懲罰+日常+知人

 

 

 

 

騒動の翌日、先日の騒動を騒動の一言で済ますことが出来るならばという条件がつくのであるが、その翌日。

 

これがいつもだったら少年と少女二人が朝連れ立って寮を出て、いつも通りに登校し、いつも通りに振舞う日常が始まる、少年は何時ものように外界に無関心となり少女はその少年に気を裂く、それが日常、変わらないから日常。

 

変わらない日常は、その流れのままに進む、その日の朝までは。

 

毎朝の変化の無い日常、昨日の忌々しい、少女二人にとっては唾棄すべきことさえも無かったかのようにいつも通り、だが変化は起こって、流れは変わっている、変えられてしまっている、特に誰にというものではなく変わってしまったと評するべきだろうか。

 

ならばいつも通りとは行かないだろう、変化が生じれば流れは変わる、それともその変化を飲み込んで普通に戻す、そのどちらかだろう、では今はどちらなのだろうか。

 

HRにて戯言を述べる少女の存在は、流れがそうなるように流れた結果か、それとも流れに逆らう異物なのだろうか。

 

「式森夕菜です、皆さんよろしくお願いしますね」

 

と言うふざけた自己紹介をする、満面の笑みを持って、本当に嬉しそうに。

 

まるで昨夜の記憶など欠片も無いように、無邪気に。

 

もし忘れているのならば幸福なのかもしれない、無邪気であるが故に一人よがりの彼女の夢はまだ持続している、彼女の思いのままに。

 

未来的にどうなるかはともかくとして現時点では彼女は幸福だろう、夢に浸っている間は誰しも幸福なのだから、その幸福から冷めた後にどうなるかは知ったことではないのだがね。

 

そして恐らく流れがどちらに流れだったとしても彼女は特定人物にとっては異物でしかなれない、その考えを欲望を諦めるまでは。

 

因みに夕菜は無邪気な笑顔で和樹に手を振っていたりするが勿論和樹が彼女に対して何らかのリアクションを返すような行動はとってはいない、そもそも彼女の言葉が彼の耳朶に届いたかどうかも疑わしいまでの無反応振り。

 

いっそ其処まで無反応だと驚きなくらいなのだが、それほどまでに無反応。

 

なお、この妄想少女の行為は相手が式森和樹という男子でなければ男子の怒りをバーゲンセールで売るような行為なのだが、彼に関してはクラスの反応も例外がある、少なくとも即座にボルテージが上がるようなことは無い、敵意さえなりを潜めている。

 

それほどまでこの感情+欲望+他人の不幸を優先するクラス内においての異端児式森和樹。

 

現在はB組の生徒は揃って怪訝な顔をし、和樹、夕菜、沙弓の顔を見比べ。

 

静かなものだった、正確には最初僅かに会った喧騒が徐々に消え去ったというところか。

 

これが彼女の名乗った名前が仲丸でもまたは他の男子の名字を名乗っていれば、その該当する男子生徒の血の雨が降る程度のことが起こり、校内引き回しの上貼り付け、晒し者、そして私財没収、加えて名義を使って限度額まで借金するくらいはやってのけるだろうが。

 

式森と言う時点でクラス一同の視線は見渡した後一点に集中した、集中せざるを得なかった、して後悔した、見るべきではなかったと。

 

彼等の視線が集う先にいるのは一人の少女、長身で美麗な容姿を湛えた戦いの少女。

 

その形容に相応しく、それはもう冷ややかな笑みを湛え、怒りの根源に邪気が蔓延しているほどの濁った瘴気を撒き散らす名実ともに学園最凶の顔など好き好んでみたいものではない、羅刹の気配など一生涯の内に一度でも知覚したいものではない。

 

ただこの場にいる人間の全てが一度以上は彼女のこういった気配を体験はしているのだが、過去の体験があるのだからその恐怖は更に凄まじい、未知なる恐れを匹敵する既存の恐怖。

 

