病んだ心を持つ少年

 

閑話 

 

カタリ屋と人形師

 

 

 

 

 

ここから始まる物語は戯言の物語だ、物語に関連しないただの戯言、哀れな少年と可哀想な少女の物語、それでも其の物語は過去の起きてしまった物語に過ぎずこれからの物語には何の関連も無い、故に戯言物語。

 

でも悲惨な物語だ、救いの無い物語だ、残酷な物語だ、どうしようもない物語だ。

 

血が流れる物語だ、血を流す物語だ、血を流させる物語だ、哀れな逃亡者の物語だ。

 

故にこの物語はやはりただの戯言だ、そんな物語は戯言で済ますべきだ、戯言で済ましてしまうべきだ、誰もが誰もバッドエンドの物語には何も無い。

 

それでも構わないならばこれより戯言の物語をカタルとしよう、この壊れた、壊した、瓦解した、潰れた、千切れた物語、最悪に向けて動き始める物語。

 

 

 

 

 

これはちょっとした都市伝説、取るに足りない噂の存在、御伽噺にも似たお話、でも確かに存在する伝説にも似た実話、御伽噺では済ませられない実在存在。

 

−ぐるぐる渦巻きの中心では、全ての謎が謎でなくなり、そこにはどんな難事件でもたちどころに解決できる名探偵が住んでいる―そんな荒唐無稽な実話。

 

今回はその渦巻きの中心にいる名探偵のお出ましだ、彼は自分のことを名探偵とは呼ばずカタリ屋と呼ぶのだろうけど、彼は紛れも無く名探偵、誰が呼び始めたとも知れない名探偵、本人は認めようとはしないが、それでも名探偵。

 

彼が自分を何と呼ぼうと彼を訪ねる人間にとっては関係ない、だって彼は紛れも無く名探偵、名探偵は職業でも名前でもなく称号だから。

 

彼はカタリ屋である前に名探偵、そもそもそんな前提すら無意味なのかもしれないが。

 

カタリ屋と名探偵は違うのだから名探偵は職業ではなく称号、そして称号とは他人が他人に冠さすものだから、故に彼は探偵だ、それも飛びっきりに厄介な名探偵、死運ぶ名探偵。

 

 

 

 

 

蒼崎橙子は一本道を歩いている、段々と左側に傾き続ける道を歩き続ける、彼女が歩く道は螺旋のぐるぐる渦巻き、どこに続くとも知れない渦巻き、中心に誘う渦巻き。

 

それを橙子は歩き続ける、いつもの秘書のような服装で眼鏡をかけず、黙々とぐるぐる渦巻きを歩き続ける、其の表情はつまらなそうであった。

 

手にぶら下げる箱にはトッカン堂と書かれた菓子店の箱、どうやらこれから向かう先にいるものへの土産のようだ、ぐるぐる渦巻きを歩き続ける、誰にも出会わずに、その道には只無機質な壁が続くだけ、誰でも通れるわけじゃないぐるぐる渦巻き。

 

でも通れる人間にはいつの間にか入り込むぐるぐる渦巻き、入り口は不明、出口も気ままに変化するぐるぐる渦巻き、不可思議、摩訶不思議なぐるぐる渦巻き、普遍に存在しどこにも存在しないぐるぐる渦巻き。

 

終着に辿り着いた、ぐるぐる渦巻きの中心、そこは全ての謎が謎でなくなる場所、全てを知り、全てを説き明かす者が座す場所。

 

それは古びた洋館の形をして蒼崎橙子の目の前に現れる。

 

 

 

 

 

橙子はその洋館に何の躊躇いもなく入り込み、そこは廃屋のような洋館であったが彼女はそんなことには頓着しない、猟奇殺人の死体が転がっている現場でさえ皮肉げに笑って入っていくような女性だ、自分の事務所も廃墟同然であるわけだし。

 

彼女はここに用があるから来た、それだけでその場所がどうだとか、そこで何があるとかと言うことに頓着しない勿論危険性にも、何があるのかも憂慮しない。

 

そもそも既知の建物だ警戒を抱く必要は無い。

 

故に誰も応対に出ない洋館に入り、今にも崩れそうな、そして軋みをあげる玄関正面にある階段を登り、二階の通路の左側の突き当りの部屋の前に辿り着き、軽く扉をノックした。

 

幾許もせず扉は開き、その扉を開けた張本人は言ってのけた。

 

「おや、暫くぶりだね、蒼崎君。ようこそ、世界の中心に」

 

白皙の麗人は唐突にそう挨拶した、其の妄言のような言葉すらこの場に相応しいと思えるほどに当たり前に。

 

 

 

 

 

「フン、相変わらずの挨拶だな、巷で有名な名探偵殿。探偵業は盛況か?」

 

菓子箱を突き出しながら、皮肉交じりに告げる、その表情は愉快そうに笑っている、其の皮肉交じりの言葉が吐き出せたことがうれしいのだろうか。

 

