新たなる来訪者+ご懐妊+九洲

 

 

 

基本的に九峪雅比古の正式な奥さん、正室、本妻、女房、第一夫人となるのは清瑞である、これはある程度正式に認知されていたことで、いろいろな異論が無かったわけでもないが認められていたことではある。

 

色々な異論を踏破して清瑞が其の座に位置したといってもいいかもしれない。

 

戦の際、九峪の護衛と手足となって働いた清瑞が戦いの中、公私にわたる九峪との付き合いで九峪を男として慕い、九峪も清瑞を女としての思慕の感情を抱き、お互いに望み契りを交わした、ここに何の間違いも無い、そうここまでは何も問題は無い。

 

伊雅のおっさんにばれて婚姻を確約させられたのもそれほどの問題ではない、確定するのが遅いか早いかの差程度の問題だろう、九峪が人生の墓場の実感をしたのかもしれないがそれは些細な問題だし、その墓場にある程度望んで突っ込んだのだ、同上の余地は無い。

 

普通ならばそのまま清瑞エンドで末永くお幸せに+伊雅、他の女性から無言のストレスで神経症でも患ってくださいだ。

 

只間違いがあったとすれば九峪は自分が思っている以上に仲間の女性達に慕われており、彼女達の行動力がかなりアグレッシブで手段を選ばないものだったと言うことだ、逆レイプや奴隷志願や愛人志願、性的な関係だけでもいいと望む女性達がいたほどなのだから、その激しさはかなりのものだったと想像に難くない、そしてそれに対する清瑞の苦労の程も、色々の中には暗闘があったとだけ明記しておこう。

 

まぁ、この時代はかなり性的な問題はアバウトだったと考えられるが、九峪のその頃の立場は王侯貴族と同位置、一夫多妻など当たり前、他に何人か女性を囲っていたとしても問題ないし、つまりは妾を何人いようと赦される立場に居たのだ。

 

九峪の倫理観では一夫一婦が当たり前で浮気辺りは当初は考えてはいなかったのだが、そもそもが相手が清瑞の時点でそんな考えが浮かぶほどに命知らずではないだろう。

 

実際彼の浮気は逆レイプから始まっていることだし。

 

清瑞のほうはいずれ自分以外にも妾となるようなものも出てくるのだろうな、と微妙に見抜いていたようだが、と言うか自分が押さえていられるのもそれ程長くは無いと、その辺はこの時代に対する認識の差だろう。

 

まぁ、彼女もその辺が判っていながら浮気したらしたでお仕置きをしたりしているのだが。

 

それを理解して九峪を誘惑する女性陣は性質が悪いといえる、後九峪が本当に情愛を向けてくるものを無碍に扱えないと判っていてやっている奴も、まぁ、それだけ九峪に思いを募らせる女性がいたというわけである、手段を選んでいられなかったともいう。

 

英雄色を好むを実践してくれるような男ならともかく助平ながらその辺の倫理が現代色で染められているし何気に鬼畜、その当時はなっていなかったのだから。

 

それに彼は基本的に人を傷つけるのは嫌う、恋人ならなお更に。

 

その人格、珠洲の心を開かせられるような男なのだから他の女が彼に思慕の感情を抱いても可笑しくはあるまい、やり方は少々過激なのが揃っていたが、少数派であるがマトモに迫ったのもいるし、伊万里とか。

 

因みに現代九州に来ている面子は取り分け行動力が合った人間達で、古代九洲には九峪と肉体関係を持ちながら出遅れた女性達が居たりする、しかもかなり。

 

では、残された女性達が自分達だけが置いていかれたことを承知するだろうか、諦めて他の男を捜そうとしたり、それとも一人の男を思い続けているのか、そのどれでもいいがそんな悲劇のヒロイン的行動に走るような面子だろうか。

 

絶対にない、何らかの方法を見つけ出して自分達も後に続こうとするだろう、それぐらいかなり簡単な理、自身の思慕の情念を動力として、抜け駆けをした女狐達に対する嫉妬を潤滑油として、方法手段を問わずに何が何でも九峪を追跡しようとするだろう。

