で、教室。

 

沙弓が迎えに来るまでにエセルドレーダと共にどこかに行ったアル、恐らく風椿邸だろうが「みなには黙っておるように」といわれ、朝からいないことにいぶかしんだ沙弓にも何も言わず登校したのだが。

 

和樹としては内心どうしたものだろうかと悩みまくっていたりする。

 

HR

 

何か苦虫を潰したような顔+微妙に恐れ引き攣った顔で(多分アルたちの転校で文句を言ったところで江美那に懇切丁寧に説得を受けたためだろう、現在奴隷契約執行中のなので端から拒否権など持ち合わせていないのだし)

 

「うちのクラスに転校生だ、というか私は知らんが何で今年に入って4人もこんな腐海のようなクラスに転校させるのが理解を超えているんだが」

 

確かに、裏で力が働いているんじゃなきゃ、学校側だって、こんなクラスに生贄を差し出すように入れたくは無いだろう。

 

人格が汚染されるのは真っ当な教育者としては出来るだけ防ぎたい。

 

「おい、入って来い」

 

で、入ってきたのが、二人とも色の白い、銀髪と黒髪、翡翠の瞳と漆黒の瞳の差があるが、どちらも年齢にそぐわない妖艶な容姿の美少女、しかもロリ属性。

 

沸いた、特に男子が、そして瞬間和樹を睨み付ける、既にクラスの半分以上喰っている事は、夕菜以外は周知の事実、これ以上この鬼畜に生贄を捧げるものかと殺気を迸らせている。

 

女子は、大体知っているので驚いたくらいだったが、それでもエセルドレーダには驚いたし、単純にアルが入ってきたことを喜んでいるのもいたが、涼とか。

 

「ほれ、一応自己紹介」

 

「フム、式森アルじゃ、旦那共々よろしく頼むぞ」

「エセルドレーダ・式森です、よろしくお願いします」

 

アルはふてぶてしく、エセルドレーダはちょこんと可愛らしく頭を下げる。

 

アルの不遜な態度は背伸びした可愛らしさがエセルの仕草は清楚な可愛らしさがあり一般人でも激しく萌え、何が一般人と特殊な人たちを区別するかはわからんが。

 

まあ、そんな行為の差は些細なものというか誰も気にしちゃいない、それよりもっと重大なことが在り、そしてそれを許容できない人間がクラスの約半数に達しているということだけだった、その殆どが有象無象だろうけど。

 

彼女達の容姿でも可愛らしさでもなく、言葉、つまり“式森”の姓、それの意味するところ、しかもあからさまに血縁上の繋がりは薄そうな容姿(特にアル)と名前(今度はエセルドレーダ)、それを目にして親戚とか血縁者として処理できるほど、このクラスの男子生徒+一名は人間が出来ていなかった、養子と言う可能性もあるのに其のあたりは最初から考えていないのだろう。

 

というかそんなものを考える思考力など欠片もありゃしない。

 

自制、理性、倫理、道徳、節制とか言う美徳的な言葉など産業廃棄物以下の価値しかない連中である、特に最近暴走気味の男子は、女子にも若干其の傾向はある、どこまでいっても彼等はB組なのだから。

 

因みに作者は腹が膨れていない生物が自制や倫理や道徳などといったものは必要とは必ずしも思っていないが、どんな世界を見渡してもモラルなどと言うものが尊重されるのは富国だけなのだから、これも戯言。

 

とその男子陣に加えて、臨界直前の核爆弾より危険な某デビルキシャー(某でもなんでもない)無論、切れた、真っ先に、完璧に。

 

「式森、誰が式森なんですか其処の魔女さん達。あんまりふざけているとケルベロスの餌にしますよ。さぁ、正直にもう一度名前を言ってください。そしてあなたたちは和樹さんの何なんですか、和樹さんは私の旦那様なんです。貴方達との関係を知る権利があります」

 

淡々と語るが、あふれ出る怒気で精霊が呼び出されているのか空気中がスパークしている。

 

どうでもいいが夕菜はケルベロスを地獄の番犬を呼び出したいときに呼び出せるのだろうか、かなり上位の魔獣なのだが。

 

「何じゃ、この妄想ヒステリーストーカー女めが、和樹は妾の旦那であるぞ、汝のものではない、まぁ妾だけのものでもないが」

 

微妙に他の女子も旦那の部分で反応した、どうでもいいけど。

 

最後の言葉によってアルに不快感を持つものは無く其の夕菜の怒りの口上にはかなりの不快感を買っていたのだが、何気に女子に嫌われている夕菜である。

 

和樹の独占思考から嫌われるのは当たり前のような気もするがその辺はスルーしても女には好かれない思考をする女の子だと思う(いや、悪意抜きで)

 

「マスターは私たちの主人です、貴女に関係をとやかくいわれる筋合いは御座いません、これは双方合意の上での契約です。よって貴女に関係を話す必然性も感じません」

 

大胆不敵というか豪胆というか、気死してしまいそうないような瘴気を叩きつけられながらもこの魔道書娘達怯む事が無い。

 

この程度で怯んでいたら偽神の召喚をしてまで痴話喧嘩をしようとなどするまい、絶対に。

 

「どういう関係だと聞いているんです。貴方達に黙秘権なんてありません聞かれたことを素直に答えればいいんです。それに契約って何ですか!!!!

