我、無垢なる刃 外伝 お料理の巻


 

  

さて、まぶらほキャラで料理が下手と言えば誰だろう、聞くまでも無い質問だろうが、満場一致で答えられそうな気がしないでもない、多分文句なしで一切の疑義を挟むこと無しに彼女が上げられる。

 

神城凛、彼女がまぶらほ最凶の料理人であることは、間違いない(どこかの芸人風に)

 

何が最凶かは突っ込んではいけないことなので突っ込まないでおくが色々な意味で最強でもある、最強と最凶、加えて最狂もつけよう、最後のほうは訳が判らないが。

 

で、当の凛という少女は古の流れを汲む剣術家であり、このSSでは壊れ気味の妄想色欲美少女(暗躍する人狼の要らない知識を植えつけられたせいでかなり間違った性知識を獲得しつつある今日この頃)、そして式森和樹の第三婚約者、因みに第一婚約者がアル、続いて沙弓、凛、ライカ、多分エセルと言う序列、丁度真ん中である、後々を見るとかなり順位の高い序列に位置しているのかもしれない、絶対にこれからも婚約者となるのは(和樹本人の意思と関係なく)増大するものと思われる、そんな現時点で五人もの美女、美少女を手篭めにしている和樹の鬼畜っぷりは脇にどけて。

 

第三婚約者の彼女だがどのくらい料理が下手か、下手にも色々あるだろう、食える程度のものを作るのも人によれば下手の範疇に入るだろうし、食うのが困難な程度が下手に入るかもしれないだろう、もしくは食べられない程度を作り出すのが下手の範疇か。

 

簡潔に述べると彼女は下手ではない、下手の範疇に入っていないといったほうが簡潔かもしれないし、ある意味においては上手でさえある、彼女の料理といえる行動は破壊からの創造といったレベルなのだから、ただそれが料理が上手と言う言葉が当てはまらなくなると言う条件付のものとなるが。

 

前述のままだと料理という行動をとっているのに彼女に関しては料理ではない何か別の創作活動に成り果てているのである。

 

大体普通どう考えても料理といえる概念の行動をとって何か得体の知れない生命体っぽいものが出来上がると言うのか、生命体っぽいものが出来上がる時点でもう其の行動は料理といえる概念を吹き飛ばしている、そして凛は得体の知れないものの創造に関しては恐ろしく上手だった、そう恐ろしく。

 

その生命体は奇怪な形状をしていたり、緑色をしていたり、全身が斑であったり、轢き付けのような動きをしたり、奇妙な叫び声をあげるものである、勿論そんな生物が鍋から出てくるのはB級ホラーよりも百万倍怖いのだが。

 

因みに生命を生み出しているという事は凛、錬金術師最高の願い、生命の創造をなしているんじゃないだろうかとも思えるが、この際どうでもいいことである、所詮っぽいものでもあるし、あんな生物が生み出された記録など人類の記録としては残しては如何なものであろうか。

 

彼女がそれを意図して作り出しているかの有無は問わないとするが、というか意図して作り出せたらあの料理はテロリズムで、神の業だ(誤字に非ず)

 

ウエストやマッド二号(保健室のかた)は彼女の料理を解析したいなどと言い出すかもしれないが、その辺は彼等の自由なので捨て置くが、殆ど不死身の彼等でも凛の料理と呼ばれる何か別のものに対してはその耐久力を発揮できるか些か疑問だ、口にするような愚行はしないだろうが、何か毒とか放射線とかを撒き散らしてそうだし。

 

試してみたらはっきりするだろうが、どうせ試すのはマッドだし。

 

で、何も凛だけが致命的なまでに人類の作り上げた料理と呼べる技術体系に喧嘩を売った創作活動に従事しているかといえば、さに非ず、作者のSSには負けず劣らず致命的な連中が居る。

 

神城凛に並べられるのは人間としてかなり致命的な部分で欠陥があるのかもしれないが、この際それはどうでもいい、どうせあらゆる意味において普通人とは枠外の連中である。

 

身体能力とか、武力とか、変な行動則とか、常識とか、倫理とか、道徳とか、貞操観念とか、後半は主にどこかの鬼畜のせいで、まぁ、その鬼畜もどうしてそうなったのかは今のところは不明なのではあるが。

 

先ず名前から挙げていこう、元諜報部員ディステル、九頭竜使い風椿葉流華の二人、二人共いい年の女性なのだが、この際女性かどうかはまるで関係がない気もする、男女の差別なく、あそこまで致命的なまでにある種の創作活動に関しては上手過ぎた、因みに断じて其の創作活動は凛と同様料理とは表現してはいけないレベルである。

 

まぁ、凛と比べると幾分マシなような気がするが五十歩百歩であろう。

 

得体の知れない製作物が抽象芸術になるか劇薬になるか生物になるかの違い程度にしかない、勿論味のほうも人間の味覚を破壊するには十分に過ぎる、大体料理に相応しい普通の食材を材料にした何かである、味覚で何かを計ろうと言うのが大いに間違っている気もしないでもない、身体への被害で図るのが適切であると感じる。

 

保障出来るのは口にしたら賽の河原は拝めるだろうし、もしかしたら其の川に居る船頭に六文銭を払ってしまうかもしれない、口にしたものは、永遠の眠りに入らないことを祈るだけだ、彼女達の料理と呼ばれるものを食べようとするものはいないから現状のところで死者は出ていないが。

 

 

 

 

 

で、態々こんな前置きをしておい、あのサブタイトル、大体展開が予想されそうな気もするが恐らくご想像通りの展開だろう、ご想像を裏切るような真似をこの場に於いてする勇気を作者は持ち合わせていない、お約束とは遵守するためにあるのだから。

 

よってある種の創作活動に分類される、彼女達主観の料理といえる行動に彼女達が従事する嵌めになっていたのである、勿論ある程度自分の料理(?)の腕前を理解している彼女達が自ら生き恥を晒すような真似は望んではいなかったのだが、その辺は紆余曲折があったのだが、紆余曲折の果てに現在、風椿邸の大きすぎる台所で神城凛、ディステル、そしてこの屋敷の一応は居住者(別にマンションの部屋を保有はしているが)風椿葉流華、なにやら悲壮な顔をして目の前に用意されている食材を眺めているのであった。

 

それこそこれから勝ち目の無い決闘に向かう小心な剣士のように。

 

生物化学兵器か核廃棄物と同等の危険度を持つものに作り変えられる運命を持った本来ならば生物の命の糧となるべき食材がこの場合哀れだろう、調理するものも生き恥を晒すことを自覚しているので哀れではあるが、因みに紆余曲折の結果彼女たちに料理を作らないという選択肢を選ぶ権利は与えられていない。