体に植えつけられた恐怖に立ち向かうほど勇猛な生徒はこのクラスの中にただの一人もいなかった、B組の蛆、最低生物とか言われる仲丸由紀彦でさえ、気になる一言、彼にとっては妬ましい一言を無視して固まったのだから。

 

誰しも命は惜しい、金よりも権力よりも、彼らの大嫌いな他人の幸福よりも、何よりも、何よりも命が惜しい、生物としての本質的欲求、生存本能、生ける全てが優先する基本欲求。

 

そこから警鐘が鳴らされる、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。

 

冷静に拷問をかける女尋問官のような笑みなど命を懸けて見たくない、そして関心を引いてその視線を自分に集めたくは無い。

 

それがこの空間にいる人間の満場一致した心情だった、やはり金よりも保身に走る、その点ではいくら強欲とは言ってもまだまだ人間であるクラスメート達である。

 

生きていなければ今もっている銭がどうなるかが一番の心配なのかもしれない連中でもあるが。

 

 

 

 

 

彼らは知っていた、その沙弓の笑みがB組内で伝説化している拷問兼お仕置きをするときの笑みだと、なお割合は拷問が一でお仕置きが九十九、つまりは何も聞かれないで終わることがかなり多い。

 

その所業の名前は“アイアンメイデンの刑”、掃除用具入れのロッカーに閉じ込め金属バットや鉄パイプでいやと言うほど殴りつける、それはもうロッカーが金属製の蓑虫になるほど、本人の気が晴れるまで殴られ続ける、痛みに加えてかなり精神にくるお仕置き手段。

 

止めは丁度教室の真下にあるプールへの投擲するのだが、そこまですると死にかねないので、そこまでされた被験者は某生徒一名のみである。

 

大体は金属製の蓑虫にされ救助されるまでの数時間(こじ開けるのに手間が掛か)暗闇と苦痛と狭さを味わう程度で、沙弓の魔眼の力で死の見えないところを叩いているので死ぬことは絶対にないのだがこれが生きるか死ぬかのリンチではなくお仕置きの所以であろうか。

 

大体殺してはお仕置きではなくリンチになってしまう、飽くまでお仕置きなのだから。

 

だがプールに放り込まれないでも精神的損傷や肉体的損傷で暫く使い物にならないそうだが、人間として。

 

ようは死なないと言うだけで、それ以外に救いはない。

 

凛ちゃんバージョンとして“人間黒髭危機一髪”なるものが存在するらしいが。

 

内容は直ぐにわかりそうだが、因みに本当には刺さず、ギリギリを見極めてやるので肉体的には沙弓よりソフトである、肉体には傷がつかないのだから、致命傷レベルは。

 

お仕置き後ロッカーは穴だらけになるようだ、因みにこれは言葉攻めのお仕置きでもある。

 

なお被験者代表はやはり某生徒であるが、暫く悪巧みをしなくなったと言うのだから相当のもののようだ。

 

双方のお仕置きの感想は。

 

「痛い〜、暗い〜、狭い〜(涙声)・・・・・・・・・・・・な、な、何だ、このゆれ(持ち上げられています)、・・・・・・・・・・・・・・・・(ヒュ〜・・・・・・・・ドボン)水が、水が、水が、がぼっ、げはっ・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(精神的に死の一歩手前に行き着いております)

 

(作者として残念なのはこの面子では“ヒトコプター”が出来ないことであろうか、これは確実に死ぬだろうが)

 

 

 

 

 

誰しも廃人にはなりたくないので引き攣った笑みで様子を眺めることしかできなかった、特にフルセットで喰らった経験を持つ大柄な少年はひざを抱え部屋の隅で既にブルブル震えていたりする、どうやら心の傷になっているようだ。

 

なお他の被験者も程度の差こそあれ似たような反応である、というか最初の一人以降がいるのがこのクラスの凄い所なのだが、故に騒乱よりも沈黙が降りた教室内で、沙弓の存在感が妙にきつかった。

 

 

 

 

 

これからの騒動、どうせ正確に描写しても想像の域を出まいが。

 