 

どんな手段を使っても、極一部の存在がどれだけ不幸になろうとも。

 

そうどれだけ不幸で悲惨になろうとも、手段選ばず追いかける、それが真理。

 

 

 

 

 

九峪の餌食、もとい九峪が餌食となった女性陣の中でそれを画策しているのはいた、と言うかいないとおかしい。

 

因みにそれなりに性質が悪いのが揃い踏み、どう性質が悪いのかは押して知るべし、誰をさしても性質のいいのがいるとも思えないが、その中でも性悪に分類される手段を取りそうな面子。

 

九峪を餌食にした女性、一人目。

 

閑谷はどうした藤那、それにお前は方術で動きを奪って騎乗位で膣内射精をさせるのは完全に逆レイプだろう、というか藤那、お前バージンだったろ、なんで其処まで出来る。

 

九峪様が愛しい故だ、火魅子候補の私なら後からでも正室に納まることだって出来た筈なのに九峪様は、私に何の相談も無く・・・・・・戦争が終わったら清瑞を連れて故郷に帰るだと、私とていい女の心算だ、九峪様の重しにはなるまいと考えて身を引いたというのに、珠洲も志野も。

 

これが納得できるか、私は九峪様を追って、責任を取らせてやる(逆レイプで責任を取れと言うのもどうかと)

 

九峪を餌食にした女性二人目、兎音。

 

姉に続いてお前もか、兎音。

 

九峪の目の前で殆どボンテージルック(女としての部分は際どく露出している、何故そんなものを所有していたのかは完璧に謎)で跪き、「ご主人様、愛してくれ、私を好きに扱ってくれて構わない」と懇願して、九峪が狼になって襲い掛かってもこれは餌食になったのは九峪だろう、襲い掛かられたとき、ニヤリと頬が歪んでいたし、酒に酔わしていた。

 

その時の男の理性など彼女の前には何の役にも立たないことだろう。

 

それ以後、献身的な奉仕プレイと持ち前の肉体を武器に九峪と閨を共にした兎音だったりする、回数だけなら姉より上だった、まぁ姉よりはこの妹のほうがアブノーマル度はましだったというのもある、奴隷プレイでも幼女プレイよりはかなりマシだろうから。

 

あの横暴な姉、私を置いてご主人様と共に逃避行の駆け落ちのつもりか。

 

天目もいい度胸だ、私という魔人が一人の男に操を立てるという事を思い知らせてやる、ご主人様もだ、再び会ったら私が満足するまで許しはしない、ご主人様。

 

なんとなく再会したら魔人の体力の続く限りにおいて求められそうな鬼畜王だった。

 

たぶん勝利してしまうのだろうが。

 

九峪を餌食にした女性三人目、虎桃。

 

この娘は案外マトモな手段、酔った勢いである、手段だけはマトモで現状は洒落になっていないが。

 

実態としては酒席で九峪が酔いつぶれて寝ているところに酔っ払った虎桃がやってきてそのままプレイが始まって、恐らく欲求不満だったのだろう、虎桃が気付いて起きたら裸の九峪の腕の中、自分の股間から流れる九峪の精。

 

そして仁王立ちして自分を睨んでいる友達の清瑞、彼女の生涯で最悪に近い目覚めを体感したという、只微かに残る記憶は彼女に快楽を残してはいたが。

 

その後もその晩の快楽が染み付いたのかなんとなくで関係が続きこの二人は純粋に肉体関係だけだったので、九峪を追っていこうとまで彼女は思っていなかったのだが、居なくなって九峪を愛していたと気付いた虎桃、しかも天目同様妊娠していたりする、気付いたのは九峪がいなくなってからとタイミングが悪かった、最近まで泣いて過ごして悩み果て、お腹の中の子供をどうしようかと考えた末。

 

植えつけた種の主が悩まないのはおかしいじゃないかと根本的なことに気付き、(自分だけ悩むのに嫌気がさしたともいえるが)、九峪を追おうと考え出した、内心では。

 

