魔・武・仙の物語【第十一章】

 

 

 

 和美は何か企んでる笑みを浮かべ、ピンと指を立てた。

「このまま夜が終わるなんて勿体無いじゃない。一丁、3−Aで派手にゲームをして遊ばない」

「何を言ってるんですか! 委員長として許しませんよ! そんなこ――」

「ゲームって何〜?」

 あやかが真っ先に咎めるが、桜子が尋ねてきた。

「名付けて『くちびる争奪! 修学旅行でネギ先生&リューク先生とラブラブキッス大作戦!』」

 ぺロッと舌を出して言う和美に皆が驚く。

「え〜!?」

「ネギ君とリュー君とキス〜!?」

「こらこら! 大声出すなって!」

 和美は皆を宥め、ルールを説明した。

 ルールは各班二人ずつ選手を選び、新田の目を掻い潜ってネギかリュークの唇をGETするものだ。妨害可能で、武器は枕だけ。

 優勝者には豪華商品プレゼントというものだが、新田に見つかれば朝まで正座という罰が待っている。

 そう説明すると大半の人が乗ってきて、和美はニヤッと笑う。

「朝倉さん・・・」

 と、そこへ何やら幽霊みたいなあやかが声をかけてきた。

「ん? やっぱ駄目か、いいんちょ」

「やりましょう。クラス委員長として公認します」

「そら、ども・・・」

 かなり荒い息遣いでヤバいあやかに、流石の和美も引く。

「よ〜し! 各班十時半までに私に選手二名を報告! 十一時からゲーム開始だ!」

『お〜!』

 と、ほぼ全員が乗り気で賭けをしようとか言って部屋に戻って行った。そんなクラスメイト達を見て、和美は笑みを浮かべる。

「ふふ・・・どう? 上手くいったでしょ」

【流石姉さん。作戦通りだぜ】

 するとカモがニョキッと和美の胸元から出てきた。エルも神妙な顔で足下から出てきた。

【フフフ・・・ラブラブキッス大作戦とは仮の姿・・・その実体は―――】

 そう言うとカモは三枚のカードを取り出した。

【仮契約カード大量GET大作戦さ!!】

 そのカードは明日菜の仮契約カードと、失敗した明日菜と木乃香のカードである。

「ほほ〜。これが豪華商品のカードか。これを沢山集めれば良いんだね」

【おうよ。オリジナルはネギの兄貴が持ってるけどな。こいつは俺の力で作ったパートナー用のコピーさ。
 既にこの旅館の四方には魔法陣が引いてあるべ。これで旅館内でネギの兄貴とチューしたら即バクティオー成立!!
 カード一枚につき五万オコジョ$儲かるから・・・あわわ! 俺ら百万長者だぜ姉さん!】

「ヒュ〜ヒュ〜!!」

 百万長者と聞いて和美もテンションが上がる。

「更に今回は班&個人の連勝複式トトカルチョも実施するよ〜!」

【ですが・・・】

 テンションを上げていく和美とカモにエルがボソッと呟き、彼らは注目する。

【このような詐欺紛いの方法で良いのでしょうか?】

【お前、何言ってんだよ? リュークの旦那、一人も従者いねぇじゃねぇか。マギステル・マギ目指すなら、パートナーの一人ぐらいいねぇと】

【リューク様は・・・パートナーいらないぐらい強いんですけど・・・いえ、私はリューク様の妖精。主の為ならば仕方ありませんか・・・】

 自分に言い聞かせる様にエルが言うと、カモが高々に言った。

【よっしゃ! 行くぜ!】

「【お〜!】」

 

「ん?」

「おや? どうしましたか、リューク先生?」

 ロビーで見張っていたリュークは急に寒気を感じて、新田が尋ねて来た。

「いや・・・何だか寒気が・・・(敵じゃないけど、物凄く嫌な波動が・・・)」

 何やら異質な雰囲気が旅館内に漂っており、リュークは苦笑いを浮かべた。

「今夜は冷え込みそうですか? それなら此処は私に任せて風呂にでも入られてはどうですかな?」

「あ〜・・・すいません。じゃあお言葉に甘えて」

 考えたら昨日も今日もゆっくりと風呂に浸かれなかったので、今度こそ日本の温泉を堪能しようと決心した。何かと渋い趣味である。

 リュークは少し上機嫌で浴場へ向かう。綺麗に服を畳んで籠に入れ、独占状態の露天風呂に浸かる。

「ふ〜・・・癒される」

 月を見ながら肩まで湯に浸かり、葉の擦れる音に耳を傾ける。

 ドタンッ!