 

逆らう権利程度は与えられていないことも無いが逆らうという選択肢を取れる状況でもないのが現在なのだから。

 

 

 

 

 

この三人の教官を務める料理人達(其の教える苦労が報われることは絶対にないと思われるが教官達は一部嬉々として其の役目を引き受けたと言う)、因みに嬉々として引き受けたのはどこかの不良教育者と暴君であるがそれが誰かはこれから述べるとしよう。

 

まずは筆頭料理人、式森和樹第四婚約者、ライカ・クルセイド。

 

喫茶店チャペルのマスターにして和洋中なんでもござれの万能料理人、人間性には幾らか疑問が残るが腕のほうは確かな巨乳の毒舌おねいさん、芸風としてどこかのお屋敷に生息する割烹着の悪魔のキャラを出す傾向がある、それでも腕前のほうは確かなのだし優しい女性であるのも確かである、毒舌だけど。

 

毒舌対象は選ばれるらしいので常連客には金髪巨乳の優しい美人のおねいさんで通しているある意味詐欺師、毒舌の被害者は世間のその評価に首を傾げるだろうが堂々と異議を申し立てる勇気はもっていないだろう、何より生活の一部を握られているのだから。

 

だが彼女の素の毒舌を浴びれるというのはそれは親愛の現われなのかもしれない、苛めっ子が苛めるのが愛情の裏返しとかいうノリの。

 

その他順に並べると、伊庭かおりである。

 

伊達に真祖の吸血鬼として長くを生きては居ないのか妙に料理が巧い、因みに彼女自身は血を飲んでいれば生きているのに困らない筈なのだが、何で料理を覚えたのか不思議である(吸血鬼としてのモデルはネギまのエヴァンジェリンとヘルシングのセラス・ヴィクトリア)

 

主に和食に関してはライカを凌ぐ程の腕を誇る葵学園教師にして式森和樹の自称おねいさん、因みにコイツが嬉々としてこの苦行であることは確実だと思われる教官役を引き受けた奴である、何が目的かは後に記述することになるだろう。

 

ただ、誘われた時に邪笑を浮かべていたとだけ書いておこう。

 

次は杜崎沙弓、家庭料理に意外に精通している肉体派美少女にて式森和樹第二婚約者、その人間性はかなりまともな部類に分類できるが少し黒い性格も保有している策謀少女。

 

この小説内では松田和美を上回る腹黒さをもつがどうも詰めが甘い気がしてならない、因みに謀略により和樹の第二婚約者に収まっている、最近では和樹の第二婚約者である筈なのに影が薄い気がしてならない。

 

そして、暴君こと風椿江美那、全てにおいてオールマイティ、勿論料理に関しても平均よりは遥か高みに居るクールビューティ、自分の姉の謀略により望まず世界各国を飛び回って得た料理の知識も伊達ではない、だが人間性に関しては教官陣ではあらゆる意味で一番問題があるかもしれない女性、自称式森和樹のご主人様。

 

なお、和樹は彼女がこれを口にしても否定はしない肯定もしてはいないが、実際のところは恐らく否定する勇気を持ち合わせていないのではないかと思われる、一番嬉々としてこの役割を引き受けた女であるし、この場を用意した人間でもある。

 

それ以前に引き受ける以前に自分から首を突っ込んで、全ての準備を整え、凛以外の殺人料理人を連れてきた張本人、別名諸悪の根源ともいう。

 

彼女がいなければこれ程大々的に殺人料理矯正特訓のようなことが行われるようなことはなかったのだろうから、勿論この催しを彼女が開いた理由は面白そうだからと個人的な怨恨である、かなり自分勝手でゴーイングマイウェイな性格をしている彼女としてはそれで十分すぎる理由となる。

 

 

 

 

 

大体当の料理人以上に悲惨な覚悟を強制的に固めさせられている哀れな連中も居たりする、文字通りに強制的に、本当に強制的に、これでもかってぐらいに強制的に、本人達の意思など完全に完膚なきまでに無視されて。

 

そんな憐れな被害者達、特訓会場であるキッチンを眺められる場所から試食係と張られた机に式森和樹、アル=アジフ、松田和美、神城駿司、風椿玖里子が座らされていた、文字通り座らされていた、強制的に。

 

つまり能動的に座ったのではなく受動的に座らされたということだ、言葉からして一人としてその場に望んでいるわけではない、今すぐにでもこの場を離れたいと言う意思がビンビンと伝わってくる、脂汗を多量にかいている表情から断固としてこの場から一秒でも早く逃げ去りたいと思っているのは明らかだ、誰が好き好んで生物化学兵器を市販の食材で作り出す人間の料理を食したいと思うものか、誰でさえ自分の命を優先させ、生物化学兵器を口に入れたくは無い。

 

逃げようとする行動は本能に忠実な衝動と言っても良い、逃げようとする行動そのものがこの場では善そのものだ。

 

だがこの五人逃げようにも足は複数の手錠で椅子の足に固定されているし、椅子自体も床に固定されている、胴体は後ろの柱に繋がれている、魔力封じの札は嫌って程貼られ魔法も使えない、自由なのは首から上と腕(食事が出来る程度の自由度は与えられている)だけと言う体たらく、逃げると言う権利が完全に踏みつけられて塵屑扱いになっている。

 

因みに拘束したのは風椿の三女殿だ、やはり嬉しげに拘束してくれたのだが何か怨みでもあるのだろうか、恨みは確かにかおりやディステルや葉流華にはあるだろうが、その辺は以前存分に報復したはずである、葉流華には報復が足らないと強制参加させているが。

 

多分試食人の選出は面白そうだからと言うのが理由ではないかと思われる、もしくはその苦しむ様を想像して彼女の加虐趣味に合致したのか、両方かもしれないが。

 

なお生贄の子羊の各々の現在の立場に対する主張は。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

既に諦めたのか何も語らない和樹、自分が懇親の力を篭めても千切れないロープに自分たちが逃げる術は無いと悟ったか、鎖すら千切れる和樹が千切れない縄はいったい素材は何かと気になるところだ。

 

だが逃亡を試みないのはある意味では正しい拘束を外しても性質の悪いブービートラップは山のようにある、逃げること自体が不可能の3乗具来の状態、彼女がそれを設えているところ見たわけではないだろうがそれぐらいはしていると和樹はわかってしまっていた。

 

だが全てが無駄と理解していても生物化学兵器を口にする覚悟は出来ているのだろうか、風椿の三女が関わる時点で逃げ出せばよかったと心の底から思っているのは確実だろうが、今更に過ぎる、彼は逃亡を許される時間はほかの人間よりは十全にあったのだから。

 

で、他の今回の不幸の代名詞達の主張、本日いきなりここに来た途端にふんじばられ強制的に試食人に仕立て上げられた可哀想な人たち。

 

「エセル、何故、汝はこちらにおらんのじゃ。ずるいではないか!!!!!