赤ちゃん〜、アンタの父上にはちゃんと会わせてあげるからねぇ、九峪様もちゃんと私の旦那様になってらいますから。清瑞ちゃんには悪いから私が第二夫人かなぁ。順次なんてどうでもいいけどさ。あぁ〜、でも天目様がむこうにいるぅ〜。

 

どうもこの娘の喋りでは真剣味が伝わってこないのは何故だろう、本人はそれなりに真面目な筈なのだろうが、それどころか虎桃としては過去前例が無いぐらいに真面目なんだろうが。

 

幾らなんでも出産、妊娠となれば虎桃といえど真面目になる、女として。

 

 

 

 

 

この三人が、過度にアグレッシブで、常識外れで手段を考えなさそうな面子、しかもお互いがお互いの考えを悟ったのか手を組んだ、手を組むのが合理的だと判断しただろうし、どうせ向こうに行っても九人のライバルがいるのである(向こうは天目の存在のお陰でかなり和気藹々とハーレム形成に成功していたりするが。赤ちゃんって偉大)、今更ライバルが十一人に増えようと対した差は有るまいと考えたのだろう。

 

内心、藤那は未だに第一夫人を狙い(どう考えても藤那は頑張って第四夫人が精々だろうが、妊娠している天目、虎桃が上の順位につき清瑞は不動っぽいし、珠洲を落とすのも難しそうだ)、兎音はご主人様を姉にだけは取られてなるものかと考え(奴隷志願では亜衣と衣緒のほうがライバルだろう)、面子では一番純真に虎桃が子供の父親を欲して(多分彼女も向こうに着いて嘗ての上司が先に懐妊しているのを知ったら驚くだろうが、もしくは天目の変わりようを眼のあたりにして卒倒するかもしれない)、という思惑があったりするが。

 

結局のところ目的は単純、九谷の後を追うこと、そして九峪に愛してもらうこと、九峪を愛すること、つまりは愛しい相手の後を追いかけるということだけだ。

 

手段は問わず、自分がいなくなったときのことを考えず、まぁ、その辺を考えると先に行った連中も同じことなのだ、自分の後の事をまったく考えていないという点では、そんなこと考えると何も出来ないような気がするのでどうでもいいといえばどうでもいい。

 

藤那は知事としての仕事を放り投げて、閑谷に丸投げしたとも言える、兎音は一人残る妹を見捨てて、本人曰く自立を促すと主張、虎桃は天目がいなくなって殺人的な仕事が回ってきた同僚の案埜津を放り捨てて、元々仕事を手伝う気は余りないし手伝っても半年も経たないうちに産休+育児休暇に入られるので余り意味はない。

 

この点で虎桃は追いかけても余り問題なかったかもしれない。

 

大問題なのは藤那だろうか、それよりも上の位置で国の采配を取っていた天目が追いかけているので、これも今更だが、つまりは目的に全精力を傾けその過程や迷惑を全く考慮していない、この辺は先に飛び込んだ面子にも言えるので余り彼女達を責められないが。

 

同じ知事職にある伊万里とか、将軍職にあった志野、復興した国の副王として座していた天目(そのせいで伊雅が再就任した、隠居するつもりだったらしいが)、参謀職にあった亜衣、仕事を放り捨てた面子だけでこれだけいるのだから、今更である。

 

それにいなくなって困るのは藤那ぐらいのものだろう、兎音が消えたところで兎奈美はやっぱり行ったかぐらいにしか思わないだろうし(姉二人の感情は知っている)、虎桃がいなくなっても、もう一人の天目の副官が泣くだけである、彼女が哀れではあるがそれはおいておこう。

 

 

 

 

 

そんなことはさて置き、彼女達が九峪野後を追う手段として考えられるのは一つ、というか手段を知っていそうなのがこの一つだけという安直な基準で選ばれたのだが、その一つが簀巻きになって天井から吊るされていたりする。

 

その一つが何やら自分の待遇に関して騒いでいるし、基本的にコイツが全ての元凶のような気もするので簀巻きにされようが、吊るされようが、尋問されようが、拷問されようがどうでもいいのだが。

 