只、簡単に書くと、冷静に切れている沙弓が目線で下僕(過去の被験者)に命じ、その目線による命令、と言うよりは恐怖感に突き動かされ猛然とロッカー(何代目かは不明)から掃除用具と何故か常備されている金属バット数本(やけにボロボロ)を取り出し。

 

沙弓の前にロッカーを引き摺り出し、足元に金属バットを並べる、金属バット達の銘は“鋼鉄の処女(アイアンメイデン)”であったりするが。

 

なんとも統率が取れていた、恐怖政治ここに極まれり。

 

この様子を先ずポカンと見ていた夕菜だったが、それを命じているのが沙弓だと知り癇癪を起こし(どうやら敵と言う記憶はあるらしい)たが。

 

因みに攻撃したのは妙にムカつくかららしいが、魔術を放った瞬間やっぱり切り払われて霧散、そもそもムカつくからと攻撃魔法を放たないでほしい一応は犯罪である。

 

そして怯えた瞳で「御免なさい」と言う和美(被験者、但し凛ヴァージョン)によって背後から眠りの魔術をかけられあえなく意識を手放し、そのまま密室、ロッカーの中行き。

 

そして振るわれるバット、何度も何度も何度も叩きつけられ轟音が響きロッカーが変形する、その威力に手加減は見れず一撃で明確に陥没を増やしていく。

 

それを無表情でなす執行官、綺麗なスイングで叩きつけられる。

 

夕菜は轟音で目が覚めたときには既に変形し力では開かないし猿轡をされているので呪文も唱えられない状況で嫌というほどロッカー越しに叩かれ、それでも何事か叫べるのだからたいしたものだが。

 

猿轡をされているので意味を成さないが、ツーかうめき声にしか聞こえない。

 

その声が響き渡る中無視して、いや声が響くのをBGMにするように叩き、沙弓は中からの声がすすり泣きに変わるまで叩き続け、すすり泣きになるとさらに苛烈に叩き付け、号泣になったあたりでやっと手を止め、手を休める。

 

と思いきや。

 

その後この学校にて二回目のロッカーの成れの果ての金属製の蓑虫が空を飛ぶという怪異が確認された。

 

見事プールの端に当たり軽くバウンドしてから水没、中から気泡が立つ中プールのそこに沈んでいったという。

 

因みに流石に拙いということでB組担任中村(内臓の病気を100以上抱えていると噂され、葵学園の人身御供といわれる哀れな青年教師)を筆頭に救助に当たったらしい。

 

この教師の気苦労が解消されることは今後未来一切にあるまい、もしかしたらこの原作でもっとも哀れな人間が彼かもしれないがやはりここでも救いはないようだ。

 

 

 

 

 

追記。

 

運ばれた保健室で心の傷がきついということでマッド保健医が記憶ごとさっぱり心の傷を消し去ったのでこれで懲りると言うことは無いだろうが。

 

因みに肉体的に殆ど損傷が無かったということでこのマッドが興味を持ちその少女の体細胞を採取したとかしないとか、どうでもいい話である。

 

 

 

 

 

これが宮間夕菜転入の顛末である。

 

追記すると、風椿玖里子はこの事件を知り、また沙弓、和樹、凛、関連の情報を集めそれを閲覧したとき自分の運がどれほど良かったかを実感したらしい、今現在五体満足でその資料に目を通せる自分が。

 

なお和樹の遺伝子関連に関しては長姉に子供のように半泣きで駄々を捏ねて撤回させたようだ、それこそ罵詈雑言と取れるような言葉を羅列して勝ち取った撤回。

 

「姉さんだって年なんだから、若いツバメだと思って姉さんが孕めばいいでしょ、大体そんな性格で結婚できると思ってるの。手近なところで手を打っておかないと四十を超えたあたりで世間体を気にして結婚して、それでも周囲から哀れみの目で見られるのが落ちなんだから」

 

とか、この時点で青筋がたっていましたお姉さん。

 