 

逃げるのは諦めたようだが自分と同じ立場に来ない同居人の精霊に文句をぶつけている外道の精霊、因みに真っ先に危機感を感じて逃げようとしたのだが捕獲された。

 

捕獲された後もひとしきり暴れて逃れようとしたが無駄に終わって、今は現在の不幸を他人に言葉をぶつけて発散させることくらいしかやることがない、もとい出来ない外道の精霊。

 

同居人のもう一人の精霊は自分のマスター共々同居人の精霊が殺されかねない光景を視界に入れないように知らない振りをして虚空を眺めていた、マスターを見捨てているあたりが白状であるが下手を打って生物化学兵器を口にするのは心底御免被りたいようだった。

 

本能には正直なエセル、何気に額に汗をかいて申し訳無さそうな表情を浮かべるが、行動に移してくれないと何もならないので彼女の感情は余り価値が無い、因みにエセルは江美那の補助スタッフである。

 

元々はエセルのマスターは彼女なのだから、最初は自分も其の席に磔にされそうになっていたところを元マスターのよしみで九死に一生で江美那の補助として抜け出したのだから、下手に同情してそちら側に回る可能性は完全に潰して置きたいのだろう、彼女の元マスターは気分が変われば自分を拘束することに何の躊躇いもしないことを彼女はよく知っている、何せ元マスターなのだから。

 

「何で私がここに座っているのよぅ(涙)」

 

松田和美である、何故かここに居る、居る理由は考えてはならない彼女の苦労性が(このSS限定)この場に誘ったのだろう、何気に不幸体質では女性キャラの中ではナンバーワンだし、まぁ、そのうち彼女の幸福話でもやろうかとは思っているのだが。

 

因みに世の不条理を呟くのと同時に彼女にとっての諸悪の根源に微妙ながら怨嗟の死線を投げ掛けてここに連れてきた(連れてきたほうにも悪意は無かったのだが何故か椅子に縛り付けられては恨みも沸いてくる)沙弓を睨んでいた、睨もうと怨もうと逃げ出すことは不可能だったが、睨まずにいられない心境なのだろう。

 

睨まれているほうも視線を合わせようとはせずに虚空を眺めていたりしていたが。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

こちらもだんまり神城駿司。

 

だんまりだが額から滝のように流れ落ちる汗が彼の心境を物語っていそうだ、因み本当の意味での諸悪の根源はこの男であるが和樹や他の面子が現状を儚んで非難する対象としてみていない、忘れているだけだともいえるが、思い出した時に愉快な事態になるのは確実。

 

「逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目、逃げなきゃ駄目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

玖里子。

 

どこかに居る三番目の少年の如く虚ろな瞳で自分の膝を見つめて呟き精神的にヤヴァイ状態に陥っている、周りの面子が今の状態を考慮に入れずに彼女を見たら先ず間違いなく精神病院送りにされることは間違いないだろう、因みに彼女が知っているのは葉流華の腕前だけだが葉流華だけでここまで恐慌状態に陥れるのだから、葉流華も正真正銘の破壊創作料理(?)を作れるのだろう。

 

言い換えると錬金術料理。

 

まぁ、この連中は哀れに過ぎるが誰かが助けてくれるわけでもないのだから諦めて生贄の羊よろしく近い未来に生物化学兵器でも口に入れて貰おう。

 

多分意識を一日程度手放すくらいで済むはずだ、運がよければ。

 

バックコーラスはドナドナ。

 

 

 

 

 

で、こうなった経緯、上述したが事の発端は神城駿司にある。

 

恐らく縛られ拘束されている連中がそのことに気付いて生物化学兵器と同種の創作作品から生存することが出来たのなら彼の命はどうなることやら保証の限りではない、それ以前に彼自身が劇物を食して生き残る必要があるだろうが。

 

今現在はあまりの恐慌状態にそのことを完全に忘れ去っているが何時思い出すことやら。

 

まぁ、タフな人狼だ、凛の花嫁衣裳を見るまではと病気も全快させた経歴ももつ、妙な理不尽存在と化しているから死にはしないと思う、きっと。

 

料理という名の劇薬から生き残ったのなら四人の心温まるリンチからも生存を果たしてくれることだろう、多分、もしかしたら、きっと・・・・・・・・・・・、どの道駿司は死ぬかもしれない。

 

 

 

 

 

閑話休題(それはさておき)、発端から語り始めよう。

 

この神城駿司と名乗る人外のシスコン狼、式森凛婚姻計画なる怪しげで愉快そうなものを企んでいたのだが、最初は和樹のことを敵視していたような節がなかったでもないがどうもくっつけるほうに傾いたら傾いたらで行動が極端に走る、この時点でシスコン狼の二つ名は確定。

 

実際日々凛を(唆して)和樹に差し向けている、主に性的な方面で、こいつのせいで凛が妄想色欲少女になるのが加速されている気がするがその辺はどうでもいい、凛が愉快な少女になっているのを止める気は作者としてもまったくない、つーかもっと愉快にしたい。

 

で、シスコン狼、妹分の凛を和樹に嫁がせようと裏に表になにやら不穏なことをやらかしまくってくれていたのだが今回の騒動も其の産物である、傍迷惑な事に。

 

まぁ、彼はここまで悪ふざけが混じった催しになるとは夢にも思っていなかっただろうが、因みに駿司は和樹を婿に取れと実家に命じられていて凛を嫁にやれとは断じて命じられていない、この時点で神城本家の意向など正面からブッチしてくれてやがるのだが、そんなどうでもいい都合は掃き溜めに既に捨て去っているらしい。

 

このへんもどうでもいい、このような事態に陥ったほうが肝要だ。

 

駿司は100年以上生きているだけあってそれなりに結婚観が古かったりするのか、神城家の家風なのか凛に家事一式を仕込もうとしたらしい、嫁に出そうとするなら最低限は出来ないと拙いと感じたのだろう。

 