その簀巻きにされている物体本当に彼女達の愛しい人への道を知っているのだろうか、その辺の確証は無かったりするのだが、それなのに簀巻きにされて吊り下げられていた。

 

「何で、僕が吊るされているんだよー。藤那、兎音、虎桃、これでも僕この国の神器の一つ天魔鏡なんだよ、何で僕がこんな扱いを受けているのさ。理不尽だよ、不条理だよ、者は大切に、精霊は大切にしようよ」

 

吊るされているのはキョウ。

 

九峪をこの世界に連れてきた張本人、神器の一つ天魔鏡の精、自分の扱いの悪さを据わった目で睨んでいる三人の美女に向けて文句を言っていた、内心凄い目で睨まれている三人の美女にビビリながら、だって凄い目だし、文句を言えるだけこのアーパー精霊の心臓も相当なものかもしれないが。

 

因みに彼(?)は自分の現在の立場と状況を余り理解していない、理解していたらもう少し口の聞き方というものが在っただろうし。

 

「おい、鏡」

 

「鏡って、僕は一応キョウって名前があるんだけど」

 

兎音の自分への呼び方に抗議の意をあらわにするがそんなことを気にする兎音でもなく、大体気にするぐらいなら始めから吊るされてはいないだろう。

 

「鏡、私の質問に素直に率直に答えるなら無傷で解放してやる、もし黙秘、意に沿わない解答をした場合にはこれを砕く、よって私の質問に答えろ、拒否も赦さない、抵抗、反抗、少しでも意に沿わない行動をした場合は苦痛を与える、魔人独特の説得方法でな。勿論不愉快な解答をした場合も同じだ」

 

傍らに置いてあった天魔鏡を持ち上げその表面をコツコツと兎音が叩いて、完全に脅迫まがいの発言をする、因みにこの発言はマジ、つーか脅迫というよりは理不尽発言である。

 

魔人独特の“説得”の方法に微妙に興味もあるが、何故かスプラッタな連想をしてしまうのは作者だけだろうか、大体何故説得に苦痛、しかも彼女達の問いに全てイエスと答えなければならない理不尽。

 

つまりキョウは自分が知らない答えられないことを聞かれてもイエスといわなければ天魔鏡を壊されるか魔人が“説得”されてしまう“何か”を受けてしまう。

 

しかも“何か”が明確でない分恐怖心は指数関数的に上っていくことだろう。

 

判らないもののほうが恐怖心を覚えるものなのであるから、実に合理的に兎音はキョウを脅しているといえるだろう、だが嘘をいっても命がない脅迫を通り越している。

 

因みに兎音が考えている“何か”のなかに、忌瀬の薬という選択肢がある時点でかなり恐ろしい、用意しているので一番軽いのは笑い薬であるらしいが、一番きついのは十歩蛇の毒である(流石に精霊体のキョウでも死ぬんじゃないだろうか)、勿論、キョウの本体は天魔鏡なのだからそれを砕かれるとキョウは死んでしまうのは確実なのだ。

 

そんなこと現在ここにいる三人の美人にとってすれば些細な問題以前の瑣末ごとである、高々鏡風情が今の自分達に不貞なことを言いやがったら壊す、それぐらいは本気でやりかねない、不愉快な言動を口走っても地獄の入り口を見てきてもらうぐらいは確実に脳裏に描いていることだろう、その見てきた地獄で死亡する可能性が無きにしも非ず。

 

「なんだか脅迫されているみたいなんだけど」

 

脅迫されているんだよ、いいところに気がついたキョウ、気付いたところで救いどころか君には絶望に近い未来しか残されていないのだけど。

 

残された未来は死か、地獄の入り口か、彼女達の理不尽な要求を聞いて残された安寧の三つのうちのどれかしかない。

 

「何を言う、キョウ様。私達が何を脅迫していると。こうやって誠心誠意懇切丁寧に貴方に質問をしたいから、貴方の口を滑らかにしようと考えてした措置を講じているのだ。それを脅迫とは、少し悲しいぞ。だから傷ついた私は少しでも不本意な発言を聞くと天魔鏡に鳳凰鉞を振り下ろしかねないな。そう、こういう風に一気に振り下ろすとさぞいい音を立てて割れてくれるだろう。これが割れてどうなるかは私は知りはしないんだがな」

