掴み上げ、叫ぶように声を上げた、その表情には余裕と呼ばれるものは無く責めるような色が浮かんでいる。

 

「汝、汝、前に言うたであろうが、妾に言うたであろうが!!!!!!!!妾を裏切らんと、妾を愛すると、あの時言うたではないか。それを、汝、嘘を吐いておったのか、妾を謀っておったのか?それも汝は妾だけでなく沙弓まで騙しておったのか!!!!!!!!!!!!!!!答えよ、汝!!!

 

突然の怒号、別の意味では覚悟していた和樹だがどうも様子がおかしいのは気付かぬはずが無い、沙弓に手を出した程度ではアルは少し拗ねた顔で上目遣いに睨みながら文句を言う(和樹にとっては結構きついのだが、ついでに涙は目薬、このへん沙弓の教育の成果である、和樹のとっては迷惑極まりないだろうが)だけだ、勿論お仕置きは別途やる、というかこのお仕置き、普段夜ベッドでいいようにされているので、意趣返し以外の意味はあまりない、勿論浮気されてムカつくと言うのも在るのだろう、アルも女なのだから自分の男を独占したいという欲を覚えてもそれが悪いことではないだろう。

 

今の叫びは違う、怒りと、悲しみ、戸惑い、様々な感情が混ざり合わさった叫び。

 

和樹が聞いたことも無い叫び、それを察せない程には和樹も鈍感ではない。

 

「あの娘はなんなのじゃ?汝の妻とぬかすではないか!!!!汝の嫁とぬかす・・・・・・・ぬかすではないかぁ・・・・・・・・・・。

和樹、妾はもう要らぬのか、邪魔なのか、嫌じゃ嫌じゃ、妾は嫌じゃ。あの暗いところには戻りとうない、和樹のそばを離れとうはない、永劫に妾を離さんと言うたで在ろう、あれは真なのだろう。そう言うてくれ、もう嫌なのじゃ、和樹、汝の傍におれればいいのじゃ・・・それ以外は望まん・・・・・・・・・うっ、ひっく、ひっく、もう妾はいらぬのかぁ、汝よ・・・・・・・・・・・・・・

 

怒号は徐々に声がすぼまり最後には涙声になり、その瞳からは涙が零れ落ちていた、まごう事なき悲しみの涙が。

 

アルのその翡翠の瞳から流れる涙は和樹と離れるかもしれない恐怖と寂しさに染まりその幼い美貌が儚げに歪む。

 

和樹としてはアルが何を言っているかまるで判らないが、一つだけ判っていることがあるだろう、目の前で式森和樹の前でアル・アジフが泣いている、それだけは判る。

 

式森和樹は自分が好きだと思う人間が悲しみで泣くことを赦せる人格は所有していない。

 

悲しみに染まりきった様子は彼女の幼い美を汚し、涙が彼女を冒涜する、微笑んでいるのが、照れて怒っているのが一番似合う少女に悲しみは、絶望は汚物以外の何者でもない。

 

だから和樹は怒りを感じた、沙弓にアルや他の娘にしろ、和樹が愛しいと思った、守りたいと思った少女が涙を流している、こんな悲しそうな涙を、だから和樹は怒った、涙を流させた原因に向かって、抑えようのない怒りを覚えていた。

 

それでも、今は怒りを抑える時だろう、怒りの対象よりも何よりも優先することはある。

 

アルの体を抱き締めその頭に手を添え、安心しろとばかりに撫でて落ち着かせる、それだけでアルの瞳を染めていた悲しみが若干和らぐ。

 

怒りを抑えてアルを抱きしめ覗き込む表情は穏やかなものだった。

 

其処に割って入る雑音、不協和音。

 

「何しているんですか、和樹さんから離れなさい!!!!