扉から出てきた人物は箱を受け取り、嘆かわしそうに口を開く。

 

「ふぅ、君までそんなことを言うのかい、僕は探偵ではないよ。探偵の仕事をしたこともなければ、勿論有名な名探偵でもなければ迷宮入りの迷探偵でもない。僕はカタリ屋だ」

 

そう言った人間は、肩まで伸びた銀髪、中世的な造詣の顔立ち、淡雪のように白い肌。

 

そう白を連想させる人物、白を具現した人物、外見から国籍、年齢、性別、この人物の全てが曖昧にしか表現できない、只白い、それだけがはっきりと表現できる全て。

 

そして彼、定義上彼と呼ぶ人物は自分をカタリ屋と呼びやさしく微笑んだ。

 

そして彼はニヤリと微笑んで続けた、そう彼はカタリだす。

 

カタリ屋の名のままに。

 

「真実を語り、偽りを騙る。

言の葉で事の端を具現する。

人は神ではないから吉事も凶事も一言では言い表せない。

古代、『書く』という行為は力ある文字を木や石に刻むことにより、総じて世界に言葉を刻み込む、カミへの祈りを込めた神聖な儀式であった。

だけど、文字が当り前のモノとなり、力を失ってしまった現在、人はカタル事によって言葉を直接、人の心に刻み込まなければならなくなった。

言葉をかたることで世界を表現しようと試みる職業に従事するものの一人として僕はいる。

それ故に僕はカタリ屋と呼ばれている」

 

一気にそれだけを語り切る、流麗に澱みなく、但し彼は呼ばれているのではなく自分で呼んでいるのだが、彼を知る人間は誰もが彼を名探偵と呼ぶのだから。

 

「その台詞は聞き飽きたよ、カタリ屋。だがお前は名探偵だ、自覚しろ、お前が名探偵以外の呼称を私は思いつかん、いい加減に認めろ。家にも一人名探偵候補が居るがお前に弟子入りさせてやろうか、勿論給料はお前が払うんだがな」

 

とだけいい、カタリ屋の主張を潰す、そう彼は紛れも無く名探偵だ、彼は否定するが彼は紛れも無く名探偵。

 

因みに名探偵候補と言うのは彼女の唯一の従業員のことだがこれにはカタリ屋は是非は言わなかった。

 

橙子とて本気ではないだろうし。

 

彼は中々に有望な(いじりがいのある)青年なのだから。

 

 

 

 

 

彼が名探偵たる由縁、彼の友人の緑色のコートの刑事が彼をこう言い表す。

 

「名探偵って呼称は称えているんじゃあねえんだ、あれは称号だ、血塗られた称号だ。蔑称といってもいいぐらいの嫌な称号だ。呼ばれることが侮蔑に近いような、な。それは名探偵の周りでは面白いように人が死ぬ。滑稽なぐらいに人が死ぬ。そいつらは何で死んでいったのか、笑い出したいくらいに単純だ、死んでいく奴が哀れでならないほどにな、それは名探偵がいるからだ。人が死ぬから名探偵が居るんじゃあない、名探偵が居るから人が死ぬ、名探偵って言うのはそういう理不尽存在だ、それが名探偵って呼ばれるって事だ、だからカタリ屋は名探偵だ」

 

この意見には橙子は概ね賛成だ、彼の周りでは本当に人が死ぬ、彼を中心にではない間接的に、ほんの僅かにしか関わらず、それでも面白いように死んでいく。

 

そしてここぐるぐる渦巻きに巻き込まれた人間は死なないのだ。

 

橙子としては幹也に式、和樹に沙弓、凛の全てがこの渦巻きの来ることができたので彼らが暫く死ぬことは無いと分かって安心しているが、彼は傍若無人なれどとても甘い性格をしているから。

 

ぐるぐる渦巻きに巻き込まれた人間、彼らはぐるぐる渦巻きに選ばれた傍観者、名探偵の推理を拝聴する観客、舞台を見物するオーディエンス、傍観者は探偵の舞台を見なければならないから。

 

そしていつも人の死の謎を解き明かすのは名探偵だ。

 

「君も榎本君と同じだね、何度言っても直してくれない、僕はカタルことしか出来ないと言うのに。カタルことでしか世界に関わらないというのに」

 

緑のコートの友人が榎本だ、この洋館の常連の女子高生には緑の狸とか呼ばれている、カタリ屋の悪友、だが彼の言のように彼はカタルことで人の死の謎を解き明かすのだからカタリ屋と名探偵の差がいかほどの物だろうか。

 

榎本の意見に賛同する彼女もカタリ屋の言葉に言葉を被せる。

 

「さっさと自覚しろお前は紛れも無く名探偵だ、それより菓子を食わんのか、態々お前の贔屓の店から買ってきてやったんだ」

 

そういうと彼は渡された紙箱を嬉しそうに眺め微笑んだ、正に彼の大好物が目の前にあるのだ、それを前にして顔を綻ばせない人間は居ないだろう。

 