 

藤那も言うものである、しかも同じ神器である鳳凰鉞でキョウを砕く気か。

 

片手で小振りな斧である鳳凰鉞を持ち上げながら、何気に上下に素振りしながら朗らかに全然悲しく無さそうにのたまう藤那、口調は笑うような軽やかさなのにその実、聞こえる言葉には洒落や冗談など一欠けらも含まれていないだろう、本当に役立たずだと判れば本当に砕く、その気満々である。

 

「そうそう。キョウちゃん、でも黙秘の場合はキョウちゃんが答えてくれないと私達が少し困るからねぇ。流石に暫く答えられない状態になられると手間だし。この弓の射的の的になるくらい済むと思うなぁ。あんまり黙り込むと兎音ちゃんが天魔鏡を指で弾いて砕けるかどうか試したりするかもしれないけどさぁ。割れたら割れたってことで」

 

虎桃ニコニコと朗らかに手元で短弓を弄びながら呟くようにそんな台詞をのたまう、矢も弄くっているから言葉に嘘は無いだろう、キョウとしては今の現状そのものが嘘と否定したいところだろうけど、否定したところで、何か変わるわけでもないが。

 

つまりキョウは彼女達の思い通りの受け答えをしないと明日が無いどころか次の瞬間に待っているのは“死”か“地獄”そのものであった、今この瞬間にキョウは“地獄”と言うのは現世にあるものなんだなぁと、身に染みて理解しているかもしれない。

 

要らない所で、少しお利巧になりつつ、キョウは目の前の理不尽を受け入れるしか選択肢は残されていなかった。

 

これを理不尽と言わずして何を理不尽と言うのだろうかといっても、キョウは目の前の三人が本能的にマジであることを完全に悟り切り、悟りきったことで救いがあるわけでもないが悟ってしまい、不平不満を言う勇気は欠片ももてなかったのだが。

 

まぁ、不平不満を言った瞬間に虎桃の弓がキョウの頬を浅く薙いだのは間違いないだろうが、それとも天魔鏡本体に向かって試射と称して警告を受けるかのどっちか、どちらにしても楽しい選択ではない。

 

 

 

 

 

で、質問という名前の脅迫もとい拷問開始。

 

「で、キョウちゃん、正直にお互いの相互理解が進むように簡潔にこたえようねぇ。勿論私達が不愉快な解答にはそれなりの懲罰が待っているけどさ。それはキョウちゃんが可憐な乙女である私達を傷つけた分だから、何も間違ってないしさぁ。ほら、私達って何の力も無いか弱い乙女だから」

 

こんな時、虎桃のポケポケした口調はかえって怖い、何をされるか予想が付かないから、勿論最終的には天魔鏡が割られるのだろうが、簡単には割ってもらえないだろう、兎音、虎桃、藤那、この三人が揃って安楽な最後をキョウは期待してはいけない。

 

因みにか弱い乙女は拷問紛いの死刑同然のとこは絶対にしない。

 

「僕に何を答えろって言うのさ。いや不服は無いよ、不服不満不平の類は一切無いんだ、だから鳳凰鉞とか弓とか構えないで。兎音なんで指で天魔鏡を弾こうとするの。やめてやめてやめて弾かないで、弾かないで、兎音の力だとそれだけで割れちゃう。何でも答えさせていただきますから、何なりとこの天魔鏡のキョウに申し付けてください」

 

キョウの最初の一言で、なにやら不穏な空気が盛り上がり、一瞬で卑屈になれるキョウ、変わり身の速さはそれだけ目の前の存在の恐ろしさの指標か、何気に目幅と同じ太さの涙が流れていたりするが、瑣末ごとだろう。

 

「じゃあ、尋問の第一だ(既に尋問と本人達が言っている)、私達を九峪のもとに送れ、以上、終わりだ、尋ねることはこれだけでこれ以上無いからな、親切だろう、たったこれだけで解放してやるんだから」