無謀なことに、この言葉しか送りようがない、何せ凛は料理をすれば兵器や未知の生物を作り出し、洗濯機を使用すれば黒煙が上がる、こと家事と名がつくことに破滅的なまでに才能を発揮できない娘なのである。

 

と言うかここまで破滅的だと一種才能的なものを感じる、破壊の才能が、少なくとも家事をすることに関して彼女は破壊神に近い、最低限掃除は出来るようだったが。

 

掃除も出来なければどこかの三番目の少年の保護者の作戦部長と同等の生活能力を保持する生活無能者扱いされる所だったろう、大体本質は几帳面なのになんで他の家事が全然出来ないのか大いなる謎である。

 

凛の家事学習、最初は駿司が根気よく教え込もうとしたようだ、凛にも式森君の妻として恥ずかしくないようにとでも言い包めば凛も率先して其の手の特訓は受けたのだが。

 

確かに掃除、洗濯等はそれなりにこなせるようになった、其の背景には駿司の血のにじむような努力があったのは言うまでもないことなのだが、かなり牛歩な成長だった。

 

判りやすく言うと数回爆発した洗濯機に巻き込まれ、皿を洗おうとした凛の皿が何故か駿司の眉間に的中したりと、因みに凛は普通に本人主観で洗い物をしていただけであるのだが何故か駿司のほうに飛んで行ったらしい、一番ダメージがでかかったのは圧力鍋、国庫まで普通でない事態になることに駿司は大いに悩んだらしいが、悩んでも解決しない問題だろう、凛ちゃんの家事スキルは−Exだ。

 

だが、料理だけは駄目、何を指導しても、どれ程凛の桃色の未来を刺激しても駄目、それこそ駿司が血を吐くような、事実最初に凛の作り出した産業廃棄物を決死の思いで口に入れて吐血したのだが、どうやら胃壁を溶かせるほど攻撃力を保有していたらしいがその程度で済んだのが幸福と評するか、吐血をしたことを不幸と評するかは意見が分かれるところだろうが、多分幸福な部類だろう。

 

他の作品、破壊創作作品もとい生物化学兵器は、簡単な玉子焼きで緑色の物体が出来上がり、ゆで卵で炭が出来上がる、煮物を作らせれば得体の知れない自立行動する料理の果ての何か、何とか可能になったのはインスタント食品程度であるが、これを作者は料理とは定義しない、カレーを温めるだけや湯を注ぐだけならば幼児にでも出来るだろうから。

 

大体、家庭料理がオールインスタントは嫌過ぎる。

 

そのインスタント食品すらも教え込まなければ出来なかった凛は相当なものである、と言うか失敗のしようが無いのだが、カレーを温めれば黒煙が上がり湯を注げば何故か容器が割れる、怪異現象といってもいいほどの不可思議な腕前を披露してくれたものだ。

 

凛は絶対に一人で自炊生活を強いられる環境で生活することが出来ないだろう、結果は餓死か中毒死だ。

 

で、駿司が取った行動が自分ではさじを投げることだった、大体からして駿司も料理が得手と言うほどでもない、男性としてはそこそここなすといったところではあるが、それが得手かどうかは別の話である。

 

料理を体系だてて学んだこともないし、生活上必要と思われる技能を普通に修得しただけ、因みに幼少期の凛との修行期に山篭りなどをしたときに食事を用意していたのは駿司である、其の頃から凛の料理は稀有な腕前を保持していたのだから。

 

 

 

 

 

で、さじを投げられた先。

 

喫茶店チャペルにて式森和樹が神城駿司と同席して共に頭を抱えていた、何故に婚約者にそれを直接投げつけるのか理解に苦しむが駿司は和樹に相談するようにしたようだ、投げる先がここにしかなかったのかもしれない、因みに両者が頭を抱えている理由はかなり違う、駿司は破壊創作とでも呼べそうな凛の料理の腕を何とかしようと頭を抱えており、和樹は何故自分の所に其の難題な話題を持ち込んでくるのかと頭を抱えていた、チャペルでこの二人が話し合っていたのはここが二人の常連だったからで、駿司はいつの間にか常連化していた。

 

なお、ライカさんからはお金は払ってくれるけど時たま私を敵視して妹自慢(和樹に相応しいと)するシスコン野郎と認識されている、迷惑度は無銭飲食を敢行する和樹と大差無いとのこと、ウエストよりはマシ。

 

「式森君。どうしたものだろう、君としても改善しておかないと命に関わると思うんだけどねぇ」

 

駿司が和樹に話を振っているが、振られたからどうしろと言うのだ、和樹も凛の破滅的な腕は知っている、知りたくは無かった気がするが知っている、食べた瞬間地獄門が見えたとコメントする体験は経験している、勿論将来的に和樹の命に関わるという事は間違いではないが、その場合は和樹が家事をすれば解決する問題なのではないだろうか、この話では余計な突っ込みだろうが。

 

因みに駿司の表情は困惑に染まった大真面目な顔であるが、そんな顔をされても和樹としてはどうしようもないのだが、あの料理がそう簡単に修正できるのなら一般人は宮廷料理人に一週間でなれるだろう。

 

「そう言われても、僕も料理が得意って訳じゃないんですが。それに凛ちゃんの料理は無理です。そもそもあれは料理なんですか」

 

自分の婚約者、半ば駿司の脅迫だが、に対して案外酷いことを言うものである、事実だが。

 

「いやそりゃ僕も判ってはいるし同意見なんだが、どうにかしないと其のうち死人を出しそうでね。今のうちにせめて食べられる限界程度にまではしておかないといけないと思うんだよ」

 

それはそうだがシスコン狼、あんた何気にとんでもなく酷いことを言ってないか、凛ちゃん二人がこんな会話していると知ったら本泣きで切り掛かってくるよ、きっと。

 

「それはそうだとおもうんですが」

 

因みに食べられる限界と言うのはどういうレベルだろうか。

 

といって解決策があるわけではない、というか解決策があったら頭を抱える必要は無い。

 

 

 

 

 

で、要らん解決策が居たりする、この女が関わった時点で和樹はアルを連れて二週間ぐらいどこかに旅立てば命を掛けた試食係り、もとい毒物実験被験者にならないでも済んだことだろう。

 

「私が手を貸しましょう。神城の狼」

 

唐突に、突然に、自然に、違和感無くその場に居た二人に何の気配も悟られることも無く近づき、冷たい声で突如話しに割り込んできた存在、何故にいたのかと声高に叫びたいが、叫んだとしても意味が無いだろう、彼女については何もかにもがまかり通っても何故か疑問が出ない。

 