 

只少女達がもとよりどんな説明をしたところでニトログリセリンを注ぎ込むのと同じ意味にしか捉えられない精神状態の夕菜には正論の如く聞こえる理屈など通用するわけが無い。

 

言葉を重ねれば其の分だけ怒りが増幅するのは確実だろう。

 

「「妾()はマスター(和樹)を助け、和樹(マスター)は妾()を使い、互いに支えあいそして私達(妾達) は未来永劫マスター(和樹)が朽ちるまで共に歩くということです(だ)」」

 

口を揃えて、一片の迷いも無く言い切る、それは契約の誓い、それはあまりに純粋で、見ているものの心を打つひた向きさがあった、彼女達の未来は全てを主に委ね、主の未来を共に歩くことを誓った誓約。

 

婚姻などと言う人が作り上げた制度とは一線を画した純粋な想いの言葉、今の彼女たちの存在の在り方の言葉、永劫を生き永劫が待っている彼女達が長き生で見出した言葉。

 

純粋、外道の精霊が、邪悪を記した精霊が得た純粋、混合物の無い感情の本流の言葉。

 

他者が言っても同じ意味にはならないだろう、彼女達は既に覚悟している失うことを、自分達よりも早く愛する者を喪う事を、其の決意の上でこの言葉を吐いている。

 

その意味がわかる女生徒は胸を打たれ、共感を産んだだろう。

 

沙弓や和美など涙すら浮かべている、死ぬことが定められている沙弓達には無い苦しみが死が無いという事で与えられている彼女達はほぼ絶対に和樹の死を看取って永劫を生きることを運命付けられている。

 

だけどそんな感情を揺さぶる言葉も理解できない人間はいるし、先ず端から聞いていたかどうかが疑わしいのが男子勢+1.

 

というか彼方此方から「式森に騙されているんだ」とか「弱みを握られているんなら警察に行くべきだ」とか「この鬼畜め!!いたいけな少女を」とか罵声が飛び交っている。

 

何もかにもがぶち壊しだ。

 

それに。

 

「何が未来永劫ですか、そこは私の席です。貴方達のようなお子様なんか直ぐに捨てられて終わりです。いや、捨てられるも害虫にそんな価値はありませんし和樹さんは害虫なんかを愛しません。和樹さんは私を愛しているんですから、大体なんで和樹さんが貴女のような害虫をかまったりするはずが無いじゃありませんか」

 

かなり来ている、いろんな意味で、文字通りいろいろ来ているんじゃないだろうか、精神病の進行具合とか。

 

 

 

 

 

因みに即座にB組男子が実力行使に出ないのは夕菜の瘴気に当てられたのとあちこちから生じる牽制の殺気のためであったりする、少しは学習したらしい。

 

あくまで少しだろうけど、さっきの発生源は勿論女子達である、特にアルの台詞を台無しにされた沙弓がかなり危険なレベルで怒りを募らせていた。

 

ついでに和樹は疲れたように突っ伏している、ここまでいきなりやらなくてもいいだろう、と。

 

まだ諦めていなかったのか、いずれバレルというに。

 

内心先程のアル達の台詞はこの鬼畜少年にも来るものがあったようで薄っすらと目元に浮かんだ液体を誰かに見られたくないと言う少年特有のプライドもあったのだろうが。

 

もう暫くしたら外野陣も介入を開始しだすだろう。

 

 

 

 

 

「誰が貴女を愛しているのです、マスターの何がお分かりになりますか、私の記憶が確かならばここ3年の間に貴女の存在は知りません、その方が何を吼えているやら、貴女こそマスターにまとわり付くパラノイアです。それに愛とはそんな軽く使う言葉でもないでしょう。軽く使えるという事は貴女の想いがそれだけ軽いという事です」

 

いつもの無表情の淡々とした喋り口調だが、微妙に険がある。

 

確かに害虫呼ばわりされたら気分を害するだろうが、夕菜は真っ向から喧嘩を売っている、売られた喧嘩は高値で買うのがエセルの流儀、無論アルとて同様の気性を保持しているが其の手の執念深さは最古の魔道書に及ぶところではない。

 

エセルは怒っているのだから、理不尽な欲望で自分を、そしてマスターを侮辱した女に対して、表情は冷徹な微笑を、心は業火の感情を、それがエセルドレーダ。

 

「私は10年前に約束したんです、和樹さんのお嫁さんになるって、あとから出てきた小娘は引っ込んでなさい、それに貴方達が和樹さんの何がわかるって言うんですか」

 

というか、あんたも久し振りに会った人間の何がわかるんだ、他人の理解それは人間が生きてきた長きに渡り論ぜられた永遠のテーマ。

 

判ると解答できる人間は大嘘つきか誇大妄想狂のどちらかだ、100年連れ添っても完全に他人の理解は不可能だろうから。

 

「判らん、あの色情狂の、節操なしの浮気者のロリコンのペドフェリアの妾の旦那のことなぞ判らん。だから共におるのだろうが。判りきった人間など共に歩く価値など無いわ。ただ、妾を愛してくれることは判っておる、それだけで十分、それ以上は望まん」

 

アルが心の底から吼える、妾の愛を汚すのは許さんとばかりに。

 