 

アルに対して怒鳴りつけながら部屋の奥から出てきた少女、見た目だけは下手なアイドルよりも可愛らしいが今は険しい目でアルを睨み、その表情は夜叉のそれ。

 

聳え立つ姿は悪魔の似姿、嫉妬の化身、破壊の権化。

 

曰くデビルキシャーと呼ばれる存在一歩手前である。

 

 

 

 

 

で、和樹君先ほど書いたがかなり怒っている。

 

見知らぬ少女が自宅の奥から出て来て、自分の大事な人間を睨みつけて怒鳴りつけ、状況から見て当の大事な存在を泣かしたと思われる人物に対してどんな態度に出るかなど、火を見るより明らかである、というかこの家にいる時点で思われるではなく確定だろう。

 

今の式森和樹、原作のようにデビルキシャーに隷従させられているひ弱な存在ではない。

 

守るべき対象を傷つけられて何もしない軟弱さなど持ち合わせていないのだから。

 

「あんた、誰」

 

険のある口調で問いかける、苛立ちを隠そうともしない、これでも怒りを抑えて問いかけているのだろう、未だこの少女だかどうだかは未定なのだから。

 

和樹本人の中では既にかなりの黒に近いとは思っているが。

 

「あの・・・・・・・・・、私宮間夕菜です、今日から葵学園に転校してきました、よろしくお願いします」

 

その和樹の雰囲気に気圧されたのか若干ではあるが畏まって夕菜が答える。

 

一応突っ込むと、原作のデビルキシャー(因みにデビルキシャーは正式名称ではなく、別の作者さんが思いついたものです、ご本人様から使用の許可は戴いています)を圧倒する和樹というのも珍妙な構図ではあるが。

 

「で、その宮間さんが何で僕の家にいるの?」

 

「それは、今日からここに住むからです」

 

何をぬかしているのだろう、この娘は。

 

「は・・・・・・・」

 

そりゃいくらなんでも呆れるだろう、何で見ず知らずの女の子にいきなり同棲宣言かまされなきゃならんのか、世間的な常識があれば数分ほど別の世界を垣間見てきても文句は言えないだろう。

 

和樹は頭が痛くなったのか額に手を当て、本当に痛いのかもしれない、怒りと呆れと混乱で、特効薬は目の前の電波系と思われる少女の排除か。

 

「何で」

 

「私がここに住みたいからです」

 

和樹が疑問の言葉を吐くが、その返答は簡潔なもので、結論できるのはこの娘は世間的な常識からはかけ離れている存在だという事を再認識させることだけ。

 

そして世間ではこの手の方達には話が通じない人が多くいがちなのである。

 

「だからなんで住みたいか聞いてるんだよ!!!!!

 

堪らず和樹が怒鳴りつける。

 

そんな和樹の様子に多少怯んだようだが、多少怯んだだけというのがいい度胸している。

 

褒めても何の意味もないが。

 

「その、私が和樹さんの奥さんだからです」

 

どうやら和樹が怒鳴りつけたことには何の意味も無かったようである、会話になっていないというか、過程をすっ飛ばして単語で会話するようなものが展開されている気がする。

 

某、国連組織と騙る極悪人どもの組織の司令殿と同じ才能があるのかもしれない。

 

 

 

 

 

和樹の中で怒りがふつふつと湧いてくる、それでもまだ抑えているんだろう、もしアルを泣かしたのが男だったらすでに内臓破裂で這い蹲っているだろうから。

 

基本的には女の子には手を上げない主義なのである、飽くまで基本的にはだが。

 

「で、アルに何言ったの」

 

どうやら会話にならないと判断して、更に沸き起こっている怒りと共に目の前の不法侵入者に問いただすことに決めたらしい。

 

多分、肯定したら、最低でもこのマンションから蹴り出されるだろう、最低でも。

 

「私がここに住みますから、出て行ってくださいって、やっぱり新婚だから二人きりがいいじゃないですか。こんな子、新婚の間には邪魔ですし」

 

手前勝手なことを述べるものである。

 

ここが臨界だったのかもしれない、実際和樹の体は震え始めているし。

 

それでも理不尽な少女は続ける、やはり電波系なのは確実だろうか。

 

「大体この子、何なんですか、和樹さんの部屋にいて、私が入ったら出て行けって叫ぶんですよ。今だって和樹さんに抱きついて、何時まで抱きついているんですかそろそろ離れなさい!!和樹さんは私の旦那様です」

 

和樹を非難するような口調まで述べだす始末、因みに和樹に落ち度は無い。

 

でも、この少女の脳内構造はどうなっているのだろうか、常人に理解出来ない構造をしているのは確かだろうが、和樹がそれに付き合う義理は無いが。

 

ここまで忍耐したのも大したものだろうし。

 

「出て行け!!!!!!!!