風椿家三女、風椿江美那、いつも通りのスタイリッシュな黒のパンツスーツにノンフレーム眼鏡、黒のロングストレートの髪に張り付いたような挑発的な表情、其のいつもどおりの姿で和樹達が座っていたカウンター席の向かい、つまりはマスターことライカがいるべき場所に江美那はいた、そちらに居るのも何故だと声高に叫びたい。

 

しかもパンツスーツにエプロンが激しく似合っていない、しかも可愛らしいイラストつきのエプロンなど彼女の人格面からも似合わない、それを和樹が指摘するような勇気を彼は持ち合わせては居なかったが、因みに隣にちゃんとマスターのライカは居るが彼女がいることに何の文句も挟んではいない、もしかしたら知り合いなのかもしれない。

 

和樹もそんな彼女のいきなりの登場には僅かに驚きの表情を浮かべたのみで、実際彼女に関しては小さいことで驚いていたら身が持たない、慣れない駿司はそれなりに驚いていたが、飽くまでそれなりである、和樹関連の人間が特殊な能力技能を保持していようと不思議に思わないだけの感性は彼の中でも根付いているのかもしれない。

 

「江美那さん。なんでそこにいるんです」

 

一応突っ込みは入れるようだ、入れても仕方ないのかもしれないが、社交辞令のようなものだろう。

 

「ライカとは古い馴染みなのよ。久し振りに遊びに来たら愉快そうな話をしているでしょう。聞いていたら私が手を貸してもいいと・・・・・・・」

 

やっぱりライカとは知り合いだったが、まぁ、そこそこ頑固なライカが知らない人間を自分の仕事スペースに入れるようなことはしないだろう。

 

その辺のプロ意識は高い職業人なのである、この喫茶店の料理の鉄人は。

 

因みに毒舌は身近な人間だけに発する其の相手に対する親愛の情の表れらしい、気を赦していない相手には毒舌を吐かないから。

 

だが、其の点はともかくとして和樹が言葉を遮り質問を繰り返す、聞きたい所はそちらではないのだから。

 

「そんなことを聞いているんじゃなくて、さっきまでそこに居なかったと思うんですが」

 

確かに和樹が来店してからこの店に居たのはライカと駿司の二人だけでそれ以外には居なかったのだ、絶対に断固として。

 

「居たわよ」

 

「いや、確かに」

 

「居たわよね、ライカ」

 

「居ましたよ、和樹ちゃん。一般常識の認識も悪かったけど眼も悪くなったんですか。お金が無いギリギリの生活を強いられているのは判りますけど、眼科くらいには言ったほうがいいとお姉さんは思いますよ。ライカの旦那様候補ですから其の分のツケは認めてあげますから。返しては貰いますけどね、この社会の弱者」

 

未来の旦那様に対していう事でもない辛辣な言葉だがその辺は何時ものことだから気にしてもしょうがない

 

因みに其の旦那様なあたりの駿司の和樹を見る目が怖かったとか、ライカの目が全く笑わずに其の部分を口にしていたとか和樹のストレスを跳ね上げることがあるが、これもどうでもいい。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

で、和樹としてもこれ以上追求しても無駄だろう、何を言っても居たと主張されるのだから、まぁ、そんな細かいことはどうでもいいわけだが。

 

其の後紆余曲折を得て凛のお料理特訓が決まったのだが、何故か葉流華とディステルが其の対象に選出されていた、この時点では駿司はまだ凛の料理がマシになるかもと期待していたのだが、其の期待は強制的に座らされている状態の時にはそんなことはどうでもいいような状態になっていた。

 

 

 

 

 

因みに、ディステルは以前の罰の時に江美那に料理を食べさして(作るように命じられた、拒否権の行使や反論等をすると折檻されるので一応作った)、江美那を悶絶させたことが原因で(この時同じ罰を喰らっていた料理上手なかおりは仕事で居なかった)この特訓対象に選ばれており、選ばれた理由は扱いて憂さ晴らしではないだろうか。

 

葉流華は江美那が自分の姉の腕前など重々承知の上で、以前の謀略発覚の憂さ晴らしでは飽き足らないのか嫌がらせの意味合いを込めてこの特訓に参加することになっていた。

 

勿論、葉流華にも拒否権など無く、妹の言われるがままにこの本人にとってもいやで仕方ない料理特訓に参加することになった、姉の威厳等江美那に対しては欠片も発揮できないのだろうか、どうも苦手意識があるようだ、江美那の折檻を受けたものならば誰でも苦手意識どころか心的外傷を抱くことは確実だろうが。

 

 

 

 

 

で、錬金術実験会場もとい料理特訓会場、風椿邸内キッチン。

 

今正に調理人、もとい錬金術師達の悲壮なまでの挑戦が始まろうとしていた。

 

なお、教官の役割配分はライカ、総監督。

 

出来の悪い所に回って適時らしいが全員出来が悪いのだからこの役割に意味があるのか非常に疑問を残す、かなり大忙しではないだろうか。

 

風椿葉流華、担当教官風椿江美那。

 

ディステル、担当教官伊庭かおり。

 

神城凛、担当教官杜崎沙弓。

 

沙弓は始める前から疲れ切った表情を、かおりはサディステックな笑みを、江美那は皮肉気な笑みをそれぞれ浮かべていた、彼女達の内心がよくわかりそうな表情描写である。

 

ライカはニコニコ笑っているだけなのでその内心は伺い用がないが、この場にいる時点でそれなりに楽しんではいるのだろう、この詐欺師。

 

勿論、いい加減文句を言うのにも疲れたのか、現状を理解し過ぎるくらい理解してしまったのか項垂れる五人の生贄が試食係という死刑台にて拘束されていた。

 

 

 

 

 

で、料理開始。

 

この後はある程度ご想像の範囲だろう、どれだけ教官が優秀だろうとどれだけスパルタで教え込もうと、世の中不可能なものというものは絶対にしてあるもので、すんなりと上手な料理を彼女達が作れるわけが無いのである。

 

何やら聞こえてはならない擬音や見えてはならない色の煙が立ち昇ったりしている、爆発現象が起きない辺りは教官達の努力の成果といったところだろうか。

 

詳細に描写すると。

 

ディステル、かおり組。

 

以前描写したがディステルは物を切ったり暖めたりは出来る、凛よりはマシなレベルの腕前なのだが、料理という概念でものを語るとすると耐毒を持つ江美那が悶え苦しんだということから劇物を作り上げる才能を保有している。

 

そして教官のかおり、彼女腕前はいいのだが本当にいい性格をしていた、こいつ本当に普段教師をしているのか疑いたいくらいにいい性格をしていた。

 