他人を愛するといった行為は他人を知りたいと思うことから始まるという、ならば完全に相手のことを知り尽くしたのならそんな相手を人間は愛せるか。

 

否、愛せないだろう、他人を知ることが理解しようと勤めることが愛なのならば他人に関心を失ってしまえば愛は潰えてしまうだろうから。

 

まぁ、こんな愛情についてのカタリなどそれこそ戯言だろうけど。

 

戯言にだって価値はあるだろうよ。

 

閑話休題、現実に戻るとしよう。

 

「誰が、誰を愛しているんですか寝言は寝て言いなさい。寝かしてあげてもいいんですけよ、それこそ永久に。ああでもクスクス、害虫なんて殺虫剤でポイです,お寝んねする余裕も無い位駆除してあげます」

 

笑い声がいい感じに壊れていて、聞くものの恐怖を否応にもあげる。

 

そんなことを無視して、というか妄言に怯むほど魔道書の化生は弱くは無い。

 

「和樹が妾をじゃ。それに汝、和樹に愛していると言われた事でもあるのか。んっ、言うてみい、小娘」

 

あからさまに挑発する、ついでにアルは和樹が夕菜を敬遠しているのを知っているし、本音で嫌っているのも知っている、其の原因を知って頬を綻ばせたものだ。

 

因みに情報源は杜埼沙弓。

 

何気にこの二人はタッグを組んでいます、最近描写されないけど。

 

そのような状態でしか和樹と接していないから言われたことなど一度たりとてありえない、なので、答えられるわけが無いのだが。

 

「何を言っているんですか、和樹さんは私のことを大好きなんですよ、そんなこと言葉にする必要も無いくらいにです。大体貴女が和樹さんを誑かしたんじゃないですか,あなたが何を言おうと和樹さんは私のものです、大体前に出て行けっていったのにまだ居座っていたんですね図々しい。あそこは私と和樹さんの愛の巣なのに!!!

 

ここまで言えるとかえって立派である、というか諦めたんじゃなかったのか同居。

 

あれから和樹の部屋に訪れたことも無いくせに。

 

「何妄言を吐いておるか!!あそこは妾と和樹の部屋じゃ「私もいます」、汝が入り込む余地など砂粒一つありはせん。大体何故お主を住まわせなければならんのか」

 

だんだんアルもヒートアップしている、何気にちゃっかりエセルが自分の存在を主張していたが譲れないところなのだろうか。

 

「然るに、貴女はマスターとどのようなご関係で、まさか10年も前の約束などという世迷いごとを言ってマスターの妻を名乗っているのではないでしょうから」

 

どうやらエセルドレーダの立腹具合もかなりきているようだいつに無く饒舌だし、しかも毒を含みまくっている

 

 

 

 

 

というか傍観して暴言を吐いている男子、この際無視しておこう、どうせ雑音だから。

 

 

 

 

 

女子はというと、それぞれ近くにいる、同類(つまり和樹関係)と話していた。

 

一組抜粋すると、席の前のほうにいた、中田一子、伊庭かおり、松田和美の会話である。

 

ただ単に席が前側というだけであるが。

 

「アルちゃん、切れているわね、それにエセルちゃんだっけあの子。あんまり知らないけど、あんな表情出来るのね,前見た時は無愛想の極みだったのに、少し引き攣っているは頬が」

 

何気に付き合い長い和美、一年前にエセルと会っているらしい。

 

「そうなの。私としては宮間さんの表情のほうが、あれは子供見たら泣くじゃすまないわ、確実に心の傷よ。それにムカつく」

 

本音、特に後半を述べている一子、確かに只でさえ(納得はしている)自分への寵愛(彼女の場合、自身の奉仕)の回数が少ないのに、それを独占する発言、しかもアレはまるで和樹を物扱いしている、都合のいいお人形として、そんなこと許せるわけが無い。

 

追記すると今のデビルキシャーモードの夕菜の表情は悪魔の化身といわれて万人が納得できるものだと書いておこう、それ以外表現の手段が思いつかない。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・(ガチャ)

 

二人の会話の間に聞こえた妙に無骨な金属的な音、まるで銃をスライドさせるような。

 

「「先生、その懐からの音は」」

 

聞きたくないけど聞かないといけないんだろうなぁ、という諦観を滲ませて、一子と和美が、微笑んでいる、というか微笑みという名の無表情を浮かべ懐に手を入れている、一応、諦めているけど、自分たちの担任教師に対して問う。

 

かおりは微笑を浮かべたままで。

 

「なーに、ちょっとお仕置きだ。宮間か、いい声で鳴(悲鳴)いてくれ。耳心地のいい声で」

 

と懐から、愛用のCz75を取り出す、そしてそれを止めるために一子と和美が奮闘していたりする。

 

やっぱり和美は苦労性の足の下に生まれているのかもしれない。

 

 

 

 

 

で、口論は段々ヒートアップしていた、もう口論かと疑問に覚えるレベルだ、ただの言い合いだろう、しかも露骨な、というか和樹の秘密をかなり盛大に暴露していた。

 

和樹はピクピクと痙攣していた、嬉しいやら、恥ずかしいやらで。

 

「大体、男も知らん小娘が,でかい口を叩くでない!!!