「売れ残りの危機感を持ってなさい、大体三十過ぎているのよ、自覚あるの。大体妊娠適齢期は姉さんでしょうが、私の甥は姉さんが頑張りなさいよ、もしかしたら今後そんな機会ないのかもしれないのよ。高校生よ、姉さんを満足させてくれるわ、どうせ男日照りでしょ。抱いてくれる男もいないでしょう」

 

拳が震えています。

 

「大体一番下の妹が結婚して立場がないのは姉さんでしょうが、もし私が産んだらお祖母ちゃんって呼ばせるわよ。ええ、世場させてもらうわよ、お祖母ちゃん、婆や、お婆様どれがいいの姉さん」

 

この時点で完全に切れた(因みに何とか玖里子と麻衣香の年齢差では親子が成り立つ)、その後撤回はしたが仕置きに関しては何があったのかは述に伏せる。

 

何気に姉の危険域の言葉をズバズバ吐くほど追い詰められたらしい、というか致命傷の言葉をかなり吐きまくっている。

 

その手のことを気にしている情勢には致命的といえるほどの言葉の羅列を。

 

 

 

 

 

和樹を狙うのを赦したのが、一番最後の台詞かどうかは確かではないが、風椿麻衣香、三十ウン才、微妙なお年頃である、色々と、恐らく未婚予定なし。

 

三十でお祖母ちゃん、並みの女性ならば耐えられない呼称ではないだろうか、おばちゃんでもかなり頭にくる呼称のはずなのにそれより更に一世代上である、女の意地に掛けて呼ばせたくはない、呼ばれたくはない。

 

 

 

 

 

場面は変わって。

 

「で、なんでお前らはここにいるんだ、仕事ならないぞ」

 

廃墟としか形容の仕様のない建築物、と言うかこの建築物完成すらせぬまま放置されていたものだったのだが、その点では廃墟だ。

 

本来六階建ての建築物が未完成で五階のフロアーが屋上の代わりとなっており、二階と三階はこの廃墟の持ち主が仕事場として使っている、現在比較的マシな四階で(人が良く出入りするためだが)この廃墟のオーナー、蒼崎橙子に文句を言われていた。

 

因みにこの廃墟はこの女性の事務所であるが、やっている仕事は人形師らしいのだが殆ど建築家のような仕事が多いらしい、その仕事も真面目にしているかと問われたら疑問が残るのだが。

 

その蒼崎橙子と呼ばれる女性は、どこかの社長秘書でも思わせる雰囲気の女性で髪は短く服装もシンプルに纏めた美人に分類される女性だ、性格上その手の職業は絶対に不可能だろうが。

 

眼鏡を掛けている時と掛けていない時があり、それで口調が代わると言う特徴があるが、今はその目元に眼鏡はない。

 

このときの口調は乱暴だ、傍若無人だ、不遜だ、常識を無視した会話をしてくれる、時と場合によるが、今は不機嫌そうに普通に苦情を述べている。

 

彼女が文句を言ったのは昼食時間の筈なのに凛、沙弓、和樹の三人が居座り。

 

橙子とその従業員+一名が出前でも取ろうかと言うときにやってきた三人が我が物顔で自分たちも注文しようとしている最中だった、しかも自分になんの断りもなく注文を募っている。

 

因みに品目はピザ、和樹は我関せずとしていたが、沙弓と凛は基本的に良く食べるので三人で二枚の注文が増えていた、サイドメニューを含めるともっと、遠慮の欠片もなく注文するのだから文句も言いたくなるのが人情だろう。

 

支払いに関して思いっきり自分の財布をあてにしているのならなおさらに、出て行けとでも言いたいところだ、この事務所の財政はいつも火の車であるわけだし(主にそれの被害は唯一の従業員の青年に降りかかるのだが)

 

学生三人分の食費の負担などはしたくないのが彼女の心理である。

 

「いいじゃない、蒼崎。ピザくらい奢ってくれたって、たいした額じゃないでしょう。それに前の依頼料まだ未納なんだけど、利子代わりに負担してもいいんじゃないかしら」

 

