強さの秘密



「最初は理由なんかなかったんだ」

 それが大好きな父に、どうしても聞きたかったことを訪ねた時の答えだった。
 
 私が少し口を尖らせて「それじゃ分からないよ〜」と言ったら、「ははは、俺だっ
てよく分からないからな」

 そう言って私の頭を撫でてくれた。

 そのくすぐったい様な感触を感じながらもう一度、私は同じ質問をした。



「どうしてお父さんはそこまで強くなりたいと思ったの?」





強さの理由



 そう最初は特に理由なんか無かった。

 確かにワルキューレに「この場に居て良いのは戦士のみ、民間人は消えろ!」と言
われた時も強くなりたいと思った。

 幾ら雪之丞に乗せられたとは言え、妙神山に行ったぐらいなんだからそれはかなり
強い気持ちだったんだろう。

 でも……それ以上に強くなりたいと思ったのはルシオラの時だった。


 強くなりたかった。

 理由は確かに不純だったかもしれない。

 それでも



 ……この時、俺は強くなりたいと願った……




 でも、その努力を報われなかった。

 幾つかの理由があるが、最も大きかったのは“シンクロ作戦”の存在だろう。

 お互いの霊力を『同期』し『共鳴』させる。

 言葉にするのは簡単だが、これには大きな欠点があった。







 俺と美神さんの霊力差が近くなければいけないと言う欠点が……







 当時の俺は霊的な霊的成長期にあり、単純な霊力だけであれば美神さんとほぼ同
等。

 つまり、この“シンクロ作戦”を行うために俺は強くなる努力を止めてしまったの
だ。

 なんて、愚かな事をしたのだろう。

 今、思い出すとそう思う。

 決して強くなる方法は一つではなかったのに。

 

 なぜ、霊力をうまく使う方法を学ばなかった?

 なぜ、己の肉体を鍛えなかった?

 なぜ、技を学ばなかった?



 




















 なぜ、俺は強くなる事を止めてしまったのだろう?
























その結果が、ルシオラの死。

護るって言ったのに。

結局は俺が護られていた。




                     だから















                     俺は















                   決めたのだ










「ねぇ〜、聞いてるの? お父さん!!」

 どこか怒っている様で、懐かしさを感じさせる声に考えが中断される。

「はははは。 わりぃ、聞いてなかった」

 俺がそう言うと、頬を膨らまして、そっぽを向いてしまった。

 こんな小さな動作の一つ一つが、“彼女”を思い出させる。

「そう怒るなよ? ちゃんとお前が知りたがっていた理由を教えてやるから」

「本当!!?」

「こんな事で嘘を吐いたりなんかしないよ」

 目を輝かせているこの子に、俺は意地悪な笑みを浮かべているのを感じながら言っ
た。




「決まってるだろう? お前達を護る為だよ」

    


中々にシリアスです。

強さを持つ、確かに色々な強さがあるでしょう、技、力、知能、策略、心。

全てで強く、それを求めるのは当たり前。

ですが求めるだけで,十代の横島にそれを得るのは不可能です。

それでも悔いるのでしょう、力が無い、力を渇望しなかったことに。

だからその力を欲し、強くなる。


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