因みに茶を入れたのは橙子だった、以前彼にやらせたら30分以上待たされたのだ、彼は恐ろしく不器用だから。

 

 

 

 

 

そして雑多に本が並べられた本棚、入りきらず床に積まれたりしている部屋での軽い茶会。

 

本当に雑然と並べられている本。

 

並べられている本も規則性が無い、フェルマーの最終定理に関する本の隣には日本書紀が並び、電話帳の隣にはグリム童話の原書(残酷絵巻)、ラテン語版ネクロノミコンの隣に旧約聖書、猫の飼い方の上には三味線の作り方といった具合。

 

グリモワ―ル(魔道書)から絵本までジャンルの広いことだ、カタリ屋は乱読家だから。

 

彼方此方にボードゲームが散らばっているのも特徴だろうか、チェス、将棋、碁、オセロ、軍人将棋、何故あると叫びたい200以上の駒を自陣に用いて使う古い将棋まで。

 

今はその雑然とした部屋に唯一ある丸机に向かい合うように二人が椅子に座り、橙子の持ってきた菓子、かなり有名な甘味の聖地とまで言われるある種の嗜好者にとっては人気絶賛のお店の菓子を橙子はかなり嫌そうに食べていた。

 

チビリチビリとゆっくりと。

 

彼女とて女性甘いものが嫌いな訳ではない、前話では甘い部類のモンブランを食べていた。

 

只常識を超えて目の前にある菓子の甘さは凄まじかった、流石は悪魔の店と噂される店である、橙子もその店に今日初めて入店したときからその壮絶な甘い臭いに嫌な予感はしていたらしいが、其の甘さ正に悪魔の次元、カタリ屋が嬉々として食べる菓子は橙子には甘すぎた、と言うかこれは本当に人間用の菓子なのだろうかと言う甘さを誇っているのだが。

 

遂には断念し目の前に居る人間に差し出すこととなるのだが、彼は嬉々としてそれを受け取っていた。

 

橙子はうまそうに食べるカタリ屋を化け物のように眺めていた、内心二度とこいつにこの店の土産はくれてやらんとか思っていたらしいが。

 

 

 

 

 

「さて、橙子君。ここに来たのは彼のことかな」

 

あらかた菓子を片付けたカタリ屋が橙子に向けて相変わらずの微笑を湛え、アルカイックスマイルとでもいうのだろうが、橙子に問う。

 

だが粗方といっても相当に甘いものを数個、味覚神経が死んでいるのではないだろうか。

 

「今の私にそれ以外の用件が思いつくのか、でなければ菓子など持ってくるわけが無いだろう、私が来たときはお前がもてなせ。それが摂理だ」

 

不遜な態度だが彼女には妙に似合う、と言うより蒼崎橙子の卑屈な姿など考えもつかないが、彼女はそういう人間で、何故かそういう態度が赦される人間だ。

 

其の態度が当たり前だと回りに見せ付ける人間、其の形容が相応しい。

 

彼もやれやれといった具合に其の言葉には異論が無いようだ、反論しないだけだが。

 

「それにあいつ等はお前が拾って私に押し付けたんだろうが。私にも事後報告を耳にする権利ぐらいあるだろう。貸しを持ってきただけ有難いと思え」

 

カタリ屋に向けて橙子が言い放つ。

 

「そうだったかな、確か君もその場にいたと僕は記憶しているよ。そしてあの三人の治療を施したのは君だ。僕がしたことといえばとても些細なことだ。小さな小さなことだよ」

 

 

 

 

 

式森和樹、杜崎沙弓、神城凛の三人はぐるぐる渦巻きに迷い込んだ、言葉の通りに迷い込み、そのまま渦巻きに捕らわれる、それは偶然、都合の良すぎる偶然、だが彼らにとっては神の救いともいえる偶然。

 

だが必然、既に起こりえたことに偶然は無く全てが全て必然、起こるべくして起こり、迷い込むべくして迷い込んだ、それが因果の成り立ち。

 

なぜなら彼らはまだ生きている、彼らの物語は閉じては居ない、ここで渦巻きに巻き込まれなければ、また別の何かが彼らを救った可能性は大いにある、別の因果を作り、別の因果の果てで生きていることだろう。

 

だが彼等はこのとき、この渦巻きとの因果を成り立たせた、勿論彼らはここが何処だか知りはしない、渦巻きはその存在を知るもの知らぬものを無選別で巻き込む、そして相応しき人物を選別して招きいれる、意思とは関係なく。

 

巻き込む。

 

少年少女は引き摺る様な足取りで、虚ろな表情でぐるぐる渦巻きを歩き続けていた、彼らの歩いた後には血痕が残り、血の臭いが充満している。

 

彼らは血塗れ、夥しい血を流し、そして夥しい血を浴び、夥しい血に体を濡らしている。

 