 

兎音がそうキョウに問い、因みにこれは既に尋問でもなく要請もしくは命令だろう、天目が自分の親衛隊にする以上に理不尽な命令だろうが。

 

で、キョウが反射的に「無理・・・・・・・・」と言うとして。

 

ヒュン・・・・・トスッ。

 

何か鋭い音がして、キョウの頬約一ミリの所を何かが通過して壁に突き刺さる、虎桃が放った矢。

 

「キョウちゃん、御免ねぇ、手が滑って、当たらなかった?キョウちゃんも生半可に痛いのは嫌だろうから、痛いならしかり痛いほうがいいよね。そっちのほうが素直になれるとおもうしぃ。当てるときは目の辺りを狙ってあげるからねぇ。失敗、失敗だねぇ」

 

虎桃がキョウの返答を瞬時に聞き取り、ナチュラルに脅迫してくれてやがる、手前さっき脅してたんがわかっとらんようやなぁ、こっちはほんきやで、といったニュアンスで、因みに手が滑ったのはどういう意味であろうか、当たらなかったことか、矢が放たれたことか、どちらとも意味が汲めてしまう。

 

「さぁ、キョウ様。お答えをしてくれないかな。私達は一刻も早く九峪様にお会いしたいのだ。それにキョウ様もそんな縄で天井から吊り下げられるのは愉快ではないだろう。早く喋ってしまえば、争いも無く万事解決といいこと尽くめじゃないか。私達の望みも叶いキョウ様も自由になられる。これは正当な取引ですよ」

 

何がいいこと尽くめなんだろう、というか正当。

 

「でも、九峪の所って、僕がそんな所に君たちを送ったら何十年かは眠りにつかないと・・・・・・・・・・・・・・・・しまった、喋っちゃった」

 

これはあまりの恐怖に口が滑ったのだろう、言わなければいいのに、言わなくても不幸が待ち構えているのに変わりは無いことは同じことだし、最悪天魔鏡が破壊されるのだ、因みにキョウも数人くらいなら火魅子が復活した影響で天魔鏡に供給される力が増えたのでそれくらいは出来るようになったのだが、数十年間は只の器物に成り下がらなければならない、本人としては断固として断りたい強制的な眠りの世界に直行である。

 

だが、九峪を連れてきたときは二千年近く蓄えた力が今なら数十年、火魅子から供給される力も結構ありそうだ。

 

で、喋った以上もう遅い。

 

目の前の恋する乙女、もとい思慕の情念で暴走中の人類規格外の女性二名と、上級魔人一人、それを耳にしてしまったらどうなるだろうか、目の前のわけのわからない精霊が数十年暗闇の中で仮死状態になることなんて知ったことじゃないとばかりに、それを実行させようと迫るだろう、たとえ実行することを拒否しても、それは実行するまで地獄の責め苦が続けられることを意味する、今度はいける手段を知っているという事から、ある意味苦痛から逃れる手段である死すら赦されないだろう。

 

天魔鏡自体は丁重に保管されキョウは釜茹で、射的の的、薬の実験台、エトセトラ、エトセトラ、それこそ文字で描写されないようなことを、出来ないような事を、やると言うまでやられるのは目に見えている。

 

「鏡」「キョウ様」「キョウちゃん」、三人の女豹の声が揃い。

 

キョウが見渡した先にいるのは、物凄い笑顔を浮かべた三人の乙女達だった。

 

 

 

 

 

 

抵抗するキョウに、余りに凄惨で可哀想な事がなされています、とても文章には出来ません、各自ご想像ください。

 

 

 

 

 

「判った、・・・・・・・・・・・・・・や・・・・・・・・・・るよ」

 

ガクッ。

 

終に抵抗虚しくそう答え、意識を手放したボロボロのキョウ、天井から吊り下げられた姿は絞首刑にされた罪人を思わせるものがあった。

 

 

 

 

 

因みにキョウがそう答えたのは女性達の“心から誠意に満ちた説得”と耐久X時間受けた後のことだった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それなりに頑張ったと評しておこう。

