第七話 魔獣の巻−別名和樹君女難の巻


 

○○○○二号登場(ピタッ、それは誰のことかな ハハ、当方は一切関知していませんよ、だからそのメスどけてください)

 

 

 

 

 

前回、和樹ハーレム参戦決定した元テロリスト、フィアールカこと菫淳子。

 

何故か彼女は式森のマンションに住んでいた、かおりにディステルと新入居者が多いマンションであると思うが同じフロアーに魔道書、仙術使い(九頭竜は仙術に近い)、吸血鬼、元諜報部員、マッド、魔道ロボ、元テロリストと本当に多彩な人種が居住している。

 

其のうち大家さんに泣いて出て行ってくださいと頼まれそうな顔ぶれだが、今の所其の素振りは無いからそれほど苦情が出ていないか、大家が泣き寝入りしているかのどっちかだろう、因みにこれは戯言なんだけど。

 

で、前にも書いたけどフィアールカ(名前が長いので以降フィア)が和樹の部屋の近くに越してきたので、彼女初めて意中を射止めてくれた男性とかなりの近距離での恋愛が開始されている、勿論それを狙ってこのマンションに転居してきたのだが。

 

因みにそれに掛かった費用は元々根城にしていた場所にあった資金や装備などを売り払って懐に納めたらしい、元々後ろ暗い金なのでちょろまかしても何の問題も無い。

 

経済観念はしっかりしている娘のようだった、世渡りもそこそこに。

 

そのせいでディステルとかおりの同居が決定したのだが、実際かなりタッチの差でディステルが入ろうとした部屋が塞がってこのマンションの空室は消え去ってしまったのだから。

 

この結果には二人共文句を言い合っていたが掃除以外の家事、特に料理に卓越したかおりと几帳面で律儀なディステルの同居は部屋が散らからないし食事はそれなりのものが供給されると言うギブ&テイクでそれなりに上手くっているようではあったりする。

 

すくなくともかおりの教師生活に遅刻の二文字は無くなったのだから、ディステルの存在は偉大だろう。

 

で、年上女性二人の生活状況はともかくとして家が近所なのでフィアは初恋の王子様に対して朝から通い妻の如く和樹の部屋にて朝食を作ろうとして、和樹の幼な妻アルと睨み合っていた。

 

昨日の敵は今日の友、そして明日は再び敵という構図である、第何回目かは不明だが妻対愛人の争奪戦かもしれない、ついでにディステルもいた。

 

かおりは寝ている自宅で寝ている。

 

多分教師として職場に行かないといけないぎりぎりの時間になったら蹴り起こされ家からたたき出されるだろう、それ以前にかおりは自分を起こさないで和樹と朝食を共にしたことで一騒動になるのは確実だろう。

 

何で私を呼ばなかったとか文句を言うのは目に見えている。

 

かおりの文句はさておいて、この三者、其々背中に何かわからない気迫を背負って互いをにらみ合っていた、全く持って朝っぱらから元気な連中である、其の元気をもう少し建設的な方面に回せないものなのだろうか、それとも彼女達にとっては和樹の朝食とは其れほどまでに建設的な価値があることなのだろうか。

 

あるんだろう、ここまで論争をするぐらいなんだから。

 

「何をしておるか、小娘。和樹の食事は妾の役割ぞ(普段朝食は和樹が作っています)

 

「いいでしょ、朝食くらい。ロシア風のを用意するわ(どんなのだろう)」

 

「いや、お前らは座っていろ、私が作る」

 

憤慨するアル、微笑んでいるのに目がまったく笑っていないフィアールカ、そして妙に嬉しそうなディステル(朝食を作ると言う事に酔っています、奥さんみたいだと妄想して。いい年して純情だから、もうそんな可愛いこと考える歳・・・・・・・・・・答えがない、銃殺体のようだ)、訂正ディステルは懐の銃を握って若干不機嫌そうだ。

 

 

 

 

 

其々文句はあったが断固として朝食を用意することを譲らず

 

結果、和樹の目の前にご飯、ナスの味噌汁、玉子焼き、漬物、質素ながら(和樹に金が無いせいです)日本人としてはありきたりな朝食。

 

お粥、米を主体とした穀物をミルクと砂糖で煮たものにフルーツにチーズ(ロシアの食事、作者もあんまり知らない)

 

パンがメインで、チーズ、ハム、ヨーグルト、マーマレード、ジュース。

 

三種類の朝食が置かれていた、どれもそれなりのボリュームがある三種類の朝食が。

 

只注意して見てみよう、アル、フィアールカの用意したものは多少なりとも手が加えられているというか調理されている、ディステルのは並べただけである。

 

この時点で女として敗北を・・・・・・・・・・・・・・返事が無い、銃殺体のようだ。

 

食事関連は同居人におんぶに抱っこのディステルである料理がマトモにできるはずが無いのだ、因みにかおりはプロ級の料理の腕前なのである。

 

なお欧米の一般家庭では買ってきたものをそのまま並べるだけという食事は珍しくないので、それほどマイナス点でもないだろうが、飽くまで欧米での生活を考えるならと言う条件はつくだろうが。

 

ついでにそれぞれ二人前、つまり自分と和樹のである、お互いの分は無い、都合和樹の前には三人前、朝っぱらからである、かなりヘビィな食事量だろう、少なくとも愉快になれる食事量では断じて無い。

 

唯一の救いは其々が材料を持参したことであろうか、和樹の冷蔵庫や財布からこれらの材料費が出ていたらあまりの勿体無さに悶絶するだろう、但し現時点を置いて脂汗を滝のように流しながらでは其の救いがどれだけ些細な救いか判りそうなものである。

 

だが、和樹に拒否権など行使できるはずが無い、元々そんなものはさらさら与える気は無いし、与えても余り意味が無い。

 

アルは上目遣いに見上げて目で「食べて、食べて」と訴えている、可愛らしいのだがこの場合辛いだけだ。

 

フィアールカは何かを望むように満面の笑みを浮かべていた、以前まであった邪気がないぶん印象が違うのだが、その分期待に答えなければならない。

 

ディステルは、さも当然といった風な態度をしているが、もし食べないと後が恐ろしい。

 

結果、三人前食べるという暴挙に出るしかなかった、朝から三人前、質素な食事に慣れて大食では決して無い和樹が、それこそ残しても何も言われないんじゃと思えるほどの豊富なフルーツまで全部食べて。

 