 

ふふんと、夕菜を小馬鹿にしたように鼻で笑う、この時点でスパークはプラズマに変わっている。

 

「だからなんだって言うんです、私の体は和樹さんに捧げるって決めているんです、お子様に言われたくはないです。飴でもあげますから立ち去りなさい、この毒入り飴を。それにもう少しで貴女死ねますからこれを舐めたほうが楽に逝けますよ」

 

そして懐から本当に禍々しい包みにくるまれた飴を取り出す、何で携帯しているのだろう。

 

「誰が、お子様じゃ、和樹にはすでに抱かれておるわ、毎夜誰があの男の獣欲を受け止めていると思うておる、昨夜も精を流し込まれたわ」

 

ヒート−アップしているのかとんでもないことを口走るアル、事実だが和樹の人間性を考えるとこの日和樹は衆目の元でロリペド野郎と宣告されたようなものだった。

 

「私も戴いております、なかなか甘美なものです」

 

こっちも冷静じゃない、表情には明らかに嘲りが含まれ挑発している、怒りに震える夕菜を肴に暴言に対する報復を行っているのだろう。

 

和樹は頭を既に放心していた、女子にはばれているとはいえ、男子どもはどうでもいい。

 

この時点で夕菜の顔がどす黒いほど真っ赤に変色している、しかも周囲の空間があまりのエネルギーに歪んでいる凄まじいの一言に尽きる現象を起こしていた。

 

ここで厄介なのが覚醒していた、というか今までおとなしく、ブーイングだけでいたのがかなり不思議だ、突っ伏して現実逃避に走っていた和樹が、あの二人が組んでいればある程度は大丈夫と踏んで突っ伏していたんだが、それを許してくれないのが復活した。

 

というか今の今まで和樹が精神的以外で実害をこうむっていないのは奇跡に近いだろう。

 

夕菜の牙とか、クラスメートの攻撃とか。

 

それほど凄まじい瘴気(発生源夕菜)と闘気(アルとエセルドレーダ)、殺気(女子有志、主にかおり、対象は夕菜、男子一同)が渦巻いていたということか。

 

「式森、俺の耳が難聴じゃなければ、あそこにいる三人は、お前のことを争っているように聞こえるんだが」

 

顔に柔和な微笑を目に嫉妬に濁り切った瞳を心に悪意を溜め込んだ様子の仲丸が和樹の肩を叩き、勿論目的は最後通告か死刑判決を告げるためだろうが。

 

「俺たちは親友だ、このクラスのみんなとは仲間だ、その中で隠し事はいけない。心をさらけ出し、秘密を公開すべきが円滑な人間関係の育成には不可欠ではないかと最近考えるんだ、式森おまえは俺の親友だ、だから問いたい、あの三人は何で争っているんだ」

 

口調はさわやかに、表情は凛々しく、心はヘドロよりも汚れている表情で中丸が本心から540度離れたことを、滑らかに口にする。

 

こいつに比べると、ウエストが立派に見えてくる和樹だった、あいつあんまり悪意は無いし。

 

「聞いたところじゃ、夕菜ちゃんとは仲がいいようだな。それに転校生二人ともただならぬ関係のようじゃないか、幸福はみなに話し、友の喜びを分かち合うべきだとは思わんか」

 

ここまで虚言を紡げるのはたいしたものだと感心するが、和樹にはその心の奥底が、まるでガラス張りのようによく見えた、それはもう鮮明に。

 

ついでに、ウエストが聖人に見えると訂正する。

 

「えっと、言葉通り」

 

もう、無駄とばかりに白状する、大体どのように言い繕ってもこの男は其の言い訳を信じたりはしないだろう。

 

「そうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

何故か静まり返り。

 

仲丸が。

 

「殺れ」

 

と呟いた。

 

瞬間、仲丸本人も手にナイフを持ち、周囲にいた男子全員が手に手に獲物を持ち、呪文を詠唱する、というかお前ら軍用や、戦術級の魔法を室内で使うな、唱えるな。

 

勿論、女子連中が立ち上がって、かおりまでそれに対する防御+制裁を加えようとするが、普段に倍する瘴気を溜め込んだ、仲丸たちは、なんと防ぎそれでも和樹に迫る。

 

 

 

 

 

で、ちょっと前。

 

アルの性交渉暴露を聞いた、夕菜。

 

一瞬で、理性、何それ?という状態になっていた。

 

デビルキシャーバーサーカーモード(最終形態)

 

「何を言うんですか、和樹さんと何をしたって言うんですか。そんなこと認めません、大体私が貴女のような淫魔の妄言には誑かされません。和樹さんを穢す発言をした貴女を生かす価値もありません」

 

身にまとうようにプラズマが収束し、体が光を放つように発光していく。

 

「御託は聞き飽きました、和樹さんに付きまとう毒婦は、妻である私が処分してあげます、魂まで燃え尽きて消えなさい」

 

そして異常なほどに高まる魔力、破壊の化身の姿、人の身の魔性存在。

 

「ザラマンダー」

 

夕菜の手から放たれた灼熱の竜はそのままアルとエセルドレーダに襲い掛かった。

 

灼熱の炎の竜、ザラマンダーを其の精霊の姿のままの召喚、完全に生物など蒸発してしまう炎を放っている、最早理性なんて言葉は遠い銀河系にでも起き和されてきたのだろう。

 