 

和樹の怒りが爆発した、自発的退去を告げる勧告であるだけ耐えたといっていいだろう。

 

しつこく繰り返すが男だったら内臓破裂か、全身骨折という末路が待っていただろう。

 

怒鳴られた少女のほうはというと、一瞬訳が判らないという表情を浮かべて、何かを口に出そうとしたところで。

 

 

 

 

 

と、そこに扉を叩く音がして、ドアが開かれる、どうでもいいが和樹の応答待とうよ、礼儀として。

 

まぁ、そんな細かいことは放っといて、進まないから。

 

来客者は刀を携えた小柄な美少女と、モデルのような体型の美少女というよりは美女の二人、どちらの和樹の通う葵学園の制服を着ており、其々が和樹のほうと少女を眺めてから口を開く。

 

「式森先輩、お邪魔します」「あんたが式森和樹?」

 

刀を持った少女はぺこりと頭を下げ、美女は妖艶な微笑みを浮かべている。

 

因みに二人を見た少女はかなり煩わしそうな表情を一瞬浮かべていた、和樹に怒鳴られた内容はこの瞬間に吹き飛んだものと思われる(原作と違ってこの時点で叫びださなかったのは怒鳴られた影響だろうか?)

 

 

 

 

 

「凛ちゃん、どうしたの今日学校で声かけたのにどっか行っちゃうし、ついでにこの人知り合い?後あそこにいる女、知り合いだったら引き取ってもらえない、かなり煩わしいから」

 

和樹が顔見知りの少女に神城凛に、先ほどからこっちを眺めているほうの事を聴く。

 

夕菜に対する怒りは、突然の客の来訪で静まっているらしい、親の躾がよかったのか、見知らぬ客の前で怒りを収めたのだろう、無論消えたわけではない、最後のほうの台詞はその表れだろう。

 

それとは別にもう一人のことが何か引っかかるらしい、特にその容姿に、美人だからじゃないが。

 

「そ、その式森先輩・・・・・・・・・・・」

 

顔を真っ赤にした、小柄な少女が和樹に答えようとするが。

 

この時点で黙っていられないのが約一名。

 

恐らく、ライバルが自分の旦那(と思い込んでいる人)と親しげに話すのが気に障ったのか、自分は怒鳴られ、友好的な対応がされていないというのに、親しげに話すのが癇に障ったのだろうか、どっちでも変わらないだろうが、この際理由はどうでもいいし。

 

「玖里子さん、凛さん、帰ってください、和樹さんは私の旦那様です!!

 

さっき怒鳴られたことがちっとも懲りていない夕菜が、玖里子と凛に敵意の眼差しを向け、怒号を放つ、多分忘れているのだろうが。

 

しかし、一応突っ込むとここは和樹の家であって彼女にそんなことをいう資格も権利もない、家主は和樹なのだから。

 

しかも家主の和樹が客として受け入れた人間と、勝手に入り込んだ自分、その怒号が向けられるのは正しく自分だという事は理解していないだろう、先ず自覚していて不法侵入を果たしていたならその時点で救いようが無いが。

 

「そういう訳にもいかないのよね」

 

迷惑極まりない少女の叫びも大したことでは無いとばかりに玖里子は頭を振るが、特に何もせず和樹を眺めている、どこか面白いものを見るような目だが、多分面白がっているんだろうなぁ、推測だが。

 

和樹は夕菜の様子に怒りが再燃したのか、表情を険しくして。

 

「あんたは出て行けって言っただろうが、それに僕は君の旦那じゃない」

 

怒鳴りつけはしないが、その口調には苛立ちが濃い。

 

「そんな、和樹さん!!

