魔・武・仙の物語 【第一章】


 フランスはパリ。芸術の都と称される美しい都市。その象徴であるエッフェル塔の頂上に十歳ぐらいの少年がいた。金髪をなびかせ、青い瞳は夜の街並みを映し出している。

「何処にいる・・・」

 少年が呟くと、パリの一角で巨大な爆発が起こった。少年は、ハッとなるとエッフェル塔から飛び降りた。普通なら引力の法則に従い、地面に叩きつけられる筈だが、少年はそれに逆らい、途中で向きを変えて爆発した方へと飛んで行った。

 少年の名はリューク・フォールサウンド。魔法使いである。

 


 轟々と燃え盛るビル。その屋上にリュークはソレと対峙していた。対峙しているのは線の細い女性ではあるが、その表情は狂気に歪んでおり、ブロンドヘアーは逆立っていた。

「その女性に恨みは無いが仕方あるまい・・・行くぞ!」

 少年は中指と人差し指を立てて女性に向ける。

「燃えろ!」

 すると周囲の炎が一斉に女性に向かって突っ込んだ。

「ああああああああ!!!!!!!!」

「! しまった!」

 すると女性は咆哮を上げ、地面を転げ回る。すると女性の体から黒い煙が抜け出て空に消えていく。

「ちぃっ! ・・・・・・・逃げられたか」

 やがてパトカーの音が聞こえ、少年は悔しそうにギリッと歯を噛み締めた。

 

 

 日本・麻帆良学園。

 そこの学園長を務める近衛 近右衛門はフゥと溜め息を吐いた。

「何難しい顔をしている?」

 そんな彼と向き合っているのはリュークだった。歳とは不釣り合いのスーツを着て、近右衛門をジト目で睨む。

「こんな顔にもなりたくなるわい」

「そう気を落とすな。今度こそ片付けてやるから」

「とか言って三回も逃しとるじゃろ?」

 近右衛門も皮肉にリュークは眉を吊り上げ、手に魔力を集中させる。

「ほほう? そんなに消し炭になりたいか?」

「う・・・す、すまん。失言じゃった」

 ガチンコで対決したら絶対に敵わないので近右衛門は素直に謝った。近右衛門はコホンと咳払いして髭を擦る。

「ではネギ君が担任してる3−Aの副担任で良いんじゃな?」

「ああ。僕としても、そっちの方が都合いいしな」

 そう言って踵を返し、ヒラヒラと手を振り、リュークは学園長室から出て行った。

 


 3−Aは、問題を起こす事も多いが今日も今日とて賑やかであった。

「えっと、じゃあこの訳を・・・・」

 英語の授業をしているのは十歳(満九歳)にしてクラスの担任であり、秘密ではあるが魔法使いのネギ・スプリングフィールド。

 大学卒業程度の知識はあり、十歳とは思えないほど授業の評判が良い。

 黒板に書かれた英文の訳をして貰おうと、キョロキョロと席を見回すと殆どの生徒が当てられないよう視線を外した。

「じゃあ、アスナさん」

「ぶっ!」

 指された少女はツインテールに鈴を付けているという変なヘアスタイルをしていて、思いっ切り噴出した。

「何でアタシなのよ!?」

「いえ、日本で有名な『神様の言うとおり』で・・・」

「そんなんで決めるな〜!」

 彼女――神楽坂 明日菜はネギが赴任してきた日に魔法使いだと知り、近右衛門に言われて一緒の部屋に住んでいる。

「だから日にちとかで決めなさいよ〜!」

 頭がかなり悪いのでアスナは涙ながらに抗議した。それを見てクラス中が笑いに包まれた。

「どうやら立派に先生してるようだな、ネギ」

 と、扉の方から声がしてピタッと笑い声が止んだ。そこには見た事ない金髪碧眼のネギと同い年ぐらいの少年が笑みを浮かべて立っていた。

「あぁ〜! リュー君!」

「リュー君言うな・・・」

 するとネギが目を輝かせて駆け寄って来るが、当の本人は表情を引き攣らせた。ネギはガシッと彼の手を強く握る。

「うわ〜! 久し振り〜! リュー君、どうして此処に?」

「今日からお前のクラスの副担任になったんだよ」

 その言葉にクラスが一瞬、固まり、次の瞬間・・・・。

『ええええええええええええええええ!!!!!!!!!?』

 凄まじい絶叫が響き渡った。

 