勇者で蛮勇である、胃袋の限界を完全に無視した暴挙、そんな状態で重たい腹を抱えながら登校した結果、彼は彼が望まぬ場所に自分から足を運ぶ結果と相成った、今回はちょっと哀れな和樹君。

 

まぁ、サブタイトルに女難ってあるしねぇ。

 

 

 

 

「という訳です」

 

「何が、という訳なんだい、式森君」

 

「ほっといてください状況説明です」

 

つまり、朝から許容量を超える食物を大量摂取した為、普段なら頼まれても金詰まれても決して来たくない場所、保健室の世話になっていた、何気に和樹が地の文に突っ込みを入れていたがその辺は割愛しよう。

 

絶対に足を運びたくない原因は目の前にいる保健医紅尉晴明、ぶっちゃけていえば、ウエストの医学限定版、つまり○○○○、しかも傍目にまともに見えるから性質が悪い、ウエストは一目でわかるのに。

 

常識人の皮を被っているだけにウエストよりも本質的な意味で色々問題がありまくる人だ、勝手に人で人体実験しようとするし、何気に化物に近い身体構造しているし。

 

○○○○は不死身属性を自然に体得できるのだろうか?

 

「つくづく君は命が惜しくないようだね、作者君」

 

イイエ、滅相も無い。

 

上の会話は無視してください、きっと電波です、電波ったら電波なんです。

 

和樹が来たくない理由は、この○○○○だけではない、そんな人種は近所の○○○○で慣れている、一人増えたところで何を今更という感じだ。

 

何かされそうならば暴力で黙らせれば何の問題も無い、ウエスト同様不死に近い耐久性を保有していることは既に実証済み、右竜徹陣でも半殺ししか出来なかった化物。

 

左竜雷掌ですらほんのり焦がした程度だ、生物の限界をとっくにぶち超えて自分を研究対象にして欲しいくらいのお方だ、しかも何時の間にかリカバーしている回復力、マジでウエストの同類。

 

問題は。

 

「久し振りですね、和樹君、お姉さん寂しかったんですよ」

 

いきなり和樹の背後から、抱き締めてくる女。

 

彼女が最大原因、因みに和樹がこの保健室に入るとき散々注意して中にいないことを確認して入ったはずなのに何故か部屋の中にいたりするのだが、どうやって入ったのだろうか。

 

彼女が相手ではこの疑問はかなり悲しい疑問になるのだが、考えても答えが出ない疑問は無益なだけだ。

 

背中から抱きしめた姿勢のまま和樹の耳元を擽る様に言葉を紡ぎだす。

 

「前に会ったのは、三週間も前です、シテ貰ったのは2ヶ月も前ですよ、お姉さん寂しくて死んでしまいます。ほら和樹君もお姉さんで楽しみたいでしょう」

 

といそいそと和樹の服に手を掛けはじめている、ヤル気満々である色々な意味において、ついでに目の前にいる保健医の存在は無視しているらしい、もしくは受け入れているのか。

 

紅尉晴明の妹、紅尉紫乃、勿論○○○○の血を受け継いでいる、というか、この二人本当に人類かと、原作を読んでしみじみ思う、というか何歳ねぇ。

 

「式森君、今日は大丈夫ですから(ニヤリ)、思う存分中に出してくださいね」

 

と、和樹の上半身を裸にすると今度は自分の胸元を開け、露になって乳房を背中に押し付ける、手は和樹の前に回して男の急所を弄っている。

 

其の手管はまるで娼婦のように流麗で和樹に向ける表情は淫靡男を蕩かせる女の顔で迫っり、基本的に彼女が苦手な和樹の情欲に揺さぶりをかけている、目の前に兄がいるのにである、その兄はというと。

 

「安心したまえ式森君、医者として保証しよう。今日は大丈夫だぞ、いろいろな意味で。ついでに私のことはお義兄さんで構わない、早く姪か甥の顔を見せてくれ」

 

何を安心しろと、何を保障しろと、何を大丈夫なのだと問い詰めたいところだろうが和樹にそれをなすすべは無い、紫乃の手管がどうとか言う以前に和樹の首筋にはいつの間にか怪しげな色の注射器が刺さっている、恐らく筋弛緩剤だろう。

 

つまりは紫乃が和樹に迫りだした時には既に打たれていたのだろう、武術の達人である和樹に気付かれずに注射を打つ辺りこの兄妹の底知れないところだろうが。

 

だから来たくないんだ、と和樹は動かない体の心中で号泣していた。

 

どうもこの兄弟、特に妹の方(年齢不詳、外見年齢など基準にならない)は見た目こそ清楚なお嬢様風な大学生くらいだが、なかなかアグレッシブな女性で和樹が、ひょんなことから、落としたのが災いしたのか、それ以降和樹の子をもうけようと、兄弟揃って、あの手この手でやってくる、しかも迫ってくる日は危険日である率がかなり高い、自然和樹は基本的にこの二人から逃げ回っていた。

 

因みに遺伝子狙いとかそういう俗っぽい話ではなく只単純に気に入っただけらしいのだが、人生の墓場に片足どころか99パーセント突っ込んでいるとはいえ、自分の手でトドメはさしたくないし、さされたくない。

 

それが和樹の心からの叫びで、未だ高校生の身の上で父親になるのは流石に遠慮したかった、というか、そんなことになると、自称幼な妻をはじめにどんな風にされるのかという恐怖もある、先ず五体満足で明日の朝を迎えられるなどと言う幻想は抱けない。

 

何より。

 

(されるより、するほうが好きなんだよーっ)

 

本音だった、基本的には自分が主導権をとって女の子にえっちぃことをするのが大好きなのだから、責められるよりは責めるほうが大好きなのである。

 

Mは嫌ぁ)

 

和樹にSM趣味は無いがどちらかといえば確実に和樹はSである、苛められて喜ぶ趣味は欠片も持ち合わせていない。

 

そして紫乃は責めることが大好きな女性でもあった、問題としては妊娠を迫ってくるほうが大問題だが、このプレイの趣旨も和樹に敬遠される理由の一つにはなっている。

 

(ウウウッ、手を出した時はあんなに可愛かったのに)

 

何気に悔いている、何を悔いているのかは知らないが。

 

と、考えても指一本満足に動かない、というかいつの間にか保健室のベッドに寝かされているし、ズボンは無い、残るは下着のみ、ついでに紫乃も下着だけの半裸の、手に何か形容しがたい妖しげなものを持っているが(作者は認知しておりません、ご想像ください、ただ和樹君はこれから起こることを予想して顔を真っ青にしています)

 

「式森君、痛いの、熱いの、どっちがいいかしら?」

 