 

その和樹の言葉に悲鳴のような声を返すが、和樹は取り合わない、もとより取り合う必要も無いが。

 

「大体、君は何なんだ勝手に部屋に上がりこんで、僕が帰ってきたら、アルは泣いていたんだぞ、それに旦那様、僕は君の夫になった覚えは無いよ」

 

というか成れない、民法上。

 

「それは、その子が悪いんです、私は悪くありません。その娘ったら自分のこと和樹さんの恋人みたいに言うんですから、和樹さんの恋人は私なのに、私が部屋に入ったら追い出そうとするんですよ(そりゃ知らない人間が勝手に入ったら追い出そうとするだろう)、悪い子にちょっと叱り付けただけです(悪い子はあなたです、住居不法侵入罪、本人の許可がなければ恋人だろうと適用されます、赦されるのは親族くらいのものです)

 

いけしゃあしゃあと、妄言を放つ少女、それだけでアルが泣くか?

 

実際何をした。

 

というかあのふてぶてしい少女が人前で涙を流すのはよっぽどだろう、和樹の前では結構流すが、ふて腐れた時とか、当て付けのときとか(この辺は目薬)、夜の謎の行為のときとか(この時には他にも色々出ている)

 

実際にこの少女がアルにやらかしたことは、自分が和樹の婚約者だと主張し、それが子供の時からの約束だと言ったのだ、それで納得できないアルが文句をつけると、怒り狂って出て行けだの、和樹さんには必要ないとか言われたらしい(因みにこれはかなりソフトな表現です、かなりキツイ言語に変換してください)

 

アルが泣いたのは和樹を奪われる不安と、再び戻る孤独への絶望、そして浮気性の和樹への若干の不信からだった(この不信は和樹の自業自得だが、アルは後に自分の不信を恥じ入ったそうだ)

 

和樹が再び怒鳴りつけようとしたときに。

 

どうも様子がおかしいと悟ったのか今まで和樹に縋り付いていたアルが顔を上げて。

 

「和樹、どうしたのじゃ、もしかして和樹はその女を知らんのか?」

 

とまだ瞳に涙を残してはいるが、どうやら泣き止んだのだろう、和樹の袖を引きつつ和樹に尋ねてくる、だんだん行動が小動物化してきている、しかもその様子がよく似合う。

 

「ああ、アル、そう僕は知らない」

 

未だ若干不安そうなアルの後頭部を撫でながら、和樹が優しそうに語り掛ける。

 

「僕がアルを放すわけ無いだろう、それは誓約でそして約束だ」

 

その言葉で僅かに残った不安が払拭される、だが其処で黙っていられないのが。

 

「そんな、昔約束したじゃないですか、私をお嫁さんにするって」(言っていません、言ったのはこの少女です)

 

自分の主張を絶対に押し付けるなぁ、この娘は。

 

アルはその妄言を無視して、どうやら少女の台詞は完全にスルーすることにしたようだ、煩わしそうな目を向けて。

 

「和樹は知らんと言うておるわ、帰れ小娘」

 

というか立ち直ったか、普段のふてぶてしさが復活しつつある。

 

本来、和樹との関係を揺るがされることを言われなければ泣くなど断じて有り得ない意思の強さを持つ娘なのだから、その関係が不動と悟って弱弱しくいていられるほど謙虚な娘でもない。

 

「貴方には聞いていません、子供は黙っていなさい、和樹さん子供のころ約束しましたよね」

 

まぁ、こっちはアルを基準にしても天上の彼方に位置するふてぶてしさを誇っていそうだが、いろんな意味で、多分謙虚とか控えめとか言う言葉はこの少女には無い。

 

「だから知らないって言っているだろう、もう出て行ってくれ。大体勝手に家に入って、その家の人間を害して、警察を呼ばれないだけありがたいと思ってくれ。さっさと出ていたかないと本当に警察を呼ぶぞ」

 

ついでにここの和樹君本当に覚えていない、何気にパワフルな少年時代を送っている、幼少のことなどすっぱり記憶の海の彼方である。

 

大体、十年以上前の記憶を思い出せと言うほうが無茶で、その約束を守れと言うのは無理無茶無謀だろう、大体口約束はある程度は反故しても法的には問題ない、と言うか殆ど問題ない、特にこの場合反故して非難される謂れも無い。

 

それを盾に自分が恋人だと迫るのは可笑しいだろう、まだ新興宗教の教えのほうが筋が通っている(比喩としては判りにくいか)

