魔・武・仙の物語【第八章】
「ちっ! しつこい小娘やわ」 ザザザッ!! 茂みを走る女性は追いかけてくるシオンに舌打ちした。そして、二枚の札を取り出し、彼女に向かって放り投げた。 シオンは足を止めると、札はやたらとメルヘンチックなクマとサルに変化した。 【シオン様、これは・・・!】 「式神じゃな」 シオンは大して驚かず、前方を睨み付けた。 「ちょっとしつこいどすえ」 すると二体の式神の間から追いかけていた女性が現れて言った。黒髪に眼鏡をかけていて、その目は異様に冷たい。 「お主、何で親書ではなく、近衛 木乃香を狙ったのじゃ?」 風呂に入ってる間なら親書を盗る事など造作もない筈なのにそれをしなかったのを不審に思ったシオンは、女性に尋ねた。すると女性はフッと笑みを浮かべ、 「親書なんか関係あらしまへん。ウチらが欲しいのは、あくまでも力なんや」 「力?」 「アンタには悪いけど、此処で寝んねしてもらいましょか!!」 「!!?」 「おらぁ!!」 シオンはハッとなって振り返ると、新幹線で会った鬼道坂 京が剣を振り下ろしてきた。 だが、シオンは超人的な反射神経で避けると、京の剣で切られた地面がバキバキとヒビ割れる。 「お〜、今の避けるたぁ大したお嬢ちゃんやの〜」 【シオン様、奴は・・・】 「分かっておる。リュークと戦った奴じゃな」 シオンはニヤッと笑みを浮かべると、『大胆不敵』と書かれた扇子を広げる。 「神鳴流か・・・昔、手合わせした事があったの〜」 「ほぉ・・・そいつ、俺より強いんか?」 「さて・・・」 シオンは肩からエルを降ろすと、フッとその場から消えた。京と女性は驚くと、パァンと式神が砕け散った。次にシオンが彼等の前に現れたら、彼女はポンポンと手を叩いていた。 圧倒的な速さで式神を瞬殺し、元の位置に戻ったのだ。そのスピードは人間の限界と言うものを超えていた。 「こういう事だって可能じゃぞ」 グッと拳を強く握ると、手を振り上げた。 「かぁ!!!」 ドゴォッ!!!! そして地面に思いっ切り叩きつけると、京達の足下まで亀裂が走り、ボゴォッと巨大なクレーターが出来た。 「んなぁ!?」 「何どすってぇ〜!」 京と女性はクレーターに落ちながら、シオンのパワーに驚愕する。京は刀を抜き、ダダダとクレーターを駆け上がって来てシオンに突っ込んで来た。 「喰らえやぁ!!」 「肉弾戦でワシに盾突こうなど五百年早いわ」 半眼で笑みを浮かべて言うと、畳んだ扇子で京の剣を受け止めた。 「!? 何!?」 そしてゆっくりと手を伸ばすと、ピンと指を弾いた。 ドンッ!! 「ぬ・・・がああああああ!!」 すると京は派手に吹っ飛んで地面を転がる。その先にはクレーターから這い上がってきた女性がいて、勢い良く転がって来る京を見て悲鳴を上げた。 「へ? ど、どしぇええええええええ!?」 ズドォォオオオンッ!! 二人はクレーターに再び落っこちてキュ〜と目を回した。シオンはバサッと『完全無敵』と書かれた扇子を広げ高らかに笑った。 「はっはっはっは!! ワシに勝つなど笑止千万じゃ!!」 【相変わらず無茶苦茶しますね・・・】 「ついでに埋めとくか」 ズシャッと地面を蹴って土をクレーターに入れた。京と女性は気絶したまま埋められてしまった。 【大丈夫でしょうか?】 「死にはしないじゃろう。さ、帰るぞ」 ポフッとエルを頭に載せ、シオンはホテルに戻って行った。