それは死ねる量、生物としての生命を停止させるに足る量、身から出た命の通貨が死というものを買い得るのに必要な量を流している。

 

そんな彼ら、沙弓の手にはナイフが、凛の手には刀が、和樹の手の片手には手甲が血を滴らせ、血と鉄の輝きを放ち、禍々しさすら漂わせ具えられていた。

 

只良く見ると、ナイフと刀は既に刃こぼれが酷く、切れ味としては包丁にも劣るだろう、少年の手甲も罅割れ、割れ目から血が滴っている。

 

そんな彼ら三人がもはや前を見ているのかどうかも怪しい状態でぐるぐる渦巻きを歩いている、まるで歩かなければ為らないと本能に突き動かされるように、そして背の高い沙弓が少年を背負うように肩を貸し、小さい凛が逆側から少年を支えるように手を添える。

 

そう、特に少年がボロボロだったのだ、最早一人で歩けないくらい。

 

彼らは何も知ることなく、この場所がどういう場所か知ることなく、入り込み、そして辿り着いた、カタリ屋曰く世界の中心に。

 

半死半生の身で洋館の前で三人ともが力尽きるように倒れこみ。

 

只気絶する瞬間に銀髪の人間が「ようこそ、世界の中心に。哀れな逃亡者達」と言っていた。

 

 

 

 

 

このぐるぐる渦巻きに巻き込まれた人間はなかなか死ねないんだ、そう自殺するぐらいじゃないとね。

 

この渦巻きに巻き込まれた人間は名探偵の傍観者になる因果が作り上げられる。

 

 

 

 

 

因みにたまたま居合わせた蒼崎橙子が無免許にも拘らず縫合したりなんなりして治療したのだが、本人達が気絶しているうちに無断で、麻酔無しだったので気絶していたほうが良かっただろうが。

 

しかも弾丸摘出手術などもされたのだから、麻酔無しで、この時点で気絶ではなく意識不明である、気絶だったら幾らなんでも起きるだろう、激痛で。

 

消毒薬に使われたのも焼酎だったのだから(高品質の焼酎は純度の高いエタノールを多く含むので消毒薬の代用には比較的向いています、飽くまで比較的ですが)激痛が走ったはずなのだが、体が痛みという警報を受け付ける状態に無い、それほどの危険状態。

 

なお、蒼崎橙子の本職は人形を作る人形師、副業建築士、兼歴史上稀代の魔術師、魔法使いの域にさえ踏み込む天才、医術は齧っただけと本人談、と言うわけで断じて医師ではない。

 

何故かなんでも器用にこなす人と言うのは確かだが、もしくは人形生成の傍らに学び取った人体の構造を熟知するゆえか。

 

 

 

 

 

「あの時は大変だったな、だが拾ったのはお前だろうカタリ屋。それに押し付けたのもお前だ、ここに来たと言う時点でお前の客なのだから。それを今は私が面倒を見ている。これは私に押し付けたと見てもいいんじゃないか」

 

依頼料未払いの雇用者が何を言いますか、この性格破綻者。

 

「僕はカタリ屋だからね、カタル事は出来ても怪我人の治療は出来ないよ、君が居てくれてよかった、客人が死なれては寝覚めが悪いからね」

 

「押し付けたのは否定しないのか」

 

因みにカタリ屋はこの橙子の質問には答えなかった。

 

 

 

 

 

私が目を覚めたときに先ず目に入ったのは古ぼけた天井だった、朦朧とする意識のなか、私はなんとなく何かを探すように、彼方此方が痛んだが無意識に何かを探して。

 

其の時は何かを探さねば為らないと漠然と突き動かされていたと思う、私はその何かがわかった時には飛び起きて辺りを見回して、探し回った、すぐに見つかった。

 

後で蒼崎にいきなり半狂乱で起き上がって、少し驚いたぞ、とのコメントを言われた、本当は動けるような状態ではなかったらしい。

 

出血多量、全身打撲、全身裂傷、神経系が生き残っているのが奇跡なほどの重症、でも其の時は痛みなど、苦痛など、私の体など。

 

正にどうでもいい。

 

探しものは私の愛しい人、狂おしいほど愛しい人、そのときの私は蒼崎が止めるのも聞かずに絶対安静だった和樹に取り縋っていた、今思うとあの状態の和樹には触れるべきじゃあなかったんだけど。

 

それでも私は和樹に縋り付いて泣いた。

 

只、満身創痍でも生きて呼吸している和樹がたまらなく嬉しかった、あの時私は何も疑問に思うことなく、何で自分が生きていることを疑問に思うことなく喜んだ。

 

それは凛も一緒だったと思う、あの時は本当に自分がもう一度目が覚めるのが不思議なはずだったんだから。

 

 

 

 

 

「で、用件はなんなんだい。彼の話に来たんだろう、僕と世間話をしに来たわけじゃない。君の所望の通り僕はカタルとしよう、では言ってごらん」

 