 

だが、彼女としてはその手の正論など通用するまい、今までの経過を見れば判るだろう。

 

「そんな、和樹さん・・・・・・・・・・・・・そうですかその子のせいですね、その子のせいで私のことを・・・忘れて・・・・許しません」

 

完全な敵意の目をアルに向ける、彼女から見たら目の前のアルが自分のものを奪う毒婦に見えていることだろう、根拠としては先程のやり取りか。

 

そこで完全に某魔王化する直前に。

 

「夕菜ちゃん、その辺で止めときなさい、それ以上やると私が止めなくちゃならないから」

 

玖里子がエキサイトしかけた夕菜を宥める様に口を挟む、挟まれて止まる分けも無いが

 

「邪魔しないでください、玖里子さん!!

 

どうやら暴発までもう直ぐだろう。

 

そんな様子も無視して和樹が

 

「えっと?そういえばどちらでしたっけ」

 

確かに玖理子と呼ばれた女性は名乗っていないし、和樹の知己にもいないようだ、因みに先程から電波で行動していそうな少女は名前さえまだ紹介されていないが一応宮間夕菜。

 

「ああ、私、風椿玖里子、風椿って言えば判るでしょ」

 

「麻衣香さん達の?」

 

「妹ね。達って葉流華姉のことも知ってるの?まぁ、なんか貴方に面倒が起こるからって麻衣香姉が、でも自分は忙しいらしくて私が来させられたって訳。まぁ姉さんの予想通り面倒が起こっている訳だけど、あんたも大変ね」

 

和樹は麻衣香の名前が出てきたが、彼女のことが何で来たのか合点がいかない予想通りの面倒とやらが判らないのかもしれないが、この少年の経歴から考えれば多すぎてその面倒を特定出来ないところか。

 

「それって?」

 

「何二人でお話しているんですか、玖里子さん、お友達ですけど許しませんよ」

 

とさらにエキサイトした夕菜が割って入る、完全に暴走一歩前(魔王夕菜、またの名をデビルキシャ―)

 

その狂気を孕んだ言葉を無視して話し続ける、というか一々反応していると進まなくなる。

 

「あんたの実家関係って言えば判るって聞いてきたけど、凛もその口でしょ」

 

縋り付いて夕菜とにらみ合っていた、アルがそれではじめて凛の存在に気付いたのか、夕菜を凍て付く目線で睨んでいた目線を変えて。

 

「おお、神城か、久しいな」

 

と挨拶していた、どうやら今まで凛がいることには気付いていなかったのか、顔見知り?

 

因みに和樹の実家関係と言うのは、和樹の先祖関係で和樹が優秀な遺伝子を持っているということから、その遺伝子を欲して、正確には和樹との子供を欲しているのだが。

 

そういう禄でもない理由で関係を迫ってくる名家の輩が偶に来るのだ、この世界では魔力が家の権威や力をある程度決めてしまうのだから。

 

突然話を振られた凛は、顔を赤くして俯いたまま。

 

「その、式森先輩のところに実家のほうから嫁に行けと、私は、その、そんな形ではと、その、話だけでもしておこうと・・・・・・・・・・・・・・」

 

と小さな声で、刀を握り締めながらしゃべる姿は可愛い、殺人的に、見た目中学生くらいだし凛ちゃん。

 

でも、もう既にこれは、凛って和樹の毒牙にかかっている?

 

因みに凛の実家、神城家も旧家の名家なのだが最近、新興に後塵を拝していたので凛に和樹との間に子を成させようと命令したのだ、無論、彼女の本意ではないが。

 

「気にしなくてもいいよ、凛ちゃん。凛ちゃんがそんなつもり無いって判っているから」

 

アルが若干恨みがましそうに和樹を睨んでいたが、凛では怒るほどでもないらしい、因みに彼女もその辺は判っている、式森の実家には彼女も関係は浅くない。

 

「大体判りましたよ、玖理子さん。まぁ知らせてくるなんて麻衣香さんらしいですけど」

 

「でしょ、姉さん焦っちゃって。年を考えないんだから」

 

麻衣香もか?