どっちも嫌だ(追記するが作者にそんな趣味は無い、誤解なきよう、断固主張する)

 

和樹は心からそういう趣味が無いと主張したいが、打たれた薬のせいで言葉も満足に出すことなど出来はしない、やりたいようにされるがままを受け入れるしか選択肢が残されていなかった。

 

ついでに紅尉先生、何ビデオ回しているんですか。

 

「いや何既成事実をね、式森君には紫乃を貰ってもらわないと、何兄としての思いやりだよ(ニヤソ)。証拠の収集は大事なことだからね、色々と。特に法廷とかでね」

 

どうも駿司とかなり話が合いそうだ、式森凛婚姻計画とか書面化する人だから、あの原作ではとっくに死んでいるはずなのに色々元気な狼と。

 

ついでに紅尉のデスクの上のノートパソコンには、式森紫乃ブライダル計画Ver54というフォントが表示されていた、駿司とは友かライバルになれるだろう。

 

まあそんな恐らく二人とも人外なんだろうしほっといて、和樹さすがにピンチだった。

 

だが、どこにでも救いの女神というものはいるようで、別名御都合主義(何とでも言ってください)和樹の危機を救い出そうとする女神は降臨する。

 

降臨するといった表現を使う割には些か乱暴な登場方法だろうが。

 

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアンッ!!!

 

保健室の扉を吹き飛ばして入り込んできた女神、女神と形容していいかは手にした銃器から果てしなく疑問が噴出してくるがそのへんはどうでもいい。

 

どうせ実力行使を用いてこの場を打開する手段としてはかなりスタンダートな方法だろうしなおかつ判りやすい。

 

なお、女神に相応しくない女神はドラキュリーナで般若の形相をした伊庭かおり、どうやら人外大決戦が起こりそうだ、手にした暴徒鎮圧用のゴム弾が装填されたサブマシンガンが果てしなく異彩を放っている。

 

一応暴徒鎮圧用の銃を持ってくるあたりは理性は残っていそうだが、切れたらダムダム弾でも平気で持ち込みそうな彼女であるからして。

 

しかも般若は一匹だけではない、若き九頭竜使い杜崎沙弓、戦闘能力だけなら人外などはるかに超越している。

 

更にもう一匹、逝った目をして睨み付ける自称和樹の愛妻(駿司に聞かれたらそう言うように言われたそうだ、どうやら駿司は外堀も埋める気らしい。和樹の世間体などは全く考慮していないようだが。だって最初は肉奴隷と言ったらしいが流石に凛に殴られた、そりゃもう峰打ちで滅多打ちに)、既に抜刀された刀が血に飢えていそうだ。

 

剣鎧護法で淡く光っている刀身も今はなにやらどす黒い赤の色に染まっているように見える、それが彼女の心境を反映させた結果かどうかは知る由も無いが。

 

どうやらこの保健室もう寿命のようだ、強制的に。

 

恐らく吹き飛ぶ。

 

「何をしている、そこの変態兄妹」

 

いつの間に取り出したのかサブマシンガンとは別に手にデザートイーグル(別名ハンドキャノン)を主に紅尉晴明に突きつけつつ(ゴム弾装填、でも威力は砲丸投げを至近距離で食らうほどの威力があるので暴徒鎮圧用とはいい難い、余裕に死ねる威力だから)、かおりが問いかける、感情が感じられないのが怖い。

 

本気でテロリストにでも立ち向かうような表情で銃を突きつけているのだか其の殺気はしゃれにならない程ほとばしっているはずなのだが、この保健医、この程度の殺気でどうにかなるような玉でもない、度胸の点でならウエストを超越しているマッド二号。

 

ついでに彼女たちの中ではヤルのは許容範囲、但し双方合意の上(でも欲望の赴くままやるのは和樹君です、まぁ彼女たちも拒否しないので問題は無いが)+式森18歳まで、子作り禁止という協定があったりする、違反すると以前の沙弓状態に(つまり精神操作か、洗脳かという状態に追い込まれる)されることが協定で明文化されている。

 

ついでにこの変態兄弟の行動は思い切り協定違反である、この二人は協定に署名はしていないがそんなことはしったこっちゃないのが乙女達の言い分だろう。

 

どうせこの兄弟不死身っぽいし、どんな肉体的罰を加えても平気そうだからかおりも凛も沙弓も安心して暴力を行使できる、其の点では便利な肉体構造をしている。

 

で、変態保険医の言い訳は。

 

「いや、何。和樹君の子供を作ろうと思ってね。可愛い子供が出来そうだろう。妹もやっと嫁ぐことが出来て兄としては感無量だよ」

 

言い訳にもなっていなかった、勿論言い終わった瞬間に苛烈な暴力を振るわれたのには文句は言えないだろうが。

 

マシンガンから雨のように弾を吐き出され、デザートイーグルの弾は頭部に的中し、右竜徹陣が胴体に決まり、剣鎧護法が袈裟切りにマッドを叩きのめした。

 

 

 

 

 

その後この兄弟はこれでもかってほどにかおりの銃撃に凛の剣戟、さらに沙弓の打撃を受けた筈なんだが、何故か傷一つ無く、紫乃は上手に兄を盾にしていたような気もするが、やはり兄のほうは白衣にしみ一つない程にリカバーしていた。

 

紫乃など既にショーツ一枚で和樹にのしかかっていた(赤でした)はずなのに、平気な顔をして(しかも最初の服を着ている)立っていたりする、こっちは兄を薄情にも盾にしていたが。

 

「では式森君、今度は私が受けでいいですからね」

 

ついでに、自分の行為が暴力以外で追及される前にあっさり逃げる手並みもなかなかのもので、そんな自分の性嗜好のリクエストをのたまいつつどこかに逃亡していた、それはもうあっさりと、空気に溶け込むように。

 

兄弟ともども。

 

残されたのは半壊された保健室と、未だ殺気を迸らせた三人の戦乙女、そして筋弛緩剤で体の自由を奪われトランクス一枚でベッドに寝かせられている式森和樹。

 

今回和樹の扱いが微妙に悪いような気がせんでもないが、幸せな男なので不幸になろうがどうでもいい、むしろ不幸になれと応援しよう。

 

なお、筋弛緩剤で動けない和樹に普段と違う趣向と言う思考の元に三人の淫魔が襲い掛かったのは別の話である。

 

 

 

 

 

因みに本日の不幸はまだまだ終わっていない。

 

 

 

 

 

で、教室に戻って普通に授業を受けると、早昼休み。

 