沙弓が最後のほうに意識を篭めて告げる。

 

つまりはさっさと金を払え、払えないなら少しはこびろ、ご機嫌伺いくらいはしろ。

 

「そうです、橙子さん。そのせいで私の今月の生活費が厳しいんです」

 

凛、こちらは微妙に恨みがましい、もしかしたら本当に懐が寂しいのかもしれない、彼女の生活では生活資金の滞りは即座に自分の生活レベルに反映される、文句の一つも言いたいところだろうし、食事の一つも貢いでもらわなければ割が合わない。

 

「確かに」

 

和樹まで口を開いたよ、どれだけ払っていない橙子。

 

「僕の給料も二ヶ月まだなんですけどね、所長、僕もそろそろ物入りなんですけど。

あ、沙弓ちゃん、凛ちゃん、和樹君、コーヒーどうぞ」

 

唯一の所員、黒桐幹也である、外見は眼鏡をした平凡な青年といったかんじなのだが。

 

一応の客人の為にコーヒーを入れてきたらしい。

 

因みに給料に関しては諦めているらしい、纏まった収入があると、最近では勝手に自分の口座に振り込んでいるといるらしいのだが、なおその点に関しては自分の雇用主に対して文句を言わせるつもりは欠片もないらしい。

 

ついでに所長と自分の分、そしてもう一人、幹也の恋人(?)、何故かこの事務所によくいる和樹とはまた別の意味で感情の動きの薄い女性、両義式、沙弓と同じ直死の魔眼を持つ和装の美女である。

 

「そうだな、オレの仕事料も貰っていない、魔法銀製のナイフはいつになるんだ」

 

彼女の言葉は男言葉だ、ある事件より二つの両義式()が一つの両義式になって以来の口調。

 

彼女は現金ではなく物が報酬のようだ、報酬の物品が微妙に怖い。

 

今は彼氏(?)の出したコーヒーを啜っていたが、黙っていればこの場で一番の美女は彼女かもしれない。

 

 

 

 

 

で、従業員、下請け人(?)に報酬を迫られた雇用主。

 

「ウン、お前等、何を食べる、デザートはどうだ。そうだ黒桐、これで近くのあの店で何か買って来い、因みに私はミルフィーユとモンブラン」

 

態度を一変させた、それはもう優しげな笑みを浮かべて、頬の端が引き攣っているのはご愛嬌といったところか、どれだけ負債があるのだろう。

 

少なくとも当面では工面できない金額なのだろう。

 

因みに幹也、給料二か月分+諸経費、雑費の立替=45万円前後、これでも色々大目に見ているらしい。

 

式、貴重な魔法銀製のナイフ、一本安物で80万円(頑張って値切って)、但し粗悪品だと一発で見抜かれるので恐らくこの価格のものでは納得すまい。

 

追記すると幹也の収入が減ると、式の密かな楽しみの回数が減るので不機嫌度は上昇中だ。

 

近い内に取立てされるのは必至だろう、幹也を辞めさせると言う脅しも実は橙子の経営力の無さには案外致命的な脅しかもしれないし。

 

ついでに密かな楽しみとはぶっちゃけデートなのだが、幹也は式にお金を払わせるのを嫌がるからである(式は名家のお嬢様)、デートの後の性交渉は時たまやっているらしいが、式も女の子そこに至るまでの過程を楽しむ感性はあるようだ。

 

ぶっちゃけその後の性交渉の場所ですら金がかかるのだからご無沙汰である、不満も溜まろうといったものだろう。

 

また沙弓、凛、和樹、報酬三人合わせて150万円超過、総計最低300万円近い、最高500万円くらいになるかもしれないのだが(式の気に入る魔法銀製のナイフの為、因みにこのまま滞れば魔法銀より高価で強力な精神感応金属オリハルコン製か魔力触媒金属ヒヒイロカネ製を要求されること間違いなし、なおそれらは一億以上するようなものがざらである)

 