勿論容赦と言う言葉も。

 

 

 

 

 

瞬間、アルとエセルドレーダがともに張った魔法障壁があっさり・・・・否、せめぎあい、吹き飛ばされた。

 

二人掛かりの魔法障壁を。

 

「どうしました、害虫さん、そんなものですか。立ちなさい、楽には死なせませんよ」

 

そう言って、微笑む夕菜が手に魔力を溜め掲げていた。

 

行動から台詞から全てが完全に悪役な原作ヒロイン(方々で凛か千早が真のヒロインやら何やら言われてはいますが)、このSSでヒロインとして扱われるのはかなり確率は低そうだ、つーか絶無。

 

しかし人間離れした魔法力だ、魔道書は主がいる状態であるならば強力無比の魔術の使い手となる、それこそ偽りであろうと単独で神の召喚をやってのける魔法力、人間のそれと比べるほうがおこがましい、しかも最古と最強の魔道書かみにも匹敵するような力を保有しているのだから。

 

単純に考えてデビルキシャーの魔法力=嫉妬力は悪魔を超えているのかもしれない。

 

只、愚を冒している、彼女は以前知っていた筈なのだから、彼女が愛していると公言してはばからない男は誰を愛しているか、誰を傷つければ激昂するか、そんなこと始めてあったときに経験していたはずではないか。

 

まぁ、そんな都合の悪いことなど忘却の彼方どころか記憶シナプス一本分も形成せずに素通りしていたのだろうけど。

 

故に彼女の第二撃は二人の魔法力を上回る水の攻撃はそれを超える雷により電気分解を強制的に行われ霧散した。

 

攻撃に入る刹那に間に入った式森和樹当人と杜崎沙弓の手によって。

 

九頭 左竜雷掌

 

因みに沙弓が間に入ったのは作者が最近彼女目立ってないなぁと思ったわけだからではない、彼女は彼女で自分の婚約者に対する侮辱発言、夕菜の言葉は式森和樹と言う人間性を否定している、からかなり怒り心頭なのだ。

 

そして夕菜の水を電気分解出来る事から彼女とて和樹より弱い訳でもない。

 

いや断言すると魔法を使える分単独であれば彼女は式森和樹よりも強い、魔法と言う選択肢を持つ分戦術性が和樹と比べてかなり広いのだから。

 

しかも彼女の性質は“大地”、強化し受け止め慈しみ育む、母なる大地の恩恵を受ける高位の魔術師、戦いに特化した性質ではないが汎用性が広い性質、九頭竜と魔術の併用を用いれば彼女は式森和樹に匹敵する。

 

単純に体術を比較すれば和樹には遠く及ばないだろうが、現に今も防御に魔法を使い攻撃に全ての気を回して和樹に匹敵する雷を掌に集約させている、彼女は底が知れない。

 

無論、それは式森和樹にも、二人の師に当たる風椿葉流華にも言えたことであろうが(因みに葉流華は現在自室の寝室でボロボロの姿で震えている、何か恐ろしいことを体験しつくしたようで暫く心の傷から回復させるのに休養が必要なようだった)

 

で、勿論アル達を庇うと面白くない人間(?)が約一名いるわけで、しかも更に逆鱗に触れたのか先程より更に魔法力を増大させている、本当に底が知れないのは間違いなく彼女だろう、断言する。

 

「何で邪魔するんですか。害虫を駆除しようとしているだけなんですよ。和樹さんは其処で見ていてください、和樹さんを誑かすなんて害虫よりも性質が悪いです。和樹さんは私だけが好きな筈なのに。それに杜崎さんそう言えば貴女も害虫さんでしたね、忘れてました一緒に駆除しちゃいますね、邪魔ですから」

 

もう完全に世間の倫理なんて言葉は彼女の意識に残っていないのだろう、かなり危険度の高い言葉がぽんぽん飛び出している、完全に切れているのだろうがこれほどの言葉を吐いていたらもし和樹が夕菜に慕情を寄せていたとしても、今この瞬間に全ての感情は恐怖に染まるのではないだろうか。

 

でも、自分の放った魔法が防がれて疑問に思わないあたりは思考力が低下しているせいだろう、普通防げるわけがないのだ、津波にも匹敵する威力を備えた水流を霧散させることなど。

 

「貴女こそが害虫よ。宮間の長女。和樹を穢し侮辱されることは甚だ不愉快よ」

 

沙弓の軽口に返答はなく、そして再び、夕菜が右手を掲げ、怒りの篭った声と共に。

 

「シルフ!!!全てを切り裂いてしまいなさい!!!!