「今あいつの治療をしているのはお前だ。経過を聞きたくてな、どういう具合だ。あいつのことは私には手に余る。お前の詐欺口調のほうが適切だろうからな」

 

「彼、和樹君か。いいとは言えないけど、少しはマシになってきているよ、それに僕のところより君のところのほうに彼等は良く出向くだろう。だったらよく判っているはずだよ」

 

言外に僕より知っているんじゃないかなと含めて。

 

「ああ、黒桐となら偶に話をしているようだな、他の奴らと一緒になって、よく金を払えとせっついて来る、カタリ屋、金貸してくれ」

 

「それは丁重にお断りするよ、蒼崎橙子君、僕は金融業者でもないからね。それに式君に借りればいいじゃないか」

 

カタリ屋がおどけた調子で言う、完全に冗談のつもりだろうが。

 

「怖いことを言うな、あいつに借りると取立てが厳しそうだ」

 

確かに式の取立ては、考えるだけで怖い、ナイフを突きつけられるだけでは済まないかもしれない、秋隆とかを差し向けられるのも嫌そうだ(空の境界の不思議人物です、両義家の使用人ですが)

 

冗談でも橙子は式には金を借りまい、幹也の給料を滞納しても、そして滞納することをちっとも悪いことだと思っていなかったりする。

 

何せ気にいったアンティークを見つけたら事務所の金で買って、従業員の給金まで使い込む女だ、因みに使い込み費用は使途不明金扱いで幹也が見つけるたびに彼女を睨み伝居るのだが今のところ効果は無い。

 

因みに現在会話を広げながら将棋に興じている二人だった、プロ真っ青の腕前で一進一退の攻防を続けている、手だけが別の生き物ように迷うことなく忙しなく動き会話を続けるこの二人の知性はかなり高いようだ。

 

今更の気もするが。

 

そしてそのまま会話を続けていく。

 

 

 

 

 

私が目覚めたのは女の泣きじゃくる声、良く知った女の声、悲しみと喜びの入り混じった咽び声、沙弓姉様の泣き声、只ぼんやりする頭でそれが悲しみに染められた響きじゃないことはわかった。

 

何で泣いているのか朦朧とする頭で考えるうちに、思考が明確になっていくうちに。

 

私も理解した。

 

後のことは沙弓姉様に聞いたのだけど私は半狂乱になって兄様を探したのだそうだ。

 

沙弓姉様が泣きながら取り縋っている兄様に私も取り縋って泣いていた、体の痛みなど無視して、痛々しい兄様を見たときは涙が止まらなかった、兄様は私たちの為に、ここまで傷ついたのだから。

 

全身に刀傷と銃創で傷つけられ、私たちが引き摺っていたときにはかろうじて繋がっていた兄様の左腕と右足が無かったから。

 

その今や無い腕と足の痛々しさが私の心を苛んだ。

 

 

 

 

 

「ふふっ、だがあの時のあいつ等の目はいい目をしていたぞ、私に向ける目は純粋だった」

 

橙子が自嘲気味に笑い、思い出すように軽く上を向く、そう何かいいものを思い出すように目を細めながら。

 

「君も悪趣味だ、あれがいい目だったのかい」

 

カタリ屋は口調とは裏腹に気分を害した様子も無く残り少なくなった菓子を突付いていた、因みに将棋は決着がついたのか手元にあるのはチェスに変わっている。

 

「ああ、いい目だったさ、純粋だっただろう、あれは純粋な混じり物が無い目だ、式に近い目だったぞ、私はああいう人間は好きだ。だから私はあいつらの、いやあいつの治療を施して腕や足を治してやったんだ」

 

あの時、半狂乱の凛と沙弓が橙子の存在に気がついた瞬間浮かべた表情、一切の感情を排し、向けてくる殺意、その目は敵意に満ち、それに染まっていた、一片の混じりっ気無しに、痛む体を闘争に適した状態に持っていく速度、感情の切り替えどれもが優れていた。

 

そして橙子に向けた純粋な、無垢なる殺意、穢れない殺しの空気。

 

只、横臥する少年を守ると発露する感情と、発動する行動。

 

ある意味完璧な感情、純粋と言うのには橙子にとって価値がある。

 

本当に純粋な感情はその種類が愛であれ、憎悪であれ難しいものだから。

 

稀有なものだから。

 

美しいものだから。

 

その感情を浴びるのは心地いい、実際橙子は、思い出したのか更に愉快そうに笑っている、純粋な殺意を叩きつけられた記憶だと言うのに。

 

「あそこまで純粋に男の為に敵意を向けられるとはね、羨ましいくらいだ、私にはそう言うのは無いからな。あんな感情を抱ける男が居ることは女としては最高の幸せだろうな。勿論あのような感情を持って惚れられる男のほうもだが。ふふ、黒桐でもいいかもな、あいつなら自分の全てをかけて愛する相手の為ならああいう目をしてくれる筈だ」

 