 

その答えを聞いた、藤那、兎音、虎桃の顔には何かを達成した満足の意がありありと浮かんでいたという。

 

 

 

 

 

で、キョウが強制的に復活させられた後、九州に送られる三人がいましたとさ。

 

「ご主人様、今貴方の兎音が参ります」

 

「九峪さまぁ、子供の名前は何が言いですかぁ。ああ、でも天目様になんて言おう」

 

「珠洲、志野、亜衣、お前達だけには九峪様を渡しはしないぞ」

 

 

 

 

 

 

天魔鏡のキョウにより現代に送られた三人の女性、ご都合主義と言うか何と言うか、現れたのは九峪宅の前、何も作者がこの三人をどうやって九峪の所に導こうか考え付かなかった訳ではない。

 

九峪宅の前と言っても庭先なのだから現れた瞬間を誰かに見られたわけではないのだが、昼間の市街地に意識を失っている三人の美女、しかも衣装が独特な人間が転がっていると人目を引かないわけが無く。

 

特に殆ど裸体に近い衣装である虎桃や、服装は古めかしいがウサギの耳をつけている兎音の存在はこの家で唯一生活していると世間に認知されている九峪の評価が、近所のおばさん連中の手によって凄いことになるだろう。

 

 

 

 

 

先ず、最初に意識を取り戻したのは兎音。

 

その兎音がぼんやりとする視界と思考で最初に見たのは驚きと不安を混ぜ合わせたような表情で自分を覗き込んでいた九峪の姿だった、その周りには九峪に付いてきた九人の女性達がいたのだが、兎音が九峪を認識したとき他の女の存在を意識していたかどうかは怪しいものなのだが。

 

多分九峪しか目に入っていなかったと思われる、がこれからの発言、彼の現代の生活を考えるとかなり拙い。

 

世間体とかいろいろ。

 

「ご主人様。ご主人様。ご主人さまぁ!!!!!!!逢いたかった、逢いたかった、逢いたかった。兎音は九峪様に逢いたかった。寂しかったんだ・・・・・・・・初めて、寂しかった。うぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・・もう・・・・離れない・・・・・・・ご主人様離からは離れない・・そんなことは赦さない・・・ぐすっ・・・・・・・・ふぁぁぁぁぁぁっ」

 

世間的にはかなり問題なことを大声で口走っているが、彼女の言葉に偽りは無い、その叫びのままに彼女は抱きつく、気丈な、傲岸不遜といってもいい彼女が涙を流して、恥も外聞も無く言葉を散らして。

 

彼女が世界を捨てて、此方に来るほどの、しかも衝動的ではない時間を置いた決意を持たせたのは寂しさだ。

 

彼女は魔人、本来が同種では群れるがその本質は個の属性が強い、その彼女が寂しさを覚えた、思慕を覚えた、愛を覚えた、そして一度覚えたその感情は強い。

 

未経験ゆえに強い、この手の感情については彼女は対処を知らない、今まで知らなかったのだから対処の仕様が無い、対処云々の問題となる、未経験では今覚えている感情を言語に変換できるだけマシだ

 

制御できない感情までを抑えろというのは無理だ。

 

九峪としても驚いてはいる、ここにくる手段が無いはずの彼女たちが朝起きて新聞を取りに玄関に出たら横たわっている、女たちを呼び寄せ声を掛けたところで抱きつかれて泣き喚かれているのだから、しかも玄関先で、早朝に

 

かなりのご近所のうわさになると思うが気にしてはいけない、まぁ鬼畜王が世間にも鬼畜王だと認識される程度、それに時間の問題で近所に十人以上の美女美少女美幼女を囲っているのはばれるだろうし。

 

で、怖くしている最中で兎音の泣き声は続いているし、九峪もそんな彼女を方って置けるわけでもなし抱きしめ返し、背中を叩き神を片手で梳いてあやしている。

 

 

 

 

 

まぁ、この後は九峪が兎音を抱きつつ家の中にいれ、他の二人は藤那を織部が担ぎ上げ、虎桃を清瑞が抱えあげて家の中に入れていたりする。

 