胃はまだ重いのだが、アルお手製のお弁当を残すと帰ったら半泣きで睨まれるため食べないわけにもいかない、というか断固として食べるという和樹君だが、なんか今日は、食べる前に連行されていた、生徒会長室に、別名風椿玖里子の学園内プライベートルーム。

 

で、そこにいる部屋の主の玖里子、葉流華、何故かいる沙弓、ディステル、かおり。

 

因みにディステルはかおり同様教師として葵学園で勤務していたりする、担当教科は英語(なおディステルはドイツ国籍です)

 

カーテンの締め切られた薄暗い部屋がなにやら雰囲気を盛り上げている、其処いる全員が其の雰囲気に飲まれて神妙にしているので更に其の雰囲気作りに一役買っているのだが。

 

なにやら企み事とかの話し合いと言う雰囲気とも違う感じを受ける。

 

そして和樹が着席して数秒後、葉流華が口を開いた、かなり嫌そうに、「あいつが帰ってきた」とだけ。

 

全員が特に玖里子がビクッと体を震わせる、そして断続的に体を震えさせ続けている、其処まで恐ろしいのだろうか。

 

沙弓は視線を虚空にさまよわせ、かおりは現実を拒否するようにいきなり携帯ゲームを取り出して電源を入れる、ディステルは「夢だ、夢」とか呟いて寝ようとする。

 

葉流華は苦虫を噛み潰してそれを嚥下した様な表情をして天を見上げているし、本日の不幸の代名詞和樹はというと、放心していた、それはもう真っ白に、矢吹ジョーの最終話でも想像してもらえると理解が早いかと思われる。

 

ここにいるメンバー、葉流華の言う“あいつ”という存在を熟知している人間だったから、其の怖さ、其の威圧感、其の行動の破天荒さ、そして何より其の存在自体。

 

そう風椿江美那の。

 

 

 

 

 

一番に口を開いたのは妹の玖里子、それに答えるのは江美那が現れることを告げた葉流華、どちらも姉妹の再会を喜んでいる節などこれっぽっちも無い、むしろ体中から帰ってきてくれるなとオーラを発散させているようだ。

 

「姉さん、本当に帰ってくるの」

 

「ああ、フィリピン辺りに島流ししていたんだが、仕事が終わったらしい。現地のあいつの監視員から今日日本に発ったと連絡が入った。そろそろだと思って今度はモスクワに流そうと思っていたのに、一足遅かった」

 

ついでにその前はシベリアだったらしい。

 

1年くらい何とか、海外を転々とさせていたんだが、どうも私が裏で手を回しているのがバレたのか切れ掛かっているらしい。帰国を止めようとしたアイツの御付けが軒並み病院送りだ」

 

ついでに言うとこの一年で、イラン、アイスランド、メキシコ、ノルウェー、エジプト、ドイツ、ジャマイカ、北京、ギニア、ウルグアイ、アフガニスタン、シベリア、フィリピンである、どうも暑いところと寒いところが交互に派遣されている。

 

そりゃ怒るだろう、仕事が終わる度に盥回しにあっていたのだから。

 

「何とか騙して働かせていたんだが。あいつワーカホリック(仕事狂)だしな。仕事をさせておけば周りは見えないと思っていたんだ。そこそこの仕事任せて収益も上がっているんだが、夢中にさせておくのも一年が限界だった」

 

しみじみと呟いている葉流華、でも実の妹を極寒地や熱帯に送り込んでおいて何故に嘆くような口調で言いますか、それに他の連中聴いちゃいない。

 

慌てるもの、顔を真っ青にするもの、辞世の句を書くもの、いまだに矢吹ジョーの物まねやっている人。結論、誰もが慌てている、というか世を儚んでいる。

 

何と無く沈没船に乗っている乗客を思わせるが慌てようがてんぱろうが状況がどうなるわけでもないが冷静ではいられないのだろう。

 

一体、何者だ、江美那。

 

現時点でわかっているのはこの場にいる誰にも恐れられている人物としか判らないが。

 

 

 

 

 

で、ある程度落ち着いて、慌てるのに飽きたのだろう、それとも慌てたところで未来が変わるまいと自分の運命を悟ったか、いやそれほど諦めのいい連中ではないだろう。

 

「さて、対策を立てよう。玖里子、意見は?」

 

「逃げましょう」

 

全員の内心を表した言葉だろうが。

 

「建設的だが、意味が無い先延ばしになるだけだ、日本国内なら3日と掛からず補足される、先進国なら1週間といったところだ」

 

「なら中国の奥地とか、いっそ南極」

 

1週間が2週間に伸びるだけだ、結局見つかる」

 

結局の所逃げるのは無駄と考えられて棄却された、大体において逃げ回ってもそれは怯えた日々で暮らせという事で、余りに精神衛生上よろしくない。

 

何時異端審問官に断罪されるかを脅える生活は御免被ると言うのが結論だった。

 

棄却された意見に続いてディステルが言葉を続けようとするが。

 

「逃亡が無意味ならば迎撃を、何とかして我々も弱くはない。全員で掛かれば」

 

「無理だ、あいつは昔スペシャルフォース(軍の特殊部隊)を率いていた。単独でも厄介だが其の上それに金に飽かして、傭兵くらいは使いそうだ。それにあいつ自身が私より強い」

 

いや、どんな女性なんだ風椿三女、彼等に恐れられるからまっとうな人生を歩んではいないだろうけど、奇異な人生を歩みすぎているぞ。

 

そしてやはり彼女達も焦りが募っていたんだろう、建設的な意見など飛び交うはずも無く、ディステルは案が無いのを不機嫌そうに葉流華に洩らし。

 

「どうしろと」

 

其のディステルの言葉にかおりが意見を出す。

 

「懐柔策は」

 

それはもしかしたら天命のような意見だったのかもしれない、彼女等が助かる上では、飽くまで彼女等が助かる上で、女性のみと言う意味合いに於いてではあるが。

 

「何で懐柔するって言うのよ」

 

ここで周囲の視線が一つに集中される、風椿江美那の弱点、式森和樹を。

 

江美那は確かに和樹をかなり可愛がっていたと言うのは共通認識で受け入れられている、弱点といってもいいほどに、只お前ら、一応愛しの未来の旦那様だろう供物に捧げる気か。

 

それに和樹が脅えていたのは目に入っていただろう、真っ白になっていたのはさっきだぞさっき。

 

「和樹、ごめん一夜でいいの、私達の盾になって」

 