 

次は暴風、今度は炎を同じく明確な実態を持たない、霧散させるのは不可能、鋼鉄でもあっさりと切り裂いてしまいそうな研ぎ澄まされた暴風が沙弓に迫る。

 

「本当に、私を殺す気なのかしらね彼女は。何で教室で殺し合いをしなくちゃならないのか」

 

諦観を含ませた言葉、沙弓は気の力と魔法の力の双方を守りに回すが先程以上の魔法力を伴ったこの風の一撃を防ぎきるには心もとない、其の表情に表れる恐れが彼女に自分への被害を既に覚悟していることがわかる、和樹もこれほどの風を防ぎきるのは荷が重い。

 

単純な防御力ならば沙弓のほうが高いくらいなのだから、死にはしないだろうが重傷は免れ得ない威力が迫る。

 

だが、誰かを忘れている、あの二人はまだ戦線離脱はしていない、只吹き飛ばされただけ、追撃の一撃を和樹の守りにより大したダメージは受けてはいない、彼女達の本領は彼女達自身の戦闘力ではない、“本”、それが彼女達の本質。

 

本とは知識を与え、使われる物。

 

「和樹、行くぞ」「マスター、参ります」

 

沙弓を庇い風を受け流そうとする和樹の体が発光し、其の光と荒れ狂う暴風の為周囲の視界が一瞬悪くなる、丁度和樹達のいる辺りは粉塵が立ち込め和樹達の姿を覆い隠してしまっていて状況が窺えない。

 

 

 

 

 

粉塵が晴れた先にいるのは本のページで構成された大きな純白と漆黒の翼で沙弓の体を覆い隠した黒く長い髪に幾筋かの銀のメッシュが入り、身にまとう黒のボディスーツに露出する褐色の肌の男。

 

顔つきも見覚えがないが僅かに和樹の造作が残る姿。

 

和樹のマギウス・モード(二体の精霊同時契約状態)

 

勿論、マスコットサイズのアルとエセルも和樹の翼の内側で防御の余波で吹き飛ばされないようにしっかりとしがみ付いて存在していたりする。

 

この姿の和樹は正に知識の具現、体術、魔術を併せ持つ最強戦闘状態。

 

対人間戦闘状態とは決して言えない対軍隊、対人外戦闘状態、それがアル=アジフでも十分な戦闘能力を得る和樹が“ナコト写本”であるエセルとの二重契約状態、無論この状態は単純な戦闘能力の倍加と言えるものではないだろうが。

 

早く言えば身体能力、魔法力の増大は起きていない、変わったといえば外見が変わったという事だけ、だが明確に変化が生じたのは知識、“ナコト写本”が保有する知識、それは確実に術者を強化し其の使用者の能力の汎用性を増やすだろう、早く言えば和樹はエセルを得たことで知識と言うバンクをもう一つ保持した状態となっている。

 

「大丈夫、沙弓」

 

和樹が大きな白黒の翼、マギウスウイングを広げ守っていた沙弓に問いかける、それは何時もの和樹の口調となんら変わらない。

 

防ぎきれたことへの満足から薄っすら笑みすら浮かべている。

 

沙弓は僅かに驚いたような表情になり変化した和樹の姿を見たが、肩に留まったエセルの姿を目にして納得がいったのか、表情を綻ばせて口を開いた、既に夕菜の魔法に脅威を晒され恐れを抱いた表情はない。

 

「和樹。今度はそんな姿になっちゃったの、もう面影ないわよ。アルちゃんの時も面影なかったけど。さて、少しはあの娘に灸でも据えてあげましょうか。いい加減私も立腹よ」

 

「そうじゃな。それに先程から空間が不穏な気配を出しておる。あの娘未だ何かやらかすつもりのようじゃぞ」

 

「マスター。一つ聞きたいのですが彼女は人間でしょうか。どう考えても人の身の魔法力を上回っているのですが。それにこれは・・・・・・・・・・・・・召喚」

 

マスコットと化した二人の少女の精霊が更に膨れ上がる魔力に驚きの声を上げる。

 

現在、デビルキシャーの発している魔力は人の身の限界に近い魔力を発しているのだから、だが、其の魔力が暴走を開始している。

 

正確には彼女を中心にして空間にはこびる魔力が暴走を開始している。

 

それがエセルが言う召喚、空間が軋みを上げ何かをこちら側に呼び出そうとしている力の流れが生じている。

 

これは彼女が行おうとしているのではない、彼女の無秩序に放たれる魔力が周囲の空間に影響を与え、実際、この室内には彼女以外にもかなりの魔力の持ち主がおり、散発的に魔術が放たれている。

 

正に魔力の坩堝と化した空間、この空間自体が何らかの術式となって、何かを召喚しようとしている、其の何かは。

 

恐らくはこの空間にはこびる負の気配に引き寄せられたもの。。

 

其の空間で更に悪魔の妄言は続く。

 

「貴方は誰なんですか。和樹さんを何処にやったんです。それにあの害虫も。私の邪魔をすると消し炭になる程度では済ましません。・・・・・・・・・言え、言わなくてもいいです、私の愛の邪魔をする輩なんかの言葉を聴いても仕方が無いことです燃え尽きなさい」

 

夕菜は、彼女の主観で突然現れた変身状態の和樹が和樹と判らず、彼女独自の理論展開を繰り広げ和樹に向けて灼熱の炎、先程のザラマンダーを上回る、圧倒的火力を持ったそれを繰り出す、既に自分に楯突く人間は全員敵と認識しているのだろうか。

 

だが、その魔法は引き金となった、圧倒的魔力は、この軋んだ空間に完全な綻びを生み出すには十全に過ぎ、異界のものどもを引き寄せる瘴気は十分に。

 

其の綻びは夕菜の魔力を糧にこの空間に顕現する。

 

炎が和樹に迫る中、和樹の視界には夕菜の直ぐ脇に空間の綻びが発生し、其の綻びにいるものがこの空間に漂う魔力を食い、其の根源たる夕菜の魔力を食い、一時的に魔力不足に陥ったのであろう彼女が屑折れる姿がはっきりと見えた。

 

其の光景を視認した、いや視認する以前から和樹は躊躇う事無く両手で空間に凄まじい速さで術式を描き、ある魔術式を完成させて呪を紡ぐ。

 

我に傅き

我に仕え

我が秘術に力を与え

火の秘文字の刻まれし刃が霊験かに

我が命に背く諸々の霊を悉く恐怖せしめると共に

魔術の実践に必要な円、図、記号を描く助けとなれ

ヴーアの無敵の印に於いて

力を与えよ!!