この女、そんな純粋な殺意さえ、凪のように感じ、笑って流して相手の殺意を霧散させたのだから対したものなのだが、いやそれに美さえ感じたのだから。

 

そう人間が迸らせる瞬間の感情の美を。

 

 

 

 

 

そして、少女達も冷静になれば敵ではないと理解して、と言うより状況に混乱したのかもしれない、何故自分が生きていると言う疑問に。

 

彼女たちは理解していたはずだ意識を失った時点で待っているのは死だと。

 

 

 

 

 

「止めておいたほうがいいとだけ言っておくよ、両儀君に殺されるだろうからね、君が死ねるとも思えないけど、彼女はそんな君さえ殺しかねないから」

 

一応礼儀のつもりかカタリ屋が橙子の最後の不穏な発言に突っ込む、黒桐幹也は両儀式のものだ、これは確定事項。

 

「冗談のつもりはないぞ、黒桐のことは気に入っているんだ、寝取ってやろうかとさえ思っている。式よりは気持ちいいと言う自負はあるぞ。そもそもあいつの見所を最初に見極めたのは私だ。確かに黒桐が最初に気に掛けていたのは式だったがね。それに私は自分の欲しいものを手に入れるときに躊躇などしないぞ」

 

その眼鏡の無い目つきの悪い美人が妖しげに微笑む、本当に意地の悪い微笑を。

 

幹也が見たら絶対に何か企んで居ると看破する目をしていた。

 

因みに何が気持ちいいんだろう。

 

このときカタリ屋は内心思った、黒桐君、僕の助手に本当にしてあげようかな、と。

 

なんとなく本当に目の前に居る天才が今言っていることを本当に実行しそうな気がして、その先の未来も簡単に予測できたカタリ屋の心からの同情の発露だった、基本的に他人に干渉しない彼にしては珍しいことに、黒桐青年に心から同情した。

 

 

 

 

 

因みに後日マジに、“赤の称号を冠する稀代の天才魔術師”たる人形師蒼崎橙子と、“全ての生の概念を殺しうる瞳を持つ者”、殺人嗜好者両儀式。

 

黒桐幹也と言う青年を掛けての、基本的に式が一方的に吹っかけた、大喧嘩が勃発したとかしないとか、勃発理由は何故か優しげな(この時は眼鏡をかけていた)雇用主に入れられたお茶を飲んだ従業員が何故か朦朧としているうちに半裸になった雇用主がつまみ食いを敢行したのか、敢行前に式が来たのか。

 

従業員の恋人、和服の美人が冷静に激昂し常時携帯しているナイフで切り掛かったと言うのが理由らしい。

 

勝者はどちらか不明だが。

 

殺人技能者たる式と、人形師たる橙子ではこと肉弾戦ではスペックが違いすぎるのではあるが両者生存はしていたらしい。

 

因みに全身に生傷を作っている従業員が居たとか、恐らく止めるために。

 

 

 

 

 

追記。

 

式に数時間正座させられ頬にナイフをピタピタと叩かれて、因みに半泣きの式に“浮気か”と折檻される従業員が居たとか。

 

普段感情を滅多に表に出さない女が出した執着心はそれなりに従業員の心を苛み+自分が思われていることに喜び。

 

それをやはりボロボロの様子でからかって時折誘惑の言葉を投げかける橙子がいたり、その度に殺す目をする式を宥める従業員がいたりと、なかなかに愉快そうな展開が待ち構えていたそうだ。

 

それ以来、従業員が幸せな不幸という状態に陥ったとか陥らなかったとか。

 

 

 

 

 

話が逸れた。

 

「で、実際のところはどうなんだカタリ屋、式森の具合は。肉体のほうなら問題ない、私が作った義手や義足は、本物以上に機能している、私が聞いているのはあのことだぞ」

 

“あのこと”。

 

「肉体のほうは君が保障するなら問題ないだろう、僕はそんなことできるわけが無いんだから。でも“あれ”かい、君は知っている筈じゃないのかい、幾ら僕が語っても騙っても、覆せないものはある、真実にできないものはある“あれ”がそういうものだと言うのは君がよく分かっているはずだよ、蒼崎君。僕にカタルことで“あれ”は治せない、僕はカタル今年かできない僕には治せない、肉体を復元することしかできない君にも無理だね。そもそも“あれ”は治す云々の定義が当てはまる存在でもない」

 

そう一度捩れた鉄の棒がどれだけ直そうと思っても、もう二度と元のように真っ直ぐにはならないようにね、どれだけ小さな歪みでもそれはもう歪みなんだから。

 

それが生来のものであれね。

 

カタリ屋はそう付け加え、やはり微笑んで、続けた。

 

「それに君は“あれ”が、歪んでいるからこそ価値があると分かっているだろう、それに彼には“あれ”が必要だ、“あれ”が彼らを守ってくれるはずだよ」

 