「そうだな、和樹、後で癒してやる、なんでもOKだ、だから一夜我慢してくれ」

 

「お姉ちゃんを助けて、和樹」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「頑張って」

 

上から、沙弓、葉流華、かおり、ディステル、玖里子、かなり白状だった愛しい相手を易々と生贄にささげることができるのであろうか、それとも其処まで恐ろしいのか風椿三女、この時和樹は、五人とも気絶しても止めるもんか、と心に誓っていたりするが、何をやめないとのかは果てしなく謎である。

 

只いえるのは、それから数日以内にここにいる女性が朝起きられない日々が続いたという事であろうか、それでも表情は恍惚に満ちた幸福そうな表情だったらしいが。

 

玖里子は初めてだったのでそれなりに優しかったそうだが、比較問題である、世間一般から言えばかなり壮絶な初体験を経験したことになるだろう、幾らなんでも初めてで全身を蹂躙されるように愛撫され、また男への奉仕の方法を覚えさせられるのはマトモな初体験とはいえないだろうから。

 

このせいで玖里子に妙な性癖が付いたとか付かなかったとか、只もうマトモな男とは性的関係に於いては満足できない体に開発されたとだけは言える、今はそんなこと考えてもしょうがなかったけど。

 

和樹は生贄になることしか選択肢が残されていないのだから。

 

「あのさ・・・・・・」

 

それでも何とか逃れようと、和樹が口を開こうとするものの、縋る様な目×5には太刀打ちできないようで。言葉が出ない。

 

特に葉流華の哀願の瞳や玖里子の懇願の瞳は贖い難いものがかなりあったようだ、ディステルもツボだったようだが、心の中でこの五人は後で徹底的にMに仕込んでやるとか物騒なことを考えつつ和樹君生贄の子羊決定。

 

 

 

 

 

そんなこんなの相談をして現在は和樹そっちのけで供物をどのように恐れの対象に差し出すかを話し合っているところに、供物の前でそん相談をするのは些かどうかと思うが、堂々と扉を開けて入り込んでくる女性。

 

「久し振りね、葉流華姉、玖里子、それに吸血鬼、諜報部員、杜崎の長女」

 

凛とした声が室内に響く。

 

ビシッ!!!

 

全員が固まる、その当事者にとって絶対零度の声によっていや本人も冷たい声を出しているのだろう、続いた言葉は物騒極まりない。

 

「よくもやってくれたわ、葉流華姉、気付かない私も私だと思うけど。一年も世界中を回らされた。葉流華姉判っているんでしょう。どうなるか。今のうちよ言い訳も命乞いも弁解も。後では泣き声しか聞いてあげられないから」

 

断じて友好的な内容ではない、と言うか物騒に過ぎる、姉妹喧嘩で使われる言葉では無い。

 

言葉の主、ストレートの黒髪を腰まで伸ばし、姉妹同様のモデル体型、ノンフレームの眼鏡を掛けた先の目は絶対零度の冷たさを葉流華に向けていた。

 

「え、え、え、え、江美那。お帰り」

 

震えた声で返答する葉流華、普段の勇ましさなど欠片も見当たらない、九頭竜使いの葉流華が生きた心地がしないストレス、いかほどのものであろうか、これほど彼女を脅えさせるのならなんとなく和樹を供物に差し出す程度のことならやりかねないとも納得できる、何も殺されるわけじゃなし、誰もが自分が可愛いのだ。

 

余波だけで十分他の面子も引き攣っている。

 

「ねえ、葉流華姉、何がいい」

 

「な、な、な、何のことだ、江美那」

 

何がと聞く無かれ。

 

「アメリカ海兵隊式の拷問、それともMI6(英国諜報部)式、日本の拷問、それとも・・・・・」

 

まったく表情を変えずにいる、業務内容を言い渡すようで、本当にやるようで怖い。

 

「な、何を言っている江美那。本気じゃないでしょう」

 

現実を否認したいのか葉流華が頭を振って否定しようとする、何処と無く口調がおかしいし。

 

「やるわよ、本気で」

 

其の言葉で、葉流華ががっくりと項垂れる、未来の自分がどのような目に合わされるか創造しているのか普段とは予想も付かないような表情でうわ言の様に何かを呟きだしている、はっきり言って果てしなく怖い。

 

続いて。

 

「そういえば、吸血鬼、諜報部員。仕事先で聞いたんだけどお前等私のことをどう吹聴していたのか偶然小耳に挟んだんだ。中々愉快なことをいっていたらしいわね、内心腸が煮えくり返るほどに愉快だったよ。愉快にしてもらった礼はしよう。恩義には恩義で返す主義なので何がいい。お前達は私の友人だからサービスしてやる。身売りか、拷問か、私への奴隷奉仕か、それともお前達の秘密を全て暴露しようか。選ばしてあげるわ、親切でしょう」

 

因みにかおりとディステルが彼女の事をどうこういったのは事実である、普段の恨みであろうかなんであろうかかなりグレードアップして流された噂はかなり性質が悪いものだったが尾ひれが付いて更に性質の悪いものに変わって本人の耳に入ることになった。

 

なお、江美那が言っていることは全部本気なので一切のしゃれの要素を含んでいない、やるといったらやるのだろう。

 

それを聞かされたかおりとディステルは顔を青褪めさせて、どうやら想定していた最悪の展開が自分に降りかかってきたようである。

 

「さぁ、早く選びなさい。貴女達が選ばないならフルコースを堪能させてあげてもいいの。秘密を暴露して、拷問を課してから従順にして、奴隷奉仕をさせて飽きたら売り飛ばしてあげてもね。私に友情が残っているうちに選びなさい。奴隷といっても人間としては扱ってあげるからこれがお勧めよ」

 

何故か大した声量でもないのに彼女達には耳元で叫ばれているような印象を受けるほどの威圧的な声を掛けられ、脅える彼女達が選択したのは奴隷扱いであったと言う。

 

身売りさせられるのは女として御免被るし、拷問は精神が破壊されるまでやられそうだ、妹に其のことを宣告されて灰になりかけている葉流華の様子を見て其の選択を出来るほど彼女達は蛮勇に溢れてはいない、そして秘密の暴露は何を握られているかわからないところが恐ろしい。

 

しかもブラフではないと確信出来るのだから選択権などあってないようなものだ。

 

因みに奴隷扱いは暫く江美那の家に彼女達を泊まりこませ家政婦のようにこき使い、しかも何か厭らしい特殊な趣味の方専用のメイド服、無意味に露出過剰な着ているのが裸より恥ずかしいといった代物を着せられ、和樹と目の前で男女の営みを見せつけられるなどかなり精神的にくるものをやらされたらしい、ディステルとレズ行為をしろといわれなかっただけマシかもしれないが、女に視姦されるといのもかなりの恥だろう、つまりはそういう衣装だったわけだが。

 

唯一の救いは後日其の衣装を着て和樹と閨を共にしたとき和樹が普段より元気になって彼女たちを慰めてくれたことだろうか。

 

「次に沙弓、貴女サボってなかったでしょうね」

 

「イエス。マム!!!!!