五人の台詞で財布から福沢諭吉を一枚取り出し、恐らデザート代だろう、ない袖は触れない、よってご機嫌をとることにしたようだ。

 

普段の不遜な口調やおふざけ口調では誤魔化しきれないと思ったのかもしれない。

 

なお幹也はそれぞれの注文をうけ、洋菓子店にパシリの如く使わされたのは言うまでもない、因みに注文は、式は幹也に任せ、和樹は沙弓任せとなるので、橙子のモンブランとミルフィーユ、凛のガトーショコラと野苺のムース、幹也の季節のフルーツタルトと抹茶ケーキ(式の好み)、沙弓のチーズケーキとアップルパイであったりする。

 

なおピザ屋はある事情により迷い配達の遅れた為ロハでせしめたのをほくそえんでいた雇用主を幹也は睨みつけていたりするが、因みにこのある事情とはこの事務所が死活状態になったときの裏技である、普段は幹也がそんなことはさせない。

 

勿論ピザの注文をしたのは幹也の雇用主である。

 

死活状態とは金がなくなって食うに困る状況に陥った時の最終手段。

 

 

 

 

 

なお近所の宅配時間が遅れるとタダもしくは割引のピザ屋の数割からブラックリスト指定を受けている事務所がここであるかどうかは定かではない。

 

 

 

 

で、若い人間、橙子を除くと全員二十代ではない若さで、橙子の年齢は不明だが健啖に食べ今はパシリが買ってきたデザートに舌鼓を打っていた。

 

なおピザの枚数はMサイズで4枚、サイドメニューでチキンやサラダ、パスタ、ドリンクもあるのだからピザ屋は泣いているだろう。

 

紅茶を入れたのは式、男勝りな口調と粗雑な行動ではあろうとお嬢様、和食ならプロ級の腕を誇り、紅茶でもゴールデンルールを守り、何故かある紅茶の高級品ダージリンのセカンドフラッシュ(こういうものにオーナーが金を出すから火の車になるのだが)で専門家並みの味わいのものを出す。

 

当の本人は。

 

幹也に「美味しいよ」といわれると耳まで真っ赤になって乱暴にタルトを征服にかかっていたが、こういう表情は可愛らしい。

 

「そういえば、何でお前らここにいるんだ、学校はどうした」

 

まずさそれを先に聞けよと言う質問を今頃放ったのがこの所長、世間的にずれている女性なので致し方ないが。

 

なお現在、モンブランにフォークを指し、切り分ける最中である、どうやら世間話の一つで振ったのかもしれない。

 

式はともかく幹也もさっさと突っ込むと思うのだが気にしていないのだろうか、幹也は大学中退で、式も多分高校中退なのでそのへんはどうでもいいのかもしれないが。

 

「騒がしいから、抜けてきたのよ、ここなら追いかけてこられるわけでもないし」

 

沙弓が答える、因みに和樹は微妙に幸せそうにアップルパイに舌鼓を打ち、式の紅茶を滅多に開かない口で褒め、式も和樹のことを承知しているので、その賛辞が絶賛に近いのものであることがわかっているので珍しく笑顔で応じていた。

 

勿論騒がしいのは復活した夕菜で昼休み前までの記憶の欠落を不思議に思いつつも昼食をともにしようと突撃、いい加減相手にするのも馬鹿らしくなり自主早退して(勿論追いかけてきたが)

 

凛も昼食を共にしようと来ていたので一緒に自主早退(勿論無断)

 

この目的を持たないとたどり着けないという結界の施された事務所にて(実際詳しい住所を聞いて、届けると言う目的の持った配達の兄ちゃんが発見に手間取った)休息をとるといった次第だ、早く言うとサボり。

 

只、橙子も詳しくは追求せず「そうか」と言って紅茶を啜りだしているので、学生の怠惰をとがめる気などないのだろう。

 

蒼崎橙子と言う女は紛れもない天才で卓越した能力を誇るが変人で常識と言う言葉から離れた位置づけに立つ人間であるので、一般の価値観などどうでもいいのだろう。

 