「あんた、何でこんな簡単なことが出来ない。出来るのは銃の扱い、破壊工作、それは女として、いや人間として問題があるんじゃないか。ほら、何で其処に砂糖を入れようとする、常識が無いのか。ああ、この破壊料理女」

 

その教えるというよりは貶すような言葉をかけられているのは勿論ディステル。

 

作っているのは料理の基本カレーなのだが、切るまではよかった、切るまでは、炒める段階に入ると何故か不可思議な行動に出るのである。

 

その度にかおりが罵声と呼べる注意を投げかけているが、その度にディステルの顔面に青筋が浮き出し、料理中とは思えないほどの殺気を撒き散らしている、ほとんど痙攣しつつ今は肉を入れた後に野菜を突っ込み炒めている。

 

「ほら、もっと丁寧に出来ないのか。大体なんでそんな乱暴に扱う、アンタが普段扱っている物騒なものじゃないんだ。生来から破壊とか乱暴とかって言葉しか似合わないのは知っていたが、ここまでDNAに染まってるんじゃ救いようが無いぞ」

 

段々、注意という名の暴言にも遠慮呵責が無くなっている、そしてそれに比例して喜々としていくかおりの表情も、反比例していくディステルから漂う怒気も。

 

因みにかおりがこの大変過ぎる教官役を嬉々としていたのはこのディステル苛めが目的なのである、普段ゲーム狂、掃除が出来ない女、年齢不詳の高齢者などと言葉で虐められているから、勿論言われたら言い返しているのだから報復という主張は間違っているのだろう。

 

で、いい加減ディステルがこの旧友の人格破綻教師の暴言を耐えられるだろうか、というか料理が始まって以来よくここまで耐えたと評したい、この二人仲はいいが悪友と表せる関係なのだから。

 

で、怒りの臨海に近づいたのは必然だろう、この二人の間での怒りの導火線は普段はかなり短いのだから、このディステルにとっては生き恥ともいえる催しの主催者がある女性でなければかおりの暴言の第一回で喧嘩が勃発している。

 

「五月蝿い。この婆が。埋葬してやろうか、先程からグダグダグダグダ。お前の部屋が腐海にならないように掃除しているのは誰だと思っている。この近親相姦願望の妄想馬鹿女が!!!

 

ついに切れた、銃の発砲音とともに。

 

切れた瞬間にエプロンの下に仕込んでいたのかSIGを取り出してかおりめがけて連続発砲、この二人の喧嘩には常時使用される危険な玩具、かおりはともかくディステルにとっては致命的な威力だと思うのだが、この二人何故か本気で狙いあっているのに双方ともに被弾したことは無い(かおりは被弾したことがあると主張しているが傷跡が残らないのでその主張は証拠が残っていない)。

 

「教えてやっているのに何をする、この暴力女。それが人に教えを請う態度?礼儀ってもんをわきまえてんのなら、今すぐ私にひれ伏して、土下座して謝れば許してやってもいいぞ」

 

絶対に怒りを更に煽るようなことを言いつつ、どうせかおりもこのまま収まるとは思っていなかったのだろう既にCz75を抜き出して構えている。

 

「貴様が今までの暴言を詫びろ。大体料理が出来なくて何が悪い、貴様のような人格破綻者より万倍もマシだ。いや詫びる必要は無い、死ね」

 

二人が完全な臨戦態勢で、エプロン姿なのでその表情や気配が激しく似合っていない、この二人には最初から似合っていなかった気もするがその辺は捨て置こう。

 

自堕落+武闘派コンビに家庭的なものが端から似合う要素など抜け落ちている。

 

ガンッ!!! ゴンッ!!!

「お前達、五月蝿いわ。黙りなさい」

 

江美那が不快そうな表情をかおり達に向けて言い放つが、「黙りなさい」と言う前に彼女達が昏倒しているのはどういうことなのでしょうか?

 

しかも何故彼女達は頭部にでっかいたんこぶを拵えて倒れているんでしょうか?

 

何で倒れている彼女達の近くにやたら大きいフライパンと中華鍋が転がっているんでしょうか?

 

そして何で貴女の補助のエセルが引き攣った表情で明後日の方向を見ているんですか?

 

試食係と呼ばれる被害者達が少しだけ救われたような表情をしているのは、まぁ、これは言わなくてもいいだろう、地獄への片道切符が一つ減ったのだから。

 

最後に先ほどの擬音表現は何を意味するんでしょうか、ねぇ、江美那さん?

 

 

 

 

 

で、次なる疑問、何で先程の謎の現象の際に一応彼女達の親友、風椿葉流華が何の反応も見せないのかというと。

 

彼女、現在、江美那の尻の下でもがいていた、大体耳に入る音声から何が起こったのか察知はしているだろうがコメントを出すような余裕も無く、まず思いっきり体重をかけられているので肺を圧迫され声が出ないのだが。

 

「葉流華姉、何故私のお尻を堪能しているのかしら。私はそっちの趣味は無いから姉に撫で回されても何も感じないどころか少し気持ち悪いんだけど」

 

口元に微笑を浮かべた江美那が椅子にしている葉流華に語りかけるが返事は当然無い、絶妙な体重移動で葉流華が江美那をどけようと動かしても離れず内臓を圧迫しているから返事を出したくても出せないのだろう。

 

出せたらこう言っているだろう。

 

「さっさとどけ」と。

 

「返事が無いわね、一応聞くけど、私のおしりの感触はどうなのかしら」

 

あんたは鬼か?

 

で、こういう状態になった経緯、上の二人と似たようなものである、慇懃無礼に江美那が葉流華の駄目出しを行い、しかも完全に心を抉る様な言葉を連発してくるので一言一言がそれは心に響くようなナイフのような言葉となっている。

 

「ねぇ、葉流華姉。この程度のこと出来ない訳がないわよねぇ。出来なかったらちょっと人間として問題があると思うわ。でも私の姉なのだしこれぐらい出来るでしょうね」

 

見本を見せた後そのようなことをのたまい(因みにやったのはプレーンオムレツで綺麗に作るのはそれなりに難しいものではある、中々あの形にはなってはくれないし、不器用だといつの間にかスクランブルエッグになってしまう)心理的重圧を掛け。

 

勿論出来なかったのではあるが、何故か赤黒い粘着性の物質がフライパンの上にある、何処を如何したらこうなるのかは謎だ。

 