「シオンさん!」 ホテルのロビーではネギ、明日菜、刹那、カモが集まっていた。 「どうだったの?」 「一応、倒して埋めたぞ」 「埋め・・・」 明日菜がその言葉に表情を引き攣らせる。刹那はマジマジとシオンを凝視して呟いた。 「本当にリューク先生なのですか?」 「ん? ああ、そういえば自己紹介が遅れたの。ワシはシオン・サマーコード。リュークと体を共有する者じゃ」 『夜露死苦』と書かれた扇子を広げて挨拶するシオンに刹那は戸惑いながらもペコッと頭を下げた。 「そういえばシオンさん。さっき地鳴りがしたから新田先生達が出てったけど・・・もしかして・・・」 シオンはソレがクレーターを作った時のものだと思い、視線を泳がせた。 「ん、ん? な、何じゃアレは?」 そして話題を逸らそうとシオンは玄関に貼られている札を指した。 「ああ、あれは式神返しの結界です・・・気休め程度ですが」 「結界?」 「ええ。敵の嫌がらせが随分とエスカレートして来たので、このままでは、このかお嬢様にまで被害が及びかねません。それなりの対策を講じなくては・・・」 刹那は答えると、ネギとシオンを一瞥する。 「先生方は優秀な西洋魔術師を聞いてましたので上手く対処してくれると思ったのですが・・・リューク先生はともかく、ネギ先生の方は意外と対応も不甲斐なかったので敵も調子に乗ったようです」 「あう! す、すいません!」 「気にするでない、ネギ」 「で、でも〜・・・」 目を潤ませるネギ。そりゃ自分と違って強いリュークやシオンに言われても余り気休めにならないだろう。 イジけるネギにシオンは青筋を浮かべてペシッと扇子でネギの頭を小突いた。 「喝っ! 愚か者め・・・・良いか、ネギよ。己の力量を見極め、静かなる心を持って周囲の状況を見極め、そして敵の力を見極めれば、おのずと勝機が見えて来る。これ即ち『明鏡止水』の境地じゃ」 『明鏡止水』と書かれた扇子を広げるとネギは小突かれた頭を押さえながらコクッと頷いた。 【じゃあ、やっぱりアンタは味方なんだな!?】 「ええ。そう言ったでしょう」 【いや、すまねぇ! 剣士の姐さん! 俺とした事が目一杯疑っちまった!】 カモは『刹那は敵だ』と断言していたので、深々と謝った。 「ごめんなさい、刹那さん! ぼ、僕も協力しますから襲って来る敵について教えてくれませんか!?」 「・・・・・私達の敵は恐らく関西呪術協会の一部勢力で、陰陽道を使う『呪符使い』。そして、それが使う式神です」 「「【おんみょうどう?】」」 ネギ、明日菜、カモが首を傾げると、シオンが言った。 「陰陽道は古来中国から伝わる呪術・・・魔法みたいなものじゃ」 そう言うと紙に黒と白の対極図を描く。 「考え方としては、この世の全ては『陰』と『陽』。相反する二つの『気』によって成り立っており、この二つの気の働きによって、身の周りに起こる様々な事象を理解しようとするものじゃ」 それを聞いてネギはともかく、明日菜とカモは今一分からない様子だった。 「つまり世の中、男と女、太陽と月、昼と夜、明るさと暗さ、積極性と消極性・・・色んな正反対のもので成り立ってるという訳じゃな」 そこまで言われて明日菜とカモもようやく理解したようだ。 「更に呪符使というのは、日本の魔法使いと一緒だが、連中は西洋魔術師が従者を必要とする代わりに、呪符で式神を呼び出す。 「「「【・・・・・・・・】」」」 そこまでの説明を聞き終えて皆は呆然とシオンに注目していた。 「何じゃ?」 【あ、いや・・・何でシオンの姐さんがそんなに詳しいんだ?】 自分よりも詳しいので、刹那はコクコクと人形みたいに首を縦に振った。それにシオンはフッと笑みを浮かべた。 「ふ・・・っと、それより何で神鳴流が敵に加担してるんだ?」 「は・・・? て、敵に神鳴流が!?」 唐突に尋ねられて刹那は大声を上げて驚いた。