「ん?」

 その時、ふと館内が少し騒がしい事に気がついた。

「何・・・」

 ドッポォォォンッ!!!

「うわ!」

 風呂から上がろうとしたらいきなり上から何か降ってきた。リュークは敵だと思い、咄嗟に身構えるが、落ちて来たのはネギだった。

「ネ、ネギ?」

<あ、リュー君、僕ホギです>

「は?」

<じゃ、そういう事で・・・>

「待てい」

 爽やかに出て行こうとするネギ(?)を引き止め、リュークは表情を引き攣らせながら額に手を当てた。

「解き放て」

 ポンッ!!

 するとネギ(?)は真っ白い煙を上げ、ヒラヒラと人型の紙が落ちた。それにはホギ・スプリングフィールドと筆で書かれている。

「これは・・・式神? 偉く初歩的だが・・・何でネギの?」

 紙を見ながら思案していると、リュークはサーッと顔を青くした。

「何か・・・物凄く嫌な予感がする」

 先程から感じてる寒気と関係あるのかと思い、リュークは慌てて浴衣に着替えて浴場から飛び出して行った。

 

「あ、あれ? 明石さんに長谷川さん?」

 リュークがロビーにやって来ると、何故か裕奈と千雨が正座させられていた。

「あ、リュー君〜!」

 裕奈は涙を流しながらリュークの方を向いた。

「どうしたんだ?」

「新田の野郎に見つかったんだよ」

 千雨が舌打ちしながら答え、リュークは眉を顰めた。裕奈はともかく、真夜中に出歩きそうにない千雨までが正座させられているのがおかしかった。

「一体、何やってるんだ?」

「え? そ、それは〜・・・」

 裕奈はどう答えたものか、視線を逸らした。

 ドタドタ!!