後、何故オムレツを選択したのかは、その辺は葉流華が簡単そうだと思い込んで言い出したことなので江美那が選ばせたわけではないが、オムレツを選んだ時点で忠告も出さない辺り結果は読んでいたと見える。

 

基より何を選択しても出来ない可能性のほうが多いのだが、それでももう少し簡単なものから薦めるべきだろう。

 

かおりにも言えることだが彼女は最初からディステルをいびるつもりだったので問題ない。

 

彼女は出来なかったことをそれはもう残念そうに、顔は微笑みを浮かべて。

 

「どうしたらこうなるのかは不思議で不可思議で珍妙なのだけど、まず言わせてもらうわ。御免なさい、私の姉だから最低限人間の尊厳として出来ると思っていたのだけど。私の姉と考えたのが間違いだったのね、私が浅慮だったわ、葉流華姉には高度すぎたのね。食材にも可哀想なことをしたわ。正に食材に対する冒涜を行ったのだし、自然に対して謝罪するべきね。御免なさい」

 

こんなことをのたまったのである、しかも何回も何回もこの過程はリピートしている。

 

其処まで言われまくった基本的に妹に逆らえない(逆らえないように調教されている)葉流華が切れた、正面きって逆らうのは珍しいことなのだが我慢の限界だったのだか、刷り込まれた服従心も捻じ伏せる怒りが溜まったのだろう。

 

何回目かの嬲る言葉(当初から指導に対する厳しい言葉ではなく嬲るために江美那は言葉を繰り出していた)を口にした瞬間。

 

背後にいた江美那に向けて葉流香が本当に神速かと疑うような速度で踏み込み彼女のスペックギリギリの威力を込めて九頭 右竜徹陣、並みの人間ならば胴体が分割されてもおかしくない威力が込められた技を放つ。

 

この技を放つ時点で妹を殺す気満々なのだが、多分死ぬとかは頭に入れずに放っているだろう、まずこの程度で死ぬような輩ならば葉流華自身が逆らえない存在として妹を位置づけたりしない。

 

陸戦生物として最強となりえる技術体系、九頭竜現継承者、風椿葉流華、地上最強の生物を相手にしてさらに最強をいく江美那は何者かと言いたいがその辺は世界の理不尽とでも思っていただこう、往々にしてそのような理不尽は存在するものだ。

 

(例、デビルキシャー)

 

その技が当たる瞬間、江美那の体がブレ、ほんの僅か、絶妙のタイミングで必要最小限の距離をさがり最速のバックステップ。

 

結果ほんのコンマ何秒前に江美那がいた空間を葉流華の腕が通過する。

 

通過した瞬間江美那が踏み込み片手を葉流華の腹に当てて、爪先を起点に全身に捻りをくわえる、爪先、足首、膝、腰、胸、肩、肘、腕、手首の順に運動エネルギーが螺旋運動によって増幅し、触れた掌から破壊の衝撃を葉流華の脇腹に叩き込む。

 

芸術的なまでの掌打、衝撃は内臓を駆け回り、一時的な機能障害を引きこすだろうという格闘議論に医学を交えた講釈はどうでもいいとして、それを食らってのたうっている姉に向かって朗らかな笑顔で。

 

「葉流華姉、何で横になっているの。床は冷たいでしょうし、眠るには快適とは程遠いでしょう。ああ、私が教官で疲れていると思って椅子にでもなってくれるつもりですか。気が利く姉をもって私は幸せかしら。確かに葉流華姉の指導は幼稚園児に数学を教える以上に困難でした、これが続くとなると少しは休まないと。では失礼して」

 

これより先程の、姉を妹の尻を堪能するレズ扱いする場面まで進む。

 

現在江美那の椅子と化している女性は心に誓っているだろう。

 

何時か殺してやると。

 

因みに、料理人二人目リタイア。

 

試食係は葉流華を哀れみの目で見てはいたがその事態に心から安堵していたという、特に精神崩壊を起こしかけていた玖理子が、現実認識をはっきり出来るぐらいには。

 

 

 

 

 

で、最後、今回の料理特訓のメイン、そして最高の錬金術師にて最凶の料理人、神城の凛ちゃんである、因みに最初からライカはここに専属でついている、馬鹿に付き合うほど彼女も自分の技能を無駄にしたくないらしい。

 

自分に正直な女性である。

 

沙弓はその虐めの加害者と被害者の双方にいびられる立場だったので内心喜んだり、もし自分に降りかかったらと考えて顔を青ざめさせて忙しかったなどの逸話もあるが。

 

その辺は凛の指導には関係ない、いいとこ沙弓がかおり辺りから受けた折檻の恨みが僅かに薄まった程度だろう。

 

凛の料理の成果。

 

沙弓とライカ現在憔悴の表情でなんとか立っているといったような状態である、これだけでなんとなくどういう過程を経て現在があるのかがわかりそうなもんである。

 

何故料理の特訓でそのような描写が必要になるのかは激しく謎だが、彼女が神城凛と呼ばれる少女ならばそれで納得がいく、それが理不尽ではあるが摂理だ。

 

この摂理によって、教官達が憔悴に至るまで様々なことがあったのである、それだけで話が一つや二つ書けてしまう位に、様々に。

 

因みに沙弓もライカも先の二名の教官のような人格破綻で人間に物事を教えるという行為に真正直に喧嘩を売っている人格とは違い、叱責するところは叱責し、注意するところは注意し、どれ程被害を受けようとキレなかった人格者である。

 

沙弓もライカも男関係では黒いの一文字に集約される人格を保有しているが、普通にしていれば世間的には評価される人格を保有しているのだ、少なくとも先の四人に比べれば。

 

比べたら彼女達が憤慨するかもしれない。

 

で、料理家庭の苦労話、一部抜粋。

 

まず、野菜を切ろうとして何故か野菜が爆発し、調味料を混ぜ合わせようとしたら危なげな色のした煙が上がり凄まじい悪臭が発生し、フライパンに油を引けば引火し、肉を切れば何故か包丁が折れ、折れた包丁がライカの頬のホンの1mm脇を通過した。

 

他にも数え切れないほどの艱難辛苦の果てに、凛、沙弓、ライカの一言どころか一時間語り明かしても尽きることの無いであろう苦渋の結果、凛の目の前に出来上がっている料理、一応見た目はまともな状態に作り上げられている料理、生命っぽいものではなく視覚的には料理と分類できるもの。

 

それが出来上がっている。

 

宇宙意思の気が狂ったのだろうか。

 

凛ちゃんに料理が不可能という定義はどこにいったんだろう、あれは宇宙が決めた定理だったのではないだろうかと戯言を述べたいような気分に駆られるが、述べたところで戯言なのでどうでもいい。