自分も扱う神鳴流・・・昔から陰陽道とは密接な関係を持っていたが、まさか敵方に付いているとは思わなかった。 「今さっきやり合ったばっかじゃ」 ポカーンと刹那は大口を開けて唖然となる。 「シオンさん、神鳴流って知ってるの?」 「うむ。神鳴流とは昔から京都に巣食う魔を討ち滅ぼしてきた退魔師・・・つまりエクソシストの剣士集団じゃ」 剣士・・・と聞いてネギはあからさまに嫌そうな顔をした。魔法使いにとって剣士は天敵である。 「神鳴流の剣士が呪符使いの護衛になるのも昔はあったそうです。それに西を抜けて東についた私は彼らにとっては裏切り者です。 照れ笑いを浮かべて言う刹那に明日菜は突然、立ち上がって刹那の背中を叩いた。 「よ〜し、分かったわ桜咲さん! あなたが、このかを嫌って無くて良かった。それが分かれば十分! 友達の友達は友達だからね! 協力するわよ!」 「か、神楽坂さん・・・」 「よ〜し、決まりですね! ね、シオ・・・」 カッ!! 「「「【【!?】】」」」 突如、シオンの体が輝くと青い瞳になり、リュークが姿を現した。刹那は間近で変わる瞬間を見て目をパチクリとさせている。 「シオンの奴・・・決定権は僕にあるから変わったな・・・」 そう言ってフッと笑うリューク。まぁ早いトコ戻らないと他の生徒達に怪しまれるので丁度良かった。 「リュー君、話は?」 「分かってる」 「じゃ、桜咲さんに協力するよね?」 「ま、そうだな」 笑みを浮かべて頷くリューク。するとネギとリュークは立って、明日菜、刹那と手を合わせた。 「3−A防衛隊(ガーディアンエンジェルス)結成ですよ! 関西呪術協会からクラスの皆を守りましょう!」 ネーミングセンスはともかくとして刹那は嫌そうではなかった。 「(よ〜し、アスナさんと桜咲さん、リュー君やシオンさんまでいれば怖い物ナシだ! これで後はこの親書を向こうの会長さんに渡せれば・・・)」 ネギは心強い味方に興奮していた。すると入り口の方に向かって駆け出した。 「敵はまた来るかもしれませんからね! 僕、外の見回りに行ってきます!」 「あ、ちょっとネギ!」 「いえ、良いですよ。私達は班部屋の守りにつきましょう」 ネギを呼び止めるアスナを制止し、刹那が言う。 「リューク、あんたはどうすんの?」 「ん? そうだな・・・」 リュークは少し考えると、フッと目を閉じて魔力を集中させた。 「守護精霊よ 汝の聖域を汚さぬヴェールを」 するとリュークの足下が光り、その光は一瞬で旅館を包み込んだ。 「とりあえず結界の強化だな。コレでどんな強力な式神も外からは絶対に入って来れん」 「凄いですね・・・」 自分の剣を簡単に受け止めたシオンも凄いと思ったが、リュークの魔法も凄いと素直に賞賛する刹那。 「さて、僕はそうだな・・・・他の先生の代わりに見回りでもしている」 「分かりました。気をつけてください」 「ああ」 リュークは頷くと、刹那達とは反対方向に向かって歩き出した。 |
管理人の感想
原作通りに進んでいる感じですが,神鳴流剣士がオリキャラになってますね、こっちのほうが強そうですけど。
で、女性免疫が無いリューク君、楓のあたりは笑いました、でもよくそんなんで同居できるものやら。
でもこのままネギが目立たないと朝倉にバレるあたりの話がどうなるか気がかりなところです。
結構伏線が張られていますから続きが気になります。
でも、何と言ってもシオンはいいキャラだなぁ、この作品では一番キャラがたっているきがします。
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