 

 

 

 

その後は沙弓が式を相手に目の訓練と言うか使用法について話したり。

 

凛が橙子に教えを受けたり、凛は二人いる橙子の弟子の一人、弟子といっても高度な魔術やその先にある魔法の使用概念などの教授、魔道具などの使用法であったりする。

 

現在一般で教えられている魔術の先にある魔法を教えられていた、因みに凛の相性のいい属性は“風”らしいが、そこそこ熱心に橙子も凛に高等な魔術概念の講義を行っている。

 

優秀な弟子には教えたくなる教師魂にでも目覚めたのである。

 

和樹が無表情で幹也を相手にチェスをしていたりする、この二人は何故か気が合うようだ、腕前は似たようなものだが、今は和樹のナイトが幹也のクイーンとピショップに手をかけクイーンを逃げさせればチェックメイトという局面で和樹が優勢のようだが。

 

勝ったり負けたりなのだが、それなりにハイレベルではあった。

 

因みに橙子は未だかつてここにいるメンバーでは無敗である。

 

 

 

 

 

その後は、夜遅くまでこの廃墟に三人とも滞在し、ブツブツ文句を言いつつ。

 

「式の美味しい料理を食べたいな」と言う幹也の言葉に頬を赤らめ「今回だけだからな」と腕を振るった式の料理に舌鼓を打ち。

 

本当に美味しかったそうだ、材料費は給料滞納の雇用者、諭吉さんが何枚かお空に飛び立ったらしい、式の作る料理は、遠慮の会釈も無い為、自身の満足のいく食材を集めたのだろう。

 

やたら高級な牛肉やら、天然者の魚やら有機栽培の野菜やら根が張るものばかりが買い集められたのだ、作るならば本気でといったところか。

 

なまじお嬢様なので加減を知らないと言うことも考えられるが。

 

幹也と式が買い物に行くときの雰囲気を、財布の寂しさに対するあてつけか雇用者がなにやらねたみがましいことを述べていたが割愛する。

 

確かに若夫婦といった風情だったのでからかいたいのがわからないでもない。

 

蒼崎橙子、年齢不詳、独身恋人無し、今のところ作者はくっつけるつもりの人間あり、もしかしたら未来がある。

 

 

 

 

 

なおこの日は午前はバイオレンスに満ちていたが午後はほのぼのとした一日だったとさ。

 

 

 

 

 


後書き

 

空の境界メンバー登場、次回は橙子が一話限りの主役で和樹たちの過去を暴露します、勿論もう一人の語り相手はぐるぐる渦巻き名探偵のカタリ屋。

 

この二人に和樹たちの過去を言の葉で語っていただきましょう。

 

かたや魔術を極め魔法の域に(このSSでは)踏み込んだ魔法使い、かたや永久を生きる不可思議存在、どんなカタリをみせてくれるのか。

 

真実を語り偽りを騙るカタリ屋、事の真理を追究する魔法使い、どんな会話が書けるか努力します。

 

榎本はだせるといいなぁってところでしょうか。

 

因みに本文にありましたが凛は魔法使いを目指してもらいます。

 

作者はこの世界観での魔術と魔法の定義を異なっておいていますので。

 

魔術とは精霊、召喚獣、天候操作、アルケミーなどの技術体系。

 

魔法はその上位に存在する、技術概念、概念技法、故にその威力は神様のシステムに干渉する力をもちますが逆に物理的な作用と言うよりは精神的な作用の強い側面を持ちます。

 

単純なる破壊ならば魔術のほうが上かもしれないバハムートや黄龍辺りの超上級召喚獣の攻撃力は神さえ凌駕するので。

 

最高概念技法は神(魔神)の召喚となっています、橙子は中級神が精々といったところでしょうか。

 

もしかしたら最後のほうでは凛が最強キャラになっているかも、中級とはいってもオーディンやスサノオ当たりは召喚できるはずなので、ついでに上級は天照大神やゼウス、アモン、ベルゼブブ、などの召喚が可能。

 


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