 

「和樹さん!!何で無視するんですか。それに誰ですか麻衣香さんって、それにこの子も、凛さんもです!!

 

完全に切れているのか、手が精霊を無意識に呼び出しているのか発光している。

 

自分はないがしろにされているのに凛や玖里子と話している(特に凛の)様子が気にいらない夕菜の不満がマックスに堪りつつあるようだ。

 

「はぁ、やっぱりこうなる訳ね。前々から夕菜ちゃん危ないほうだと思っていたけど。姉さんの言いつけだけど面倒ね。凛手伝ってくれる?」

 

「構いませんけど、どうするんです?」

 

玖理子が凛に話し掛け、凛がそれに応じる、この二人がデビルキシャーに対抗するのが微妙に奇跡じみて見えるのは作者だけだろうか。

 

「うーん、一応顔見知りだから手荒にはしたくないのよね、気絶させちゃうのがいいかな」

 

面倒くさいのよねぇ、と呟きつつ。

 

手荒にしたくないという割には、玖里子は手に得意の符術用の符を持ち、凛は手に刀の柄を握る、臨戦態勢ばっちりである。

 

妙に凛ちゃんが張り切っているが。

 

「和樹、妾はいいのか?」

 

アルが心配そうに和樹の手を引く、和樹はそれに首を横に振って。

 

「凛ちゃんがいるし、麻衣香が寄越したんだから大丈夫でしょ」

 

と答えるも、アルは少し拗ねた様に、役に立てなかったことが残念なのか、そのかわりとばかしに和樹の腕に抱きつく力が強くなっていたりする。

 

そんな様子を見て、止めを刺されたのか。

 

「和樹さん、そうですか、そこの女たちに誑かされたんですね、いいです、私が助けてあげます、そうしたら和樹さんも思い出すはずです、優しい和樹さんが忘れるはずはありません、ちゃんと話せば思い出してくれます」

 

完全に暴走して、呪文を唱えだしたている。

 

「あ奴、かなり上位の魔法を唱えておらんか」

 

夕菜が唱えているのは上級魔術師用の戦術魔法だったりする、勿論室内で使うような魔法ではない、部屋など自分を含めて吹き飛んでしまうだろうから。

 

「ふふふ、和樹さんにもお仕置きですよ私のことを忘れているんですから。では食らいなさい。

キシャアアアアァァァァァァァッ!!!!!!

 

で、放ちそうな瞬間。

 

ドガシャアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンッ!!!

 

ワンルームの部屋のほうからガラスの砕ける音がして、とんでもない勢いで和樹に向けて走り寄ってくる緑色の影、進行方向中にいた夕菜をドカっと擬音がつきそうな勢いで突き飛ばし(気絶しました)迫ってくる存在、因みに突き飛ばした当人は突き飛ばした記憶も無いだろうが。

 

「ダーリン、23時間4515秒振りロボ。そんな三流パルプ廃品娘のことなんか廃品回収にだしてエルザと愛を確かめるロボよ、ダーリンとだったらどんなことでもOKロ・・・・・・・・・・・・・」

 

「この機械人形は毎度毎度迫ってくるでないわぁ!!!

 

変な語尾をつけて迫る緑色の髪の美少女エルザが和樹に届く一瞬前、和樹の腕から飛び出したアルの膝がエルザの顔面にクリティカルヒットしていた、それはもう見事な飛び膝蹴りで。

 

しかし、一瞬で復活、しかも傷一つ無い(ある訳ないか)

 

「何するロボ!!!

 

「和樹に抱きつくではないわ、この人形娘」

 

「ナイ乳は黙っているロボ、そんな貧弱な体では、ダーリンは満足しないんだロボ」

 

「な、何を言うかー!!