 

何故か軍隊調で問いに返答する沙弓、何をサボっていなかったんだろうか、大いに謎だが沙弓の返事に納得したのか満足そうにうなづいて。

 

「いい返事ね。後で試験するから結果を見せなさい、努力をしても結果を出していなければわかっているでしょうね」

 

だから何を言いつけてあったんだ。

 

その辺は今の所謎である。

 

最後は玖里子。

 

「玖里子、久し振りね。後で積もる話もあるでしょうから後で再会を祝いましょう。姉さん葉流華姉や其処の馬鹿を少し調教しないといけないから。・・・・・・・・・後玖里子は私に逆らわないわよね」

 

全力で首肯する玖里子がいたとか。

 

 

 

 

 

「和樹、本当に久し振りね。どこかの謀略家のせいで一年も彼方を可愛がってあげられなかったけど。今度私の家に来なさい。可愛がってあげる。拒否はしないわよね。私の可愛い和樹。一年前のように楽しませてあげるわよ。私の一年の寂しさを忘れさせるためにね」

 

今度は艶然とした声音で和樹の耳元で囁くが、和樹が微妙に冷や汗を流していたりする。

 

はっきり言うと、江美那は紫乃と同じ性嗜好を持っている女だ、紫乃程危なげではないが久方振りとなると和樹も素直には喜べない、無論そんなことはおくびにも出さないが。

 

出したら最後、葉流華達とは趣向の違うやり方で和樹が責められるだろうから。

 

其の責め方は、まぁ、後で出ることだろう、いつか、多分。

 

 

 

 

 

その後、葉流華の襟首を掴んで、泣き叫ぶ葉流華を引き摺ってどこかに行ってしまった江美那であった。

 

バックコーラスに売られていく牛の歌が聞こえてきたのは多分幻聴だろうが、因みに和樹が供物になることはこの時点で失敗しているのだが葉流華達が和樹の復讐に晒されたのは確かなことであった、供物に出ることに満場一致されたことが腹に据えかねたらしい。

 

 

 

 

 

「和樹様、お久し振りです」

 

江美那が出て行った後に静かに和樹の前に姿を現したのは黒のゴスロリっぽい服を着、アルのように真っ白の肌、真っ黒なロングヘア、そして漆黒の瞳。

 

「ああ、久し振りエセルドレーダ」

 

最古の魔道書“ナコト写本”の精霊、エセルドレーダ。

 

 

 

 

 

で、結局和樹に江美那によるお仕置きはなく、主犯の葉流華がその対象になっていたが。

 

和樹のマンション、其処に“ネクロノミコン”のオリジナル“キダフ・アル・アジフ(獣の咆哮)の怒声が響き渡っていた、なんとなく予想できたことでもあるだろうが。

 

お約束と言うのは守るためにあるのであって、守られないお約束はお約束とは呼びがたい、よってお約束=王道なので王道に従った展開である。

 

完全無欠に戯言なのだが。

 

「汝、何故“ナコト写本”を連れておるか!!!

 

エセルドレーダはアルの怒声に表情を変えず。

 

「五月蝿いですよ、ネクロノミコン」

 

少し不快そうな顔をして、帰宅するまで絡ませていた和樹の腕を更に抱き締める、判っていてやっているのだろうが、和樹としてはストレスが山のようにたまりまくる行為だろう。

 

目の前に噴火直前の火山がいるのだから。

 

「な、な、な、汝、和樹は、妾の主ぞ。その腕を離さんか、その腕も、体も、思いも、全て妾のものぞ」

 

エセルの行為に思考が暴走しているのか普段は絶対に本人を前にしては言わないことを口走っている、自覚は無いのだろうが。

 

「じゃあ愛人で」

 

エセルドレーダの方が一枚上手か怒声を上げるアルに向かって嘲笑するように微笑みかけて更に体を摺り寄せる、さすが年上(確かエセルドレーダは二千年くらい)、体型に大差はないが。

 

アルにとっては怒りのボルテージと嫉妬のボルテージがしゃれにならないレベルで上昇中である、元々がそれ耐えられる性根など持ち合わせていないのだから、かなりの速さで切れてくれるだろう、多分、もう直ぐ。

 

「だから離さんかこの年寄りの恥知らずが。耳まで遠くなりおったか」

 

自分のことは完全に棚に上げた暴言を吐くアル、大体年齢関係は自分も禁句だろうに。

 

その言葉に抱き付かれている和樹は気付いた、エセルドレーダの顔に見慣れた人間にしか判らないが明確な怒気が宿ったことを、年齢発言はやはりこの精霊に於いても禁句であったのだ。

 

「ふん、ではその年寄りの手管、お楽しみになられますか、和樹様」

 

と、抱きついていた腕を自分の股間の導き首筋に舌を這わす、仕草一つが男を誘い、獣欲を刺激するように動いている。

 

そのあまりの妖艶さ、そして幼い肢体とのアンバランスが、和樹を酔わせないわけがなかったが欲情するわけにもいかない、と言うか出来ないといったほうが正しいかもしれない。

 

目の前に怒れる幼な妻がいるのだから、しかも臨界一歩手前。

 

骨の髄から目の前のツルペタ少女に根本的なところで逆らうことが出来ないのだ、浮気は出来ても、特にこういう行動をすればアルが本気で怒って悲しむといった行動は出来ないように遺伝子レベルでインプットされているかのように出来ない。

 

アルが和樹のものであるように、和樹もアルのものになっているのだ、精神的なところで。

 

良かったね、アル一番は不動のようだ。

 

しかし、目の前のツルペタ少女は和樹にすがり付いているもう一人のツルペタに怒り心頭のご様子。

 

ついでにエセルドレーダもアル・アジフに勝るとも劣らないロリ美少女、勿論危険度もそれ程差が有るわけではない、先程の年寄り発言でそれなりに怒りの導火線には火がつきやすい状態に陥っている。

 