「ん?」

 その時、四方から足音が聞こえ、何かと思って振り返ると沢山のネギと枕を持った生徒達がいた。

「な!?」

 流石のリュークも驚き、一同を見る。いるのは、あやか、古、楓、のどか、夕映、まき絵、史伽、風香の八人。そして、三人のネギだ。

「あ! リュー君、見っけ!」

「リュー君の唇は貰った〜!」

 言うや否や、まき絵、史伽、風香の三人がリュークに突っ込んで来た。

「え!?」

 リュークは慌てて避難し、三人のネギに向かって突っ込んで行く。

「一体、何なんだ?」

 すかさず、それぞれに掌底、蹴り、肘鉄を見えないようにいれる。すると、それぞれ白煙を上げて消えていった。

「おお! リュー坊やるアルね!」

 その動きを見て、古が目を輝かせる。リュークはバレないように、人型の紙を回収し、息を吐く。

「えへへ〜。リュー君〜」

「うわぁ!?」

 が、そこへ後ろからまき絵に抱きつかれリュークは顔を真っ赤にして怯む。

「ネギ先生も捨てがたいですが、リューク先生も良いですわ・・・」

「んなぁ!?」

 しかも前からは、あやかが潤んだ瞳でリュークの頬を押さえて来た。何が何だか知らないが、このままでは危険と察知し、リュークはバッとまき絵から無理やり離れた。

「あ! リュー君!」

「待つアルよ!!」

「リューク先生、お待ちになって〜」

「待て〜!」

「待つです〜!」

 と、何故か夕映とのどか以外が追っかけて来た。

「な、何なんだ一体? ネギの偽者が出回るわ、皆、追いかけて来るわ!?」

 ず〜っと感じていた寒気はこれだったのか、と思い、リュークは風呂から出た事を後悔した。

「逃がさないアルよ〜!」

「!?」

 ハッと後ろを振り返ると、古が飛び蹴りを放って来た。リュークは、つい反射的にガードした。古は後ろに飛ぶと、次に追いついて来た楓と並んで構えを取る。

「む! やはりリュー坊は只者じゃなかったアルね! 楓、行くアルよ!」

「あいあい」

 言うと、古と楓が一斉に飛び掛って来た。

「え? ちょ・・・待て・・・!」

 慌てながらもリュークは二人のパンチやキックを捌く。その光景を、他の四人は呆然と見ていた。

「何か・・・」

「入り込めませんわ・・・」

 とてもじゃないが、あんな殺陣に入り込めず、キスする機会を伺う事にした。

「く〜! リュー坊、楽しいアルよ〜!」

「ん〜」

 どうもこの二人、主旨を忘れてるようでリュークとの戦いに夢中になってるようである。

「くっ! あ、あなた達、本当に中学生か!?」

「そっちこそ本当に十歳アルか〜!」

 バキィッ!!

 古の回し蹴りが決まり、リュークは壁に向かって飛んで行く。

「きゃ〜!」

「古さん、やり過ぎですわ〜!」

「あいや、しまった・・・」

 と、誰もがリュークが壁に激突すると思った。

 クルッ! ダンッ!

 が、リュークは何と途中で体の向きを変え、壁に着地してそのまま古と楓に向かって飛んで行く。

「何と!?」

「(生徒を殴る訳にはいかないか・・・)」

 リュークはトンと二人の首筋に触れた。

「眠れ」

 すると古と楓は急にバタンと倒れて寝息を立て始めた。

「今だ〜!」

「!?」

 が、リュークは安堵する間も無く、今度は鳴滝姉妹が飛んで来た。

 バタンッ!!

 そして思いっ切り上に乗っかられて、腕を押さえられる。

「えへへ〜、捕まえた〜」

「あ、あなた達は何がしたいんだ〜!?」

「リューク先生の唇を貰うです」

「は?」

 史伽に言われ、リュークは目が点になる。すると真上にあやかとまき絵が覆い被さって来た。

「申し訳ありません、リューク先生」

「えへへ。ゴメンね」

「言ってる事とやってる事が違〜う!」

 何で唇を奪われなければいけないのか分からないが、リュークはこのままではマジでやられかねないので、仕方ないと判断し静かに目を閉じた。

「眠れ」

 ボソッと囁くと、六人は古や楓のようにバタリと眠ってしまった。

「ふぅ・・・」

 リュークは肩を鳴らし、とりあえず班部屋に行って彼女達を引き取って貰うようお願いしようとした。

 が、ふと一階の玄関でネギとのどか、夕映がいるのを見て階段の上から様子を伺った。どうやらアレは本物のネギのようである。

「あ、あの宮崎さん・・・お昼の件なんですけど・・・」

 どうやら、のどかに告白された事に対しての返事のようだ。

「すいません、宮崎さん。僕、まだ誰かを好きとか良く分からなくて・・・・いえ、勿論、宮崎さんの事は好きです。で、でも僕、クラスの皆の事が好きで、アスナさんとか、いいんちょさんとか、バカレンジャーの皆さんも、そーゆー好きで・・・あ、あのそれに先生と生徒だし・・・だから僕、宮崎さんにちゃんとしたお返事は出来ないんですけど・・・」

 そこまで言って、ネギはグッと力を込めて答えた。

「あ、あの・・・友達、お友達から始めませんか?」

 それに、のどかは面食らったような顔をしたがやがて微笑んで、

「はい」

 と、答えた。

「え、えーと、じゃあ戻りましょうか」

 そう言って歩き出したら、夕映がのどかの足を引っ掛けた。すると、のどかはネギに向かって倒れ込み、振り返った彼の唇に重なった。

 ポウッ!

「ん?」

 すると一瞬、ネギとのどかが光り、リュークは眉を顰めた。

「あの光は仮契約・・・そういう事か」

 ハァと溜め息を吐き、リュークは寝ている生徒達を各班部屋に運んで行った。ちなみにその後、裏で糸を引いていた和美はトンズラしようとした所を新田に見つかり、ネギ、のどか、夕映、和美――ついでにカモとエルも――正座させられる事になった。

 それを見た明日菜のコメント。

「何やってんだか・・・」

「リューク先生も大変でしたね・・・」

「思い出したくない・・・」

 一人一人生徒をバレないように運んで、体中が痛くなったリュークだった。



ちょっと今回忙しいので管理人の感想は次回に纏めてさせてもらいます、掲載を優先ということで。

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