「判っているさ、カタリ屋、確かに“あれ”は興味深い、私の好奇心をいたく刺激される、だが“あれ”は危険だ、必要だが、危険だ。出来るならば“あれ”は日の目を見る存在ではない」

 

そう蒼崎橙子と言う女は危険を嫌悪しないし無理に回避しようともしないが、身内を守ろうとする気性は持っている、そして過ぎたる力が自分を、持ち主を滅ぼすことも良く知っている。

 

其の筆頭に居る封印指定魔術師、“赤”の蒼崎なのだから。

 

 

 

 

 

目覚めた私達にぶっきらぼうに話しかけてくる女と男か女か判らないけど優しげな銀髪の人、私たちが助けられたと理解して、警戒を解くと、私たちが質問する前に、目つきの悪い美人が話しかけてきた。

 

銀髪の人が口を開きかけていて少し悔しそうで、女のほうは少し勝ち誇っている感じだったけど。

 

「さて、お前ら、不幸にもこんなところに巻き込まれたようだが、諦めろ、全部こいつのせいだ」

 

顎でしゃくるように銀髪の人、面倒くさいし今更なので以後カタリ屋。

 

そう、この渦巻きに巻き込まれることは愉快かもしれないが不幸でもある、係わり合いが無いほうが波風の無い人生が送れると言うものだろう、只ぐるぐる渦巻きに巻き込まれるのはカタリ屋の意思と言うよりはぐるぐる渦巻き自体の持つ意思なのだから彼に何の責も無いのだが。

 

彼らにとっては幸運であるわけだし、巻き込まれることによって命が繋がったのだから。

 

 

 

 

 

そして橙子は尋ねた、何故血を流し、血を浴びてここに来たのだと。

 

話したくなければ話さずともいいといったが、ここにはカタリ屋が居る、彼の話術に掛かれば話さない言葉など無いのだろうけど、カタリ屋はそれをしないだろうけどね、彼は本当に他人に無関心だから、関心がありそうでかれは無関心、過去や素性には囚われないと言う意味ではいいのかもしれないけどね。

 

只、凛も沙弓も話すことを拒まなかった、壊れかけている彼女達に、そして今生きている奇跡に戸惑っている彼女たちに、そして思い人を助けてくれた恩人に。

 

何より身を焦がす情念を吐き出したかったのかもしれない。

 

身に渦巻く、汚い感情をやわらげたかったのかもしれない。

 

少女達の語りだしたことはあまりに理不尽だったけど。

 

 

 

 

 

式森和樹、神城凛、杜崎沙弓、このぐるぐる渦巻きに巻き込まれた三人は、九州に位置する旧家の家の嫡子、どれもが戦いを現代において生業にするくそったれな一族。

 

神城は“剣”、杜崎“体”、式森“形無し”、只どの家もが目指すは力、純粋な力。

 

その力を求め、それ以外と隔絶した狂った一族、力を求めすぎた一族。

 

その狂った家の次代の候補として筆頭になった彼等、“縮地”の凛、“直死の魔眼”の沙弓、“九頭龍”の和樹。

 

速さを極めた凛。

 

殺しを極めた沙弓。

 

そして使い手が地上最強の陸戦生物に至ると言う蝦夷の古武道、否対仙術闘争術九頭龍を会得した和樹。

 

彼等は齢15で師に到達しうる力を身に付けた、凄まじいといえる力を、人の限界の力を。

 

それは悪しき偶然、“縮地”は天才の技でその才がそのとき生まれただけ、生まれなければ惨劇は起きなかったかもしれない。

 

“直死の魔眼”は偶発的に生まれる超能力のようなものだ、これはもっと稀有、得なければ平穏が狂っているが更に狂うことは無かったのかもしれない。

 

必然で力を得たのは母が“九頭龍”を会得していたことのみ。

 

只、三人は強かった、悪いのはそれだけだった。

 

 

 

 

 

そのくそったれな一族は下らない事を言い出した、力に盲信するクズは下衆なことを思いついた、“誰が一番強い”力に固執する彼らには重要だったのかもしれない、その力の順位とは。

 

どの家の次代が最も強いのかと。

 

故に下らない結論を出した、戦わせればよい、と。

 

 

 

 

 

だが、彼等はわかっていた、武術に於いての戦いとは常に殺し合いだと、試合は死合なのだと、故に生き残ったものが一番強い。

 

つまりは子供たちに殺し合いをせよと命じた。

 

少女と少年は拒否をした。

 

少年は当時より家により加えられた虐待のような鍛錬の結果無感情、無表情に近い状態ではあったが、珍しく激しく拒否をあらわにした。

 

幼少より共に育った少女と殺し合う事を頑なに拒否した、少女も同様に。

 

だが拒否は受け入れられず。

 

故に逃げた、少年、少女が心赦せる、愛しき相手と殺しあうぐらいなら、この下衆な一族などと。

 

その狂った一族は歯向かった子供に怒って、追っ手を差し向けた“殺せ”と命じて。

 