「あ〜・・・一応、今日からこのクラスの副担任になる事となったリューク・フォールサウンドです。教科は社会科です」

 教壇に立ってペコッと未だに信じられないと言ったクラスに頭を下げる。その時、クラスの一角を見て目を細めた。

 が、すぐに視線を戻すと、ようやくクラスが呆然となっている事に気が付いた。

「えっと・・・」

『きゃああああ!!!』

『可愛いぃぃぃ!!!』

 すると突然、殆どの生徒がリュークの所に集まって来る。

「な・・・な・・・」

 いきなりの事でリュークは顔を真っ赤にして慌てた。そして助けを求めようとネギの方を見ると、

「あはは・・・僕も同じだったよ」

 と、苦笑して助ける気配ゼロだった。

「う・・・あ・・・」

 リュークはシュ〜と頭から煙を出し、気絶してしまうのだった。

「きゃああ! リュー君、気絶したよ〜!?」

 既に『リュー君』というあだ名が定着していてネギは「あはは」と乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 

「でも久しぶりだな〜、リュー君」

「まぁな・・・」

 放課後、カフェテラスでリュークとネギは談笑していた。

【全くだぜ。連絡も寄越さないでくるなんて、旦那も人が悪ぃね〜】

 そのリュークの頭には一匹のオコジョが乗っかっている。オコジョの名はアルベール・カモミール、通称「カモ君」である。

 五年前、ネギに罠から助けてもらって以来、ネギのことを「兄貴」と慕っているが、下着二千枚を盗んだ罪で服役していたが、脱獄して日本に逃げて来た。

 現在、月給五千円でネギの使い魔(ペット)となっている。

「相変わらず口が達者だな、このワルガモ」

 憎まれ口を叩きながらも、フッと笑みを浮かべ小さく割ったクッキーを食べさせる。

「でもリュー君、何で日本に? 確かドイツで修行中だったんじゃ・・・」

「ああ。それなんだが・・・」

 紅茶を置き、話そうとしたリュークだがハッとなって言葉を止めた。

「あ、此処にいたんだネギ」

「あ! アスナさん!」

 人込みの中から明日菜が出て来て、一緒の席に座った。

【よ! 姐さん!】

「お、おいカモ!」

 明日菜に向かって話しかけるカモにリュークは少し焦った。が、ネギは苦笑して説明した。

「あのね、リュー君。アスナさんは僕が魔法使いって知ってるんだ」

「は?」

【おうよ。しかも仮契約までしてるんだぜ】

 言ってカモが一枚のカードを取り出した。カードには剣を持った明日菜が描かれている。

「・・・・と、いう事はネギ。お前、神楽坂さんと・・・」

 リュークはジト目でネギを見る。仮契約の方法は、その魔法使いとキスする事である。ネギは顔を赤くして手を振った。

「しょ、しょうがなかったんだよ! エヴァさんと戦うには・・・」

「エヴァ? ああ、確かエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだったか? どうやら人間じゃなさそうだな」

【ふっふっふ・・・聞いて驚け、旦那。何とアイツは真祖の吸血鬼なのよ】

「真祖? 何で、そんなのがこの学園に・・・」

 真祖の吸血鬼と言えば最強クラスの化け物である。エヴァは、歴戦の最強の魔法使いで、十五年前までは「人形使い」「闇の福音」「不死の魔法使い」と呼ばれていて、魔法界で600万ドルの賞金をかけられていた犯罪者だった。

 が、十五年前にネギの父親にして世界最強の魔法使い、『サウザンドマスター』の称号を持つ人物に登校地獄という呪いをかけられ、魔力を制限されてしまい、学園から出れなくなった。

 そして、その呪いを解こうと息子であるネギの血を狙ったのだが、明日菜と仮契約し、辛くも撃退する事が出来た。ちなみにエヴァの従者、ミニステル・マギは同じクラスの絡繰 茶々丸である。