 

事実は事実として受け止めていこう。

 

目の前に料理と呼んでいい外見をした何かが存在している、ライカですら味見を恐れて口にしていないからそれは未だ何かと表現されているが紛れも無く料理、くどいようだが見た目は。

 

そう立派な豚カツ定食(何故に豚カツかは突っ込まないで頂きたい、作者の夕餉なのである、追記自作)

 

ご飯、炊けている、電気炊飯器を使っている時点で失敗の仕様も無いと思うが大いなる一歩な感じがひしひしとする。

 

味噌汁、傍目はマトモ、異物は浮いていないというか具が見えないのが少し不安、匂いは味噌の匂い。

 

副菜の油揚げと小松菜の煮物、ちゃんと緑色と黄金色のものが存在しており、見た目味も染みていそうだ。

 

付け合せのキャベツ、切るだけなのでちゃんと千切りにされている、因みに上記で爆発したのはキャベツ、この添えられているキャベツが何個目のキャベツなのかは不明。

 

で、メインディシュ、豚カツ、見た目豚カツである、ちゃんと食べやすいように六分割されているし脇にはレモンも添えられている、多少焦げていたりするが、見た目は豚カツ、ライカ達の目の元で作られたのだから豚以外の何かというオチも無いだろう。

 

つまりは見た目上は料理といえるものを作り上げているのだ、その代償は料理を前にして感動の涙、おそらく達成感かなにかから、を薄っすらと流している凛の背後で疲れきった表情でいる沙弓とライカの表情を見れば判ることだろう。

 

 

 

 

 

で、地獄の試食会開始。

 

見た目、マトモな料理を前にして引き攣った表情でそれを眺める五名。

 

五人とも凛の武勇伝(?)は熟知している、製作者が凛であるという時点で目の前にあるのは拷問器具と大して違った意味を成さない。

 

和樹にアル、駿司は脳髄の奥にまでその以前の味が染み付いているし、葉流華以上と知った玖理子はまた意識を何処か彼方に飛ばそうとするし、和美はその疲れ切った表情を浮かべる友人に恨みの視線を送る気にもなれないのか、目の前の料理をおびえた目で見つめている、だが食べないというわけにもいかない、目の前にいる黒い悪魔(彼女は何故か黒尽くめ)の風椿三女がそれを許してはくれないだろうし。

 

何より、必死な目で食べるところを見つめている凛ちゃんの前で一口も食べないという行動はできない、特に駿司と和樹。

 

よって、凛が固唾を呑んで特に和樹が食べる様を注目していた。

 

この時点で和樹に拒否権は無く、食べるのを遅延させる時間的猶予もまた無い。

 

 

 

 

 

で、食べた。

 

和樹が恐る恐るゆっくりと豚カツを一切れ箸で取り口に運ぶ。

 

この時、凛と他の試食人、教官のライカと沙弓の注意は完全に和樹の次の反応に注目を集めたことだろう。

 

多分、悶絶するか、気絶するか、渋い顔をするかの三択で、そしてその三択はすべて外れた。

 

「美味しい」

 

和樹がの口から出た感想がそれである、凛の料理を食して出た感想が褒め称えるもの。

 

やはり宇宙意思は狂っているのだろうか。

 

凛ちゃんはマトモに料理ができないという世界律がある筈なのに。

 

天変地異の前触れか、地球最期の時が迫っているのか。

 

まぁ妄言はさておいて、和樹の口から賞賛の言葉が飛び出し、凛の表情は花が咲いたように綻ぶが、一拍置いて。

 

「中々じゃな、少し焦げ臭いが」アル。

 

和樹と同じで豚カツから箸を伸ばしている、表情が綻んでいることからそれなりの味なのだろう、今はご飯を口に運んでいる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」玖理子。

 

味噌汁から手を伸ばしたが一口啜った時点で手から器が転がり落ち彼女は膝が熱い味噌汁にぬれるのも構わず突っ伏し、意識を手放した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」和美。

 

小松菜に手を伸ばしたのだが口に入れた直後にそのまま固まった、どれ程の味覚中枢を刺激する何かを彼女が襲ったのだろうか。

 

「うぐっ・・・・・・・・・・・はぁっ・・・・・・・・・」駿司。

 

味噌汁の具に手を伸ばしたのだが、因みに茄子だった、口に入れ咀嚼しようと口を閉じた瞬間、もだえ苦しみ始めた。

 

 

 

 

 

結果として報告すると、凛の料理はロシアンルーレットのようだった、豚カツとご飯、キャベツは当たりでまずまずの出来だったが、ナスの味噌汁、小松菜の煮物は外れのようであった。

 

この事態を見た和樹とアルは自分の運を天に感謝し、屍に対して冥福を祈ったという。

 

なお、駿司はなまじ耐性が出来ていたため意識を手放すことが出来ずかなりの時間苦しむことになったとか何とか。

 

他には半分は成功、半分は徒労に終わった沙弓とライカは項垂れ、内心ライカは凛教育に火が付いたらしいが、この時点では二人揃って背中合わせに座り込んでしまった。

 

で、凛自身は和樹の美味しい発言辺りから意識がトリップしており未だ目の前の惨状に気がついていなかったりする、案外幸せな娘である。

 

因みに脳内世界は (和樹さんが美味しい、和樹さんが美味しい、私の料理を美味しい。これは大きな一歩、私の人生で大きな一歩。私が和樹さんの連合いになる大きな一歩。私が家庭の台所を守り。和樹さんが仕事で帰って。食事で持て成し、料理を褒めてもらって。食後は共に湯殿に、そこで私は・・・・・・・・・和樹さんに余すことなく触られ見られ・・・・・・・私は奉仕するのだ。そこで・・・・・・・懇願しても致してもらえずに。その私だけを快楽に堕ちさせて。和樹さんは意地悪だから。その後寝室で獣のように激しく・・・・・・・・・・・・・・ナニを、私の口とアソコを蹂躙されて・・・・・・・・その後は裸で共に抱き合って・・・・・・・・・・・・・朝まで)

 

中々に妄想爆発である、現世回帰したときが少し見ものかもしれないが。

 

 

 

 

 

最後に死屍累々の光景を見て一人楽しんでいたのは江美那一人だったという、彼女最初から最後まで自分が楽しむためにこの催しをやったんではないだろうかと疑いたくなる。

 

 

 


後書き

 

HP開設記念SS

 

これは殆ど手を加えずに再掲載です、故に特にコメントすることもなし。


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