力を与えよ!!

力を与えよ!!

 

 

「来たれ、バルザイ。其の炎の印の刃を顕現せよ」

 

和樹の左手に炎と共に現れるネクロノミコンに記述されし魔術器、バルザイの堰月刀、一樹はすぐさまそれを投擲し迫り来る炎を、魔力を帯びた刀で薙ぎ払い霧散させる。

 

魔術師の杖の代替としても使える青龍刀にも似た刃、和樹が振るう最強の剣にして杖。

 

それは本来斬る事が不可能な炎を断ち切り再び和樹の手元に戻ってきた、投擲武器としても現在の和樹の保有する武器の中では群を抜く、先ず通常の武器と比べるほうがおこがましいのだが。

 

そして、霧散した炎の先には今この世に顕現しようとしている獣。

 

「な、あれはケルベロス。地獄の魔犬ではないか。番犬たる彼奴が何故ここに顕在する!!!

 

アルが其の空間の歪から体を顕しだしている魔獣に驚愕の声を向ける、だがそれは致し方ない、本来地獄の番犬を務める魔獣の中の魔獣、高位の魔性。

 

おいそれと人の世に召喚できるものでもなければ、そもそも召喚に応じるような種類の魔獣でもない、本来の務めがある魔獣は人間の召喚になど応じるはずがない。

 

だが、現実にここにいる、本当に顕在してしまえば洒落にならないどころではない、いやそれ以前に今の和樹といえどケルベロスの相手などは不可能に近い。

 

べヒーモスが小物に見える魔獣、それがケルベロス、地獄の番犬。

 

単純に殺すことを考えれば手段が無いわけでもないが。

 

「マスター。リベル・レギスでは殺してしまいます。どうなさいますか」

 

そう、殺すわけにはいかない、相手は魔獣なれど、地獄の番犬、そう番犬なのである。

 

ケルベロスは地獄門を守る、それは外敵からではなく中にいる地獄の亡者が現世に回帰しないように見張る番犬、魔獣と扱われるが其の役目は神獣に近い。

 

勿論無闇に地獄門の中に入ろうとする不埒な輩を食い殺すことも役目ではあるが。

 

殺したら、ケルベロスが抜けた穴の影響は計り知れない、無論一時的なものではあるだろう、別の獣が地獄の番犬としての任に就くだろうから、だが其の間は、地獄門は開放される、それはどれだけの被害を撒き散らすことか。

 

それ以前に臨まずに強制召喚された形のケルベロスを殺すこと自体が和樹には良心の呵責を覚える、この獣は何も悪くは無いのだから。

 

鬼械神ではケルベロスを殺してしまう、だが見るからに顕現中であるケルベロスは怒り狂っている、当たり前だが無理矢理歪んだ空間に引き込まれて召喚されたのだから怒り狂うのも判らないではない、故にゆっくりと帰還の術式を編み上げるわけにもいかない。

 

ケルベロスほどの魔獣を帰還させる術式など数人掛かりでもどれほど掛かることやら。

 

「和樹、彼奴には悪いが少し痛い目を見てもらって無理矢理押し返すしかあるまい。今ならば彼奴も動けん、本来の力も何分も振るえんじゃろう。何、力押しで押せる程度の状況じゃ、妾としても気が進まんがこれしかあるまい。汝の女もおるのじゃ。はようせよ」

 

アルの言葉は的を得ている、今ならば割れた歪から引きずり出されているケルベロスを何とか押し戻すぐらいは出来るかもしれない、地獄の番犬といえども今ならば。

 

そして、和樹が自分の女、沙弓や和美、かおり等を引き合いに出されて引けるものではない、ケルベロスの放つ瘴気で動けるのは沙弓とかおり程度のものだ、他には何とか動けるのが数人といったところか。

 

意外なことに仲丸は何とか動けるようだったが完全に臆していた、いや臆していないほうが感性的にはかなりおかしい状況なのだが。

 

今この状態で顕在化すれば確実に何人かは死ぬ。

 

故に、和樹は左手のバルザイの偃月刀を凄まじい速さで動かし、先程と同様に空間に術式を描く、先程よりも精緻に、微細に、そして禍々しい術式を。

 

それは神殺しの武器の召喚術式。

 

凍てつく闇の夜に在りし光

我に破壊を!!!

我に力を!!!

闇の式が忌まわしき祝詞が刻まれし術具

全てを貫き苦しみの野に縫い付けんが為に崩壊の一矢を我に与えよ

全てに破壊を!!!

我に破壊を!!!