それこそ今にも、イクタァ、クトゥグァでも召喚して乱射しそうな状態だ、以前の八つ墓

モードを上回る瘴気、久々にボンバー君シリーズの封印がとかれるかもしれない。

 

対象は浮気男ではなく、アルの視点で憎たらしい、愛人願望ナルシス娘(アルが命名)

 

「アル、落ち着いて」

 

「落ち着いておる、冷静に、的確に、そこにおる、廃棄物の処分方法を考えておるところじゃ」

 

ちっとも冷静じゃあない。

 

「和樹様、そこの小娘はどこかに置いて私と楽しみましょう一年ぶりです、邪魔ですよ小娘」

 

と、眼中にないといった感じで和樹に更に擦り寄る既に半裸、何時の間に脱いだのだろうか、しかも見下げるような視線と発言、完全にこちらも喧嘩を売っている。

 

「アル、止めろ、落ち着け。ほらエセルも」

 

無駄だと判っていても、言わずにおけない、被害が来るのは全部自分なのだから。

 

過去最大級に近いアルの怒り、正確には一年前にも見たような気がするが、逝ったアルの表情、何故かエセルドレーダに対しては過剰反応する嫉妬、近親憎悪だろうか。

 

それを感知して、恐らく自分の生存の為だろうがなだめようとした所で、エセルが止めを刺してくれやがりました。

 

「ほら、和樹様、クッ、プハッ、チュルッ」

 

とエセルドレーダが唇を押し付ける。

 

其の見た目にはそぐわない舌の動きを堪能しながら和樹には目の前の愛妻が核発射ボタンを握ったテロリストに、そして唇を押し付けている自称愛人がそれを煽る扇動者に見えた。

 

案外余裕があるのかもしれない。

 

 

 

 

 

だが、完全にこの接吻でアルの許容限界は軽く突破してくれたようだ、怒りに身を任せ感情のままにアルの小さな口から漏れる、祝詞。

 

 

 

 

 

憎悪の空より来たりて(アルの現在の心の中)

正しき怒りを胸に(理由の正当化)

我ら、魔を断つ剣を執る(浮気相手を斬る)

汝、無垢なる刃 デモンベイン(濁り切った動機により振るわれる刃)

 

 

 

 

 

それに対してすぐさま唇を離しエセルドレーダが掲げる祝詞

 

 

 

 

 

無限の鎖の海よりいでたりし(自分と和樹の関係)

終わり無き絶望を胸に(自分の愛人の立場)

我ら、鎖を断ち切る矛を執る(アルと和樹の婚約を斬る)

其は、黙示の王、レベル・レギス(黙示の名が泣いている)

 

 

 

 

 

双方が紡ぎだす召喚の祝詞。

 

召喚されるは偽りの神、神の模倣品、機械の神、破壊の神、彼女等魔道書が紡ぎだす最強の祝詞。

 

偽神召喚

 

ただ、はっきりいって痴話喧嘩で呼び出される神の模倣品が憐れだった、というかこんなことで呼び出すなという声が和樹にははっきり聞こえた。

 

心のそこから和樹は同意するが、それなら来るなよとも思ってしまう、来られたら和樹の居住区など半径数キロに渡って破壊の嵐が振り撒かれ、大災害になってしまう。

 

一躍テロリストして世間のお尋ね者だろう。

 

故に願った。

 

神に、仏に、デモンベインに、レベル・レギスに。

 

通じたけど、通じたと言うよりは自力で何とかするほうに決意したと言うべきか。

 

いやだって呼び出すと洒落になんないし、前述したように日本最大のテロリストに一時間後になるほど勇気に満ち溢れてはいないし。

 

神ではなく実力行使(後を考えるとこれもどうだかと後悔はしている)による沈黙。

 

決意している最中に、既に祝詞は唱え終わっていたが、それでもまだ神の顕現は始まっていない、術者のいない召喚祝詞それほど瞬時に神を呼び寄せることは出来ないようだった。

 

たとえ怒りに打ち震えていたとしても、其の時間差のみが和樹をテロリストに仕立て上げない時間になった、そんなことに喜ばなければならない義理は和樹には無いだろうが。

 

エセルドレーダを抱え、そしてアルを抱いて、アルに唇を奪い舌を絡ませる、瞬間怒りを失ったアルに続いてエセルドレーダにも同様に唇を押し付ける。

 

こいつもトロンとした表情になって力を失い、双方共に臨界まで高まっていた魔力を霧散させる、魔力の篭らない祝詞は只の祈りと変わらない、神を呼び寄せる力とはなりえない。

 

ギリギリのところで顕現は防いだようだどこからかデモンベインと、レベル・レギスの感謝の声が聞こえる和樹だった。

 

なんか幻視だろうけど薄ぼんやりと目元が輝いた二体の機械の神が和樹の脳裏に浮かんだとか浮かばなかったとか。

 

幾らなんでも、こんなくだらない理由は嫌な二体だったのだろう、勿論神の模倣品としてのプライドの為であるが、そんなプライドが無くても痴話喧嘩に使用されるなど御免被る、もしかしたらデモンベインとリベル・レギス、そして和樹の三者は酒でも酌み交わせば稀有な深みで互いを理解しあえるかもしれない。

 

色々な意味に於いて。

 

 

 

 

 

そして、和樹の接吻に火がついたのか、それとも先ほどのエセルドレーダによって欲情していたのか。

 

済し崩しで始まってしまった、いや・・・・・何が。

 

「和樹、そこはダメェ、舐めるでない、くっ、はっ、ああああああああっ」

 

「如何です、式森様、私のお口は」

 

和樹がアルを自分の上に跨がせて股間に舌を這わす、エセルドレーダが和樹のものを口で奉仕する、美少女二人、和樹、君はどこかの王様かい。

 

本気でいつか誰かに後ろから刺されるよ、多分絶対。

 

「ッ、クハッ、あんっ、あああっ、くる、きちゃうっ、もう駄目、もう駄目、和樹、ダメェェェェ」

 

「ネクロノミコン、ふふっ、こんなのはどうかしら」

 

妖しげな笑いを漏らしてエセルドレーダがアルと和樹の結合部に舌を這わせ、其の様に悦びを見出している。

 

常識では計り知れない行為に耽る三人、この環境は大いに問題がありまくるだろう。

 

勿論、問題があるのは当事者の中では和樹だけだろうが、世間的には二人の美少女のほうが拙いが年齢的なことを考えると鬼畜な和樹君のこれからの性生活が思いっきり不安である、ロリペドのみが和樹の趣味ではないとはいえ、それなりに将来が心配になる。

 

それはさておき。

 