 説明を聞いて、リュークは溜め息を吐いた。

「面倒なクラスだな」

「あ、あはは・・・」

 まぁ事実、リュークもあのハイテンションには少し驚いた。特に委員長である雪広 あやかという女性は、恥ずかしくて気絶したリュークを見て頬擦りまでしてきたのだ。

 どうやら純粋な少年が好きなようで、普通に純粋少年のネギや、一見クールだが恥ずかしがりやのリュークはストライクど真ん中らしい。

「じゃあ、やっぱりリューク・・・あ、先生付けなくて良いでしょ?」

「まぁ・・・」

 生徒として、それは如何なものかと思うが、特に問題ないのでリュークは頷く。

「リュークも魔法使いなの?」

「ただの魔法使いじゃありませんよ、アスナさん。リュー君は僕と同い年なのに一年で魔法学校を卒業した天才なんですから」

「ふぇ〜・・・でも、そんなのが何で日本に?」

「あ、そうだ。僕もそれが聞きたかったんだ」

 二人+一匹の視線が集まり、リュークは再び紅茶を口に含んだ。

「・・・・実はドイツの魔法協会からある連絡を受けてな・・・知らないか? 最近、ヨーロッパを騒がせてる殺人事件や爆破事件を」

【おお、そういや新聞やニュースでやってるな。新手のテロとか、世界的犯罪者の犯行とか・・・】

 リュークの頭の上のカモが答え、ネギも頷いた。明日菜は初耳だったのか、ちょびっと恥ずかしかった。

「僕は、その事件の犯人を追っている・・・まぁ犯人とは言い難いが」

「どういう事なの?」

「その犯人はゴースト・・・悪霊だ」

「悪霊? それって幽霊とか、そういったアレ?」

 明日菜が尋ね返してくるとリュークは頷いた。

「ああ。ドイツで始まってフランス、イタリア、ギリシャと追いかけて行ったんだが・・・全て逃げられてしまった」

「リュー君がそんなに苦労する悪霊って何なの?」

「・・・・・・ファウスト」

「【へ?】」

 ポツリと出たリュークの言葉にネギとカモが固まった。明日菜は分からず首を傾げている。

「ヨハン・ファウストの怨念だ」

【あ〜・・・旦那。俺っちの耳が正常なら今、ヨハン・ファウストって・・・】

「ああ」

 ピシッとカモは思いっ切り石化し、ネギはガタガタと頭を抱えて震え出した。そんなネギ達の様子に明日菜は慌てた。

「ど、どうしたの? ヨハン・ファウストって何なの?」

「ヨハン・ファウストは五百年前に実在した魔法使いだ。悪魔の世界を見ようと、ある超強力な悪魔に魂を売り渡した稀代のマッドサイエンティスト。ファウスト博士の事だ」

「ふ〜ん・・・で? そのファウストって凄いの?」

 未だに分かっていない明日菜にネギが大量の冷や汗と涙を流しながら言って来た。

「ア、アスナさん・・・ファウスト博士って言えば、歴史上でも最強レベルの魔法使いですよ〜! その怨念となるとエヴァさんと互角かそれ以上かもしれないんですよ〜!」

「えぇ!?」

【しかも、それを追ってる旦那が此処にいるって事は・・・】

 二人と一匹は顔を青くして恐る恐るリュークを見る。

「ファウストの霊は肉体を求める・・・恐らく、この学園の中に奴に乗っ取られた人間がいる筈だ」

「「【ひいいいいいい!!!】」」

 つい先日、最強の吸血鬼とやり合ったばかりなのに、今度は最強の魔法使いの怨念で二人と一匹は涙を流して悲鳴を上げるのだった。


戯言遣いsaraの感想。
ネギまのオリキャラ登場者、このリューク君、ネギと同じくらいなんだろうけど、ネギ以上の天才として登場しているようですね。
カモに対する扱いも中々笑えましたし。
でも一番笑えたのは明日菜がネギに神様のいうとおりで当てられたことですかね。高校中学の時は当てられるのが嫌な戯言遣いでした、成績が悪いというよりは人前で発言するのが苦手だったんですが、よくわからない基準で当てる先生もいたりして。

で、敵役は強力そうだしこれからのお話に期待が持てる一作です。

作家にとっては感想は何よりの栄養剤です、感想はドシドシ送ってあげてくださいね。


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