苦笑と共に、珠洲だけは藤那賀いたことに不満そうな顔をしていたが、この二人は典型的に相性が悪いのだからしょうがないとも言える。

 

他の六人も苦笑交じりだ、どうしてここにいたのかという困惑ではなくどちらかというとやっぱりというような表情を浮かべて。

 

同じ女、それも同じ男を愛した同士理解があると考えるべきなのだろうか、それは彼女たちの心中にあるのだろうけど。

 

 

 

 

 

それからはなだめた兎音からここに来た方法、事情等を聞き(キョウ煮対して行った暴行のことは一言も言葉に出さず)出していたりする。

 

事情的なところは上記に記されているから重複するとして。

 

他の二人も目覚めだす、というか一人は強制的に目覚めさせられた、一人の悪辣な少女の手によって、つまりは珠洲。

 

起こし方は服の中に氷を投入、寝ている人間(気絶)に対してはかなり凶悪な起こし方だ、しかも誰かに気付かれる前にそっと氷を持ち出して握りこんだ氷を入れる慎重ぶり。

 

で、この手の因から始まって帰結する結果はと。

 

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 

背筋から声が出たように悲鳴を発して藤那が飛び起きた、因みに入れられた場所は背中と胸の谷間(こちらは恐らく珠洲にとって忌々しい)、老人なら心臓麻痺を起こしているかもしれない凶悪さだ。

 

なお、彼女に関してはこれより珠洲と舌戦を広げることとなり、感動の再会とは少し遠いものになっていたりする、これからの話ではあるが。

 

 

 

 

 

最後に兎音の話を聞きながら虎桃の看病をしていた天目、嘗ての部下、元々部下と上司の関係で天目が虎桃の看病をすること等無かったのだろうが、この世界での天目は加速度的に母性に目覚めている、曰く態度が柔らかくなっているのだ。

 

それに自分が部下を捨てて男に走ったというのが嘗ての部下の虎桃に対しての引け目となって存在しているのかもしれない。

 

自分が責任を放棄し男に走ったのは事実、長年慕ってくれた部下と男を天秤に掛けて男を選んだのは天目だ、その天目が己の部下に対して引け目を感じないほど無神経でもなければ無責任でもない、虎桃であればそれほどではないかもしれないが天目は自分に心酔しているほど傾注している部下がいることも自覚していたのだから。

 

自分が無責任だと嫌でも理解している、それでも彼女は自分のエゴを貫いた。

 

それは女としては正しく上司としては間違っている、そしてそれも理解して虎桃の看病をしているのだろう。

 

そして、いつしか虎桃の眉が寄せられ寝言のような声が漏れ出す。

 

「虎桃、虎桃。起きろ」

 

それが起床の合図と読み取ったのだろう、天目が声を掛け、それに合わせるように虎桃の瞼が開いていく。

 

そんな虎桃の目が完全に開き天目と目が合って暫く睨めっこのように凝視しあった後。

 

「あれー、何で天目様ここにいるんですかー」

 

そんな能天気な声、いつも通りの虎桃の声、それに対して天目は。

 

「はぁ。相変わらずか。ここは九峪殿の屋敷・・・・・・・・・・・・・・」

 

「九峪様!!!!

 

天目の固有名詞の発言に対して虎桃が過剰といえるぐらいの反応を示す、もう飛び起きてあたりを見回して九峪を探している。

 

で、九峪をロックオンした虎桃、九峪のほうに顔を向けて一声。

 

「九峪様私の赤ちゃんの父上になってねぇー」

 

 

 

 

 


後書き。

 

なんか中途半端な終わりですけど、第三話「新たなる来訪者」です。

 

新キャラ三人登場で、次に虎桃の妊娠騒動を前半で何とかして個人エピソードに移りたいと思います、今のところは個人エピソードは珠洲、天目、清瑞、織部あたりで考えていますが、どうなることやら、この作品は元々が小ネタ掲示板からの連載だったのでそちらと自サイトの両方で掲載していきたいと思います。


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