アルが狂ったように身を震わせ、嬌声を挙げ、達したのか、それとも気絶したのか、荒い息のまま力が抜けていく。

 

そのまま呼吸を整えるように蹲り、体を痙攣させている、意識も朦朧としているようだった。

 

そしてエセルドレーダが自ら和樹の上に跨り、腰を振るう。

 

「式森様、あああっ、このエセルドレーダの体を存分に、久方ぶりに私の体を堪能ください」

 

こっちはどうもアルと違ってかなり達者たらしい。

 

と言っても初めては和樹なのだし、回数もアルより少ないのだから才能のなせる業だろうが。

 

「くっ、はっ、和樹様、和樹様、カズキサマッ、私の中で、私の中に下さい、私の中で感じさせてください・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああああああああああっ」

 

エセルドレーダも膣に和樹のものを受けて果てたのか、ぐったりとして床に伏す。

 

人外の精霊といえど二人で8回も精を注ぎ込まれれば動くことも出来ないようだった

 

アルとエセルドレーダが白い液体に汚れて重なり合って眠る姿は妖艶を通り越していた。

 

 

 

 

 

で、翌日の朝。

 

やたら肌に張りがあり、普段不健康そうな真っ白の肌の色も血色が良くなり、そしていまだ何か求めるような目をするエセルドレーダと、やっぱり不機嫌そうなアル・アジフ、そして自分で調理した朝食を前に(二人の精霊が自分が作ると張り合うので、被害が出る前にさっさと和樹が自分で作った)

 

「で、何故汝がここに居座って朝食をとっておる、さっさと江美那のとこに戻らんか、汝のマスターであろう」

 

正論である、魔道書は術者と一心同体離れることはまず無い。

 

「一つずつ答えましょうか、ネクロノミコン、まず江美那様の仕事が終わりましたので、契約を解除いたしました、暫くはおとなしくされるようで」

 

出来るかなぁ、あの人が、とか和樹が考えつつ。

 

頭をよぎったのは昨日葉流華を連行して行ったときに貼り付けていた冷徹な笑み、あれを見て其の人物が大人しくするなどと言うたわごとを信じられるはずが無い。

 

一騒動でも二騒動でもおかしても和樹はおかしいとは思わないだろう、起こさないほうが現実を疑うかもしれない。

 

そんな和樹の思考はさておいて会話は進行していく。

 

不機嫌満々なアルと上機嫌満々なエセル見事に好対照な二人である。

 

「次に、次のマスターに和樹様をと思いまして、ここに来た所存です」

 

「認めんぞ、妾は、じゃからさっさと出て行け」

 

アルの抗議をシカトしてエセルドレーダが。

 

「知りません、貴女の意見など、これは私と和樹様のことです」

 

またまたヒートアップするアル、今度は同じ手じゃ止まらないかな、とか考えて目の前の現実を拒否する和樹。

 

このまま行けばまた昨日の召喚騒ぎだ。

 

「それに契約は完了しました、昨夜私の唇を貪り、私の中に精を放って頂きました、これ以上の契約はありません、というか契約破棄は不可能です、というわけで魔道書と術者は共にいるのが必然、私もここに住みます」

 

この時点でアルが切れた。

 

憎悪の空より来たりて。

正しき怒りを胸に。

我ら魔を断つ剣を執る。

、「その為、私の学校への転入が決まりました、貴女はどうしますネクロノミコン」

 

瞬間、アルの体が硬直して。

 

「どういうことじゃ」

 

殆ど反射的といってもいい速さでエセルに問いかけていた、しかも声音に若干の喜色を混ぜて。

 

「江美那様が、一年私を連れまわしたことへのお礼と聞いております、ついでに貴女どうかと、これは私がここに住む交換条件です。私としましては貴女が学校に来るのは不本意ですが」

 

そして目まぐるしくアルノ表情が変わる、一瞬戸惑い、疑い深そうにエセルドレーダを眺め、何故かほほを染め、身をくねらせる、思案するように天を仰ぎ、ブツブツと何かを呟いたと思いきや、エセルドレーダの手を取り。

 

「良かろう、共に暮らそうではないか、ナコト写本」

 

なにやら打算と葛藤と、欲望とその他諸々の戦いの後、腹に何かありますよといった表情でエセルドレーダと握手していた。

 

エセルは嫌そうに握手を返していたが、断られたらここに住めないので話を持ちかけた彼女に否は無い、和樹としてはこの二人が協力しているのは始めてめいるのでその会話の内容はともかく、何故かちょっぴり感動していたりする。

 

聞き捨てなら無いのは。

 

転入、アルとエセルドレーダが、学校に。

 

「えーっと、どういうことで」

 

「和樹様、いえマスター今日から葵学園のマスターのクラスに転校ということになっております、よろしくお願いします」

 

どこか遠くでそれを聞いていた和樹は。

 

「何をしておるエセルドレーダ、制服を買いに行こうぞ」

 

と妙にはしゃいだ声で、どうやら前々から着たかったらしい、どうせ特注だろうけど、きっと準備されてるんだろうなと頭の片隅にそんなことを考えつつ、満面の笑みで喜んでいるアル・アジフの姿を視野に納めながら急速に精神疲労が高まっていく和樹がいた。

 

内心、ほらやっぱり騒動の種をまいてくれてるじゃないかと突っ込みつつ。

 

 

 

 

 

ちょっと後

 

「ネクロノミコン、そろそろお互い名前で呼びませんか、わたしのことはエセルドレーダと」

 

「それもそうじゃのう、アルでよいぞ」

 

「ええ、いちいち使い分けるが面倒らしいです作者が」

 

「根性ないのぉ(ほっとけ)、そうじゃエセルドレーダ言っておくが、汝は愛人じゃぞ正妻は妾じゃ」

 

「何を戯れを、マスターの気の迷いでしょう」

 

エセルドレーダが妙に怖い笑顔を浮かべつつ反論する。

 

「これが証拠じゃ」

 

と左手の薬指につけられた、銀の指輪を誇るように掲げる、表情は勿論のこと勝者の笑み。

 

「和樹から貰った、妾への愛の証じゃ」

 

「くっ・・・・・・・・・いいです私も買ってもらいます、プラチナで」

 

悔しそうに俯くエセル、だが諦めるなど海岸の砂粒一個分もないようだ、でもこの時点では負け犬の遠吠えに近い、実情がどうあろうと現実的に勝利しているのはアルなのだから。

 

「ふふん、しかし最初に貰ったのは妾ということを忘れんようにな」


後半


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