 

「貧乳ロリペタ娘は黙って身を引くことを薦めるロボ、今ならトイレットペーパーと交換できて経済的、ダーリンの面倒はエルザがちゃんと見るロボ」

 

さっきまでの雰囲気ぶっ飛ばして言い争いをはじめていた。

 

この二人は仲がいいのか悪いのか判断に迷う。

 

因みに夕菜は見事に目を回している、機械娘の暴走タックルは人間の肉体強度では些かきつい様だった、キシャ―様であっても。

 

和樹はというと、二人の争いは無視してエルザの入ってきた窓を見て、何かを警戒しつつ身構えているが。

 

その警戒の対象は。

 

いきなり後ろのドアが開きギターの音が鳴り響く。

 

「ふはははは、少年!!窓から来ると思ったであろう、そんなことはないのである、この超!絶!天!才!ドクターウエスト!!!!の行動がそんな簡単な筈がないのであ-!!!ひっかかったのであるか、ひっかかったのであるな、そんなのではではこの荒波の時代を生きていけないのである、それでは寒波吹き付ける冬に食べるお汁粉のように甘いのである」

 

どうでもいいが詰まらんことで威張り散らしている、白衣を着た変に逝った(誤字にあらず)男、白衣を着て、緑色の髪、おそらく二十代(多分)、なぜか跳ねた髪がハートマークになっているエレキギターをかき鳴らしている近所迷惑な男。

 

その変なのは自称世界最高の叡智を持つ超絶天才科学者ドクターウエスト(他称世界に五本の指に入る○○○○、適当に入れてみようピッタリの言葉がある)、今なおアルと子供のような(内容はいささか問題のある)口喧嘩をしている緑色の髪の少女、ドクターウエストの作りし人造人間エルザ(実際は妄想暴走娘、夕菜とは方向性が違うが)である、ついでに和樹の家の隣に住んでいる、何かにつけて迷惑行為(おそらく本人たちに自覚なし)をしてくる、はた迷惑で、見ている分(被害が来ないうちは)には愉快な連中である。

 

和樹は微妙に悔しそうにしながら、こんなのにしてやられるのはかなりくるものがあったらしい。

 

「何のようだ、この○○○○」

 

「我輩は○○○○ではないのである、ああ、あの純粋な少年がこんなことを我輩に言うとは、これが社会の歪みであるか、昔はお兄ちゃんと慕ってくれたのにである(言ってません)。青少年の暴走であるか、偏差値主義の歪みであるか、学校教育のひずみが生み出した被害者であるか。心配しないのでいいのであ~る、我輩が丁寧安心安全(安全という言葉を態々つけるのが不安をいっそう煽る)に少年を更正するのである、この超絶天才が作ったこの薬ならば一瞬で品行方正、我輩の忠実な僕が誕生であ・・・・・・・・・・・何をするであるか少年」

 

いきなり和樹にどこから取り出したのかナイフでいきなり取り出した見るからに怪しい暗緑色に濁った液体の瓶を叩き割られウエストが見たものは。

 

妙な笑顔を湛えた和樹がナイフを片手に、ウエストの首筋に突きつけていた。

 

「なんだ○○○○」

 

「ハハハ、ゴメンナサイ、少年ト夕食ヲ食ベルトイウエルザニ着イテキマシタ」

 

一瞬で卑屈になれるのはどうしたものだろうか、それは和樹の目が本気と書いてマジと読む種類だったから。

 

そんな傍らでアルとエルザはさらに罵り合っていた、険悪な調子ではないのでコミュニケーションの一種らしい、この二人の。

 

ついでに夕菜は玖里子が脚を引っつかんで外にいた黒服の人に投げ渡して、そのまま朝霜寮(葵学園女子寮、本来の夕菜の居住先)に叩き込まれたらしい。

 

後から来た沙弓はこの面子(ドクターウエストとエルザにはもう慣れている)に少し驚いてたが、凛は沙弓と知り合いだし、風椿と言ったら納得した。


後書き
以前投稿していた夜に咲く話の華では一から三話、堕ちた天使の世界では一話ですがかなり加筆修正をともないまして再掲載となっております、話の展開も少し以前より弄ってありますので、呼んだことがある管理人にとっては嬉しい方々には違和感があるかもしれません。

でも小説書き出して半年を越えましたから小説書き出した一ヶ月目辺りのこの作品を久しぶりに読んだ時は自分で憤死しそうなくらい恥ずかしかったです,余りの稚拙さに。

では、初めて読んで下さった方も再び読んで下さった方も管理人の戯言にお付き合い下さい有難う御座います。

掲載日2005年1月30日

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