 

それは忌まわしき祝詞、破壊のみを歌った召喚術式。

 

「顕現せよ、天狼星(シリウス)。闇の光の具現よ」

 

シリウスの弓、ナコト写本に記述されし、破壊の魔弓。

 

和樹は其の魔弓にバルザイの偃月刀を矢の代わりにつがえ、ギリギリまで引き絞り放つ。

 

神殺しの刃に神殺しの弓、だがそれは機械の神が扱いし時、人の身の延長である和樹が扱ってもそれほどの威力は望めない、例え同時に使おうとしていても。

 

バルザイの偃月刀は炎を纏って歪から顕在化されようとしている魔獣に迫り、其の額に直撃し。

 

拮抗した。

 

それだけだった、未だ力はぶつかり合っているが、ケルベロスを押し戻すには至らない、地獄の番犬には未だ力が不足し、押し返すことが出来ない。

 

「マスター」「汝」

 

両肩で二人の精霊が共に声を掛ける、和樹の表情は今も限界までバルザイの偃月刀に力を注いでいる、其の表情は無理な魔法力の放出に耐えかねるような状態。

 

其の表情を見て不安の声を上げる、其の声が物語るのは。

 

もう、もたない。

 

開放されれば蹂躙されるのは自分たち。

 

だが、この場で動けるのは何も彼だけではない、この瘴気の中でも何の影響も持たない存在が一人だけいる。

 

ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ、ドゥッ。

 

響き渡る銃声、それが命中し僅かに押し返されるケルベロス。

 

この瘴気漂う空間こそが本領を発揮出来る夜族、夜の住人、死の徒、ノスフェラトゥ、ブラックブラッド、ヴァンパイア、最強を冠する真祖の吸血鬼一族の末姫

 

伊庭かおり参戦

 

彼女は両手に握った拳銃に直接凄まじい魔力を溜め込み、そう彼女もこの異常事態が近くできた瞬間から、この不浄の魔力を喰らい力を銃器に注いでいた。

 

なにやら出番を窺っていたようなタイミングで出てきたが出る必要が無かったら出なかったのかもしれない、多分、面倒くさいから。

 

まぁ、それはさておきいたって真面目に発砲しつつケルベロスに飛び掛るように移動する。

 

「和樹、お姉ちゃんが手伝ってやるよ」

 

妙に其の台詞に緊迫感が吹き飛ぶがその辺は放っておこう、いたって彼女の表情は真面目なのだから、普段のおちゃらけた雰囲気は欠片も無い、精神年齢がいきなり跳ね上がったようなマジモードの表情をしている。

 

そして撃ちつくしたのか、両の手の銃を投げ捨て。

 

彼女は大きく踏み込み、思い切り体を振りかぶって。

 

ケルベロスの鼻骨を。

 

殴りつけた。

 

それはもう凄まじいまでのチョッピングライト、彼女の細腕から放たれたとは到底思えない凄まじい一撃、何せ今の一撃で拮抗していたケルベロスが。

 

完全に押し返された。

 

彼女の只の一撃で、それは和樹の九頭竜の一撃をはるかに超越する一撃。

 

所詮は人間の和樹の最高威力と、化物の王である吸血鬼の決定的なスペック差が作り出した威力の差、そして吸血鬼の特製は何も其の魔性ではない、其の不死ではない。

 

何より力の強さ、特にこのようなエネルギー源が十分にある空間でなら発揮されるとんでもない腕力、力、力、力、単純な力、それこそが吸血鬼の確固たる特性。

 

彼等を最強に仕立て上げる特性、それが其の腕力

 

それが吸血鬼、最強のノスフェラトゥ、吸血鬼。

 

 

 

 

 

で、その後、空間の綻びは動けるようになったクラスの面子が総出で補修し、幾らなんでもあんな化物が出てこられると困るので一致団結して行動にあたった。

 

これには男子勢も異論が無く、やはり何より自分の命が関わると率先してさえ行動してくれる連中である。

 

かなり強固な結界まで付け足して補修終了。

 

其の痕は有耶無耶の内に疲れたという事でかおりが授業を投げてしまい、帰って良しとかいってしまったので其のまま下校。

 

アルとエセルの初登校はかなりの騒動と波乱万丈を巻き起こして終了した。

 

 

 

 

 

因みにかおりは和樹に頑張ったご褒美として後日かなり甘えまくったらしいが、この当日に於いては帰るなりディステルと共に風椿江美那邸に拉致られ、前日に言い渡された奴隷奉仕をさせられる運命であったのだが。

 


後書き

 

改訂版の中では後半部分は完全に未公開部分が入り始めました第七話です。

終盤でかおりと沙弓を活躍させ、中盤で江美那とエセルを登場した今回でした。

あの式森ファミリー全てが恐れる風椿三女、どのような女性なのかは更に後ほど記述する予定ですが、今回かなりキシャっちゃいました、もうキシャり具合がかなりのものです。

でも元々がああですし、それほど誇張表現をしていないとは思いますが。

 

かおりは基本的には力を出さないタイプなので前回は同伴だけでした、昼間だと大した力も発揮できませんし、今回は昼間だろうと、歪から地獄の瘴気が流れ込んできたから満月の夜並の力を発揮できたということで。

 

では次はメイド編に突入です、でもその前に某所で外伝をおいてからですかね。

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