だが、彼等は強かった、阻む親族、兄弟子、師、それを皆殺しにして逃げた。

 

凛がその速さをもって自分が教えを受けた姉弟子を斬り殺し、沙弓がその魔眼を持って強大な魔術を切り殺す、和樹がその戦闘力を持って血路を開く。

 

只、彼等は強いといっても個人でしかなく、相手は集団を越えた組織だった、組織に個人では立ち向かえない、それは摂理であり原理。

 

次第に衰える、人間だから、疲労が、磨耗する神経が、理性が、狂いだす精神が。

 

それでも彼は、式森和樹は最も多くの血を浴び、血を流した。

 

只見てはいけないものを見たのかもしれない、見なければ壊れなかったかもしれない。

 

今まで何も感じていなかった人間の死に様と言うものを見なければ。

 

 

 

 

 

少年が背後に少女二人を庇い迫り来る追っ手に拳を振るう最中、終に追い詰められそれでも最後の盾ぐらいにはなろうと少女の前に立ちふさがったとき。

 

少年の父と母は、少年に苛烈な虐待のような訓練を課した両親は少年を追い詰めるために追撃し最後の最後で。

 

少年に止めを刺そうとした人間を後ろから貫いた。

 

父は優しげな笑みを血の被った顔に浮かべ少年に背を向け追っ手に仁王立ちをして立ち塞がり、母は傷ついた息子に初めて、少年の記憶で初めて涙を見せ、「生きて」と懇願し、伴侶とともに立ちふさがった。

 

追っ手に対して。

 

“形無し”の式森、当代“九頭龍”女龍の母、式森憐と“神威”風刹の父、式森和馬、この時、少年の生涯で初めて師ではなく親として、彼等は和樹に接し。

 

鬼となった。

 

少年は二人の末路は知らない、その間に呆然とする少年を二人の少女が引き摺って逃げていたから。

 

只その後も追っ手があったということは・・・・・・・・・・・、そういうことだろう。

 

 

 

 

 

只二人の夫婦は少年が見えなくなり気配も察せ無くなったとき呟いた、互いにしか聞こえない程度の声で、既に両手を血に染めて、自身も血を流して、目だけがギラギラと生を訴えるといった状態で。

 

「愛していたの、和樹。御免なさい、今更だけど、今更だから許して欲しい」

 

「沙弓と凛のお嬢ちゃんはお前が守ってやれ、和樹」

 

そして夫婦は互いに一瞬視線を合わせ。

 

「さぁ、あなた、私たちが初めて出来る子供への手向け盛大にやりましょう」

 

「ああ最後の手向けだ、愛していたぞ、憐、和樹」

 

 

 

 

 

その後は殺しては逃げ、殺しては逃げを繰り返し、気がついたらぐるぐる渦巻きに巻き込まれていた、半死半生の和樹を担いで二人の少女が迷い込んだ、この螺旋の不可思議空間に。

 

 

 

 

 

これが理不尽な話の顛末、力に心酔した一族の愚かな決断。

 

その理不尽に巻き込まれ少年は心を、体を、そして特別な“あれ”を歪めた。

 

体は義体を使い、精神は病み、他人を打ち消した。

 

そして彼自身が気付いていない“あれ”は・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「つまりは“あれ”はあのままだと言うことか、近い内に目覚めるぞ」

 

「だろうね、でも僕は楽しみでもあるんだ“あれ”の存在とは一度は語り合いたいぐらいだよ」

 

カタリ屋は本当に楽しそうに話す、特に何も心配していないと言う風に。

 

そう歪んだ“あれ”が顔を出すのを心待ちにしているのかもしれない。

 

和樹の魂に巣食う存在“ナイアルラトホテップ”

 

外なる神。

千の異形。

無貌の神。

這い寄る混沌。

 

“魔物の咆哮”に記述されし邪神。

 

 

 

 

 

さて今回のお話はここでお終いだよ。

 

では僕は次の舞台でカタルとしよう。

 

 

 

 


後書き。

 

今回は和樹が壊れた原因がメインでしょうか、最後の最後で親の愛を見せられ、それを生き延びたが、そのとき心が壊れた、以前から罅が入っていた心に止めを刺されたといったところです。

 

因みに彼の両親は最後の最後で家よりも息子を選んだと言うことです、虐待のような鍛錬を課しても、それが彼らには普通だったから、より強くなることが当たり前だったからです、只息子の死を目前にして彼らは守らずに入られなかった。

 

ここで解説。

 

九頭龍とは電撃文庫、ダディー・フェイスに出てくる主人公の使用する武術です、作者としてはそのまま使うよりは少し弄りますが。

 

はっきり言うと人間外なる武術です、水の上に立ち、飛んでくるランチャーを掴んで投げ返す、一撃で人体を破壊し、銃弾を見切る、高位の術者になれば無いはずの階段で空さえ歩く武術よりは仙術という規格外の様式。

 

はっきりいって化け物になる格闘技ですかね。

 


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